数日後、俺は夜の集落を周り人間を探していた。
理由は単純な話で、あの後紅魔館に戻った後吸血鬼に言いつけを守らなかった罰として人を3人捉えてこいと言われたからだ。
集落の中を歩き出して数時間程だろうか…やはり人間の姿は見当たらない。
家の中には居るのだろうが、それを襲うのは流石に許されない。
できることなら外にいる連中で済ませたいのだが…
なんて事を考えながら歩いていると、向かいから灯りが見えた。
間違いない、誰かいる。
そう思った俺は、真っ先にそちらへと向かった。
そこに居たのは、紫のドレスを着た女性だった。
その女性の髪は金色でいて、灯りによって更に輝いて見えた。
「あら、こんな時間にここに居るなんて…貴方は何者?」
「何でもないですよ。少し夜風に当たりたくて」
「へぇ……嘘が下手なのね。ここの住人は夜に出歩いたりなんかはしないのよ?外来人の人間でもね。」
「…………!」
すぐさま距離を離す… この女性は何か怪しい。
近づきすぎるのは危険だ。できるならここからいち早く逃げ出した方がいいかもしれない。
なぜなら……この人のさっきの言葉で吸血鬼と初めて会った時の感覚を思い出したのだ。
いや、吸血鬼よりも強かったかもしれない。
「ふぅん…その身のこなしは……」
「……それでは、俺は…」
全力で逃げ出す。
戦略的撤退とかそう言うものではない。
ただただ逃げるのだ。
彼女には恐らく何をやっても有効打にはならないし、この逃亡という選択すら意味があるのかは分からないが、それでも興味が無くなってくれれば安全に行動出来る。
「もう……どこ行くのよ」
前方から先程の声がした。首を上げて確認すると、そこには彼女が佇んでいたのだ。
「へっ…………?えぇ?」
驚きのあまり素っ頓狂な声が出てしまった。
それを聞いた女性はくすくすと笑って
「驚くのは無理ないわ。でも……レディの質問の最中に走り出すとはどういう了見かしら?」
レディ?それは無茶だろ…と思ったが、口にするのは控える。
とりあえず今はこの状況をなんとかしなければ……
「………………なんの話しですか?」
「しらばっくれる気?まぁいいわ。貴方、どうやら何かに巻き込まれてるみたいだけど…どうしてかしら?」
「答える義務はあるか?」
「少なくとも首を取られたくなければ…………答えた方が身のためなんじゃない?」
「…近くの……湖の方の館から来ている」
「湖……?あぁ、あの館ね。それで……今は何を探してたのかしら」
「主の食事さ、それを提供することで俺は生き長らえることができる」
「へぇ…それなら……」
すると女性は指をスっと動かして空間を開いた。
中からは人間が数人、気絶した状態で落ちてきたのだ。
「なっ……これは」
「ここの里の人間はあまり減らしたくないもの、今回はそれで我慢してくれるかしら?」
「あ…あぁ、わかった。」
なんていう離れ業だ。
理屈すら分からない芸当を見せられて、俺は言葉を失った。
「それじゃあ、私はこの辺で失礼するわね。」
「え?……あ、気をつけて」
「気遣いありがとう。それじゃあね、神馬さん。」
そう言うと、その人は俺の目の前から消えた。
文字通り消えたのだ。
「な、なんだったんだ今の………とりあえずこいつらを運ぶか」
里の人間じゃないってことは、恐らく俺と同じ外から連れてこられたのだろうな…
等と思いながら、俺は地面にころがった複数人を運び出すのだった……
……こうして。俺は知らず知らずのうちに幻想郷の賢者の一人と接触をとる事になったのだった。
ほんとにお待たせしちゃいました。
続きます