とりあえず一区切り
「確かここを進んできたな…」
ペースはかなり遅いが、男二人を連れながら俺は紅魔館へと急いだ。
咲夜と来た道順に歩いていけば辿り着く……その考えを胸に抱いて足を動かし続けた…。
1時間…2時間…3時間……時間は着々と進んでいっているのが分かる。
それに合わせて、俺の額からも汗が流れていく。
「……まずいな…男の損傷が激しい……」
男の方を見ると、その体は傷だらけだった。
それもそうか、何時間も引き摺られて移動すればそうもなるだろう。
仕方ない……1人はここで置いていくか…
そう決めて、俺は1人の拘束を外してその場に放置した。
運が良ければまた里のどこかで会うだろう……
そうして俺は1人を担いで歩き出した。
スーツは返り血を浴びたことや一着しかなかったこともあり、血なまぐさい香りを漂わせていた。
「……人を担ぎながらの移動と言うのも…結構酷な仕事だな……」
本当にどうしたものか…運ぶ作業というのが、一番難易度が高いと思うほどに、俺はこういう作業が苦手だ。
車とかそういうのを使えれば話は別なのだが………
生憎とここにそんな近代的なものはない。
そう諦めて、俺は歩くことに集中するのだった………。
あれからまた何時間かが経過した。
「太陽が……」
なんとも不味いことになった…なんと太陽が沈んで来たのだ…!
頭をよぎるのは闇に喰われた記憶だ。あれは何としても避けなければならない……!!
「急がなくては……!」
俺は男を担ぎ直して、また歩き出す。
最悪の場合、また…………
なんとも嫌な予感のせいで、俺の足は知らずに早くなっていた。
「深夜くらいか…何故か分からないが…あの時のケモノ達は襲ってこない。一体なぜ……?」
とにかくこれはラッキーと考えるべきだろう。これならまだ進むことが可能なのだから。
男は衰弱しきっていて、もはや鼓動も消えかけていた…
それも相まって、更に俺は駆け足になりながらも森の中を前進するのだった…
「夜明け……か?」
太陽が見える、一夜が明けたということだ。
俺はその間も走り続けていたが、そこでついに。俺の目的地が見えてきたのだ。
「ようやく戻れた……間に合…ってはいるな。よし」
まだ1日ある…セーフだ。
全然セーフ……俺はやり切ったのだ。
とりあえず考えるのはここまでにして………館へ入ろう。
重々しい扉を開く。
重いように思えるような見た目をしているにも関わらず、あっという間にその扉は開かれて、俺は中へと入る。
そういえば…門番も咲夜も見かけないのだが、門番が居ないのはどうなのだろうか……と
「吸血鬼、お前がお出迎えか。」
「あら、誰かと思えば。約束の日は明日のはずよ?」
「それなら心配ない、ここに人間を連れてきている。」
そう言うと吸血鬼は怪訝そうな顔をして
「はぁ?それが?よく見て見なさいよ」
と言った。
なんの事だと思い、俺は担いでいた男の方を見る。
「……!」
死んでいる……!?死因は衰弱死だろう…それは予想できる。
しかし……これは…
「貴方は私に死肉を食えとでも言うのかしら?冗談でしょ?私たち吸血鬼は生きた生物の血しか食さないのよ。」
なんだと……つまり…つまりだ……俺が連れてきたこいつは完全に無駄になったということか…?
そんかことが……
「さて、私に献上するのがそれなのね?」
いや…もう仕方ない!
開き直ってこれを差し出してしまおう。
「そうだ。これを食え、吸血鬼。」
「それは食べないわ。代わりに………」
「ーーー貴方の生き血を貰うから。」
首元にブスり…と2本の牙がたてられた。
「ガっーーーーー」
振り払おうとするが、身体が完全に固定されてしまって動けない。
それどころか血がどんどん吸われていっているせいで抵抗する力すら失われていく。
「私が満足するまで生きていたら…またチャンスをあげるわよ」
口を離してそんなことを言う吸血鬼。
しかし、そんな声を理解する程の力すら、もう既に持ちえていなかった。
そんな俺に構わず牙は突きつけられていく。
俺の生気が失われていく…。
体は冷たく……冷たくなっていき…やがて意識すら消えていこうとしていた……。
「もう終わりかしら?ーーーーもーすー………れどね……」
何かを言っている気がしたが、そんなことすら。もう聞こえることもなかった。
今住神馬の中から全てが喰らい尽くされたのだ。
俺は、朦朧とする意識をその場で手放してしまうのだった…………。
end2!!
次回は生存ルートです。
急ぐよりも。確実に生きたまま連れていくのが重要なのです
読んでくれてありがとうございます!
次回もおたのしみ!