サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

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サメまると旅の始まり

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレーナーカードが届いて正式にポケモントレーナーになってから、旅に出る日時が決まるのにそう時間はかからなかった。

 出発の前日の夜は僕と母さん、サメまるの二人と一匹での独り立ち前最後の家族団欒を楽しんだ。家に独り残す事になってしまった母さんには申し訳無く思っていたのだが、向こうはそうは思っていなかったようで僕が夢だったポケモントレーナーになれた事を心から喜んでくれていた。

 

 海を漂っていたサメまるを釣り上げるという偶然から始まり、様々な偶然と縁とが重なって実現した僕の夢。チャンスを掴みとったからには、トレーナーとして成功するまで家に戻るつもりは無い。いつかポケモンリーグを制覇するようなトレーナーになり、僕をここまで一人で育ててくれた母さんにも楽な暮らしをさせてあげたい。

 

 

「それじゃあ、行ってきます!」

「フカ! フカ!」

 

 

 キンセツシティの南ゲートを出て、見送りに来てくれた皆に向けてサメまると一緒に手を振った。

 

 女手一人で僕をここまで育ててくれた母さん。

 小さかった僕をジムスタッフ兼機械技師見習いとして雇ってくれて、遂には僕の夢を叶えてくれたテッセンさん。

 同世代で友達の居なかった僕の友達になってくれて、トレーナーになることが決まってからは僕とサメまるの特訓を手伝ってくれたジムトレーナーのみんな。

 

「行ってらっしゃい、カナタ!」

「わっははは! 道に迷ったりするんじゃないぞぉ!」

「ジムチャレンジ頑張ってねー!」

 

 皆の期待と声援を背中に受けて、僕とサメまるの旅は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、確かポケモンセンターの二階……」

 

 キンセツからカイナまでの110番道路を、襲い来るポケモン達を倒しながら進んでカイナシティに到着した頃には、時刻はとっくに昼の12時を過ぎていた。キンセツシティを出たのが朝の8時だから、だいたい四時間は歩き続けた計算だ。

 

 前にテッセンさんが話していた「僕と会ってみたい」という国際警察の方について、その話を了承した所、待ち合わせの場所として指定されたのがカイナのポケモンセンターの二階だった。ここの所はポケモンセンターの二階にあるトレーナー向け食堂で過ごしている事が多いらしく、そこで食事でもとりながら話せないかと言う事らしい。

 

 カイナシティに到着した僕とサメまるは、傷付いた身体と空腹を癒す為にポケモンセンターへと直行し、サメまるの治療が終わってすぐに二階へと向かった。

 

「どんな人なんだろうな。緊張するね、サメまる」

「フカァ、フカ」

「サメまるは平気だって? まあサメまるはポケモンだから平気かもしれないけどさ、怖い人だったら嫌だなぁって」

「フカ!」

「いや、『悪いやつだったらぶっ飛ばす』って、サメまる結構物騒な事言うね」

 

 隣でシュッ!シュッ!と風を切りながらシャドーボクシングの真似をしているサメまるに苦笑いしながら、エスカレーターで二階へと上がる。

 流石に昼食時と言うべきか食堂は沢山のトレーナー達でごったがえしており、空いているテーブルは何処にも見当たらない。

 

「あっ」

 

 その時、空席を探してフロアを見回していた僕の目に独りの男性の姿が入り込んできた。二人用の小さなテーブルに、空席を一つ残して独りで座っている男。

 カーキ色のコートを羽織っていた彼は、僕と視線が合った途端、すごい勢いで手を振って僕を呼び始めた。お陰で周囲のトレーナー達から変に注目され、奇異の視線を向けられる中、恥ずかしさでいたたまれない気持ちになりながらも彼のいるテーブルへと移動する。

 

「やあ! キミがフカマルを捕まえたという少年、カナタ君だね!」

「ええ、まあ。捕まえたと言うのは若干語弊がありますが」

「あ……ま、まあそこは良いのさ! 結果的にキミの手持ちになった事は変わらないからね。私は『ハンサム』、話には聞いていたと思うが、国際警察だ」

「白金カナタです。ハンサムさん、宜しくお願いします」

 

 彼の向かいの椅子に座り、テーブル越しに差し出された手を握ると、これまた凄い勢いでブンブンと振ってくる。

 なんと言うか、想像していたような人物とは大きく掛け離れていた。国際警察だと言うのだから、もっとお堅い生真面目な人なのかと思っていたのだが、随分と気さくというか、胡散臭い。正直、本当に国際警察の人なのかと疑ってしまうぐらいだ。

 

「もしやキミ、私が国際警察では無いと疑っているな?」

「え? あ! いえ、そんな事は」

「いやいや良いんだ、よく『胡散臭い』って言われるからね。ほら見たまえ、ちゃんと警察手帳もある」

 

 彼は懐から警察手帳が出し、僕に突き付けてきた。余りの勢いに気圧されて仰け反ってしまうが、確かに見てみれば彼の顔写真付きのカードが入っており、手帳には金色の国際警察のエンブレムがちゃんと付いている。

 胡散臭く感じる事に変わりは無いのだが、たぶん本物の国際警察の人なのだろう。本物の国際警察なのだと信じて貰おうとする、その誠実さと一生懸命さは伝わった。

 

「な、成る程。信じます」

「それは良かった! あぁ、それでキミを呼んだ理由なんだが……」

 

 その瞬間、僕の隣に居たサメまるから「ぐぅぅ~」という大きな音が響き、二人の視線はサメまるに集中する。サメまるはぱっちりと目を開いたまま、口から涎を垂らした状態で完全に硬直していた。サメまるの空腹が限界を越えたのだ。

 

「あ、えーと……」

「そうだな、先に昼食にするとしようか。このタブレットから注文出来るそうだから……」

 

 僕とハンサムさんは顔を見合わせると、僕はサメまるを膝の上に乗せてメニュー画面が見えるようにし、ハンサムさんはポケモン向けの昼食メニューのページを開くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、満足だった! ハサミラーメンという名前だからどんなものかと思ったが、成る程、スープのベースはもげたヘイガニの爪といった所かな? 生え変わるものなら確かに問題も無い」

「フカッ♪フカッ♪」

「お腹いっぱいか? サメまる」

「フカッ!」

 

 ポケモンフーズにトロピウスのフルーツが添えられたものをぺろりと平らげたサメまるは、目を細めて至極満足そうに鳴き声をあげた。

 僕はスタンダードなコロッケ定食を頼んだのだが、あの量でたったの200円だとは。これでポケモンセンターへの宿泊費は無料だと言うのだから、後援にトレーナー協会とリーグ委員会、ポケモン協会があり資金が潤沢である事はわかっていても、思わずポケモンセンターの運営が心配になってしまった。

 

「ごちそうさまでした……所で話は戻るのですが、ハンサムさんはどういった理由で僕を?」

「あー、それなんだがな」

 

 ハンサムさんはペーパーナプキンで口を拭いながら、目だけを動かして僕とサメまるを交互に見ると、納得したように目を閉じて「うんうん」と頷いた。

 

「もう大丈夫だよ」

「………えっ?」

「いや、本当に大丈夫なんだ。私が懸念していたような事にはなっていないようだからね」

 

 彼はそう言うと財布を取り出しながら席をたった。

 

「さて、キミはこれからどうする予定かな?」

「僕は、ここからムロを目指して、ムロからカナズミへと向かう予定です」

「ほう! それなら丁度いい。私もムロに用事があってね、町の南の桟橋にボートを停泊させてあるんだ。良かったらキミも一緒にどうだい?」

「良いんですか!? 是非お願いします!」

 

 カイナシティからムロタウンの間は、ジムチャレンジで多くのトレーナー達が使うにも関わらず交通の便が非常に悪い。ムロタウンがジム以外に何もない田舎だと言うのが理由の一つだろうが、再三指摘されているにも関わらず定期船を用意しないのはサメハダーの生息数が問題だろうか。サイユウ方面ほどサメハダーが生息している訳ではないが、船舶をも沈めかねないサメハダーの噛みつきは侮れるものではない。

 

 そんな訳でムロに向かうまでは少々苦労するかと思っていたが、ハンサムさんのご厚意からボートでムロへと向かえる事となり、ポケモンセンターを出た二人と一匹はカイナ南の桟橋へと直行したのだった。

 

 

 

 

 






今回、ハンサム浜辺に流れ着いてないやん! ハンサム記憶喪失してないやん!という読者様がいらっしゃると思いますが安心して下さい。ここからちゃんと原作通りにハンサムはバトルリゾートの砂浜に打ち上げられ、記憶喪失します。

 

 

 

・本作品におけるトレーナー達の扱いについて

 

 10才になるとポケモントレーナーになる人は独り立ちして旅に出るのは原作通りです。が、ゲーム内では明らかに主人公達よりも年齢の低い子供達がトレーナーをやっている事が多いので、「トレーナーを志望している子供は小さい頃からポケモンを持っていて、トレーナーの卵として活動している」といった風にしました。10才になってからポケモンを貰う子供は少数派だと考えていただければ良いです。

 

 また、本作での『エリートトレーナー』の扱いについてですが、設定としては『エリートトレーナー』はリーグ委員会が選定した優秀なトレーナー達という事にしました。彼等はリーグ委員会から給料を貰って各地の『危険なポケモンが出現する可能性がある道路』に派遣され、そこを通ろうとするジムチャレンジのトレーナーの腕を試す役割を担っています。つまり、一定以上の腕のトレーナーでなければその道路を通らせないようにしようと言う、安全面での配慮という訳です。ジムチャレンジにおいて重要な役割を担っているだけあり、彼等は皆高給取りです。

ヒロインって要る?

  • カガリ
  • ヒガナ
  • ルチア
  • ダ イ ゴ さ ん
  • (いら)ないです
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