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悪魔の契約
「……くそ…だめか…」
あれから恐らく数時間は経過したであろう時間、俺はヤスリで削り続けていたのだが、手錠はビクともしなかった。
それどころか少し荒い部分がキメ細やかになっている気がした。
「入るわよ…って何してるの?」
十六夜咲夜が中に入ってくる。
やばい……見られた…と思ったのだが、彼女は俺の持つ物をみて呆れたような口調でそう言った。
「……いや、これは…」
「ヤスリよね?……それも紙の。」
「そうだが……」
「えっ…もしかしてそれで手錠をどうにか……?」
「…できるんじゃないのか?」
「いや無理よ??」
え?
どういうことだ……と言葉を失っていると、十六夜は続けて
「それはあくまで建材なんかを磨くようの代物でしょ?そんなものでやったっていつまで経っでも何も変わらないわよ」
と、切り捨てるようにそう言った。
「まじかよ……」
俺はただそういうことしか出来なかった。
が、十六夜はニコリと表情を変えて
「でも、逃げ出そうとしたってことよね?」と言った。
「なんの事かな」
目を逸らしてしらばっくれる、ちょっと笑ってるように見えて怒っているように見える彼女を直視できなかった。
それほどまでに彼女のことを恐怖の対象にしてしまっていた。
「逃げ出そうとしたのよね?ハッキリと教えて?」
「あ、それよりもなんで俺のところに来たんだ?」
話を逸らす。
十六夜はムッ……とした表情でこちらを見たが、そういうのは無視するタチなんだ。
「早く言ってくれよ。何のようなんだよ」
「…………まぁいいわ。貴方に1ついいことを教えてあげようと思ってね?」
「いいこと?それは一体なんだ?」
「簡単なことよ、こちらにも……そして貴方にもメリットのあること」
ほう……少し興味が沸いた。
それは一体なんなのだろうか…と、彼女の話に身体を前のめりにして聞く体勢に移った。
「それはね…あなたーー、」「あんたが私たちに協力して人間を連れてくるのよ!!」
なんだが騒がしいのが部屋に入ってくるなり十六夜の話を遮って
そう俺に告げられた。
「……は?人を連れてく……誘拐ってことか?」
「そうね。誘拐というか食料調達なんだけど…貴方のその殺しの腕前ならそれくらい朝飯前でしょ?」
「いや……嫌なんだけど」
殺しを生業として生きてきたのはあるが…さすがに生贄のために殺しを行う程、俺は人を殺すことに慣れてはいない。
「もし……断ると言ったら?」
「そうね…それなら即刻、この場で貴方の身体に穴を開けるわ」
目をギラりと開いきながらそういう彼女は、どこか楽しそうに見えた。
……遊ばれているのだろうか?
まぁ、ここで殺されるくらいなら……
「わかった、その条件を受け入れよう」
「聞き分けがいいのね?そういう所は評価できるわ」
「お嬢様……」
「だが、これだけは絶対にしないことを一つだけ言っておく」
それは俺が世界各国で殺し屋として活動した頃から一貫して貫いていた
1つのルールだ。
「俺は絶対に子供は連れてこない」
未来ある若者の命を刈り取る…それこそ人の道を外れし外道なのだ。
俺がそう言うと、吸血鬼はフフッ…と笑って
「分かったわ。それは勘弁しておいてあげる。それじゃあ初めてだろうし1週間に1人連れてきなさい。」
とだけ俺に伝えて、部屋を後にして行った……、
「どうやらそういうことらしいですね」
十六夜もどこか苦笑いしているようだったが……まぁ大方気の毒に…なんてことを思っているのだろうな
そう思っていると
「いやなら断ってもいいんですよ?口ではあぁ言ってますけどあなたを殺すことはしませんから」
なんてことを言われた。
心配そうな目でこちらを見つめる十六夜を見ながら、俺は少し笑って…
「馬鹿をいうな。これは仕事だ…俺はいつもどうりやるだけのことだ。」
そう、これは俺とあの吸血鬼の間に出来てしまった文字通り悪魔との契約書と言うやつなのだろう。
俺はやる気もないその契約を、ただ人からの依頼を受けるかのように受け入れてしまうのだった…………
その口約束とも言える契約に、その絶大な効力を誇っているなんてことを…その時の俺が知る由もなかったのだった……。
次回、神馬の実力が露わになるーーー!
続く