爆豪、母校へ帰る   作:秋編

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プライベートが落ち着いて来たのでようやく更新です…
原作との世界線がズレ過ぎて死ねる。


轟「爆豪から林間学校のお誘い…」八百万「怪しさしかないですわねぇ」 その7

「エンデヴァーノ相手ハ私ガスル!」

 

 神官服のハイエンド、全身から火焔を巻き上げる≪炎≫と呼ばれた改造人間は、プロの介入にも驚くことなく、冷静に陣頭指揮を取った。

 

 「≪殴≫ト≪攻≫ハ人質確保ト爆心地ヘノ時間稼ギヲ分担シテ行エ!!」

 

 身に宿る個性からは想像ができないほどの冷静さを保つ男、それはハイエンドという特殊な身体とは関係なく、彼のアイデンティティによるところが大きかった。そんな彼の脳内に直接響く≪導≫の反応も、特にそれを否定する意見はない。

 

 「クラエ!!」

 

 神官服の中から唸りをあげて、天へと届くかと見間違うほどの火柱があがる。自身を中心に発火した獄炎は、燃え上がった先から指向性を持って、『氷炎の支配者』へと踊りかかった。

 

 「ふん。」

 

 鼻息一つ。対峙した二代目エンデヴァーは、その端正な顔を歪めることなく、天から降り注ぐ業火を回避。猛火は対象を失いそのまま地面へと直撃。純粋な炎の威力のみで大地を融解させた。象徴無き時代の皇帝、その相手を一人でするだけの実力は確かにあった。

 

 「エンデヴァーさん!?」

 

 「心配シテイル場合か!!」

 

 「キャ!?」

 

 №1を心配する声をあげた男の娘は、ズタボロの身体を引っ張り上げられ、後ろから身体を掴まれる。個性を発動させようにも、身体はそれすらできないほどのダメージを負っていた。しかし、それでも――――――

 

 「僕のことは良いから、先生!やっちゃって下さい!」

 

 その翡翠色の瞳に宿るのは、不屈の精神。貞操を盾にしてでも時間を稼ごうとした、雛鳥の面目躍如であった。

 

 しかし彼女を拘束するハイエンド≪殴≫には、それを美徳ととるような精神は、恐らく改造前から備わってはいなかった。「虎」が戦った古強者や、他の生徒が対峙している同種族なら、また違った結果をもたらしたのだろうが。

 

 「生徒人質ニ取ラレテ動ケンノカヨ!!先生ヨオオオ!!」

 

 「くっ、いった!」

 

 強引に身体を引きずられた遊次の口から、悲鳴がもれる。しかも引きずった先は、意識を失った他の生徒の所へと。普段ならその手の行為に激怒し、竹刀を振るう群青色の同級生も、前線での切った張ったは慣れたものと、双剣を振り回す髭面の同級生も――――――血だまりに沈み微動だにしない。

 

 その血の海に踏み入れて、ボディビルダーのような体系の、スペックだけの改造人間は咆哮を上げる。

 

 「生徒三人ノ頭ガ大事ナラ動クンジャネーゾ!!!」

 

 「叫び過ぎだ、顎外れ死ぬぞ?」

 

 言葉共に、目の前に揺れた金髪。

 

 「「!?」」

 

 驚きと共に振り返った≪攻≫。当たり前だ、対峙していた相手が一瞬で消えたのだから。

 目が残っていたなら見開いであろう≪殴≫。当然だ、圧倒的優位だと思い距離すら取っていたのだから。

 

 「驚く暇が隙だらけだ。合理的じゃねーな。」

 

 言葉ともに顔面へと放たれる、数多のヴィランを沈めてきた爆撃。火焔をともなう衝撃は、直撃こそ個性:超反射神経で躱されたものの、その炎はしっかり顔面を包み込んでいる。潰された視界、故に――――――

 

 「見えてねーなら反応も糞もねーわな!!!」

 

 相手の身体を余った左手で掴み、利き腕で更に爆撃。そして虚空へともう一発、その衝撃で身体を回転。相手を撃ち出す発射台と化す。学生時代から使っていた必殺技、『爆破式カタパルト』。叩きつける相手は慌ててこちらに向かってきた、力士体系のハイエンド。

 

 「クッ!」

 

 「グオ!!」

 

 急に飛んで来た相方を、焼かないように個性:帯炎帯雷をOFFにして受け止める。そこに飛び出してくる、闇夜を切り裂く金色の夜叉。俺の生徒に手を出すなとは絶対言わない。なぜって?口より先に爆炎が出るタイプだからだ。

 

 合わせて吹っ飛ばされる、ハスペック複合個性の二体。それを尻目に、みみっちくも生徒を背後に身構える、最強の副担任。

 

 「生きてるか?死んだら殺すぞ。」

 

 「それどっちにしろ助かってないよ!?」

 

 あんまりと言えばあんまりな確認の言葉に、思わず声をあげるアッシュ髪の男の娘。血に染まったそれを赫眼で捉えたヒーロー界の暴君は、次に足元の血だまりを見る。そのまま舌打ちし、胸元から「百特性!!」と書かれた塗り薬を取り出した。

 

 「『創造神』様が、合宿中の怪我人に向けて作ってくれた塗り薬だ。造血効果もあるとかいうヤバい薬だから、依存すんじゃねーぞ?」

 

 「ヒーロー側も怖い件について。」

 

 もともとその辺については、リカバリーガールなんていうチート個性が常駐している学校である。死ななければ助かるというのなら、遊次も言葉以上の忌避感はあまりなかったりする。もっともその感覚が、既に依存しているとも言えるのだが。

 

 「そいつはあくまで応急処置だ。こっから西に300の所に超酸素回復カプセルがある。そこにそいつらぶっこんどけ。」

 

 「わ、わかりました。」

 

 外見はしっかり美少女であるが、遊次もそこは日本男児である。しっかり彼らを抱えて、一部引きずりながらも、なんとか目標の方角へと歩を進めていく。それに追いすがろうとする、二体の改造人間。その姿を赫眼で捉えて、暴君が十八番をお見舞いする。

 

 「お前等に用事があるのはむしろ俺の方だ。死ぬのが怖くなるぐらい、尋問し殺すから覚悟しとけよ。」

 

 闇夜を切り裂く金髪の輝き。かつて己が攫われた合宿で、獲物と狩人を入れ替えたその瞬間であった。

 

 

 

 

 「勝算ハアッタハズナンダガナ。」

 

 勝己達が闘うその近くで猛火を振り乱しながら、≪炎≫の名を冠するハイエンドが呟く。自身が纏っていた神官服は、既に炎に焼かれその役目を放棄していた。自身ではない、相対する相手の炎によってである。

 

 「赫灼熱拳…」

 

 「!」

 

 耳に聞こえて来たのは、数多の犯罪者達を消し炭にしてきた最悪の流派。親子二代に渡って、マップ兵器としての能力なら、『平和の象徴』すら軽く上回った地獄の炎。

 

 「ヘルスパイダー。」

 

 灼熱の半身、その指先から伸びる炎の光線。炎を噴出すだけの個性から、技術により生み出された絶対溶断の線撃。かつての使い手は、ビルを溶断する荒業を見せた訳だが、それはしっかり後継者へと受け継がれていた。

 

 「ッウ!」

 

 個性:炎再生も個性:超再生も、生きていれば使える類のものである。当たり前であるが、死んだら効果がない類のものだ。今の五連撃は、受ければ身体が千切れ飛ぶだろう。なんとか距離を取ることで回避。返す猛火で反撃を試みるも、かの半身である氷壁がそれを許してはくれなかった。

 

 「『蒼炎』相手ニ苦戦シタト聞イタガ、コレホドトハナ!」

 

 大地を溶かすほどの業炎。それをたかだか摂取0℃そこらの氷に受け止められて、苦虫を嚙み潰したような表情を、残った口元だけで浮かべる改造人間。過去の第二次神野戦線では、確かに彼はあの蒼き炎相手に後塵を拝していたはず。それが今、

 

 「何年の前の話をしてるんだ?」

 

 「!?」

 

 己の背後にジェット機が如く炎を噴射させ、一気に相手の懐へと潜り、拳撃を叩き込む技――――――赫灼熱拳「ジェットバーン」。その拳はしっかりと、灼熱を冠するヴィランの顎を打ち抜き、その足元を危うくさせる。

 

 「プロになってもこの校訓は忘れていない。」

 

 「クッソ!」

 

 「Plus Ultraってな。」

 

 全身が発火しているのをお構いなしに、そのままその首根っこを引っ掴んだ『氷炎の支配者』。死神の鎌でも、恐らくもう少し容赦があるのではないだろうか?

 

 まもなく自身にとってのそれが、派手に振り切られるであろうことを察したハイエンド。しかしもともとのアイデンティティなのか、ここまで来ても心は冷静であった。

 

  「中途半端ナ個性デ、ヨクゾココマデ。」

 

 そして気づいてしまう。有利だと言われていた№1一人相手にこの低落、これが二人揃って待ち構えていて、それをどうにかできる訳が最初からなかったのだということを。つまり、

 

 「能力ヲ測ルタメノ当テ馬カ…。」

 

 察したところで人の腕の形をした、死神の鎌がどうなるわけでもない。見上げて見れば、星すら焼かんとする炎の中で、オッドアイの瞳と目があった。

 

 「確かに一点特化に比べれば火力は低いかもな。」

 

 それが先程への問いに対する答えだと、そう気づく間に、炎の温度が10℃ほど上がっていた。まだまだ上がる。そのまま№1は、自身の炎熱を限界まで引き上げる。そして同時に、もう半身の温度を限界まで引き下げていく。

 

 「今の高校生達もそうだな、複合個性は小器用にやった方がいいかもしれない。」

 

 「シカシ、ソレデモカ?」

 

 「あぁ、勝てなかったからな。」

 

 過去に戦ったキメラのヴィラン、そして闇へと落ちた己の兄弟――――――いずれも一つの力を強化し応用、発展させたものであった。過去を振り返れば、№1になるまでに敗北した相手はいずれもそういった探求特化型だった。

 

 「なら答えは簡単だ、それと同じくらいになるまで鍛えればいい。」

 

 自身の半身を、大気すら焼き尽くすほどに温度を上げる。自身の半身を、大地すら凍てつかせるほどに温度を下げる。

 

 「再生シタ、傍カラ、燃ヤサレテ…。」

 

 「訓練自体は他の奴より楽だったがな。何せ、自分で冷やして温められるんだから。」

 

 その調整も前はできなかった。そう言葉を続けて、かつては忌々しいだけだった炎により、再生と崩壊を繰り返している、人ではなくなった、そして不幸にも間違えてしまった男へと引導を渡す。

 

 「後は一撃で消し飛ばしてやるよ。赫灼熱拳―――」

 

 父とは違い、身体の半身でしか放てない、一子相伝の究極奥義。父に比べて優れている点は、半身を冷やすことでノーリスクで乱発が可能といった所だろう。授けられ作られたものでも、己の力だと認めたから。

 

 「プレミネンスバーン!」

 

 そういう意味では俺とお前らはよく似ているなと、そんなことが、一瞬だけ焦凍の頭をよぎった。そしてそんな戦場では全く無意味な感傷を、瞬き一つで切り替えて。己の番から預かった、ピアス型のサポートアイテムを、人差し指で軽く弾いた。

 

 「百特性の洗脳個性防御アイテム、効果が覿面だったな。」

 

 奴らが最初に洗脳向けの電波を飛ばした時に、いち早く百が作成したものであった。とりあえず焦凍に勝己、そして自分の分を作成し、今は負傷した生徒への超酸素カプセルを展開している。まさしく八面六臂の大活躍だ。

 

 「プロになってから、より複雑なものも山ほど作れるようになったが…。どっちがサイドキックかわからないな。」

 

 ちなみに家庭の方は亭主関白のふりをしているだけだと思っている。何せ「その方が上手く行くんですのよ、何事も」っと、ウインク付きで言っていたのだ。天然とはいえ、彼女もやはり女である。

 

 「お前のとこはどうなるんだろうなぁ…。」

 

 隣で暴れている、どちらがヴィランかわからない男へと、視線を向け直して独り言ちる。四川麻婆が好きだからと、一生懸命実家に料理を習いに来ていた、その恋人のことを思い浮かべながら。

 

 「追加報酬は耳郎の料理、忘れてないぞ?爆豪。」

 

 まるで返事をしたかのように、聞きなれた爆音が、国有林に木霊したのであった。

 

 

 

 

 

 「爆ぜ死ね害虫共が!!!」

 

 まさしく狂乱の咆哮。「破壊」という現象が、生きて人間の形をして歩いていたら、こんな姿をしているであろうそのままの存在。金髪の髪を揺らし、その赫眼で獲物を睥睨する姿は、ヴィラン顔ランキングV5の面目躍如であった。

 

 「糞ッタレガァ!!」

 

 「フー、フー!!」

 

 ボディビルダーのような筋肉質な身体、そしてそれと正反対なイメージの力士体系――――――そんな一見あべこべにも見える≪殴≫≪攻≫であるが、嗜虐趣味ということで馬があったのであった。彼らはこのハイエンド集団の中で、一番相性が良かったりする。その二体が、まとめて手玉に取られていた。

 

 「最近はガキども相手でなかなか本気出すこともなかったからよ――――――」

 

 両の手から、火薬の爆ぜるような音がする。

 

 「――――――てめぇら丁度良いリハビリだぜ!!」

 

 言葉共に、一気に二体の懐へと飛び込んでいく、金髪の核弾頭。一瞬で懐へと潜り込むその手品のタネは、『無個性の武神』から教わった、意識の隙間を突く歩法と「爆速ターボ」の合わせ技であった。

 

 「くらいな!!」

 

 両腕から放たれる破壊の紅蓮。それは自身の加速装置として使っている時とは全くの別物。そう、相手を純粋に破壊するためだけの爆撃。学生時代から続けていた、爆撃を集中させて粒立たせるその技術。

 

 「モウラナ!」

 

 「ブフウ!!」

 

 元々近接打撃能力に特化した、名前の通りの改造人間が二体。デフォルトでくっついている再生能力をもってしても、あれを受けきれる保証はないと判断し、大きくバックステップしてなんとか範囲外に逃れる。個性:筋肉増強を発動させてでもだ。

 

 「ママ、マダ消エチマイタクナイ…。」

 

 躱した結果地面に生まれたクレーター。土砂が吹き上がるはずが、あまりの威力に、直撃した瞬間消え飛んだのだろう。しかも大変痛そうだ。いくらハイエンドとはいえ、防御の個性が乏しく作られた二体に、あれをまともに受ける気力は全く無かった。

 

 「なら頑張れよ。」

 

 「!」

 

 一気に接近してくる笑顔の破壊魔。錐揉みしながらその回転を威力に変えて、右の掌底を叩きつけてくる。

 

 「ナンノ!」

 

 個性:超反射神経のフル発動、個性:刃精製で生やした剣に個性:帯電で雷を生み、更に個性:衝撃反転でカウンターを狙う。

 

 「合ワセルゼエ!!」

 

 一人を狙えばもう一人が―――――――――爆心地の背後を狙い、相方が飛び出して来ている。個性:多腕形成により腕を八本、そこに斧・槍・刃・槌・弓とそれぞれ個性により精製し、一気に殴りかかろうと踊りかかる。

 

 「知ってっか?」

 

 帯電する刃を、回転しながらも小手で受けて手先は殺さず。小手は絶縁体で電気は通さない。カウンターの衝撃は気合で我慢。

 

 「何されても殺すから必殺って言うんだよ!!『榴弾砲着弾(小)』!!」

 

 本来のものより威力は低くも、反動が少なく使い勝手がよくなった。そんな技をぶっ放され、≪攻≫の意識は闇へと沈んだ。ぶっ放した元悪童は、その反動を利用し八手の犯罪者へと一気に接敵する。

 

 「!?」

 

 「散れやあああああ!!」

 

 咆哮と共に放たれる「A・Pショットオートカノン」。普段なら人間相手に手加減されるそれも、この時は一切加減無しの本火力だ。さながらガトリング砲が前から飛んでくるようなものである。

 

 「舐メルナ!!」

 

 多椀を超反射神経で動かし、なんとか炎弾をはじく。そこに飛んでくる本丸は、胸から生やした腕で受け止めた。

 

 「どっから生えてんだよ!?」

 

 「肩カラシカ増エネエトハ言ッテネエヨ!!≪攻≫動ケ!!」

 

 その声に反応し、なんとか身を起こし襲い来る攻撃特化型のハイエンド。その存在に守りは非ず。攻め込むためだけに造られた。個性:剛牙。犬歯を伸ばし武器と化す。両手と揃えて、それぞれ雷と炎を纏う。

 

 「≪炎雷総牙刃!!≫」

 

 異形の腕に掴まれ、身動きできない所に放たれる、多腕の刃と牙によるオーケストラ。ベートーヴェンもびっくりのその多重演奏。「歓喜の歌」があるならば、それは炎と雷のハーモニー。

 

 「≪殴嵐≫!!」

 

 多腕の腕に数多の武具。個性により精製した腕を犠牲に、相手の動きを封じた所に繰り出される、暴力の大渦。それは嵐の名を冠するに充分で、ただの人間には過ぎたる威力。戦車相手でも申し分ない、まさしく必殺の領域。それを拘束された上で、

 

 「グウウウッ!!」

 

 「ガッハッ!!」

 

 両腕の個性だけで防ぐ『№2』。

 

 「掴んだ腕を放さいことだけが及第点だな。」

 

 まるで生徒に対する授業のように、評価を下す副担任。もっとも、彼のクラスにはこんな脳髄丸出しの生徒は勿論一人もいないのだが。

 

 「やり直すつもりがありゃあ、やり直せるはずなんだがな。よっぽど焦ってる奴か、」

 

 そしてその両腕を銃口のように、倒れたそれぞれの頭に向けた。

 

 「てめぇらみたいに、やり直すつもりもないクソでない限りはな!」

 

 どこに居たかは知らないが、もっとやり方はあったはずだ。然るべき所に自首するのだって一つの手だ。方法を選べば、ただの被害者で居ることもできたはずだった。少なくも、生徒を襲ったこの二人に、もはや情状酌量の余地はない。

 

 両腕の小手に付いていたピンは、既に外した。燃料は既に、マックスまで溜まっている。

 

 「吐け!!てめぇらを送り込んだのはどこのイカれ野郎だ!?」

 

 食らった相手を容赦なく煉獄へとたたき落とす、天すら焦がす二門の砲撃。その切っ先が向いている今、なぜ会話等という時間が提供されたか、わからないような連中ではない。が、それでも――――――

 

 「ヒャーハッハッハ!!ゴメンダゼ!!」

 

 「オ、遅カレ早カレ死刑ニナルナラ、抵抗シテ死ンダ方ガマシダアアア!!」

 

 片方は恐らく自棄、もう片方は絶望から。せめて何も口を割らないことが最高の嫌がらせだと心に決めて、そのアイデンティティでもある、個性:多腕形成を再び発動させていく。

 

 「フンッ、クソが。」

 

 夜空を明るく染め上げるような閃光。超再生を持つ相手だからといえども、ここまでやる必要があったのかと言えるほどの大威力。大地は溶け去り木々は消滅する。恐竜達を絶滅させたと言われた隕石の襲来――――――そんな言葉を予見させるほどの、絶対的な破壊力。学生時代ですら、訓練時の仕様を禁止されたのだ。本職にまでなった今、その威力は計り知れない。

 

 「まぁ確かに、情状酌量ってのは不可能だかな。」

 

 もはや影すら残らなかった相手。そんな相手に独り言ち、特段命を奪ったことに対する最悪感すら覗かせることはない。もう、大人になった元雛鳥。彼はあの日自分が攫われたイベントで、今何を思うのか。その鋭すぎる眼光からはもはや、何も読み取ることができないのであった。

 

 「終わったようだな。」

 

 「あ゛ぁ゛?遅ええんだよ。腕鈍っとんのか?」

 

 茂みから出てきたのは、同じように近くで暴れていた、今だ己が座すことができない地位にいる男。正直ムカつく。学生の頃から、そこだけは変わらない。

 

 「別にそんなことはねぇよ。それとも援軍でも欲しかったのか?」

 

 「はっ!馬鹿言ってんじゃねぇ!軽く捻った!!」

 

 「なら問題無いな。次へ急ごう。」

 

 それこそ、あの日合宿で戦った時は、隣で戦いながらお互い問題しかなかった。歯を伸ばして暴れていた凶悪犯。それを思い出したのは片方か、それとも月明かりを浴びる両方か。片方でも両方でも、思い出したなんてむず痒いことを、いい歳した男が言うことは決してないから。結局迷宮入りではあるのだが。

 

 「次の大まかな位置は?」

 

 「補習用テントには担任がいやがるな。」

 

 「じゃあそこは行かなくてもいいくらいだな。」

 

 「足りめーだろが。」

 

 探索畑出身で、基本的な戦闘能力はただでさえ低いはずなのに、この2人に任せられると判断される、1-Aの担任取蔭切奈。今頃は、その癖のあるポニーテールを振り乱し何とでもしているのだろう。

 

 「ご生憎だが補習のアホどもは多い。人数がいりゃ有精卵共でもどうにかなんだろ。」

 

 「先生としては補習が多いのは問題なんじゃないのか?」

 

 かつては半分野郎と馬鹿にしていた、そんな相手の一言にイラッとしながらも、ともかく今は先を急がなければならない。その覚悟を決めて、勝己は方針を固めた。

 

 「てめぇはあっちでバカバカ光ってる方角に行け。」

 

 「じゃあ爆豪は?」

 

 「その反対方向から攻めて行ったるわ。派手な音はしてねえがな。」

 

 お互い頷き後は背中を向けて走っていく、現ビルボード最上位ランカー達。生徒がまるで太刀打ちできなかったハイエンドを、まるで紙の軍隊を相手にするが如く突破していった化物達。動き出した輝きに、果たして生徒達は何を見て何を学ぶのか。夜明けはもう、そこまで来ているのであった。




いつぶりの本編?ヤバい。死ねる。


pixiv掲載のみのお礼SS
耳郎「上鳴君と別れた後に」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16158033 

砂糖編お礼SS
砂糖「ケーキ屋親父のパトロール」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16822205

pixivユーザーに向けてのお礼SSですのでこちらには掲載致しませんが、もしよろしければご賞味くださいませ。
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