サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

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予兆

 

 

 

 

 

 

「良いバトルだったぜ。まさかバトル中に進化するとは思ってなかったけどな」

「はは………僕もまさかサメまるがあのタイミングで進化するとは」

「これだからポケモンバトルはやめられないのさ」

 

 バトルを終え、ボロボロになったフィールドの中心でトウキさんと向かい合う。

 手加減していたとは言えバトルに負けたと言うのにトウキさんの表情は穏やかで、ジムリーダーとしての余裕を感じさせる。

 

「さて、ジムバトルに勝利した君にはこれをあげないとな」

 

 そう言うと彼はポケットから黒いバッジケースを取り出した。開くと、中に入っていたのは水色にオレンジ色の宝石が一粒あしらわれたピカピカのバッジ。

 

「ムロジムを突破した証、『ナックルバッジ』だ。君にとっては初めてのバッジ。この瞬間、君は一流のトレーナーへの道を、一歩踏み出した」

 

 バッジがケースから取り出され、手渡される。

 掌の上のバッジを眺めていると、胸の奥がジーンと熱くなるのを感じた。

 

 本来ならばトレーナーにすらなれるはずが無かった自分が、トレーナーの中でも僅かな者しか手にすることが出来ないジムバッジを手にしている。少し前までは信じられなかったような事が、今起きている。

 

「さて、次に目指すのはカナズミジムだろ? バトルだけなら正直余裕だと思うけど……どうやってツツジちゃんに認めさせるか、楽しみにしてるぜ」

「期待を越えられるように、頑張ります」

「うんうん、その意気だぜ。今度バトルする時は、お互いに本気で、全力をぶつけ合おう」

 

 彼の右手が差し出される。

 僕もその手を取り、力強く握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「━━うん、それじゃあまたね」

 

 時刻は昼を少し過ぎた頃。

 ポケモンセンターの固定電話を借りて、キンセツの母やテッセンさん、ジムの仲間達にジムバッジを手に入れた報告を終えた僕の元に、ハンサムさんが歩み寄ってきた。

 

「やあ、家族への報告かい?」

「ええ、そんな所です。それより、何か用事ですか?」

「うん。実はムロでの例の『マグマ団』と『アクア団』についての調査の引き継ぎが終わったからね、また移動しようと思うんだ」

「移動? ハンサムさんは調査には参加しないんですか?」

「ははは………私はポケモンバトルが出来ないから、危険なものを相手にするかもしれない調査には向いてなくってね、こうして色んな所を飛び回って調査場所のアタリをつけるのが主な仕事なんだ」

 

 そう言って、彼は恥ずかしそうに笑いながら頬を指で掻いた。カイナの時の食事の時の様子と言い、特別ポケモンに疎いと言う事は無さそうだが、やはり人によって向き不向きがあると言うことなのだろうか。

 

「それで丁度、キミも向かうカナズミ方面に行こうと考えていてね。どうせムロからカナズミへの次の船までも時間があるだろうし、キミも一緒にどうかい?」

「えっ、良いんですか? ここに来るときも乗せて頂いたのに………」

「良いとも。『旅は道連れ世は情け』ってね。カイナからムロとは違って、向こうの海は穏やかな船旅になるだろうし、サメまる君達の休憩にも丁度良いんじゃあ無いかな?」

 

 彼の指先でボートのキーがくるくると回転する。何故か自信たっぷりな彼の様子から、僕がボートに乗るのは彼のなかでは確定事項らしい。

 

「わかりました、お願いします」

「うんうん、それで良いのさ。人に頼れる時はちゃんと頼っておかないと、その内折れてしまうからね」

 

 ジム戦が終わってからは、サメまるとココドラの治療で待っていて、まだ昼食は食べられていない。ポケモンセンターを出た後は近くにあった小さな商店に入り、ボートの上でも食べられそうな握り飯の弁当を二人分と、ポケモン向けにオレンの実を使ったスイーツを二つ購入して桟橋へと向かった。

 

「やぁ、ハンサムさん、カナタくん」

「あれ、ダイゴさん、石集めは………」

「フフフ………それがね、見てくれよコレ!」

 

 桟橋に到着すると、そこには何故かダイゴさんが居た。僕のジム戦が終わった後、すぐに洞窟に石集めに行った筈だったが、どうしてここに居るのだろうか。

 

「『メタグロスナイト』! あっと言う間に見つかったんだ! こんなに早く見つかるなんて、最早これは運命だよ!あぁ、なんて美しいんだ! ボクとメタグロスナイトは運命の赤い糸で結ばれていたんだね!」

「あ、あの……」

「アクアマリンの如く澄みきった蒼に浮かぶ金と銀! ジョウトの伝説ポケモン、『ホウオウ』と『ルギア』を想わせる結晶はメタグロスを伝説の存在へと昇華させる! 同じく内部に結晶を持つ石ならばルチルクォーツなんかもあるけれど、やはりメガストーンは自然のものとは思えないほどに完成された美しさがあるんだ! 勿論、ボクは綺麗に磨かれた宝石よりも、自然の姿そのままの石の方が好みなのだけれど………メガストーンは違う! こんなにも愛おしく想う石は他には━━━━!」

「あの、ダイゴさん!」

「━━━━はっ! …………失礼少し熱くなりすぎたみたいだね。そうそう、ここで君達を待ってた理由なんだけど」

 

 ダイゴさんが途中から暴走し始めたので大声を出して現実に引き戻す。彼はコホンと咳払いを一つすると、懐からポケナビを取り出した。

 

「はいコレ。君も出して」

「え? あ、はい………」

「うんうん、後はこうして……こう! これで連絡先が交換出来たね。ハイ、終わり!」

「えっ、終わりですか」

「うん、終わりだよ」

 

 呆気にとられている僕とハンサムさんを前に、ダイゴさんはニコニコ笑っている。

 

「つまり、連絡先を交換しに来た、だけ?」

「あっ、後はね」

「あっ、それだけじゃないんですね」

「キミ、ココドラから面白い石を貰ったでしょ」

「え………はい、貰いましたけど」

 

 リュックからココドラから貰った石を取り出す。石を保管するケースなんかは生憎持っていなかったので、今は小さな袋に入れて保管している。

 

「そうそう。それ何だけど、カナズミに着いたらデボンコーポレーションに行ってみてよ。ボクから来るように言われたって言ったら中に入れてくれるからさ」

「デボンコーポレーションにですか!? ダイゴさん凄いですね………あんな大企業とも繋がりがあるなんて」

「ふふん、キミが思っている以上に、ボクってスゴいんだよね」

 

 そう言って、彼は足元に置いていたツルハシを持ち上げると、僕たちに背を向けた。

 

「それじゃあ、ボクの用事はここまでだから、何かあったら連絡宜しくね!」

「あっ、さようなら! また何処かで!」

 

 ダイゴさんはツルハシを持って再び洞窟のある方向へと歩いていく。どうやら彼はまた石集めに行くらしい。

 

「さて、私達も行こうか」

「はい、宜しくお願いします」

 

 彼を見送った後、僕とハンサムさんもボートに乗り込んだ。エンジンが動き出し、ボートはムロを離れていく。

 

 それから、トウカの森近くの桟橋まで到着するまでの船路はポケモンが襲ってくる事もなく終始穏やかで、僕らは束の間の休息を過ごす事が出来た。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「若いっていいなぁ」

 

 トウカの森へとガバイトと共に走っていく少年の後ろ姿を眺めながら、ハンサムは独り言ちた。

 彼も若い頃はポケモントレーナーを目指して勉強していた事があったが、知識は兎も角ポケモンバトルの才能はからっきしで、トレーナーにはならなかった過去がある。もちろん、今からでもトレーナーになる事ならば可能なのだが、どうしても踏ん切りがつかなかった。

 昔は自分もあんな風に輝いていただろうか。今は国際警察となり、彼等のような一般市民を影ながら護る仕事をしているわけだが、エネルギーという点でやはりあれぐらいの年齢の子達には敵わない。

 

「さて、私も行こうかな」

 

 ハンサムは再びボートに乗り込んで、地図を開いた。

 マグマ団やアクア団の事はとりあえず置いておいて、彼の仕事は秘密裏に孵化厳選を行っているトレーナーの捜索と逮捕だ。カイナ周辺では見つからず、ムロ周辺では別の危険な団体が何やらやっていて、次はここ、トウカ周辺の海。

 

 ボートを走らせて沖へと向かう。

 ホウエンの海には小さな島々が点在しており、ハンサム達国際警察は、件のトレーナーがそうした島のいずれかに居ると踏んで捜索を行っていた。しかし探せど探せどトレーナーは見つからない。

 もしもそのトレーナーが本土に居たとしたら、大量のフカマルをボールに入れて海へ運ぶと言う行動で周りから見つからない筈が無い。大量のボールを運んでいる人間が、怪しまれない訳が無い。だからトレーナーは海の何処かに居ると考えられていたのだが━━

 

「見つからんなぁ」

 

 ポケモンと一緒に泳いでいる『かいぱんやろう』や『ビキニのおねえさん』等から情報収集もしていたが、目ぼしい情報は得られていなかった。

 

「ピョーッ! ピョーッ!」

 

「ん? なんだ………キャモメが」

 

 ふと、一羽のキャモメがハンサムの乗るボートへと近付いてきて、彼を呼ぶように大きな声で鳴きながらボートの上を旋回する。

 

「おーい! どうしたんだ! 何かあったのか!」

 

「ピョーッ! ピョーッ!」

 

 ハンサムの声に反応したキャモメは着いてきてとでも言うように彼の方を見ながら、ある方向へと飛び始める。ハンサムはそのキャモメの行動を不審に思いながらも、ボートを走らせてその後を追った。

 

 

 十数分ほど走り続けただろうか。

 小さな岩が海の中から覗いている部分に、沢山のキャモメが集まってピィピィと鳴いている。

 

「うっ、何だこの臭いは!」

 

 ゆっくりとボートで近付いたハンサムは、その異常な臭いに思わず鼻をつまんだ。まるで魚が腐ったような、ツンとした生臭い臭いだ。それがあの岩の近くから漂ってくる。

 ボートを動かして岩の裏側へとゆっくり移動し、ハンサムはそれを見付けた。臭いの漂ってくる原因を。

 

「何と言う……酷い………」

 

 そこにあったのは、ギャラドスの死骸だった。

 無惨にも胴体を何ヵ所も抉り取られて、その死骸は凄まじい腐臭を放っていた。

 

「食べる為に襲われた……という風ではなさそうだな」

 

 何者かに食べられたような痕は無い。そもそも、この海域においてギャラドスというポケモンは非常に珍しいポケモンだ。大抵は深海で過ごしており、浅瀬まで上ってくる事は滅多に無い。他に対抗できるポケモンといえば、『サメハダー』や『ドククラゲ』なんかが挙げられるが、それにしたってこれ程までに酷い死骸が出来上がるだろうか。

 

「……見つかるかもしれんな。応援を呼ばなければ」

 

 ハンサムは自身の肌が粟立つのを感じた。

 

 何かが居る。得体の知れない何かが。

 この広大なホウエンの海の何処かに。

 

 

 

 

 

ヒロインって要る?

  • カガリ
  • ヒガナ
  • ルチア
  • ダ イ ゴ さ ん
  • (いら)ないです
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