契約を完了し、数週間が経過した……
「身体への変化は特に感じないな…何か変わったのか?」
特に変化したものもなく、痛覚も普通に感じた。
ただ…少し妙な感覚のような……そんなものを極偶に感じるようになっていた。
吸血鬼曰く、昼間は私の力の届く範囲からあまり離れるな。とのこと
言われた通りにしているから変化も少ないのかもしれない。
「…………集落に向かってみるか。」
そう思い、俺は屋敷を出る準備をする。
しまっていたナイフをポケットに忍ばせ、俺は部屋をでた。
「どこか向かうの?」
「十六夜、ちょっと集落にな。」
「お嬢様の言いつけを破る気?」
「……そんなことは知ったことではない。俺は自分の意思で動く。」
「…………そう、まぁ気をつけて。」
「分かってるよ」
そうして咲夜と別れて、俺は集落に向かった。
何度か外に出たことはあったが、今までと変わらなかったのだ。
この程度の日光なら案外平気なのかもしれない。
そんなことを思いつつ俺は森の中を疾走していた。
一度来た道だからか、迷うこともなく集落の門へと辿り着くことができた。
「関所には見張りが居るから………」
以前は夜に抜け出した為、ここを素直に通るのは厳しいだろう。
それならやることは……
「壁登りだよな」
勢いをつけて飛び越える……!すると、俺の体はそれに応えて壁を悠々と飛び越えることに成功したのだ。
さて、入り込むことが出来たが……これといってやることもないからな……
「仕方ない……適当に人を連れて帰るか…」
そうして1歩踏み出した時。俺の体に異変が生じた。
「…………なっ…?!あ、あぁ…?!!」
身体が痛い…?その上動けない…?!
全身を焼かれているような…なんだ……この感覚は!?
とにかく……これは不味い…!
何とか……どこかへ…… 隠れないと…
足にかけられるだけの力を掛けて俺は日陰へと逃げ込んだ。
腕を見ると、湯気のような物がでており若干焦げ臭い匂いが鼻についた。
「くそ……これが…吸血鬼の言っていたことだったのか?」
……それくらいしか思い浮かばない。
これがすなわち離れるなと言った意味だろう。
「それにしても……」
どうやってこの場から離れれば……周囲に影はないし、何よりこの状態を晒せば不味いことになる。
考えろ。考えるんだ…、何とかここから……
『あれ、神馬?』
そこで声が聞こえた。聞き覚えのある声…?
顔を上げてそちらを見ると、そこに居たのは
「トア!どうしてここに?」
先代の弟子の一人の日比野トアがいた。
『おれは今買い出しに出ていたんだ。神馬は?』
「俺もあれからちょっとあってな……」
『そうなのか!それならせっかくだし道場にこいよ!』
「え、あ…あぁ。そうしようかな…………。」
歩きだそうとするが、日光に身体が当たり反射的に影に身を隠す。
『?どうしたんだ?』
「ちょっと日焼けがな…最近肌が弱いんだ。」
『それは大変だな。俺も気をつけないと!』
そうして痛みに耐えたりしながら歩いて、道場まで付いていた。
門の前には先代と…………赤い紅白の女の子が喋っているようだった。
「誰だあれ」
そう考えながら、彼女らに近づくと紅白の方がこちらをバッと振り向いて何かを投げてきた。
「なっーーー」
頬を通り過ぎていくそれを確認する暇すら与えずに、その子はこちらに追撃を加えに突っ込んできた。
お祓い棒らしきものを俺の身体に叩き込もうとする彼女の攻撃を潜り抜けて、陰に入り込む。
息をついたその子はこちらに質問を投げかける
「……あんた何者?」
「開口一番がそれかい?」
「それ以外に興味はないもの。名前、教えなさいよ」
「随分な物言いだな…、いいよ。教えてあげよう俺の名前は神馬だ。」
「ふーん、人間みたいね。あんた」
「見ての通り人間だろう?」
そう言うと紅白は不快そうな顔をして
「人間はそんなに妖気を発しないわよ。…………早く本当の姿を見せなさい。」
と言い放った。
この子は何を言ってるんだ?俺は人間のままのはずだ…種族が変わったりなんて……
「あーーもう、黙りを決め込む気?ならさっさと消すわよ」
そう言うと、紅白の周囲が淡く光を放ち…幾つもの光の玉を作り出した。
紅白がこちらに手を向けたとき、その玉はいっせいに俺に襲いかかってくる。
影から出れば日光にやられるし、でなければあの光の玉にやられる…!
「くそ…こんなことになるなら……!!」
変な気をおこすんじゃなかった…!
どうすれば切り抜けれられるのか分からなかった俺はとにかく上に跳躍して躱す…………が、そんな簡単なことではなかった。
玉は曲がり、俺の真下から俺に向かってきたのだ。
「あ……やばい」
思わずそんな声が漏れた。
これは完全にに直撃する……!!
「ねぇ、なんのつもり?」
俺は地面にいた。それも無傷で
傍には先代が立っていたので、つまりはそういうことだろう。
「この人は人間よ。」
「今の動きを見てなかったの?!そいつは間違いなく妖怪じゃない!」
「……霊夢!!今日は帰りなさい。」
先代がそう一喝すると、紅白……霊夢と言われた少女は唇を噛み
「あんた……命拾いしたわね。」
とこちらを睨み飛び去って行った。
「……大丈夫?」
先代のその問いに俺は
「助かったよ」
と、答えた。
日はとっくに沈もうとしていた。
続くよ