サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

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カナタとココドラ

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボグァ……」

「ココッ!」

 

 ボスゴドラが目を覚ますとすぐにココドラは彼に飛び付いた。

 ボスゴドラは「心配をかけてしまい申し訳無い」とでも言うように頭を下げて弱々しく鳴き、ココドラは目に涙を滲ませながらボスゴドラの頭の上に手を乗せる。大きな弟が小さな兄に叱られているような、暖かいその光景に思わず見ていた僕の顔もほころぶ。

 

「多分、彼等二匹がこの洞窟の主なんだね。ココドラでも強かった兄が、弟に進化の権利を譲ってあげたって所かな?」

「……いえ、多分それだけじゃないはずです」

 

 ダイゴさんの言葉に、僕は目をつむりながら首を横に振って答えた。

 ココドラにとってボスゴドラは大切で、心配で、彼にとってはいつまでも守るべき存在で。何より、

 

「ずっと、仲良しで居たかったんじゃないかなぁ、って」

「………成る程、一理あるね」

 

 互いに顔をすりあてて、涙を流しながら喜ぶ二匹を見て、僕とダイゴさんは顔を見合わせて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、僕たちは帰るよ。またね、ココドラ」

「ボクも、そろそろ趣味に戻るとするかな」

 

 どんな結果になるとはわからない。どれだけココドラの命がもつのかも、果たしてココドラが進化を耐え続けていられるのかも、僕にはわからない。

 でも、彼の中で明確な答えが出ないのなら、今はそっとしておくべきだと思った。

 

「ココ」

「ボルゥガァ」

 

 荷物を纏めて、来た道へと立って彼等に手を振る。二匹は並んで立って此方を眺め、小さく鳴いた。

 

 振り返り、晴れやかな気持ちで彼等を背にして歩き出す。マグマ団には逃げられてしまったが、この洞窟のポケモン達を助けることが出来て良かった。

 

「ボグルルゥァ?」

「ココ、ココ」

「ボガァ、グルルゥゥ」

「ココ……」

 

 後ろから彼等の話す声が聞こえてくる。何を話しているのだろうか。ポケモンの仕草を見ながらじゃないと、どんなことを考えているのかわからない僕には、彼等が何を考えて話しているのか、声だけではわからない。

 

「今日はお疲れ様。もう時間も遅いだろうからね、ムロに帰ったら夕食を奢ってあげるよ」

「えっ、良いんですか!?」

「もちろんさ。キミがいなければボスゴドラは助かってなかっただろうしね。ご褒美だよ」

「ダイゴさん……ありがとうございます」

 

 もう時間は夜の10時を過ぎた頃じゃないだろうか。もう随分と遅い時間だ。ポケモンセンターは24時間開いているとはいえ、泊まる部屋は残っているだろうか。

 

「ボルァ、ゴガァ!」

「ココ?」

「グルルゥ、ボガ、ボルァ!」

「…………ココ!」

 

 不意に、背後から土を蹴る音がした。

 次の瞬間、背負っていたリュックがぐっと重くなり、僕はバランスを崩しそうになる。

 

「わっ!? な、何!?」

「おや? ………ふふっ、成る程」

 

 後ろにひっくり返りそうになった僕の方を見て、ダイゴさんは嬉しそうに笑った。何事かと首を後ろに向けると、頬がサビ臭い何かに当たる。

 

「ココ」

「えっ、ココドラ……?」

「コォコ」

「でも君、ボスゴドラは……」

 

 リュックを踏み台にして乗っかっていたココドラを持ち上げて、胸に抱く。後ろを振り返ると、沢山のポケモン達に囲まれたボスゴドラが此方を見て手を振っていた。

 ボスゴドラを囲むポケモン達。僕らがマグマ団から助けたポケモン達の目には、あの時のような憎しみの感情は無く、皆が声をあげて此方に手を振っている。

 

「……ココ」

「本当に、良いの?」

「ココォ」

 

 ココドラにそう聞くと、彼は静かに首を縦に振った。

 

 もう、ココドラがこの洞窟のポケモン達を守る必要は無いらしい。これからは、弟のボスゴドラが皆を守っていく。例えココドラがボスゴドラに進化したとしても、彼等兄弟が争うことは絶対に無いだろう。

 

「強くなったら、また帰ってこようね」

「コォコ」

 

 錆びだらけのココドラは、僕達の仲間になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう皆! 昨日は大変だったな!」

 

 次の日の朝。

 ムロタウンジムの居住スペース。そこの共有ラウンジに、トウキさんは皆を集めた。集まったのはトウキさん、ダイゴさん、ジムトレーナーの人達が四人と、ハンサムさん。そして僕。

 

「まったく、心配だったんだぞ。マグマ団達が一斉に逃げていったのに、君たちは全然戻ってこないんだから」

「あはは………ごめんなさい、ハンサムさん。でも、まあ終わりよければ全て良しって事で、ね? カナタ君も新しい仲間が増えたみたいだし!」

「むぐぐ、こう勢いで押されるとジムリーダー相手じゃ強く言えないなぁ。私もポケモンバトルを勉強し直した方が良いだろうか……」

 

 昨日はずっとムロタウンで待っていたハンサムさんは、僕たち三人の事をとても心配していたそうで、あんな事があったと言うのにあっけらかんとしているトウキさんにため息をついていた。流石の国際警察でも、ジムリーダー相手になると分が悪いらしい。

 ハンサムさんはハンサムさんで、あの後色々と活躍したそうだ。逃げ出してきたマグマ団のしたっぱを数人捕縛して、既に身柄を拘束していたアクア団のしたっぱ二人と共に国際警察の仲間に引き渡していたとか。戦えるポケモンを持っていない相手なら、敵じゃないという事だろうか。

 

「ココォ、コ、コ?」

「フカ、フカ、フーカ♪」

「コ、ココッ、コッ」

 

 少し離れた所で、サメまるがコロコロとした身体を揺らして踊っており、それに合わせてココドラもぎこちなくはあるが踊るような動きを見せている。ココドラの方がずっと年上らしいので心配だったのだが、サメまるともすぐに打ち解けてくれてひとまず安心した。

 

「元気になって良かったな」

 

 手のひらで虹色に光る謎の石を転がしながら、ぴかぴかに輝くココドラを眺める。この変な石はココドラの錆びた外殻を落としている時にココドラから渡されたものだ。『メガストーン』かと思ったが、ダイゴさんの持っている物とも若干違うので単に綺麗な石というだけだろう。ココドラとの思い出の品として宝物にしていくつもりだ。

 ココドラのサビは昨晩ずっと落とし続けて、今では殆ど無くなった。ダイゴさんが言っていた通りに古い外殻が積もって錆びていたようで、サビが取れた後は一回りか二回りぐらい小さくなったが、身体が軽くなったのか以前よりも軽快な動きを見せてくれた。若干取りきれなかったサビが今も残っているが、また後で磨き治す予定だ。

 

「さて……皆のおかげでムロは守られた! だから今日は休みだ!と、言いたいところだけど、残念ながらポケモンジムに休みは無いっ!」

「オッス!」

「悲しいですッ!」

「ブラックつらいです!」

 

 トウキさんがそう言ってビシッとサムズアップすると、ジムトレーナー達は叫びながら涙を流す。そんな彼等を見て、トウキさんは腕組みをして頷いた。

 

「うんうん。ポケモンジムは365日休まず営業だからね。常にチャレンジャーを受け入れる為にも休みは許されない! と、言うことで今日も僕らは平常運転で行く予定なんだけど、カナタ君はどうするかい?」

「えっ? いきなり………僕ですか?」

 

 突然の雑なフリに顔を上げて目を見開くと、トウキさんが両手を腰に当てて仁王立ちしていた。

 ポケモンジムは平常通りに営業していて、彼からジムチャレンジ中の僕に「これから何をするのか」という質問。遠回しではあるが、つまりそういう誘いだと言うことだろうか。

 

「でも、ダイゴさんは?」

「ボクかい? ボクはこれからまた洞窟に戻って『石集め』をする予定だよ。もうバッジは8個全部集めてあるからね。ジムチャレンジはしていないんだ」

「す、凄い……」

「フフフ。ボクって結構スゴいんだよね」

 

 同じトレーナーのダイゴさんは懐からバッジケースを取り出すと、ドヤ顔で全てのバッジが並べられたそれを見せてきた。凄く強いトレーナーだとは思っていたが、まさか本当にポケモンリーグへの挑戦権を持つレベルのトレーナーだったとは。失礼な事を聞いてしまった。

 

「しかし、躊躇ってるって事はキミ、もしかしてカナズミに行ってからムロに挑戦するルートの予定だったのかな?」

「………はい、そうです」

 

 トウキさんの質問に返事を返せないでいると、ダイゴさんに考えていた事を言い当てられてしまった。

 ここムロタウンのジムは、ホウエンで二番目に難易度の低いジムに設定されている。他の地方では挑戦しにきたトレーナーの強さに合わせて、使うポケモンを選んでいる所もあるようだが、ホウエンのジムは違う。ジムリーダーが沢山のポケモンを飼育する負担を減らすと言う目的もあるが、第一には挑戦するトレーナー達の成長を促すと言う目的がある。

 トレーナー達の強さに合わせる方法だと、弱いままに全てのバッジを集めきってしまうトレーナーが出る事が有り、ジムバッジの価値の低下やその地方のリーグのレベルの低下に繋がってしまう。そうした問題を防ぐために、ホウエンではあらかじめ強さを段階的に設定しておく事で挑戦するトレーナー達の強化を促しているのだ。

 僕はまだ一つもバッジを持っていない駆け出しのトレーナーなので、最初に挑戦するならば難易度が最も低いカナズミジムをと考えていた所だったのだが。

 

「えっ、バッジ、持ってないの?……ホントに?」

「はい、持ってないです。つい昨日キンセツから旅を始めて、ムロに到着したばかりだったので」

旅立ったばっかりであの強さだったってマジかよ………んー、いや、でも君の実力なら十分に俺のムロジムでも戦えると思うし、どうだい? バトルしていかないかい?」

 

 正直、僕とサメまるではまだムロジムに挑戦するのは早いかと思っていたのだが、トウキさんは「戦える」と言ってくれている。昨日一緒にマグマ団と戦った事で、買いかぶられているだけという可能性もあるが。

 

「サメまる、ココドラ、行ける?」

「フカ?」

「ココッコ!」

 

 サメまるは「よくわからないけど、良いんじゃない?」と言うように身体を傾け、ココドラはやる気に満ち溢れた目で力強く鳴いた。

 

 

 

 





・錆びだらけのココドラ

レベルはゲームで言うと40。弟であるボスゴドラを守りながら、ボスゴドラになって彼との縄張りが重なる事が無いように自ら進化を止めていた。進化を止める為に戦いも極力避け、身体の成長を抑える為に古い外殻を落とさずにいたせいで身体が錆び付いてしまっている。特別な才能こそ無いものの、長年の経験によって熟練した戦闘技術を持つ。持っていたメガストーンっぽい石は、食事の際に掘り当てたものの噛み砕く事が出来ず、不思議だったので宝物として持っていたものである。



・本編では扱う予定の無い主人公周りの裏設定

父はイッシュ、母はシンオウ出身。どちらもトレーナーでは無く、ポケモンの知識はあまり無い。父の仕事を期にホウエンへと引っ越してきて、そこでカナタが生まれた。その後、カナタが物心つく前に父はとある仕事での事故により死亡してしまっている。
当時カナタの父と接点のあったテッセンがその事故を未然に防げなかった事に責任を感じ、カナタの事を何かと気に掛けるように。カナタをジムの機械技師として弟子に取ったのはそうした理由もある。
また、テッセンはカナタがサメまると出会う前からカナタの夢を叶える為に、カナタをトレーナーにする事を考えていた。この時テッセンが旅の相棒として渡そうとしていたのは『メリープ』。メガデンリュウがドラゴンタイプである事を考えると、カナタはドラゴンタイプと縁があるのかもしれない。

ヒロインって要る?

  • カガリ
  • ヒガナ
  • ルチア
  • ダ イ ゴ さ ん
  • (いら)ないです
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