「先代、少しいいか?」
昼間、道場での訓練が一通り終わった頃に俺は先代に話しかけた。
「どうしたんだ?」
「いや、ここの連中の一部には良く空を飛んで回る連中がいるなと思ってな。どうやったら飛べるかが気になったんだ」
「ほう、空を飛びたいのか?」
「そうなるな…だが、空を飛ぶっていうのはどうすればいいんだ?」
先代は困った顔をしながら
「そうは言ってもな…私自身もう飛べないから上手く説明してやれないんだよ」
もう空を飛べない……?
疑問の表情を浮かべていると、先代は続けて
「巫女の力を失ったからだよ。私は博麗の加護で空を飛んでいたんだ。」
「加護……?ということは…」
「人の力だけで空を飛ぶのはほぼ不可能だろうな。霊力の流れをどれだけ上手くしても……できて数センチ浮かぶ程度だ。」
そう言われて、俺は納得する。少し楽になればなー程度で考えていたので、飛べないと断言されてしまっても、そこまで落ち込んだりはしなかった。
「あ。」
そういえばあるじゃないか。人外の力が。
「吸血鬼の血が俺には流れていたじゃないか……先代、この力は使えないのか?」
「使うのは構わないけど……多分それを媒体にするとまた霊夢達に狙われる可能性があるわよ?」
あの女のことか……確かにそれは面倒だが…
「多少なら大丈夫だろ。それに敵意がなければ襲われないはずだ」
「そうかしら……」
と少し悩んだ様子だったのだがすぐに晴れた表情になり
「そうよね。あの子は優しい子だもの。」
と、そう言って気持ちを切り替えた。
「それで?肝心の方法はどうするんだ?」
「それは…実際に飛べばわかるわ」
それから、俺は彼女にリードされながら空を飛ぶ練習を続けた。
と言っても、まだ宙にとどまることすらできていない。
「一日二日でできるものでもないわ。根気強く行きましょう」
「……そうだな…そうするよ…」
集中しすぎたか……かなり参ってしまった。
とにかくは仕事に向かおう……そう、思い俺は道場を後にする。
おぼつかない足取りで、俺はそこへと向かうのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「へぇ、空を飛ぶ練習中なのか」
「あぁ、だがコツが全く掴めなくてな…どうすればいいのか」
「私から教えられることもないからなぁ……」
どうやら空を飛ぶ方法も人それぞれらしく、他者に聞いたところで大した解決法にはならないらしい。
……楽な道を進んで行くのは無理……か。
「まぁ、地道に頑張っていくよ。」
「それがいいぜ…じゃあ頑張れよ」
「あぁ。」
と、そこで空気が凍った。
そこまでの緊迫感を生み出したのは……間違いなく…
「なんだ、やっぱり妖怪だったの。」
紅白の巫女。その本人であった。
次回、博麗戦
お楽しみに