爆豪、母校へ帰る   作:秋編

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轟「爆豪から林間学校のお誘い…」八百万「怪しさしかないですわねぇ」 その5

 

 

「んー!!疲れた~!!」

 

 補修用テントと銘打たれたそんな大変不名誉な場所。そこから響く呑気な声に、補修組の担当をしていた取蔭切奈は、思わずその声に驚いてしまっていた。

 

 「…そっかぁ、武藤居たんだね…。」

 

 「先生が補修で呼んだんですけどね!?流石に理不尽すぎるよ!!」

 

 夜とは言え、依然うだるような暑さに変わりはないのだろう。彼こと武藤遊次は日頃降ろしているアッシュの髪をサイドポニーにしている。担任のあまりと言えばあまりの発言に、クラス随一の男の娘は、怒りと共にそのサイドポニーを振り乱していた。

 

 「いや、流石に居たのはわかってたよ?気がついたら忘れてただけで…。」

 

 「そんなことあるんですか?!僕出席日数とかちゃんと付けられてるんですよね!?」

 

 「…。」

 

 「嘘でしょ!?」

 

 いやまぁ流石にそれは冗談だよ――――――そう言って目を合わすどころか、目のパーツだけどこかに飛ばしてしまう担任の先生。側から見たらただのショッキング映像であるのだが、遊次からすればもう何を信じていいのかもわからない。大人どころか世界は全て嘘吐きだ。

 

 「まぁともかく武藤は課題も終わったみたいだし、十礎みたいに肝試し組と合流してもいいよ?」

 

 遊次としてはその管理体制の杜撰さ(しかし本人以外は無理もないと思っている)について言いたいことがあるものの、赤毛の毒忍者や数学×のお狐様が呻き声をあげているのを聞いて、すぐさま退散しようと意識を切り替えた。

 ちなみに魔眼を使う副委員長はそうそうと補修をやり遂げ、肝試し組へと合流していった。

 

 「そ、そうですね…。なんかみんなゾンビみたいになってきたし、ボチボチ行きます。」

 

 「…まぁ道には迷わないようにね。」

 

 「居ないと気づかないまま帰っちゃいそうだからですか?」

 

 「…。」

 

 「ちょっとぉおお!!?!?」

 

 再び目が泳ぐ(物理)担任に、言い募るクラス公認の出オチキャラ。再び始まった押し問答に、涙が止まらなくなる遊次。いい加減慣れちゃったけどねと捨て台詞を吐いて、彼は肝試し組へと合流しにいくのであった。

 

 

 

 「一人移動シ始メタナ。」

 

 本来なら国有地として国に管理され、特定されるはずがない林間学校。しかし今回は一体誰にとっての幸運なのか。時代の隅に埋もれた亡者達が、再びその姿をさらさんと迫っていた。

 

 「強ソウカ?」

 

 「否。」

 

 問いかけた側も答えた側も、どこか日本語に不慣れな外国人が会話するような――――――しかし彼らの頭部は、人間というには些か特殊過ぎる外見をしていた。

 

 「身体付キ等カラ見デモ、恐ラク後方支援要員トイッタ処ダロウ。ヤハリ警戒スベキハ話ニ聞イテイル引率ノヒーロー共ダ。」

 

 「コイツラヲ殺セバ我々ハ自由。ソウダナ≪導≫。」

 

 ≪道≫と呼ばれた男がその声に反応して振り返る。その異形の面構え。そこには本来あるはずの頭部が無い。正確には、脳組織を守るべき骨格が存在しない。剥き出しにされたそれ。闇に潜む彼等は皆その特徴を全員備えていた。かつては改造人間、『脳無』と呼ばれた連中達であった。

 

 「ソウダ。コノミッションサエクリアスレバ、モウ薄暗イ倉庫ノ中ニ閉ジ込メラレル必要モナイ。」

 

 ≪導≫と呼ばれた細身で小柄な脳無が、この場に集った十人の仲間達へと言葉を繰る。ここさえ乗り越えれば、もう鎖に繋がった生活をしなくていいと。自分たちは自由になれるのだと。

 

 「シカシ相手ハ強敵。イクラ『ハイエンド』ト言ワレタ我ラデモ難シイダロウ。」

 

 「ナラアノ牢獄ニ死ヌマデ居ルツモリカ?≪雷≫ヨ。」

 

 「…ソウダナ。」

 

 第二次神野戦線で敗北してからの日々。匿ってはくれていたものの、私有地であるらしい個人の倉庫に、碌な設備も無い状態で押し込まれ続けた時間。潜伏が暴かれなければ死ぬことこそ無きにしろ、生きる意味を見失ってしまっていたそんな時間。

 

 「例エ命ニ変エテデモ、ココガ我ラノ勝負時ダ!!」

 

 「「「「オオッ!!」」」」

 

 闇夜に響く残党達の声。全て失ったからこその魅せる力と輝き。それは決して、恒常的に輝く太陽とはまた違った強さを持っているはずだから。

 

 「悪イガ我ラノ自由ノ為ニ!散ッテモラウゾ!雄英生!」

 

 ≪導≫の声に走り出す十人の改造人間達。人の闇より這い出た彼らの牙は、真昼間に生きる若き命を砕かんと、草木を掻き分けキャンプ地へと向かうのであった。

 

 

 

 最初その姿に気づいたのは、やはり小野田小町であった。

 

 「何?あれ?」

 

 「木の上に人間?」

 

 常日頃から視野を広げようと心掛けているのもあるのだが、それにしてはやけに目を惹かれてそちらに意識を取られて見てしまう。隣にいる大江ノ山外道丸も、どうやら同じであるようだった。

 

 「少し距離があって見えにくいけれど…。」

 

 「何だか結構、インパクトの強い外見をされているようですね…。」

 

 異形型という呼称と存在が公に認められている世の中だ。だから例え視界に映った相手の脳みそが露出していて丸見えでも、指摘するのは吝かだ。そういう『個性』だってあるのかもしれないのだから。

 

 「あれ?でも何だったかしら、脳髄が出てる…。本でも授業で習ったはずなんだけど…。」

 

 何かそう、引っかかるものがあるはずなのに、不思議と視界に映る人物が気になってしまい思考がまとまらない。考えようとしてもどこかあの人物を見なければいけないと引っ張られるような――――――

 

 「いけません!!小野田さん!!」

 

 この声は恐らく、自分たちより少し奥に進んでいた十礎聖のものだ。でも五月蠅い。私はあの人物を見続けているし気になるから今は声をかけないで欲しくて――――――

 

 「敵襲です!私の『識別眼』が反応しました!あれは攪乱型の脳無です!!」

 

 「モウ遅イ。」

 

 「!」

 

 意識があるのに動きが止まった小町に外道丸、その二人へと必死に声をかけていた聖に向けて、更に第三者から声がかかる。不穏な、カタコト言葉で。

 

 「『雷撃』!」

 

 瞬間、その大きな亀のような体から噴出した、極大の雷撃。その亜光速の一撃を見切るどころか動くことすらできず、その身に浴びて膝を着く三人。

 

 「んあっ!?」

 

 「ぐう!!」

 

 「ああぁ!?」

 

 全身から煙を噴き上げ、そのまま痙攣する三人。声をかけていた聖でさえも、その雷撃を前に沈黙してしまう。

 

 「コノ娘、≪乱≫ノ個性ヲ振リ切ッタノカ?ヤハリ雄英、侮レナイナ。」

 

 尚も全身を放電させながら、雷撃を纏う改造人間は油断無く三人を見据えてる。そして三人が震えるだけで何もできないことを確認し、留めの一撃を放たんとその力を収束させた。

 

 

 ハイエンド≪雷≫  個性:蓄電・放電・帯電・雷精製・雷収束・雷吸収・雷指向性・雷耐性・雷回復・超再生

 

 

 「恨ミハ無イガ、スマンナ。」

 

 「そう思うなら勘弁してくれよ!!」

 

 「!」

 

 言葉と共に、その雷撃の前へと踊りだしてくる赤銅色の身体。その身体は、電気抵抗がもっとも低いと言われる赤銅へと変わっていた。金髪モヒカンヘッドの前線タンク――――

 

 「やらしゃしねぇよこらぁ!!」

 

 八賀根鉱哉がその身をかけて、仲間達への攻撃を受け持った。

 

 「前線デ盾ニナルカ…。面倒ダナ。」

 

 触れてもいないのに大地すら焦がし、天すら焼いたのではないかと思うほどの閃光。紫電のそれは、しかし本来の役割を発揮することすらできず、赤銅の身体から地面へとそのエネルギーを流されてしまっていた。

 

 「個性の相性が悪いみたいだな亀野郎!!」

 

 そのまま拳を握りしめ亀型の脳無へと飛びかかる、筋骨隆々とした高校一年生。未だその力は雛鳥なれど、傷ついた仲間を見捨てるやり方など教わったことは一度もない。

 

 「ブロンズスカラック!!」

 

 振り上げた大上段からの拳。赤銅に輝くチョッピングライト。

 一見すれば隙だらけに見えるそれは、その身の防御力でカウンターを無視できる攻防一体の一撃。それはものの見事に亀の頭と思しき部分へと吸い込まれていった。が―――

 

 「生憎ダッタナ。」

 

 「!」

 

 骨が砕ける確かな手応え。しかし目の前で再び雷が迸るヴィランの姿を見て、鉱哉はそれに何の意味もなかったことを悟った。

 

 「再生能力!?複合個性だと!?」

 

 「座学デ習ワナカッタカ雛鳥。我等脳無、ハイエンドト呼バレタ固体ハ――――」

 

 そして再び放たれる、明確な指向性を持つ雷撃。後ろへと行かせない為に、全身を大の字に広げながら、なんとか射線を潰した前線タンク担当。その表情が苦悶のそれへと変わる。

 

 「異常ナ数ノ複合個性ヲ持ッテイルト。」

 

 亀の頭、さらけ出された脳髄。複眼のようにも見える双眼から覗く赤黒い瞳が、金髪金眼の雛鳥のそれを捉えた。

 

 「身体ヲ銅ニ変エラレルナラ、焼キキレルマデ通電サセルダケダ。」

 

 「ざけんなよ!糞!」

 

 野犬のごとく咆哮を再びあげて、悲しき改造人間を睨む現役高校生。しかしその脳裏では指摘され事実を否定できずにいた。雷を浴び続ければいずれこの身は焼ききれる。それこそ蛍光灯の電気が切れるかの如く。加えて、

 

 「木の上にいる脳無に、意識が取られるっ…。」

 

 たまたまさっきは聖の声が耳に届いたことで、一時的に洗脳状態が解除されたが、再び意識が取られそうになりつつある。

 

 「教師陣ガ来ルマデモタセラレルナドト思ワナイコトダナ!!」

 

 再び国有林の闇を照らす紫電の光。それを前になんとか歯を食いしばり、状況の悪さに辟易としながらも、再び飛び出していく不屈のモヒカンヘッド。夜明けは未だ遠く、それこそ明ける瞬間まで命があるかもわからないが―――――――

 

 「雛鳥なりの意地ぐらい、見せてやるってんだよコラァ!!」

 

 雄英高校1-A出席番号16番、八賀根鉱哉。負傷者を背に、未だ飛び方を知らない少年は、無謀とも言える戦いへと身を投じたのであった。

 

 

 

 「やっぱり辞表は置いてってもらうからね爆豪…。」

 

 汗が滲むうなじに少し癖のある黒髪のポニーテール―――クラスを束ねる担任の先生にして、林間学校の責任者である取蔭切奈は、目の前で起きている現状に恨み節を言わざるを得なかった。何が自信満々に大丈夫だと言うのか、あの金髪をバリカンで剃ってしまいぐらいである。

 

 「まぁ今はグダグダ言ってもしょうがないんだけどね!」

 

 現在進行形でいやらしいと評されるその頭脳と性格を駆使して、この補修組テントに起きた出来事を整理していく。それこそ事件は、先程影が薄い男の娘がこの場をさってしばらくしてからのことだった。音による衝撃と熱線がいきなりこのテントを襲ったのだ。

 

 「頼れる副担任の様子がおかしいから、片目で周囲を警戒してて良かったよ…。」

 

 そのまま即生徒達に指示を出してテントを脱出。燃え上がり吹き飛ぶそれを尻目に、誘導されたが如く二体のヴィランが逃げ出した先へと急襲してきた。

 

 「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

  

 ライオンと虎、そして狼の頭を持つ三つ首のヴィラン。御丁寧に全ての頭から脳味噌が丸見えになっており、自身が何者かを如実に物語っていた。そしてその背から生える翼は、蝙蝠のものと大鷲のものとで左右不揃い―――まるで空想上に出てくる合成獣が如き有様。理性の存在すら怪しい眼光は、更にその不気味さへと拍車をかけているのであった。

 

 

 ハイエンド≪獣≫  個性:狼・虎・類人猿・猛禽・蝙蝠・三つ首・牛・カバ・筋肉増幅・超再生

 

 「飛ビ出スノハ打チ合ワセ通リダガ、タイミングハ合ワセテ欲シイモノダナ≪獣≫…。」

 

 コードネームだろうか、獣と呼ばれた脳無を守るように追随する騎士のような鎧を纏う翡翠色のヴィラン。彼も恐らく同種であろう証に、脳は丸見えなのだが、その話口調からは理知的な様子

が伺えた。六本も腕が生えてなければ仲良くできたのかもしれない。

 

 

 ハイエンド≪盾≫  個性:衝撃吸収・衝撃反転・衝撃耐性・超反射神経・筋肉増幅・多腕形成・熱耐性・氷耐性・振動耐性・超再生

 

 

 「いっくよー!!!!」

 

 急襲へと合わせて前へと出られたのは、狐火を尻尾に灯した元気印―――孤城姫子と、

 

 「面子的に私が出るしかないじゃない!もー嫌だ!」

 

 前で戦えるメンバーが自分しかいないからと、毒づきながらも苦無を構える女忍者―――久野一子だ。その二人をフォローさせるために、切奈は残りの生徒へと声をかける。

 

 「骨川は周囲に煙を展開!遠距離要員がいるわ!花上は久野、塩田は孤城の援護!岸と六郎木もそれぞれ前に出なさい!!」

 

 遠距離からの襲撃で始まった開戦。煙での攪乱を指示し狙い撃たれることを防ぎ、遠距離要員には前線へのフォローを指示する。―――――――もはやクラス全員にビビり判定をされた岸影智と、生きる意欲すらどこかへと置いてきた六郎木碌朗が例の如く前に出ていなかったので、それに 咤するのも忘れない。

 

 「動けないのは当然なんだけどね、何せ生徒によっては初の実戦だから。」

 

 初めて行ったインターシップでガチガチに緊張してしまい、禄なことができなった自分を一瞬だけ思い出す元1-Bの索敵担当。それが今やにっくきA組の担任なのだ、人生というのは何が起きるかわからないものである。

 

 「感慨にふけってる暇はないんだけどね!!」

 

 言葉と共に生徒へ散開を指示。全員が大きく下がった所へ遠方から飛来した火炎に氷撃。煙の外で哨戒させていた左目のお陰で、なんとか攻撃の予兆へと気づけた。

 

 

 ハイエンド≪砲≫ 個性:毒肩放出・音波肩放出・火炎肩放出・氷肩放出・熱線肩放出・風方放出・剛牙・顎力・蝙蝠翼・超再生

 

 

 「味方が居るのに撃ってきた!?」

 

 大きく声をあげるのは、誰よりも友達を大切にするお狐様。ヴィランならあり得るかと考えている赤毛の毒忍者は表情一つ変えてはいない。戦力を減らすことに違和感はあるようだが、それでもその表情に陰りは見出せなかった。

 フレンドリーファイヤを誘発した骨川の煙が先の影響で効力を失う。そこには―――

 

 「ささささ、再生してる!!!!!」

 

 「フレンドリーファイヤ大歓迎ってことね。忌々しい。」

 

 クラス委員長の悲鳴に答えるように、切奈は言葉を返した。その右目が映す目の二体の脳無は、今受けた火炎も氷撃によるダメージも、全て再生が始まってしまっている。騎士のような脳無に至ってはそもそもダメージすらほとんど受けていないようだった。

 

 「やっぱり辞表は置いてってもらうからね爆豪…。」

 

 何かしらあるだろうとは思っていたが、蓋を開けてみれば再生能力付きの脳無が三体――――飛ばしている右耳が拾う範囲では他でも似たような状況、操る個性の多さから一体一体がハイエンドクラス。

 

 「守れるもんなら守ってみなさいよ、ったく!!」

 

 恐らく自身もどこかで戦闘中であろう、金髪赫眼の暴君へと不満を爆発させる林間学校の責任者。どうやら今日は、はいしゅーりょーとはいかないようだから。

 

 「生き延びていたら私があいつを殺してやる。」

 

 中間管理職の瞳に宿る殺意はとりあえずのところ、本人よりも眼の前のハイエンドへと向けることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりの皆様こんばんは。初めましての方もこんばんは。ミジンコ並みの速度ですが久しぶりに更新させていただきました。また読んで頂けたら幸いです。
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