サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

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サメハダー(?)は保健所に送られてしまうようです

 

 

 

 

 

 

「テッセンさーん! これ、これ!」

「『コレ、コレ』ってどうしたカナタ。ってうぉぉぉい!? なんじゃそりゃぁ!?」

「わかんないです!サメハダーです! 釣れました!」

 

 サメハダー(?)を釣ってしまった僕は最初こそ恐怖で逃げ腰になってしまったものの、ぐったりとしているソレを前にして居ても立ってもいられなくなってテッセンさんの所まで連れてきてしまった。

 抱き上げるとやはりと言うべきかずっしりと重く、その鮫肌は他のポケモンが攻撃すれば逆に傷付いてしまう程に荒い。優しく触れる分には問題ないだろうが、小さくともやはりサメハダーと言うべきか。

 

「しかし、随分ぐったりしてるな。見たところかなりキズだらけじゃし。しっかしサメハダーが海で溺れるか? と言うか、コイツはサメハダーか?」

「えっ、サメハダーじゃないんですか?」

「いんや、確かにサメハダーに見えるんじゃが………なぁんか何処かで見たような気がすると言うか。ま、それはさておき、保護したからには治療せんとな。ワシはこういうのは専門じゃあ無いし……お前さんポケモンセンターにはまだ行ってないのか?」

「トレーナーカードを持ってない僕じゃ治療なんてして貰えませんよ。トレーナー協会の後援でポケモンセンターは運営してるんですから」

「あぁ、そうじゃったそうじゃった。なら今度はワシも同行しよう。そうすれば治療して貰える筈じゃ」

「すみません、お願いします」

 

 テッセンと共にジムを出て、街のポケモンセンターを目指す。

 こういう時、未成年でもポケモントレーナーとして活動しているとスムースに事が進むのだが、トレーナーカードを持たない僕は他のトレーナーの力を借りる他に無い。同世代で既にトレーナーとして活動している奴は少なからず居るが、誰も彼も僕を見下す対象としてしか見ておらず、僕が何か頼んだところで無視されるだけ。傷付いた野生のポケモンを見付けても、親切な第三者が現れることを願うしかないのだ。

 

 だから、テッセンさんが居てくれて助かった。

 

「テッセンさん」

「ん、どうした?」

「……ありがとうございます」

「ワシはジムリーダーじゃぞ? ポケモンを助けるのは当たり前じゃよ」

 

 何時もより、彼の背中は大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、治療は……出来ません」

「どういう事じゃ! 確かにこのポケモンを見付けたコイツはトレーナーじゃあ無いが、ワシはポケモントレーナーじゃ!」

 

 ポケモンセンターに到着し、サメハダー(?)を抱き抱えて飛び込んだ僕たちにジョーイさんから告げられたのは、そんな言葉だった。思わぬ事態にテッセンさんも動揺し、思わず声を荒げてしまっているが、ジョーイさんも何処か苦しそうな表情をしていた。

 タオルに包まれて、息も弱々しく大人しく横たわっているサメハダー(?)を彼女は静かに見下ろすと、躊躇いつつも話し始める。

 

「はい、其処は大丈夫なのですが………このポケモン、明らかにホウエン地方のポケモンでは無いですよね」

「え、はい………僕はサメハダーだと思ったんですけど、確かにこの地方のポケモンでは無いかな、と」

「私もこのようなポケモンをホウエンで見るのは始めてです。まさかと思って今しがたホウエン図鑑を確認したのですが、やはりこのような姿のポケモンは見付からなくて。いつも調査を行って下さっているテッセンさんとカナタさんなら知っていると思うのですが、現在ホウエンでは外来種のポケモンへの風当たりは非常に強いです」

「………そうか。だから治療できないと」

 

 彼女の言葉で何かに気付き、納得したようにテッセンさんは腕を組む。そして苦々しい表情になった彼は片手を口に当て、「むむむ」と唸りながら何かを考え始めた。

 

「えっと、つまりホウエンのトレーナー協会は外来種のポケモンが生きている事を良く思っていない、と?」

「ええ。ホウエンの環境への影響を考えた結果、外来種のポケモンは捕獲し次第保健所に送って期間を待たずに処分を、と。元いた場所に返すには費用も情報も足りていないから、こうした対処しか取れないと……」

「そんな………ポケモンは何も悪くないのに」

 

 外来種ポケモン。ホウエンの生態系に悪影響を及ぼすとして日々調査が行われている彼等だが、彼等自身は悪いことなんて何もしていないのだ。

 彼等はただ必死に生きようと、命を繋ごうとしているだけで、周りの生態系を破壊しようだなんてこれっぽっちも思っていない。人間が、自分勝手なトレーナーやブリーダーが持ち込んで、そして捨てていってしまったから『外来種ポケモン』は現れてしまう。

 

「どうにか、助けられないんですか?」

「治療できるようにする方法はあります! 外来種のポケモンでも、トレーナーの所有にしてしまえば良いんです!ですが、テッセンさんでは………」

「テッセンさんでは……?」

 

 先ほどから黙りこくっていた彼の方に、僕とジョーイさんの視線が集中する。彼は「ううむ」と唸った後、何か決心したように両手を叩き、此方に力強い視線を向けてきた。

 普段のいい加減な様子からは想像もつかないような凄まじい圧力に僕は一瞬気圧されるも、すぐに呼吸を整えて彼の瞳をジッと見つめ返す。チャレンジャーとの対戦の時だって滅多に見せない、ジムリーダーの瞳だ。

 

「カナタ、ワシはキンセツジムのジムリーダーじゃ」

「………」

「ジムリーダーであるワシにはあらゆる行動に多くの責任がつきまとう。ポケモンを育てるにしても、いちいちホウエンリーグ委員会に申請をする必要があるのじゃ」

「………」

「特別長い時間の必要なものでは無い。じゃが、このポケモンにそれだけ待っている時間は無いじゃろう」

 

 ポケットに手を差し込むと、丸いものに指先が触れた。小さい頃、ポケモンを飼えない代わりにいつか僕が大きくなったらと、母が一個だけ買ってくれたモンスターボール。トレーナーになる夢を諦めても尚、これを捨てる事なんて出来なかった。

 

「テッセンさん」

「カナタ。お主が経済的な問題からトレーナーになる夢を諦めた事、ワシはよく理解しているつもりじゃ。だからお主がトレーナーになれるように、ワシは全力で支援しよう。それだけの資質がお主には有ると、ワシは思っとる」

 

 ぐったりとしていたサメハダー(?)が僅かに目を開く。動きに気付いて視線を其方へと遣ると、その目は確かに僕の事を見詰めていた。

 肩に、テッセンさんの固く節くれだった手が乗るのを感じる。サメハダー(?)から目を放し、テッセンさんと再び視線を合わせた。

 

「カナタ。ポケモントレーナーになる気は無いか?」

 

 既に、心は決まっていた。

 

 

 

 





ポケモンセンターの運営やジムリーダーの設定に関しては独自解釈です。外来種とかの設定についてはフカマルの設定から思い付いた独自設定になります。



※『スムース』ではなく『スムーズ』であるとの誤字報告が届きましたが、調べたところどちらでも合っているとの事で修正は行なわない事にしました。今回誤字報告して下さった方、ありがとうございます。また作品内でミスを発見されましたら、ご報告頂けるとありがたく思います。


ヒロインって要る?

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