理由については活動報告にありますので、気になる方は其方に宜しくお願いします。
「あの男……何処に行ったんだ」
「フシャァ……」
カナズミシティ北東の道路、116番道路でマグマ団の男を追い掛け回していたカナタとサメまるだったが、予想以上の男の逃げ足に翻弄され、林で上手いこと撒かれてしまった。
「この辺りで逃げそうな場所って何処だろうな……」
「それならここから東にあるカナシダトンネルだな。周辺に住むゴニョニョ達への影響と落石とで工事が頓挫していてな、人も滅多に入らない」
「へっ、誰……?」
突然背後から声がしたので振り返ると、白衣の若い男がジバコイルを伴って立っていた。長身でかつ整った容姿。しかし折角の恵まれた容姿をぶち壊しにするかのように、アブソルみたいな独特な髪型をした白髪の男性だ。
服装と白衣についているロゴからデボンコーポレーションの研究員のようだが、多分彼もあのマグマ団の男を追って来たのだろう。
「あそこは人に見つかりにくい。隠れるならうってつけだろうな」
彼はそう言いながら草を掻き分けて僕に近付いてきて、頭の先から足の先までなめ回すようにじっくりと眺めてくる。
「………どう見ても主人公って感じじゃないよなぁ」
「あ、あの………僕に何か用でしょうか?」
彼はその言葉ではっとしたように此方と視線を合わせてきて、何処か慌てたように口を開いた。
「あぁ、いや、此方の不手際で奪われてしまったものを取り返しに行ってくれているトレーナーが居ると聞いてね。部外者の君に任せきりになるのも良くないから、ここから先は私に任せなさい」
「それは………いえ、僕も彼等とは戦った事があって彼等の事は知っていたので、目の前で取り逃がしてしまったのには僕にも責任があります。絶対にあの男は捕まえて見せますよ」
確か、この先にある『カナシダトンネル』とやらがあの男が隠れている可能性が高いと彼は言っていたか。
サメまるを伴ってそのカナシダトンネルとやらに行こうとすると、肩に手を置かれて引き留められる。
「ちょっ! ちょ、ちょっと、待ちなさい!」
「え、えぇ………なんですか」
「
「いえ、これは僕自身の問題でもあって━━」
その時、突然ピンと来た。
マグマ団の男が逃げ込みそうな場所を的確に示して教えてくれたのに、今度は何故か妙に慌てて僕にマグマ団の男の追跡をやめさせようとしてくる。
手持ちのポケモンもホウエンでは見たことの無いポケモンであるし、彼自身がマグマ団の一員、というようには思えない。と、言うことは━━
「━━もしかして、マグマ団に脅されているんですか?」
「えっ? へぁ?」
「貴方はマグマ団から荷物を取り返したい、しかし荷物を取り返すなら一人で来るように奴らから言われた、だから本来なら協力者となる僕を必死に返そうとしている!」
「いや、そんな事は━━」
「わかりました! でも大丈夫です。僕は隠れながら、気付かれないように奴らに接近して荷物を取り返して来ます!」
「えっ!ちょっ、待っ! えぇ……そんな馬鹿な」
そうと決まればすぐにでも出発だ。
サメまると視線を交わし、研究員の人を置いて山の方向に駆けていく。
山の麓に到着すると、彼が言っていた通りに洞窟の入り口が見えた。流石に入り口部分は人工の洞窟らしく、綺麗な円形に掘られている。
「ここか……」
「フシャァ」
「行こうサメまる。ここからは出来るだけ足音を立てないように、静かにね」
「シャッ」
洞窟の入り口から内部に何者か居ないか確認する。ざっと見たところだと、入口付近に人間の姿は無い。
「わ、ワシのピー子ちゃんが……」
ふと背後から弱々しい声がして振り返ると、よぼよぼのしょぼくれた老人が膝をついて、涙を流しながら洞窟の方を見ていた。彼の様子と口ぶりから察するに、その『ピー子ちゃん』というポケモンがマグマ団の男に奪われたと言う事だろうか。
「おじいさん!」
「ぅぇ………あ……?」
「僕にお任せ下さい」
膝をついて倒れるおじいさんに向かって、安心して貰えるようにサムズアップ。
元々隠密で近付いて、男を捕まえて荷物を取り戻す予定だったのだ。相手を無防備な状態にまで追い込んでから奪われたものを取り返すのだから、取り返す物とポケモンに増えても何ら変わらない。応戦されても逃げられる前に叩き潰すまで。
「ココドラ、キミにも頼んだ!」
「ココォッ!」
モンスターボールからココドラも繰り出して、二匹と一人で洞窟の中に侵入していく。元々洞窟暮らしのココドラならば、暗い洞窟の中を自由に動き回る事ぐらいお手の物のはず。その予想は当たったようで、ココドラは僅かな音や匂い、空気の流れを感じ取ったのか、僕らの先頭をずんずんと進んでいく。
そして、しばらく洞窟の中を進み続けて、その姿を発見した。マグマ団の赤い制服の後ろ姿。その傍にはヒモで縛られて捕らえられたキャモメが一匹居る。あれが恐らくおじいさんが言っていた『ピー子ちゃん』だろう。
「クソッ……いててて、あの技足にかすってやがった。うわ、服ちょっと溶けてるじゃねぇか……」
そんな独り言を言いながら、男はひっきりなしにキョロキョロと周囲を見渡して警戒している。どうやら此処には彼以外にマグマ団員の仲間は居ないらしい。
相手のバトルの腕がどれ程かわからない以上、簡単に手出しは出来ないが、チャンスである事は確実。理想は不意を突いて『荷物』と『ピー子ちゃん』を奪い返し、逃走する事。問題は周囲を警戒し続けている彼をどう出し抜くか、だ。
「(…………そうだ!)」
隠れながら何か使えるものは無いかと辺りを見渡していて、ふと一つ作戦を思い付く。正直半分ゴリ押しのようなものだが、正面から直接行くよりはずっとマシだ。
ひょいと人差し指を動かしてサメまるとココドラを傍に呼び、男に聞こえないように二匹に作戦の内容を伝える。そして、リュックから『ゴーゴーゴーグル』を取り出して、装着した。
◆◆◆◆
完全に失言だった。
知っているからと、ひょいと口からあんな一言が飛び出していなければ、彼はカナシダトンネルに直行なんてしなかっただろうに。何処かで多少の違いはあっても知っている通りになると、楽観していた自分が居たのかもしれない。
「くそぉ……何なんだあの子は。無駄に足も速いし完全に見失ってしまった」
「ジババババ……」
「ジュワワワ……」
「お前達まで落ち込むな。まぁ……それよりも、だ。一体どういう事なんだ、これは?」
デボンの研究員『ヘズ』は、盛大な勘違いを起こしながらマグマ団員を追いかけていってしまった少年の後を追っていたのだが、彼は予想外の事態に襲われてしまっていた。
「う、ぐぅ……強、い」
「あ、う、ぅぅ」
「マグマ団………こんなに居なかったハズ」
少年を追い掛けた彼の行く手を阻んだのは、まさかのマグマ団員達。彼が知る歴史ではこの場で登場したマグマ団員はたった一人だけだったはずが、どういう事か人数が増えている。
彼等もただのトレーナーである少年がマグマ団員を追っているとは思わなかったのか、彼を止めることは無かったが、デボンのロゴがついている白衣を来たヘズ相手にはそうは行かない。隠れていた彼等はカナシダトンネルに向かおうとした彼の行く手を阻み、襲い掛かって来たのだ。
流石にジムリーダー達にも匹敵する熟練のトレーナーであるヘズを止めることは叶わなかったが、少ないながらも時間稼ぎにはなった。現に彼は少年を完全に見失い、追っているマグマ団員に関してはまだ一度すら見ていない。
「ヘズさん!」
「先輩!」
ふと背後から知った声が聞こえ、倒したマグマ団員をジバコイルとクワガノンに捕らえさせて振り返ると、後輩のデボン研究員とカナズミシティジムリーダーのツツジ、そして会ったことは無いが良く知っている少年と少女が駆け寄ってくる所だった。
「ヘズさん、事情は聞きましたわ。マグマ団とかいう方々に大事な荷物を盗まれたとか。所で、ここに倒れている方々は一体……?」
「先輩、彼だけでは心配だったので助けを呼んで来たんですが………あ、あれ? あの子はどこに?」
「ここに倒れてるのはマグマ団の団員だ。カナシダトンネルに向かおうとした所を襲ってきたから倒して捕縛しておいた。あと、例の少年についてだが、彼には逃げられてしまったよ。あの歳でガバイトを従えている事から相当出来る事は予想できるが、それでも心配だ」
すぐにでもあの少年の後を追い掛けたい所なのだが、折角捕まえたマグマ団達を放っておくわけにも行かない。せめて町の交番に引き渡してからと思っていた所だから丁度良かった。
この場に来てくれた四人の顔をぐるりと見渡して、この問題をどう突破するか決める。
「済まないがツツジ、ケンスケ、このマグマ団二人を警察に引き渡してくれないか。折角の情報源をみすみす逃すわけには行かん」
出来るだけ知っている歴史を壊さないように。二人ともこの場に来てしまっている時点でかなりズレていたが、自分の知らない未来は可能な限り避けたい。
その結果、捕縛したマグマ団を連れてカナズミに戻るのにツツジと後輩を指名した。自分がカナズミに戻るという手もあったが、目の届かない所に心配の種は残しておきたくないものだ。だから自身は二人のトレーナーのサポートとしてここに残る。
そして当然だが、ジムリーダーであるのに戦闘要員から外されたツツジは猛抗議した。彼女からすれば、マグマとか言う謎の集団と戦うのには、この場で出来る最大限の戦力で行きたかったのだろう。
「で、ですがヘズさん! 戦いならばわたくしの方が」
「確かにジムリーダーであるキミの方がバトルでは安心出来るだろう。だが顔が割れてる。奴らの不意を突くならそこの二人の方が良い。現に先に行った少年はマグマ団に襲われなかった」
「………昔っから、そういう合理的な所は変わってませんのね」
「別にキミを信頼してない訳じゃない。ただ、この場はそこの二人が良いと言うだけだ。君だってジムバッジを与えたって事は、それなりに実力を認めてるって事だろう?」
「ま、まぁ、それはそうですけれども。というか、ジムバッジの事はどこで……?」
「カンだよ、カン」
そう言ってマグマ団員達が倒れている方をチラリと振り返ると、後輩の研究員が手際よく二人の両手をロープで後ろ手に縛り付けていた。二匹のポケモンも、時折マグマ団員に電流を流して痺れさせながら手伝っている。
「ま、一先ずは大丈夫、かな」
「あ、あのヘズさん?でしたよね。俺はアサギシティ出身のトレーナーでユウキって言います。宜しくお願いします」
「私はミシロタウン出身のトレーナーでハルカと言います、ヘズさん宜しくお願いします!」
「あぁ、宜しく。二人とも」
ヘズは表面上は自然に、内心かなり焦りながら少年と少女を交互に見やる。只者ならぬオーラを全身から滲ませる帽子を被った少年『ユウキ』と、赤いバンダナがよく似合う可憐な少女『ハルカ』。
「(主人公は、ユウキ君の方だな)」
彼は二人と握手を交わすとクワガノンをボールに戻し、羽織っていたデボンのロゴが入った白衣を後輩に預ける。これで格好だけならそこらで調査を行っている研究員のトレーナーと大した差は無くなるだろう。
「もう彼が交戦しているかもしれない。急ごう」
「了解です!」
「はいっ!」
彼は少年と少女を連れてカナシダトンネルへと向かう。奪われた荷物を取り返す為に。そして歴史を正しい形に戻す為に。
デボン研究員にしてホウエンの隠れた実力者、ヘズ。誰も知るはずの無いこの世界の未来を知る彼は、前世の記憶を持ってこの世界に産まれてしまった、いわゆる転生者である。
【研究員ヘズ】
オリジナルキャラクター。転生者。
出身はカロス地方。彼も昔はチャンピオンを目指してジムチャレンジの旅をしていた経験がある。現在はホウエンのデボンコーポレーションで働いているが、彼のある経歴によってツツジとはよく知り合う仲。ゲーム時代と現実のバトルの違いをよく理解しており、ポケモンバトルの腕はかなり高く、ジムリーダー以上四天王未満といったところ。アブソルのような変な髪型は生まれつきだが、彼は『アクロマに似ていて嬉しい』とむしろ喜んでいる。
【ヘズの現在の手持ちポケモン】
・ジバコイル Lv.70
10まんボルト、ラスターカノン、ボルトチェンジ、まもる
・クワガノン Lv.55
10まんボルト、ハサミギロチン、エナジーボール、アクロバット
・ダイノーズ Lv.55
ロックオン、まもる、でんじほう、マジカルシャイン
ヒロインって要る?
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カガリ
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ルチア
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ダ イ ゴ さ ん
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(いら)ないです