爆豪、母校へ帰る   作:秋編

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砂藤「爆豪が雄英の先生かぁ・・・。」 その3

 砂籐と爆豪がグランドに到着した時には既に問題児三人はグランドに揃っていた。代表のつもりなのか、土屋がその茶色の瞳に闘志を宿し前に出てくる。

 「遅かったですね。プロってのはもっと機敏敏速なんだと思っていました。」

 ジャブのつもりなのだろうか、軽く嫌味を放ち土屋は大人2人を睥睨する。

 「僕たちが勝ったら爆豪先生はもう僕たちに干渉しない。卒業まで一切です。」

 「構わねえよ。勝てるなら。勿論負けたら今後一切授業をサボるな。教え殺したる。」

 ヒーロー養成高校というよりはその道の度胸試しのようになってきたが、割と昔からこんなもんだったような気がすると砂籐は自分を納得させる。そのまま手に持っていた荷物を爆豪に預けながら三人の問題児を観察していく。代表にして中心なのだろう、土屋が他の2人に話しかけながら場を仕切っているように見える。他の二人は異形系だろうか。狐のような動物の耳と尻尾を9本生やした金髪の女の子。そして翼を生やしたオッドアイの男の子だ。どの子も気の強そうな表情だが、それはある意味雄英の伝統みたいなものだろう。

 「こちらは事前情報も無しだからなぁ。」

 あんな受精卵以下のガキどもの情報なんざいらねぇだろ!!!と、まさかのパトロンが情報収集に協力してくれないのだ。戦闘の最中や立ち振る舞いから個性を把握していくしかない。勿論相手ヴィランの個性が完全にわかっていることなど稀なのだ。いつも通りであると言えばいつも通りである。むしろよーいドンで始まるだけでもかなり楽な部類だと言えたのだ、砂籐も特別文句はない。

 「おい、じゃあ始めんぞ?」

 「いつでもどうぞ。」

 「いっくよー!」

 「フン」

 皮肉屋な土屋君に元気な女の子、クールな翼持ち・・・返事一つから読み取れる性格を分析しつつ、砂籐も了承の返事を送っておく。

 爆豪は後悔すんなよと声をかけて、ニトロの溜まった右掌を空に向けた。始まりの合図は爆炎から。いくぞこらぁ!そんな咆哮と共に轟音が響き渡り、戦いの幕が上がった。

 「土屋飛ばして!!」

 「了解です!」

 返事の直後、金髪金眼の少女------孤城姫子の足元が隆起し彼女が砂籐に向かって打ち出された。いきなり飛び込んでくる狐耳の美少女を打ち落とそうと、シュガーマンが半身に構え拳を打ち出そうとする。そこに、

 「フン」

 その翼を使い空を駆ける------嵐島飛天の手に渦巻いた風が弾丸となってシュガーマンの体を打ち付ける。威力は大したことはないものの、弾数が多くなかなかに鬱陶しい。まるでマシンガンのような飛天の猛攻に動きを止める砂籐。そこに飛び込んで来る追撃は、無論打ち出されて飛んでくる姫子。

 「せえーの!」

 掛け声と共に放たれるドロップキック。砂籐のお株を奪うプロレス技に彼は思わずその目を見開いた。そして綺麗に着地した孤城のしっぽに灯る艶やか色の炎。

 「くらっちゃえ!『狐火』」

 「つっうぅ!」

 視界を覆い全身を包む程の炎。避けようと動かした砂籐の足は、隆起してきた地面に掴まれてしまい動けない。加えて。

 「離れろ孤城!」

 「オッケー!」

 嵐島の声に反応し距離取る姫子。彼女と入れ替わるかのように吹きすさぶ暴風。飛天が操っているそれは燃えるシュガーマンの火勢を強くする。その一気に燃え上がり勢いを増す炎は対象だけにとどまらず、まるで天にすら食らいつかんとする反逆の大牙。その炎は徐々に渦巻き始め、ある災害の名前を想起させた。

 「如何です?56位さん。これが僕たち必殺の火災旋風です。」

 姫子の狐火を種火に飛天の風で作り上げた、疑似的ではあるが再現した火災旋風。土屋は直接関与はしてないものの、陽動や文字通りの足止め、つまり補佐役として姫子や飛天をサポートしている。これが高校一年生の連携だというのだ。なるほど、確かに調子に乗りきるだけの素養はあったらしい。火炎の威力はとどまるところ知らず、砂籐の姿はその陰に隠れて土屋達の位置からは確認できない。

 「先生どうですか?早く負けを認めないと、炎に巻かれたヒーローさんに万が一のことがあれば・・・」

 「減点だな。」

 「は?」

 自分達の自尊心を満たすために降伏を促す土屋の台詞を、爆豪が途中で遮り言葉を紡ぐ。

 「速攻で必殺を叩き込んだのは一見良策に見えるがなぁ、相手の個性がわかんねえ以上効果が全くない場合だってあるんだよ。」

 そもそも炎が効くなんて誰か言ったか?そう言葉を繋ぐ爆豪に土屋は言い募る。

 「でも現に!」

 「あの技の特性上、外からの視界を遮るのもマイナスだ。今砂籐があん中で何か企んでても、お前らはそれに気付ねぇ。」

 「・・・もしそうだとしても、あの炎の中でこれ以上できることがあるとは思えません。」

 ダメ出しをする爆豪相手にそれでもと言いつのろうとする土屋。そんな彼の言葉を止めたのは、火災旋風を眺めていた姫子だった。

 「土屋!何か来るよ!」

 「そんな!?」

 驚愕にその表情を染め2人を指揮するために土屋は駆け出した。信じられない物を見るその表情に、爆豪は面白いものを見たように笑いながら事実だけを告げておく。

 「あの糞筋肉はその気になりゃあ、俺の榴散弾着弾点でさえ耐え抜くぞ?」

 

 

 

 

 

 

 まだそれは学生時代のこと。特に誰かに言われた訳ではないものの自分で気にしていた一つの事実。人より大柄な体をトレーニングルームで鍛えながら、砂籐力道はそのことを考えないようにしていた。当たり前だ。だって思い当ってしまったら、自分は立ち止まってしまうのではないかと恐れてしまっていたから。きっとそれは誰だって一度は考えてしまう悩み。超人社会とはいえ差別化しにくい増強系。授業や課外活動でその活躍を聞くたびに、そうだと思わされる一つの事実。

 

 自分は、緑谷出久の単なる下位互換ではないか?

 

 己をも破壊する超パワーをいつしか手懐け始め、もはやなんだか説明できないような能力さえ顕現し始めた。いろいろ不安定さは垣間見えるものの、シュガードープのような明確なデメリットは存在しない。

 自分のいる意味は?ダンベルトレーニングをしながらも悩みの晴れない砂籐に声がかかったのはその時だった。

 『砂籐君?ちょっといいかな?』

 見れば緑がかったもじゃもじゃのワカメ髪、そばかす交じりの少し自信なさげな表情。砂籐の悩みの種。緑谷出久がそこに居た。

 『どうした?俺に用があるなんて珍しいな。』

 恐らくこちらが一方的に意識しているだけだ。それを露骨に出すのは流石に砂籐も躊躇われた。自壊してでも前に進もうとする姿を知っているからだ。考えたくはないがシュガードープの暴走で己を傷つけてしまったとして、あそこまで闘うことなど自分ではできそうにない。

 『ちょっとトレーニングの仕方について相談があって。』

 『トレーニングの仕方?』

 『うん、うちのクラスメイトの中で一番身体が出来上がってのるのが砂籐君だって話を今日オールマイトとしたばかりでさ。トレーニングの方法とか参考にさせてもらいなさいって言われたから、ちょっとアドバイスしてもらえたらなぁって。』

 そしてこの向上心だ。爆豪や轟など参考にすべき生徒など他にもたくさんいるだろうに、いくらオールマイトの助言だからと下位互換である自分のところにまで頭を下げてこれるだろうか。

 『えと、ダメかな?』

 返事のない砂籐を見て緑谷は断られたと思ったらしい。その表情を暗くし伺うような視線を向けてくる。

 『あっ、いや大丈夫だ。すまん、少し考え事をしてたんだ。大したことじゃない。』

 『そうなの?じゃあお願いできるかな?』

 一気に明るくなる表情を見ていて砂籐も少し考えを改める。目の前の人間は誰にだって助言を求めて自分の糧にしていくのだ。だったら自分だってその姿勢を見習うべきではないか。個性が下位互換だって?それがどうした。一人の人間としてまで下位互換になってしまうことに比べたら、なんてことはないじゃないか。

 『構わないぞ。ただ俺も少し相談に乗って欲しくてな。』

 『えと相談?僕は大丈夫だけど・・・。』

 あの時踏み出せたからこと今の自分がある。砂籐は今だってあの時のことに感謝していて、彼の級友であることを誇りに思っている。

 

 

 

 

 

 燃え盛る火災旋風の中で砂籐は当時のことを思う。

 『砂籐君が下位互換だなんて思ったことなんかないよ!』

 そういって慌てていた次代の象徴の姿は、今では滅多に見れない面白いもので。

 『例えばシュガードープの能力について掘り下げてみたらどうかな?』

 彼が重度のヒーローオタクであることを世間の人はどれだけ知っているのだろうか。

 『糖分10gにつき3分間パワーが5倍になるって言うけれど、筋肉自体が増えてたりするのかな?』

 デクが蔑称だったことなんてほとんどの人は知りもしないだろう。

 『僕が林間学校で闘ったヴィランに・・・』

 人は個性ではなくその生き方でどうにでもなるのだと今度は自分が教えていかないといけない。まだ若い受精卵達を前に、砂籐はその本領を発揮した。

 

 

 

 

 

 

 

 燃え盛る火災旋風が砂籐の腕の一振りで掻き消えた。見上げてくる視線は爆豪を含めて4つ。今の自分の身体の大きさを考えれば首が疲れてしまうだろう。早めに終わらせてやるかと砂籐は笑う。

 「パトロンからのオーダーは本気でやれってことだ。悪いが手加減はしないぞ?」

 土屋たちが見上げた先にいるのは筋肉の魔人。全長は5m近くになっているだろうか。全幅だって相当なものだ。まるで一つの山が突然目の前に現れたような理不尽さだ。シュガードープで増やした筋肉に身を包んだ、砂籐の真骨頂がそこにはあった。

 

 『シュガードープが筋肉そのものに影響を与える個性なら、筋肉をどんどん増やして肥大化させていけばいい!』

 実際に緑谷が目にしたヴィランの戦法や姿の説明を砂籐は熱心に聞いていた。

 『実際に僕も自損覚悟で打った一撃を防がれたんだ。圧倒的な質量差はやっぱり無視できないんだよ。』

 当時のあの助言からシュガードープの鍛え方の意識を変えた。ただ強めるのではなくどう強くするかを考えた。筋肉の上に筋肉を重ね続けることで一撃の威力があがるだけでなく、砕かれても重なていくことで防御力そのものも向上した。事実緑谷と真っ向から打ち合って、相打ちになることができるレベルまで。

 

 踏み出した一歩が物理的な距離をゼロにする。爆豪のように意識の間を利用するようなテクニックなどない。純粋な筋力による絶対的な速度による加速。まず狙ったのは攻撃の中核担うお狐様。

 「隆起!!」

 距離を詰められてから慌てて防御姿勢に入る姫子。そんな姫子と砂籐の間に隆起した地面が盾代わりに現れる。土屋の個性だろうが今の砂籐にそんなものは関係ない。

 「シュガーラリアット!」

 「ごぉお!ほぇ」

 横一文字に振りぬかれた、それこそ姫子と同じような太さの剛腕を前に、土の盾は一撃で砕かれ姫子は文字通り吹っ飛ばされた。女の子が出してはダメな類の悲鳴を上げながら。

 次に砂籐が目をつけたのは空を飛ぶ遊撃要員。風と翼を操る彼は、距離を置いて戦おうと空を舞う。しかし------

 「シュガームーンサルト!!」

 1-Aのマスクマンは空中殺法もできるレスラーだ。そのわかる人にはわかる美技の前に、鳶色の翼は地面を舐めることになった。そして、

 「そんな、まさか、こんな」

 今回一切まともな攻撃をしていない指揮官だけが現場に取り残された。自分たちが負けることなど全く考えていなかった。それこそ痛い目を見る前に降参することだってできたはずなのに。

 「人に指示を出すなら、引き際ぐらい弁えるのが最低限だぞ?覚えときな。」

 言葉と共に加速するシュガーマン。そのまま地面と水平になった身体から両足を揃えて、一気に土屋を蹴りぬく。

 「シュガードロップキ-ック!!!」

 「これはヒーローによる一般生徒への虐たおべふしゃあ」

 蹴られる瞬間まで何かもごもご言っていた土屋であったが、まるでスーパーボールのようにグラウンドを一回二回と跳ねて、土まみれになりながら沈黙した。よほど怖かったらしく軽く失禁したようだった。

 「任務完了ってとこだな。」

 晴れやかに笑う甘党ヒーローは、失った糖分を角砂糖で補給しつつ吹っ飛ばした三人を回収するのだった。




pixivにて連載中のものを再掲載しております。
何卒宜しくお願い致します。
次話→「砂藤「爆豪が雄英の先生かぁ・・・。」 その4
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11529443
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