爆豪、母校へ帰る   作:秋編

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轟「爆豪から林間学校のお誘い…」八百万「怪しさしかないですわねぇ」 その3

  

 

 今代におけるエンデヴァー愛用の必殺技。周囲を丸ごと薙ぎ払う時に使われるそのマップ兵器は、まさしく『氷炎の支配者』の真骨頂。それは学生といえど、訓練されたヒーローの卵達を無抵抗のまま一蹴していった。最近格の違いというものを、ひしひしと感じることが多い生徒達。しかし流石にここまで派手にやられれば、以前までと比較してもショックはより大きくなってしまう。…そもそも意識を失っていない者の方が、はるかに少ないの現状なのであるが。

 

 「っつ…てめえ等起きろ!!なんか来るぞ!!」

 

 『鉱化』による個性を使い、自身の身体をダイヤモンドへと変化させ、『膨冷熱波』をやり過ごした鉱哉がクラスメイトへと声を掛ける。周囲には既に、巨大な何かが起き上がっているのが見えていた。

 

 「あれは…入学試験の時に見た、巨大ロボットったい!!」

 

 「なんであんなもんがこんなところに居るったい!?」

 

 その個性で植物を操る花上茉莉は、体内に飼育していた植物を顕現させ、その膨よかな肉体をなんとか守っていた。近くにいた生徒達もそれに引き入れて、全員ではないが気絶することは避けられたようだった。

 

 「『識別眼』!!」

 

 個性『魔眼』を有する金髪碧眼の副委員長、十礎聖がその力の一端を解放した。対象の有する情報を読み取るその瞳で、敵戦力を明確化する。鋼鉄の体躯を誇り、タコのような触手を持つ巨大ロボット。入学試験で多くの生徒が対峙したであろうその姿から、果たして読み取れる情報は…。

 

 「入学試験用ロボットバージョン15!?多腕アームの数が八本に増えていて、メインの二本にそれぞれ振動刀とガトリング砲が一本ずつ装着されています!!」

 

 明らかに自分達と対峙するために強化を施されたロボット達。聖は未だ気絶したままの生徒達を起こしながら、バージョンアップされた機械兵達を『創造』したであろう人物を脳裏に思い浮かべる。

見渡す限り蠢く彼等を、恐らくたった一人で創り出したその力は、正しく『創造神』の面目躍如だ。その垣間見える力の一端に、背筋が震える副委員長。ともかくまだ気絶している人間を起こさないとと思った、その時だった。

 

 「いっくよぉー!!!」

 

 狐色をした髪色、その頭髪の隙間から見える獣耳。髪色と同色である九つの尻尾を携えて、前に飛び出していくのは、かつては問題児と言われた1-Aの元気印である孤城姫子。

 

 1-A出席番号10番 孤城 姫子

 個性:九尾の狐 九尾の狐っぽいことは大体できる

 

 どこか獣染みたトリッキーな動きに気を取られた瞬間、空から舞い降りてきた鳶色の羽が、聖の頬を掠める。見上げて見れば空を翔ける散切りの黒髪、羽と同色の翼を持つ嵐島飛天が空からロボットへと肉薄した。

 

 「おかしい、もう入学試験は終わったはずなんだがな…。」

 

1-A出席番号1番 嵐島 飛天

個性:有翼の風使い 風を操りその翼で空を翔ける。

 

 そして最後に飛び出したのは、博多出身の近接担当。夜空にこそ映える銀髪を煌めかせながら、

成長した自身の個性で、虎を模した鎧と槍を作り上げる。冷気で作り上げられた氷のそれは、『白虎』と名付けられた力の発露。

 

 「引き付けるったい、フォロー頼むばい!!」

 

1-A出席番号18番 氷川 寅子

個性:白虎 虎を模した氷の鎧や武具を作れる。口と手から冷気を放射する。

 

 「『狐火』!!」

 

 「『羽双剣』!!」

 

 「『虎氷槍』!!」

 

 前へ飛び出した三人からそれぞれ放たれる、青白い幽鬼の炎に鳶色の斬撃―――そして関節部を狙った氷の槍。三者三葉ではあるものの、鋼鉄の装甲を溶かして切り裂き関節部を砕いていくその様は、正にただの卵達に非ず。夢という大空へと羽ばたき始めた、雛鳥達のその姿だ。

 そんな空へと駆け上がろうとする彼等を狙う、バージョンアップされた入学試験用ロボット。三人が暴れ回る位置から少し距離がある場所。そこからガトリングで狙いを定めてくる機体。その地獄へと誘う鋼鉄の砲台を狙って―――

 

 「フォローは任せて!」

 

 水流が直撃する。

 

1-A出席番号3番 出水 洸汰

個性:水流 両腕から水流を打ち出すことができる。水の出所は、空気中の水蒸気。

 

 自身の個性が中・遠距離に向いているからこその判断であろう、前へと飛び出していった三人と動き出しこそ同じだったが、彼が移動したのは前線の三人をフォローできるポジションであった。

 

 「まだまだ来るわよ!!」

 

 そんな彼等とは対照的に、身内(それも男子限定)へのバフ掛けが個性である小野田小町は、全力で後方へと下がっていった。オート発動での個性は、視界にさえ映っていれば勝手に発動する。彼女の真骨頂と合わせて、全体が見える位置へと陣を取る。

 

 

1-A出席番号7番 小野田 小町

個性:お姫様 自分に好意を持つ異性に対するバフ掛け。好意に比例して上昇率が上がる。

 

 次々と現れるロボット。好戦的な笑みを浮かべる姫子に飛天、そして寅子を含めた前線の三人。己の数倍大きい相手でも狼狽えない様は、まるで一端のヒーローであるかのようだった。そんな彼等へと、気絶から目が覚めた生徒達が、入れ替わり立ち替わりそのフォローへと飛び込む。

 

 「『磁界』!!」

 

1-A出席番号4番 漆原 亜依磁

個性:磁界 半径0~5mまでの周囲の鉄を磁力により操る。

 

 髭面の偉丈夫、漆原亜衣磁が磁力を操るその力で、鋼鉄の魔人の動きを封じこめる。持ち上げるだけの出力は、まだ彼も出せないらしい。そこに飛び込んでくる狐火に風の弾丸、果ては水流に氷の槍。一体一体に集中すれば雛鳥達の翼でも、バージョン15を即墜とすことは可能なのだ。しかし相手もそこまで馬鹿ではない。一極集中などさせないとばかりに、1-Aを囲むかのように陣を取ってくる。そこへ―――

 

 「スパルタなのは相変わらずだわ!」

 

1-A出席番号12番 久野 一子

個性:毒 簡単な神経毒から即殺可能なものまで精製できる。身体の皮膚から射出可能。

 

 アホ毛が揺れる赤毛の毒忍者が飛び出してくる。自身の毒をロボットへと噴出。しかし無機物相手にはやはり効果が薄いと見るや、懐から出した苦無や手裏剣を関節部へと投擲。敵の気を引く役目を勝手出るようだ。しかしどこぞのレディース総長程、先天的な回避能力に優れている訳ではない一子。そんな彼女を狙って降ってくるガトリングの弾丸。絶体絶命にも見える彼女を救うのは―――

 

 「鉛ってのは結構柔らけぇもんでな!!」

 

1-A出席番号16番 八賀根 鉱哉(はがね こうや)

個性:鉱化 身体をありとあらゆる鉱物に変化させることができる。

 

 その身を最硬度の物質、ダイヤモンドへと変化させた鉱哉だった。その身に容赦なく降り注ぐバージョン15のガトリング弾。硬いものが削れ砕ける甲高い音が周囲へと響き渡る。しかし本人はまるでどこ吹く風といった様子。その足元には、粉々になった鉛玉が散らばるだけであった。

 

 「助かった!」

 

 「おうよ!!」

 

 以前とは違い言葉に毒はなく、気持ちの良いお礼言えるようになった毒忍者に、嫌味一つなく返す金剛石の剛腕。そんな囮と盾の様子を微笑ましく思いながら、『竹刀使い』は己の武器を手にロボットへと飛び込んでいく。

 

 「竹刀よ『伸びろ』!!」

 

1-A出席番号6番 大空 大和

個性:竹刀使い 竹刀の大きさ重さ長さを変化することができる

 

 大上段に振り上げた愛刀。落下させながら長さは調節。更には打点の瞬間に加重までされたそれは、もはや不殺の域からは程遠いであろう必殺の一撃。一子や鉱哉に気を取られて、隙を晒した鉄人形は防ぐことも出来ず、動力部を破壊されてその機能を停止することになった。残心に群青の髪が揺れるその様は、正しく中世の騎士が如く。優美なるその姿こそ、大和の真骨頂なのかもしれない。

 

 「悪い子はいねぇぇぇぇえええかぁ!!!!!」

 

 次の獲物を求めて飛び出してくるのは、東北地方で見たことがあるコミカルな鬼。もともとは芸能人顔負けのイケメンであるのだが、個性が発動するとそれまでの様子は影も形も残らない―――残念なイケメンこと大江ノ山外道丸。彼は大和の陰から飛び出した勢いをそのままに、振動刀を構える機械兵と飛びかかった。

 

 「!」

 

 バージョン15のセンサーに引っかかる彼。距離の近さから、そのまま振動刀を叩きつけられる外道丸。鉱哉でさえ受けるのを躊躇う確殺の一撃を、真っ正面から浴びてしまい、空中で血を噴き出す異形の大鬼。しかし本来なら致命傷になるはずのそれを受けながら、彼は自身の腹を掻っ捌いたロボへとそのまま組み付いていく。

 

 「悪い子はお前かぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

1-A出席番号5番 大江ノ山 外道丸

個性:酒は百薬の長 姿が異形になるものの身体能力が大幅に向上する。自動再生も可能。

 

 再生能力を使ったゴリ押し。組み付いた彼はその大顎を用いて、機械兵を直接嚙み潰していく。個性発動により向上した身体能力由来の、獣かと見間違うほどの野生的な戦闘方法。酒による時間制限さえ無ければ、彼の近接戦闘能力はクラス内でも上位に相当する。そんな彼に酒を投げるのは、得てしてポーターである彼女の役目―――

 

 「大江ノ山君!新しいお酒だよ!」

 

 何でも入るものの、同じ種類のものは一つしか入らないという特殊なポケットを持つ異形型。二つに分けた三つ編み、青髪獣耳に目の下には大きな隈。明らかに青い毛並みの狸にしか見えないのだが―――

 

 「私は狸じゃない!アライグマだぁぁああああああ!!」

 

1-A出席番号 15番 野開 未来

個性:スーパーポケット 道具を一種類につき一つずつなら無限に入れることができる

 

 そうやって叫びながらも、日本酒の次はテキーラ、その次は焼酎にワインと外道丸への酒を取り出し続けていく。彼も燃費が悪い訳ではないのだが、酔いが切れると一気に無力化するので飲める時に飲ませておく。ついでに大和が使う竹刀も、きちんと予備を一本預かっていたりする。何も外道丸だけに忖度している訳では決してない。

 そんな未来の目から突然光が消えた。まるで意識を何かに奪われたかのように。そしてアライグマの少女は、いきなり真横に飛び跳ねたのだ。すると彼女がさっきまで立っていた場所に、ガトリングの掃射が行われ地面が抉れる。そのまま立っていたら、無事では済まなかっただろう。

 

 「聖ちゃん、ありがとう!!」

 

 「いえいえ、もしもの場合は任せてください!!」

 

1-A出席番号 13番 十礎 聖(じゅうそ ひじり)

個性:魔眼 千里眼、コピー眼、識別眼、麻痺眼、洗脳眼の5つが使える。  

 

 着地の衝撃で未来は意識が戻ったらしい。どうやら聖が洗脳眼で一時的に彼女を操ることで、本人が気づかなかった危機を回避させたのだった。『魔眼』の使い方には、こういったものもある。

 

 「【召喚】!!」

 

 周囲に広がるソプラノボイス。突然割り込んできた声に、1-A全員が不思議そうな表情を浮かべる。視線の先にいるのは、アッシュの髪を揺らすカチューシャの男の娘。

 

 「「「「「「武藤」君居たんだ…。」」」」」

 

 「居たよ!バスからずっと僕はみんなと一緒に居たよ!流石に衝撃的過ぎるよ!!」

 

 本人の致命的なまでの影の薄さは、一先ず置いておいて。遊次が【召喚】した火の鳥が、襲い来る鉄の人形へと、その炎の身体をもって体当たりしていく。鉄をも融解するそれは、入学試験のアップグレードごときではそう易々と止められないらしい。

 

1-A出席番号19番 武藤 遊次(むとう ゆうじ)

個性:お絵描き 描いた絵の中身を召喚できる。遊次は事前に描いた絵をカード状にして持ち歩いている。

 

 「私達も!」

 

 「行くったい!!」

 

 「Here we go!!!」

 

 事前に動き出した彼らに遅れたものの、伊木山吟子や花上茉莉といった中・遠距離要員も行動を開始し、その持てる力で援護と攻撃を行っていく。煙を使った攪乱が本分である骨川煙煉も、様子見ながらその力の出しどころを探っているようだった。

 

1-A出席番号2番 伊木山 吟子

 個性:七色吐息 7種類のブレスが吐ける

 

1-A出席番号17番 花上 茉莉

 個性:キメラプラント 体内に沢山の植物を飼育し操れる。

 

1-A出席番号11番 骨川 煙煉

 個性:スモーク 自分の上半身を一部、または全て白煙に変化させることができ、口からも煙を吐ける

 

 

 「憧れとは理解とは最も遠い感情でござるwwwww」

 

 影に潜み、それを己の鎧とする岸影智は、どうやら彼ら遠距離要員の守りを担当するようだ。彼はそのまま、骨川煙煉の影に潜んでいる。守るための騎士でござるとよく言っているのだが、最近ではただの臆病ではないかと疑われていたりする。

 

1-A出席番号8番 岸 影智

個性:影騎士 人の影に入れる。自分の影は鎧と剣に変えることができる。

 

 「き、岸君ももっと前に出てくくく、下さい!!あっ、孤城さんたちはあまり先行したら分断されてえとえと!!」 

 

 しかし敵の数が多い現状、近接戦闘ができる影智をこんなところで遊ばせておく訳にはいかない。他にも全体を見ればバランスが崩れている箇所が多くあり、後で見ていた塩田弾道は声を上げた。しかし日頃からの気の弱さが災いしてか、クラス委員長としての責務を今回も果たせずいる。悔し気に下がりかけた視線。そんな失意の委員長である彼に手を添えたのは、智謀の大和撫子であった。

 

 「いつもありがとう塩田君。ただクラス全体の指揮は私がやるから、あなたは全弾全力射撃ができるように銃弾を溜めておいて。」

 

 「おおお、小野田さん!?」

 

 ―――指揮を執ることに関して、本当に何もできない自分。そんな僕とは違って、小野田さんには実績もあった。しかし本当にそれでいいのか、ここで甘えちゃダメなんじゃないかとも思ったけれど。役割を奪われた喪失感よりも、奪ってもらった安心感の方が上回ってしまった僕は――――本当にヒーローに向いていないんだろうなと、弾道は独り言ちるのであった。

 

 

 風が炎が雷が水流が、そして植物までもが乱れ飛ぶ戦場。元は閑静な国有地の森林であったのに、今その姿は見る影もない。ここは深き森を舞台にした、学生の練兵場と化したのだから。

 

 「振動刀は受けられねぇ!!躱すぞ!!」

 

 その防御力はクラス随一。しかしその本質を物体の硬度に依存する以上、振動による多重衝撃は相性が悪い。前線タンクとしての役目を一時放棄し、鉱哉は入学試験用ロボットバージョン15の斬撃を受けずに躱した。彼が回避したことにより、他の生徒達もその攻撃を躱していく。そこへ―――

 

 「みんなどいて~やってさ。」

 

 上空から響き渡るそんな声。

 羊の角に青紫の鬣を持つ獅子。しかしそれは上半身に限る異形の姿。その全容は猛禽類の下半身を持ち、蝙蝠の翼持って空を翔ける。尻尾に該当する部分には、代わりに蛇が頭から生えていた。かの悪魔王が旧約聖書から抜け出してきたかのような姿。しかしその身から放たれた関西弁は、どこか他人任せで違和感がすごい。自他共に認める無感動症。『個性』によらない、彼のパーソナリティの一つだ。

 

1-A出席番号20番 六郎木 碌朗

個性:King of deviles 「キメラ」「赤龍」「蛇」にその姿を変化することができる

 

 

 「適当にボーっとしてたら姫さんに働け言われたで、荷物持って来たでぇ~。」

 

 かの悪魔王の姿を顕現する碌朗は、その左右の剛腕にそれぞれ人間を一人ずつ捕まえている。その右腕に首根っこを捕まれている生徒、骸骨の異形型である骨川煙煉―――合成獣である碌朗は、その右手の荷物を地面へと向けて投げつけた。

 

 「オケ丸水産!レッツァパーリナウ!!」

 

 クラスみんなの共通認識であろうパリピ骸骨。上半身を煙へと変えることができる骨川煙煉が、着地と同時にその個性を発動した。一瞬で視界が白く塗りつぶされて、周囲の認識ができなくなる。しかしそれはモニター越しに周囲を確認していた機械兵達も同じだったらしい。生徒達を認識できず、右往左往し始める。

 

 「土屋君!『隆起』!」

 

 「…もっとスマートな方法があると思いますけどね…。」

 

 そんな時土を操る個性を持つ土屋大地が、小町の指示に従って地面を隆起させた。それは少し盛り上がるといった類のものではなく、狭いが高く白煙に切れ目を作るほど。

 

1-A出席番号14番 土屋 大地(つちや だいち)

個性:地面と仲良し 地面を操り隆起させたりできる。服越しや靴ごしでも身体のいずれかが地面に当たっているなら、大地のエナジーで回復もできる。

 

 「あなたが訓練をサボらずに鍛えていれば、あの機械兵を全員転がすこともできたんでしょうけど、こんな狭い範囲でしか発動できないなら陽動にもならないわ!!」

 

 「…何もできない人に言われたくないですよ…。」

 

 「だから考えるのよ!みんな!目印まで退避!塩田君放り込むわよ!」

 

 その言葉に空を見上げる生徒達。先程碌朗が右手に持っていたのが煙煉なら、その左手に持っていたのは、中遠距離ならクラス随一の火力を誇る気弱な委員長。

 

 「やっべ!」

 

 「退避!!」

 

 「巻き込まれんぞ!」

 

 白煙の中で、なんとか目印に向けて走り出す1-A。恐らく全員が退避したであろうタイミングを見計らって、碌朗が人間火薬庫を現場へとブチ込んだ。

 

 「ぜぜぜぜぜ全力全弾射撃です!!」

 

 どこか締まらない咆哮を上げつつ、塩田弾道がその銃撃を周囲へとばら撒く。両手にガトリング砲を一門ずつ。胸部には二門のバルカン砲。そして両肩には一門ずつのミサイルポッド。響き渡る発射音に白煙を照らし続けるマズルフラッシュ。そして着弾したであろうミサイルが、煙を吹き飛ばすと共に、その爆炎にて機械兵達を消し飛ばしていく。

 

1-A出席番号12番 塩田 弾道

個性:弾幕 引っ込まないタイプの各銃器。蓋はある。身体の塩分を弾丸へと変化させるため、使いすぎると熱中症で倒れる。

 

 周囲にいた機械兵は沈黙し、少し距離があったものも恐らく半壊―――まだ動きはするものの、戦闘行動は不可能なレベルにまで追い込んだ。それを行った当事者である、どこかおどおどした委員長は、全力射撃の反動で各銃器から煙が上がっているものの、まだ何とか倒れる程ではないようだった。

 

 「この勢いに乗って、いっくよ「行かないで!!」

 

 戦線に風穴が空いたことで、更に勢いづこうとしたお狐様を止める大和撫子。闇雲に突撃しようとした生徒やまだ動く機体にとどめを刺そうとした生徒も、その声に振り返り足を止めた。

 

 「何でばい小野田!?まだ動く奴もいるったい、とどめを刺しに行くと!!」

 

 「それじゃあ間に合わないの!落ち着いて!」

 

 最初に反発の声を上げたのは、レディース総長として鳴らした寅子だった。しかし以前とは違い、ただ闇雲に否定するのではなく、発言の真意を聞きたくて意見を述べたようだった。馬が合わなくても、仕事は関係なく遂行する姿勢――――それに対し笑みを一瞬だけ浮かべて、小町はその答えを返していく。

 

 「今回の課題は、あくまで目的地に夕食までに辿り着くことだわ!クリエティも言っていたけど、機械兵を全滅させることじゃない!」

 

 「でもこんなところにこんなロボットほっといてもいいの?」

 

 「ダメでしょうね。でもその対処をするのは先生達の仕事であって、私達の課題ではないわ。エンデヴァー達から与えられたミッションは、あくまで移動なのよ。周囲にいるロボットこそ倒したけど、まだ何十体いるかわからないような相手、全部倒してたら明日になっちゃうわ!」

 

 ゴール地点に視線を向けてみれば、まだまだ健在であるロボットがその健脚でこちらに向かって来ているのがわかる。なるほど確かに、あの数をいちいち相手にしていては時間がどれだけあっても足りないようではある。小町に質問をした姫子もその狐耳と尻尾を垂れさせて、げんなりした様子を示している。

 

 「あれが仮想ヴィランであるなら別だけどそうじゃない。ただの障害物を相手にしている必要なんてないんだから!!」

 

 小町のそんな言葉に納得の意を示した1-A。そんな彼等に対し満足気に微笑みながら、麗しの撫子は、知力という翼で皆の力を羽ばたかせていく。それは力を持たない彼女が、必死で考えて得たものだから。

 

 「三角陣形でキャンプ地まで突貫します。耐久力のある八賀根君を先頭に、破壊力のある六郎木君と大江ノ山君が後を付いて進んで下さい。姫子や氷川さんはその後ろに。敵が溜まってきたら、さっきみたいに塩田君を放り込みます。遠距離要員は後方から支援、ポーターの野開さんや攪乱担当の骨川君も姫子達の後ろについて下さい!」

 

 オペレーションを基に陣形が整理され、再び進みだす現役高校生達。どこか頼りない部分は確かに今でもあるかもしれないが、できることを精一杯やろうとするその姿勢は、くたびれた大人にはない眩しさだから。

 雛鳥達の翼は、まだ空を羽ばたき始めたばかりなのである。

 

 

 夏は日の出ている時間が長い。もし冬ならばとっくのとうに月へと交代していた時間。三十人近い人数が食べてもまだ余るであろう鍋をかき混ぜる副担任、爆豪勝己の姿がそこにはあった。そして全員がまとまって食事が取れるよう建てられた白い大テントの下では、担任である取蔭切奈がいつでも配膳できるよう準備を進めていた。まだ誰も到着してはいないのに。そんな教師陣の様子に溜息を吐きつつも、段取りを手伝う轟百。ちなみに旦那さんの方は、『№2』の側で火加減の調整をしていたりする。

 そんな時だっただろうか、近くの藪が大きく揺れたのは。その表情を変えて立ち上がる切奈と勝己。最初に顔が見えたのは、最後までクラスメイトを守り切った金剛石のモヒカンヘッド、八賀根鉱哉だ。彼の後に続きボロボロになりながらもなだれ込んでくる1-Aの生徒達。その消耗は尋常ではなく、気絶した生徒を運ぶ者も何人かいる始末。しかし、それでも――――

 

 「全く、若者の成長ほど怖いものはありませんわね。」

 

 己の予想が外れたことに対し、どこか不満げな台詞を漏らしたものの、その表情には笑顔を浮かべる『創造神』であったのであった。

 

 「明日からはてめぇらで準備しろよ!!」

 

 そんな言葉と共に始まった夕食だった。相も変わらず何でもできる男が作ったキャンプカレーはやはり好評で、生徒達はかき込むようにカレーを胃袋へと流し込んでいた。疲労の限界を越えた身体に、スパイスの辛さが染み渡り体力回復の一助となる。

 

 「はぁーい、みんな!食べながらでいいから聞いてね!」

 

 今後の動きと書かれた書面を手に取りながら、ポニーテールを揺らす切奈が説明に入る。副担任の方は、おかわりに来る生徒の対処で手が離せないようだった。

 

 「明日からなんだけど、起床したら個性伸ばしの訓練に入るよ!せっかくの林間学校なんだからみっちりやるよ!一回や二回の気絶で済むと思わないでね!」

 

 「「「「はーい!」」」」

 

 もはやヤケクソといった感じなのだろう、一子に至っては目が死んでいるのだが、それでも返事をするクラスメイト達と一緒になんとか反応している。…やはりというかなんというか、目は死んだままなのであるが。

 

 「とは言っても訓練ばっかりやってたら気分も滅入るよね。てな訳で、明日の夜はお楽しみイベントの肝試しだよ!!」

 

 「「「「おおおおおっし!」」」」

 

 普段はなかなか騒がない現1-Aメンバーも、アドレナリンが止まらないのか、お楽しみイベントに反応し大きなで歓声を上げている。そんな可愛い教え子たちの様子を見て、勝己は担任である切奈のことをいやらしく思った。わざわざ上げて落とす所は、本当にいい性格をしているのである。

 

 「あっ、でも期末試験悪かった子達は補修するから。そんなイベントないからね。」

 

 「「「「あああああああああ!!!!」」」」

 

 歓声が絶叫へと早変わり。思わず渋い顔になる勝己や苦笑いを浮かべる百。焦凍は鍋の温度を調整するのに忙しくてそれどころではないようだ。ついでに身に覚えがあるのか、赤毛の毒忍者の口からなんか出ていて、女子高生がしてはいけない表情になっている。もうダメかもしれない。

 

 「じゃあ補修者は名前呼ぶから返事してね!まずは久野!」

 

 「…。」

 

 「久野!返事!」

 

 「…ひゃい…」

 

 アホ毛が垂れ下がりそのまま机へと倒れ込んだ一子。返事はあるものの、ただの屍のようだ。

 

 「次、岸!!」

 

 「私が天に立つでござるwwwww」

 

 天どころかお前が立ったのは地獄だよ―――そんなクラスメイトの空気に気づかない振りをしながら、黒人ハーフの少年の目からも順調に光が消えていった。

 

 「さくさくいこうか。後は骨川・塩田・十礎・花上・武藤・六郎木。学科じゃなくて実技試験で赤点だね。まぁゴール地点まで動物連れてけなかった時点で、各自お察しだったでしょ。」

 

 名前を呼ばれたほぼ全員が、切奈のその説目に視線を落とし口が半開きになる。もはや返事をする気力すら湧かないらしい。平然とした顔をしているのは、無感動症の碌朗ぐらいのものだ。そんな彼等の様子を尻目に、九本の尻尾を持つ狐色の生徒が安堵の溜息をついてた。実技には自信があったが、どうやら不安要素があったらしい。

 

 「あ、それと孤城も補修だから。実技じゃなくて学科でやらかしてるからね。数学赤点だからさ。」

 

 「なんですと!!?!?!!!?」

 

 一度上げられて、ものの見事に落とされたお狐様は、作画崩壊レベルで咆哮を上げた。そのまま意識を失ったかのような様子で、後ろへと倒れていくA組切っての元気印。そんな担任のえげつない様子を見て、カレーをかき混ぜていた勝己は一言だけ呟くのだった。

 

 「本当に、厭らしいったらありゃしねーぜ。」

 

 こうして林間学校の一日目は、無事(?)に過ぎていくのであった。

 

 

 

 親父がヒーローを引退したのは、神野戦線が起こる一年程前の出来事だった。どこから情報が漏れたのか、各週刊誌に踊った『№1ヒーロー!家族への虐待!個性婚の真実!』という見出し。後にそれはヴィラン連合、『蒼炎』の荼毘が行った情報操作であったことはわかったけれど、内容は俺達家族にとっては紛れもない真実で、親父はだからこそこの内容は真実であると認めてしまった。

 公の場での記者会見、今でもその内容までもはっきり覚えている。連日の取材に退職していくサイドキック達。個性婚の特徴が色濃く出ている俺は、特にそういったものの対象になった。日々擦り減っていく神経の中で、変わらずに支えてくれたのは、他でもないお前だったな。

 

 『あなたはあなたです。生まれがどうであろうと親がどうであろうと、どう生きてきたのかどう生きていくつもりなのか。それをしっかり見て頂きましょうよ!!』

 

 その一言が無ければ、俺はエンデヴァーの名前を継ぐことはできなかっただろうし、もしかしたらヒーローを辞めていたかもしれないな。

 誰よりも側で見ていて欲しい人へ。これからもどうかその特等席で――――

 

 ――――俺を、見ていてくれ。

 

 

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