サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

10 / 18
追跡、激突、マグマ団!

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンセンターでポケモン達に治療を受けさせている間、僕とハンサムさん、ダイゴさんとトウキさんの四人で得られた情報の共有を行った。

 

 マグマ団とアクア団はいずれも『メガストーン』なるものを探しており、トレーナーを襲っていた事。彼らが求める『メガストーン』は、どうやら『いしのどうくつ』の壁画で描かれていた二体の超古代ポケモン『グラードン』と『カイオーガ』に関連がある可能性が高い事。

 このメガストーンに関してはダイゴさんがかなり詳しいようで、色々と説明してくれた。ポケモンの限界を越えた進化、『メガシンカ』を行う為に必要なアイテムであり、実際にトレーナーとポケモンで使われるようになった発祥はカロス地方。使用するにはトレーナーが『キーストーン』を所持し、対応する『メガストーン』をポケモンが持った状態で、更にトレーナーとポケモンが強い絆で結ばれている事が必要との事。

 彼もメガストーンが二体の超古代ポケモンと関係しているという話は聞いたことが無いと言っていたが、未だ謎の多いメガストーンにそういった可能性は無いとも言い切るのも難しいらしい。

 

「何にせよ、二体の超古代ポケモンはボクも文献で知っているだけだけど、人間がコントロール出来るようなポケモンでは無いからね。彼らがその復活を目的としているのなら絶対に止めなければならない」

「オレもホウエンのジムリーダーの一人として、指咥えたまま見てる訳にはいかないな。オレのジム、ジムトレーナーに留守を任せてたから、そっちに奴らの情報が来てるかもしれん。ちょっと様子見に行かないか」

 

 トウキさんのその提案で、治療を終えたポケモン達を受け取った後にムロタウンジムへと向かうことに。

 

 ムロタウンジムに到着し、中に入ると早速おかしなものが目に入った。縄でぐるぐる巻きに縛られた、青と白のボーダーのシャツを着た二人の男だ。その顔には見覚えがあり、彼らは此方を見ると顔を青ざめさせてガタガタと震え出す。

 

「ひっ………異様に強いガキ……!?」

「や、やめっ……もう何もしませんから……」

 

「キミ、何したの?」

「い、いえ。僕が相手にした時は割りと余裕そうにしてたと思うんですけど……」

 

 ダイゴさんが不思議そうな表情で僕を見てくるが、僕の方が困惑している。

 彼らは僕がいしのどうくつで戦ったアクア団員の二人だ。あの時の彼等は、逃げる時も僕とサメまるを恐れているような様子は微塵も見せなかった。なのに今の彼等は僕を前にして、何故かアーボに睨まれたニョロモのようになっている。

 

「あっ、トウキさんお帰りなさい!」

「押忍! トウキさんお帰りなさいッス!」

 

 ガクガクと震える二人を四人で眺めていると、ジムの奥からジムトレーナーが何人か現れた。その手には荒縄やらトンカチやら物騒なものが握られている。

 

「あ、うん……ただいま?」

 

「「オッス!!」」

 

「ええと、まずこの状況はどういう事なのか、説明してくれない?」

 

 若干頬を引きつらせながらもトウキさんがそう聞くと、荒縄を手にしたカラテおうの格好をしたトレーナーが前に出る。

 

「押忍! 俺から説明させて頂きやす!」

「手短に頼むよ」

「押忍ッ! コイツらはコソコソとムロから逃げ出そうとしていたアクア団っス! 逃がすわけには行かないと、我々ジムトレーナー一同で捕縛し、情報を抜き出した次第であります!」

「あぁ、なるほど。だから俺たちの事を怖がってた訳だ」

 

「ひ、ヒィッ」

「許してください許してください」

 

 笑顔のバトルガールがトンカチを「スッ……」と持ち上げると、二人のアクア団員は青ざめさせた顔を更に白くさせて内股になり、泣きわめき始めた。彼等から情報を抜き出すのに、どんな方法を取ったのかは聞くまでもないだろう。

 

「まあでも肉体に直接危害は与えてないですよ」

「当たり前だろう、全く」

 

 溜め息をつくトウキさんに、「やりました」と言わんばかりの笑顔でトンカチを構えたバトルガール。

 だが、予想外の収穫。僕が逃がしてしまったアクア団が此方で捕まっていたとは僥倖だった。

 

「どうやらコイツらは『メガストーン』を集めて『あいいろのたま』とか言うものを作ろうとしているみたいですよ。『メガストーン』がそんなものに変化するなんて眉唾ですけど、コイツらのリーダーは本気でそれを信じてるみたいです」

 

 彼女の話を聞き、トウキさんは首を傾げた。

 

「『あいいろのたま』……? ダイゴ、知ってるか?」

「あぁ知ってるよ。遥か昔、荒れ狂うグラードンを鎮めるのに使われたって言う宝玉の事だろう?」

「鎮めるのに使った? それじゃあコイツらの目的はグラードンを鎮める事だって言うのかよ」

「いや、超古代ポケモンの封印は今も完璧だとミクリから聞いている。彼も『ルネの民』の一人だ。情報に間違いは無いだろう」

 

 何やら難しい事を話し始めた二人の話についていけなくなり隣のハンサムさんを見ると、彼もまた何を話しているのかよくわからなくなったようで首を傾げながら此方と視線を合わせてきた。そんな僕らの様子に気が付いたのか、ダイゴさんはトウキさんとの話を切り上げて此方へと振り返る。

 

「おっとすまない、二人を置いてけぼりにしてしまったね。兎に角、奴らがロクでもない事をやろうとしているのは間違いなさそうだ」

「詳しい話はよくわからないですが……カントーで言う『ファイヤー』や『フリーザー』のような伝説のポケモンを使って悪いことをしようとしてる、と?」

「いいや、それよりもずっと悪い。超古代ポケモンの力は世界全体に影響を及ぼしかねない。場合によっては世界が滅ぶ可能性さえある」

「世界が、滅ぶ……!?」

 

 あまりの規模の大きさに驚愕する。

 『伝説のポケモン』と呼ばれるポケモンの能力は通常のポケモンを遥かに凌駕し、『神』の如き圧倒的な強さを持つと言われている。しかしカントーにおける伝説のポケモン、『ファイヤー』『サンダー』『フリーザー』はチャンピオン『レッド』によっていずれも捕獲され、その三体のポケモンすらも凌駕するというロケット団に作られた人工のポケモン『ミュウツー』もまた、『レッド』によって捕獲された。

 いずれも周囲の環境や人間生活に実害をもたらした事によって『レッド』の標的とされた訳だが、こうした『実例』が出来てしまった事で『伝説のポケモン』に対する世間のイメージは急落した。

 

 確かにレッドは強い。今までに類を見ない、向かうところ敵無しの最強のポケモントレーナーだ。だが、そんなレッドもまた、人間なのである。

 

 伝説のポケモンは、人間によってコントロール出来る。

 

 レッドが伝説のポケモンを捕獲したと言うニュースは連日報道され、人々の間にはそんなイメージが植え付けられてしまった。

 かく言う僕も、そんなイメージを真に受けてしまっていた一人である。『コントロール出来る』というのは若干ニュアンスが変わるが、伝説と言えど同じポケモン。心を通わせる事が出来れば、通常のポケモンと同様に共存していられるのではないかと、そう思っていた。

 

「他のアクア団やマグマ団については知っているか?」

「私たちが捕まえたのはコイツらだけです。アクア団は水ポケモンに乗って逃げられちゃいました。マグマ団の方は見ていないので、おそらくはまだ洞窟の中かと思います」

「成る程。ありがとう、だいたいわかったよ。ハンサムさんはここで待っていてくれ。トウキ、カナタ君、もう一度『いしのどうくつ』に行こうと思うけど、手を貸してくれるよね?」

 

「言われなくても行くに決まってるだろ!」

「は、はいっ!」

 

 パン!と力強く手を叩き、トウキさんはジムの受付の裏からボールを二つ取り出した。今度は先程までのように『ジムバトル用』の手加減したポケモンではなく、本気の手持ちで行くようだ。

 僕は正直二人の助けになれるとは思わなかったが、微力でも役に立てるのならと思い返事をする。それに、あの錆びたココドラがどうなったのかも気になっていた。

 

「カナタ君、二人が居るから大丈夫だとは思うが、くれぐれも気を付けてくれよ」

「わかりました。ハンサムさんもムロをお願いします」

「ああ、これでも国際警察の端くれだからね。任せなさい」

 

 ムロタウンジムのバトルガールの情報を元に、三人はムロを出発して再び『いしのどうくつ』へと向かった。

 トウキさんは趣味のサーフィンをする傍ら、いつもこの洞窟で修行をしているそうで先程とは別のルートがある事を教えてくれた。洞窟の中でもギリギリ人が登れる程度の急な斜面になっている所。そこをよじ登って行くのだと言う。

 

「本当は『マッハじてんしゃ』があると楽みたいなんだけど。アレって高いし、あと事故したときの怪我は馬鹿にならないしね……」

 

 先にトウキさんが登り始め、その後をダイゴさん、僕と続く。素人でも確かに登れない事は無いが、大変な事に変わりは無い。こんな所を本当にあのマグマ団とかいう奴らは登っていったのかと疑問に感じたが、その疑問は直後に聞こえた音によってすぐさまかき消された。

 

「ボルルゥガァァァ!」

 

「この鳴き声は……!」

「ボスゴドラだ! しかし普段は地中奥深くに居るはずのポケモン。やはりマグマ団が居るのか?」

 

 斜面を登りきったと同時に起きた地響きと、洞窟の奥から聞こえてくるくぐもった鳴き声。

 ボスゴドラは凶暴な見た目に反して非常に大人しく、穏やかな性質のポケモンだ。生息値は自然豊かな山や、鉱物の多く取れる洞窟の中。山が荒れれば余所から土や木を運んできて元のように治すなどとその知性も高く、反面自分達の生息域を荒らす者には容赦なく襲い掛かる。

 おそらくマグマ団が洞窟の奥で、彼等の住み処を荒らすような事をしでかしたのだろう。地下ではボスゴドラが怒りの限りに暴れまわっているに違いない。

 

「このままじゃ洞窟が崩れてしまう。急ごう!」

 

 深刻そうな表情になったダイゴさんが洞窟奥へと走り出し、それを追って僕たちも走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ズバット、『ちょうおんぱ』!」

「マグマッグ、『ひのこ』だ!」

「ポチエナ、『なきごえ』よ!」

「コータスっ、『オーバーヒート』!」

 

「ゴァ、ガァルルルゥ……」

 

 辿り着いた時には、既に決着がつく寸前だった。

 いくらボスゴドラと言えど数の暴力には勝てなかったのか、沢山のマグマ団とポケモンに囲まれて集中攻撃を受け、ボスゴドラの鳴き声は段々と弱くなっていく。明らかな憎悪をその瞳に宿し、ボスゴドラが見つめる先には沢山の捕らえられたポケモンとその前に立つマグマ団員。

 

「みんな! まずはボスゴドラを助けるよ!」

 

「げっ、あのトレーナーここまで来やがった!」

「ジムリーダーまで一緒だぞ!」

「一人だけ弱そうなガキが居るな……」

 

 険しい表情になったダイゴさんがボールを投げると、その中から『プテラ』が現れた。復元装置によって『ひみつのコハク』から復元された古代のポケモン。そのポケモンの首には、綺麗な宝石があしらわれた首輪が付けられていた。

 ダイゴさんがプテラと一瞬視線を交わした次の瞬間、彼の胸ポケットに差されていたペン、その端に付けられていた宝石が輝き始め、呼応するようにプテラの首輪の宝石も輝きを放つ。あまりの眩しさに腕で目を覆い、次にプテラを見た時にはプテラの姿は大きく変化していた。

 

「ギャシャシャァーーッ!」

 

 鱗の一部が変化し、より岩ポケモンらしく、全身に石のプロテクターを纏ったような姿へと変化したプテラ。

 その羽ばたきだけでマグマ団のポケモン達は半分近くが吹き飛ばされ、戦意を喪失してしまう。

 

 初めて見た。

 これが『メガシンカ』。

 

「っ、あのスカした野郎『メガストーン』を持ってやがった!」

「奴を倒せばメガストーンが手に入るぞ! やれ、やれぇ!」

 

 メガシンカしたプテラを目にしても尚、戦意を喪失しなかったマグマ団員達だけが標的をボスゴドラからダイゴさんのプテラへと変えて襲い掛かった。

 

「カナタ君、オレ達は今のうちに捕らえられているポケモンを助けるよ!」

「はい、トウキさん!」

 

 トウキさんは『ハリテヤマ』と『チャーレム』を、僕は『サメまる』を繰り出して、捕らえたポケモンの守りについているマグマ団員達へと突撃する。ボスゴドラとの戦いで消耗していたのか、動けるポケモンを持っていたマグマ団員は少なく、四人のマグマ団員がポケモンを繰り出して応戦してきた。

 

「ハリテヤマ『つっぱり』! チャーレム『とびひざげり』!」

「サメまる、『りゅうのいぶき』!」

 

 本気のトウキさんのポケモン、『ハリテヤマ』と『チャーレム』が先陣を切って戦い、サメまるは二体を全力で戦わせる為に後方からの補助に徹する事に。

 ハリテヤマのつっぱりがマグマ団のグラエナを一撃で鎮め、チャーレムはゴルバットを地面に叩き落とす。横からチャーレムへと襲い掛かろうとしたマグカルゴをサメまるのりゅうのいぶきが襲い、大したダメージこそ入らなかったもののマグカルゴは痙攣を起こして横転してしまう。

 

「お、俺たちのポケモンが!」

「そんな、起きてマグカルゴ!」

 

「ナイスアシストだカナタ君!」

「まだ来ます、トウキさん!」

 

 唯一『マタドガス』のみが攻撃の間を縫って突破してきて、こちら側で一番弱いサメまるを狙ってくる。

 

「わかってるって、ハリテヤマ『きつけ』でマグカルゴにとどめ! チャーレム、『ねんりき』でマタドガスを足止めするんだ!」

「ハッフォ!」

「チャアッ、コココッ!」

 

 『きつけ』は麻痺状態のポケモンに大ダメージを与える技。『りゅうのいぶき』によって麻痺状態になっていたマグカルゴがハリテヤマのその一撃を耐えられる筈も無く、マグカルゴは派手に地面を転がっていき、主である女性のマグマ団員の前で気絶する。

 

「ま、マグカルゴ……」

 

 気絶したマグカルゴ。普通のトレーナーならば熱くて触る事すら躊躇うその身体を、彼女は涙を流しながら抱き締める。

 

 僕はそんな姿を見て、理解が出来なかった。

 彼等の後ろで縛られているのは、皆傷つき弱ったポケモンばかり。『メガストーン』を手に入れる為とはいえ、ポケモンをこうも傷つけられるのに、どうしてそんなにポケモンを大切に思える。

 野生のココドラやクチート、ヤミラミ達を傷付けた時、罪悪感は無かったのだろうか。彼等の目的とは、そうまでして達成したい程に崇高なものなのだろうか。

 

「マッタ、ドガァ~」

「ココッ、チェアッ!?」

 

 そんな事を考えている内に、マタドガスを足止めしようとしたチャーレムに向けてマタドガスは『スモッグ』を吐き出して妨害。尚もサメまるに向かって突き進んでくる。

 

「来るか。サメまる、迎え撃つよ!」

「フカァ!」

「『アイアンヘッド』!」

 

「マタドガス、『ヘドロこうげき』!」

「マッタァァ~」

 

 『ヘドロこうげき』を仕掛けてきたマタドガスに対して、サメまるに『アイアンヘッド』を命令。一時的に『はがねタイプ』の特性を得た頭部で攻撃から身を守ると同時に、マタドガスに直接攻撃を仕掛けた。

 

「くっ、意外にやるな。『ヘドロばくだん』!」

「マタドガァ!」

 

 マタドガスの身体はサメまるの攻撃を受けて一瞬ぐらりと傾くも、すぐに体勢を立て直して『ヘドロばくだん』を放ってくる。流石にサメまるの『アイアンヘッド』でもこれを防ぎきる事は出来ない。

 

「『りゅうのいぶき』で相殺!」

「フガシャァァ!」

 

 ヘドロの塊に竜のエネルギーが直撃し爆発を起こす。それでもマタドガスの勢いは落ちず、煙を振り払いながらサメまるへと襲い掛かる。

 

「マタドガス! 『ギガインパクト』ぉ!」

「マタッ、ドガガガガァァ!」

 

「んなっ!? 『すなじごく』で撹乱して回避!」

「フカ!? フ、フカァ!」

 

 ノーマルタイプ最強格の技がマタドガスから放たれる。サメまるに咄嗟に『すなじごく』を使用しての回避を命令するが、目眩ましとして出したはずの『すなじごく』は『ギガインパクト』による風圧によって瞬時に消し飛ばされてしまう。

 

「不味い! カナタ君避けろ!」

 

 予想外のマタドガスの強さにハリテヤマとチャーレムの対応も追い付かず、サメまるにマタドガスの巨体が迫る。再びの『げきりん』もやむなしかと思われたその直後、見覚えのある影が僕の背後から飛び出してサメまるの前へと躍り出た。

 

「ココッ!」

「ドガァァッッス!」

 

 全身が錆びたココドラが、マタドガスのギガインパクトを真っ向から受け止めていた。

 

 

 

ヒロインって要る?

  • カガリ
  • ヒガナ
  • ルチア
  • ダ イ ゴ さ ん
  • (いら)ないです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。