藤丸立香は魔法が使えない   作:椎名@大体pixivにいる

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 かの有名な組分け帽子を手に立香はしくしくと己の胃が泣くのを感じていた。大広間にある全ての視線が立香の背へと集結しているのだ。なぜならば、急遽飛び込みの立香こそが最後に組分ける新入生だからだ。

 異国の子供で、制服すら着ていなくて、名前にも聞き覚えがない。藤丸立香はおそらく本日この場でハリー・ポッターの次に子供達の興味の的だった。

 椅子に座り、継ぎ接ぎだらけの魔法の帽子を被る。

 

 

「ふむ、ふぅむ……君はずいぶんと、複雑な事情が絡むようだね」

 

「たぶん……はい、そうだと思います」

 

「勇気がある。優しさもある。とても愛されている。これほどの加護は愛に他ならない。あと、ほんのちょっとの呪いもある。──うむ、ならば、君にはこの寮が相応しかろう」

 

 

 そして組分け帽子は告げる。────ハッフルパフと。

 

 

「えっ」

 

「え!?」

 

「あれ?」

 

 

 グリフィンドール席に座るハリーのきょとんとした顔。その隣のロンの絶句。残念そうなハーマイオニー。鼻で嗤うマルフォイ。

 千差万別の反応の中、誰よりも信じられないと叫び出したいのは立香だった。ここまできたら、当然主人公(ハリー)と同じ寮だと思っていたのに──

 

 あ、あれーーーー!!?

 

 放心状態のまま、ハッフルパフの監督生に連れられ寮へと案内される。幸運なことに、人数の関係から一人部屋を宛がわれた立香は、早速電源オフ状態の通信機を取り出した。

 考えることがいっぱいだ。疲れたし、今すぐにだって寝たい。ベッドへ逃げてしまいたい。目をつむって、明日の自分に全てを任せて、今日の自分を放棄したい。

 でも、それじゃあ駄目なんだ。きっと、みんな、がんばってるから。

 記憶を絞り出す。通信機を媒介に、有事の為にとキャスターサーヴァントから何度も叩き込まれた魔法陣を床に描く。

 

 

 

 ──素に、銀と鉄

 

 礎に石と契約の大公

 

 祖に我が大師────

 

 

 

「────ソロモン」

 

 

 

 降り立つ風には壁を

 

 四方の門は閉じ 王冠より出で 王国に至る三叉路は循環せよ

 

 閉じよ(みたせ)──閉じよ(みたせ)──閉じよ(みたせ)──閉じよ(みたせ)──閉じよ(みたせ)

 

 繰り返すつどに五度 ただ満たされる刻を破却する

 

 

 ──告げる

 

 

 汝の身は我が下に

 

 我が命運は汝の剣に

 

 聖杯の寄るべに従い

 

 この意この理に従うならば、応えよ

 

 

「誓いを此処に」

 

 

 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者

 

 汝、三大の言霊を纏う七天

 

 抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ──────!

 

 

 

 

 陣が煌々と輝く。とうに下りた夜の帳を裂いて、風が吹き荒れる。魔力が令呪を通して渦巻いていく。──そして。

 

 

 

 

 

「サーヴァント、キャスター。名をマーリン。人呼んで花の魔術師さ。気さくにマーリンさんと呼んでくれ。堅苦しいのは苦手なんだ」

 

 

 

 

 

「────」

 

 

 

 花の香りが。鮮やかな白が。柔らかな花弁が。よく知る魔力が──満ちる。

 

 そして、立香は漸く出逢えたサーヴァントに向かって、堪らず声をあげた。

 

 

 

 

 

「────チェンジで!!!!」

 

 

「どうしてだい!? マイロード!?」

 

 

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