爆豪、母校へ帰る   作:秋編

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デク「か、かっちゃんが雄英の先生!?」ドン引キ その4

チンピラヴィランを男2人で退治した後、デクと飛天は警察へと通報した。飛天の個性使用についてはプロヒーローであるデクの承認があったため勿論お咎め無しとなった。そのまま現場で軽く事情聴取が行われ、デクと飛天は各々事務的なやり取りを進めていく。気がついたらかなり遅い時間であったため、また何かあればご協力お願いしますという形でこの件は幕を閉じた。ように思えるのだが。

 「という訳でそれが事件の概略だよかっちゃん。」

 本来なら顔を出すつもりのない雄英高校へ緑谷が呼び出されたのは、事件の翌日のことであった。誰かさんが教師になったとは言え、それぐらいのことでわざわざ職場へ直接赴くことなどそうはない。しかし今回はその誰かさんの呼び出しなのだ。行かなかったら大変みみっちいことになりそうなのでしっかり緑谷は顔を出した。緑谷の話を聞いて難しい顔をしている爆豪。そんな幼馴染の姿は最後に現場で会ってからそう変わったように思えない。学生時代からより鍛えられたその体躯。ヴィラン顔と称されるほどの厳しい目付きに個性そのままのような爆発した金髪。しっかり営業マンな自分と違い、目の前にいるのは生粋のヒーローなのだ。そのことに寂しさを覚えながら、緑谷は爆豪の言葉を待つ。

 「その糞刃は」

 獲物を見つけたかのように赫眼が煌めく。

 「一体どこからヒーローのパトロール情報を把握した?」

 そう、それは緑谷も気になっていた部分だった。本来ヒーローのパトロール情報は協会や各事務所、警察が管理・把握などをしている。つまり流出される訳がない情報そのものなのだ。それが捨てアカからのメールで届くといった事態になってしまった。一時的ないたずらならまだしも、もし.......

 「また内通者だったら?」

 その緑谷の言葉に爆豪のもともと険しかった表情が更に厳しくなる。お互い内通者には嫌な思い出のある身だ。できるならもうあんな思いはしたくない。

 「とは言っても現在では断定できる材料もねぇ・・・警察に任せとくのが最良ってとこか。」

 溜息と共に言葉を投げかける爆豪。その欲求不満が顔を出す姿に緑谷は思わず笑ってしまう。

 「んだこらクソナード!?なんか文句あんのか!?」

 「いやいや違うよ、ストレス溜まってるんだなぁって思って。」

 何せ泣く子は黙らせヴィランは泣かせる爆心地様だ。それが今や学校の先生。生徒をヴィランと同じように叩き潰してストレス発散するわけにはいくまい。

 「事務所の経営、厳しいんだよね?」

 「・・・。」

 言い逃れを許さない真っすぐな言葉。その目が子供の頃から嫌いだった爆豪は目をそらし沈黙を選ぶ。

 「日頃のヒーロー活動で出るマイナスが厳しいんだよね?だったらうちの保険を使えば、経営だって今ほど切迫することなんて」

 「うるせぇ!!!!」

 怒鳴る爆豪。来客用の部屋とは言え外に響くほどのそれに、たまたま扉の近くにいた教員は思わず肩を竦ませる。

 「てめぇの保険には絶対に入らねぇ!何度門前払いされりゃあ気が済むんだよ!!!」

 事実緑谷がヒーローを引退したときから爆豪と会ってはいなかった。いや、正確には爆豪に避けられているといった方が正しかった。クラスの同窓会だって緑谷が来るなら爆豪はドタキャンしてでも参加しないという徹底ぶりだったのだ。

 「かっちゃん・・・。」

 「てめぇこそどうなんだよデク!」

 縋るような色が伺えるその瞳。そんならしくない姿を見せられて緑谷は慄く。

 「久しぶりの実戦だったんだろ?現場でなんか思うところでもあったんじゃねーのか?!」

 そこでようやく気づく。彼が本当に言いたかったことを。

 「8%までしか出せねーったってやり方なんかいくらでもあんだろうがよ、今回だって!!!」

 「かっちゃん。」

 響く小さな声。まるで泣いているかのような怒鳴り声が、その一言で止められた。

 「僕、この後免許返納しに行くんだ。」

 「なん・・・でだよ・・・。」

 絞り出すように言葉を出す爆豪。天下の爆心地らしくないそんな姿に、緑谷は軽く微笑む。

 「まだやれんじゃねーかぁ!!!」

 「やれないよ。生徒に助けてもらってどうのこうのしてちゃ、次代の象徴なんて背負えないさ。」

 悔し気に表情を歪ませる爆豪。そう、彼は見たくなかったのだ。保険のセールスマンをしている緑谷を。誰よりも諦めが悪くて、きっと誰よりも無謀な夢を見ていてた幼馴染が折れてしまったそんな姿を。きっと彼ならまたいつかって、そう言って帰ってくるって爆豪は誰よりも願い信じていたから。

 「もう、無理なのか?」

 「うん無理だね。」

 幼い頃はただ追うしかできなかったその背中。避けることしか出来なかった中学時代。

 「本当に、ダメなのか?」

 「うん。」

 隣をライバルとして歩いた高校時代。しのぎを削りあったヒーロー時代。

 「ダメなんだ。」

 いつでもどこかで繋がっていたはずの幼馴染は、いつしか遠くに行ってしまった気がしていた。でもそう感じていたのは他ならぬ爆豪自身だった。俯き悔しそうに、恐らく歯を食いしばっている姿に緑谷は声を掛けられない。

 「てめぇクソナード!!!」

 かと思ったらいつもの調子の爆豪勝己が緑谷に向かって強く強く吠える。視線は未だ、下を向いたままで。

 「お前今回の落とし前どう付けるつもりだ?!」

 「落とし前って・・・犯人だって逮捕したし、免許も返納するからできることなんか本当に限られて」

 「プロヒーロー爆心地の名において!」

 その口上は、まさか。思わず緑谷はそう呟く。当たり前だ。それこそ前日自分が飛天相手にやったことなのだから。

 嘘でしょなんて呟いた時にはもう遅い。

 「緑谷出久の個性使用を許可する!!」

 「・・・っつもう・・・」

 「それで?どう落とし前つけんだ?」

 にやりと笑う負けず嫌いのそんな表情を見て緑谷は思う。本当に、変わらないなって。変わらずに、居て欲しいなぁって。

 「ともかく警察関係は信頼できる伝手を当たってみるとして、僕自身は営業先にいろいろと鎌をかけて反応を見ていってみるよ。サイドキックの人と話すことも多いから、鎌を掛けられて全くボロが出ない訳でもないと思う。」

 「まぁそんなとっか。あいつんとこには行かなくていいのか?」

 「あいつんとこ?」

 あぁと一言頷き話を続ける爆豪。

 「まだしっかり服役してんだろ?俺たちの内通者様はよ。」

 「うん。そうだね。もしまた内通者絡みなら、実際に潜入してた彼女に話を聞いてみるのも悪くないかもしれない。」

 そう答える緑谷の表情にも影が残る。当たり前だ。彼女が内通者だったという事実が元1-Aに残した傷はあまりにも大きすぎた。あの爆豪でさえ、当時は簡単にその話題を口にすることができなかった程だった。

 「ともかく行って話を聞いてみるよ。何か参考になることがあるかもしれないから。」

 「おう、頼むぞ出久。」

 ・・・今彼は何と言ったのか?

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする緑谷。最後に名前を呼ばれたのはいつの話だっただろうか。それこそ、下の名前なんて。

 「突然、なんで・・・。」

 「オールマイトの跡継ぎはもう木偶とは言いたくねぇ。だが免許を返すてめぇはもうデクでもねぇ。・・・・今更名字で呼ぶのも気持ち悪いって話だ。そんだけだ。」

 「なんだよ、それ。」

 彼が名前で人を呼ぶ意味は知っている。誰の事でも名前で呼ぶわけではない。それこそ本名を覚えていないことだって多かったはずだ。それが今、緑谷は始めて爆豪に名前を呼ばれたのだ。ヒーロー名でもなく蔑称でもなく、本名で。

 鼻で笑う爆豪に、今度は緑谷が俯いてしまう。頬を伝うそれを彼に見せないために。きっと見えていても、彼が何も言わないことは知っていたけれど。

 静かになった室内に響くノックの音。舌打ちとともに答えるのはホストである爆豪だ。

 「んだこら!!取り込んでるのは知ってんだろ!?」

 「あっ、すみません、飛天です。」

 先日共に闘った後輩の名前に、緑谷は慌てて目元を拭い爆豪と視線を合わせる。お互い頷くと爆豪は生徒へと入室の許可を出した。

 「お取込み中ってのは聞いてたのですが、昨日のお礼を言いたくて。お邪魔させて下さい。」

 「お礼なんて、こちらこそ助かったよ。」

 そう言葉を交わす即席コンビに、場の空気は非常に和やかなものへと変わる。そんな良い空気の中で、爆発三太郎さんの眼光は緩むことなくその後ろへと注がれることになった。

 「てめぇら何ついてきてんだ!?」

 「ビルボード元1位と話せる機会なんてそうないでしょうから、これも授業の一環みたいなもんでしょ?」

 「うわぁー、デクだぁ、すっごーーーい!!」

 いけしゃあしゃあと物を言う土屋と、芸能人を見たかのような反応の姫子。そして、

 「緑谷さんお久しぶりです!」

 「洸汰君!!」

 かつて林間学校でデクが助けた少年もそこに居た。

 「そうか、雄英高校に入学したとは聞いていたけど、まさか飛天君と同じクラスだったなんて!」

 あの頃よりも随分背丈の変わった、もう子供とは言えない思春期の男の子。しかし瞳に宿すデクへの憧れは、あの当時から変わることなく続いている。

 「ちょっと出水君一人でデク独占しないでよ!!」

 気づけばそんな声ともに現1-Aの生徒たちが狭い来客室へと流れこんできてしまう。

 「ちょ、ちょっと待っ、こんなたくさんいきなり!!」

 面食らって泡を食う緑谷の姿を見ながら、爆豪は楽しげに笑う。

 「ちょうどいいじゃねーか、元ナンバー1さんの特別授業開催だぜ!」

 「そ、そんな勝手に!」

 「報酬に響香の飯を食わせてやる。」

 それ耳郎さんの許可取ってないよね?そんな言葉を言う前に周囲から注がれる期待の瞳に、勿論デクは逆らえない。

 「わ、わかったよ。じゃあかっちゃんも一緒に、みんなで教室で話しよっか。」

 「おま、出久!!」

 見ればあれだけ賑やかな生徒たちが一瞬で静かになっている。不思議そうに緑谷が現1-Aメンバーを見てみれば、

 「かっちゃん?」

 「爆心地が?」

 「あの爆弾魔の先生が、」

 「「「「かっちゃん?」」」」

 そして舞い降りる一瞬の静寂。嫌な予感がした緑谷は離脱しようとしたものの、がっしり肩を掴まれ動けない。後ろ振り向けば、ヴィラン連合も裸足で逃げ出す悪鬼羅刹がそこに居た。

 「ぷっ!」

 「かっちゃん、かっちゃんだって、あはははは!」

 「やばいやばい!!」

 「そういえば林間学校の時も言ってましたね!」

 「な、なかなか素敵なあだ名あるんですねかっちゃん先生!!クスっ、ぷぷぷ!」

 「腹痛い、腹痛いんははは!!」

 日頃の硬派で厳格なイメージが完全崩壊したらしい。怖くて厳しい先生として君臨していたのにまさかのかっちゃん。そのギャップは1-Aメンバーの腹筋を直撃していた。

 「死ねや出久ぅぅぅうぅううううううううう!!!!!!」

 「わ、ちょっ待」

 炸裂する爆炎に轟音。あまりの物音に何事かと顔を出したミッドナイト校長は、応接室で暴れる懐かしい2人の顔を見て思わずその頬を緩めることになる。まだ若かった頃の彼らをその瞳で幻視しながら。

 「来世で幸せになりやがれ!!ワンチャンダイブさせたる!!!!」

 「も、もう充分幸せだよ!間に合ってるってば!!」

 現役高校生の笑い声が響く中で、2人のヒーローはしっかり、ミッドナイト先生に怒られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無骨で飾り気のない剝き出しの金属の廊下を歩いて行く。重く湿った空気はまるで心まで浸食してくるような、そんな錯覚を緑谷にもたらしていた。タルタロス---超人社会における犯罪者が幽閉される対個性専用の刑務所。そこで案内された一室にいるのはクラスメイトだった女の子。その本当の姿を目で見ることは、肩を並べて闘っている間には終ぞ叶わなかった。

 それができればきっと、彼女がヴィランである必要なんてなかったはずなのに。

 「あっ、緑谷君だぁー!来てくれてありがとう!!珍しいね、どうしたの今日!?」

 ニコって擬音が聞こえるような声と手ぶりで、元1-Aの内通者、葉隠透がそこに居た。

 

 

 

 

 

Next story is 透ちゃん「嘘ー!?爆豪君が雄英の先生!?」,coming soon.Please wait.

 

 

 

 

 

 




pixivにて連載中のものを再掲載しております。
何卒宜しくお願い致します。
次話→透ちゃん「嘘ー!?爆豪君が雄英の先生!?」 その1
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11702164
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