サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

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サメまると錆びたポケモン

 

 

 

 

 

 

 

 

「サメまる、『りゅうのいぶき』!」

「フ、カァァッ!」

 

「サメ"ッ!?」

 

 サメまるの口から放たれた竜のエネルギーがサメハダーに直撃し、吹っ飛んだサメハダーは痙攣を起こしながら海面にぷかりと浮かんだ。

 ムロタウンへと向かうボートの上、僕とサメまるは襲い掛かってくるポケモン達を次から次へと追い払っていた。

 

「フ、フカ……フカ……」

「おつかれ、サメまる。少し背中見せてね」

「フカ」

 

 『りゅうのいぶき』でなんとかサメハダーを追い払ったサメまるだったが、戦いの途中で一度サメハダーの『つじぎり』を受けてしまい、それだけでサメまるの身体はボロボロだった。

 サメまるの背中を見ると、ざっくりと斬られたような傷が十数センチほどに渡って出来ており痛々しい。すぐにバッグからキズぐすりを取り出してサメまるの傷に吹き掛けると、傷口はジュウと音をたてながら塞がっていき、数十秒もすれば傷はすっかり無くなった。

 

「大丈夫か、サメまる?」

「フカ、フカシャ」

「そうか、それなら良かった。相手が強すぎて戦えない時は、ちゃんと無理だって言うんだぞ」

「フカ!」

 

 全く、ギリギリ戦えるぐらいの強さだったから良かったものの、この海域のポケモンが僕とサメまるでは歯が立たないような強さのポケモンだったらハンサムさんはどうするつもりだったのか。

 ハンサムさんは国際警察でありながらポケモンを一匹も持っていないそうで、ムロまでの海でポケモンを追い払ってくれるトレーナーを探していたらしい。ボートに乗せて貰っておいて言うのもなんだが、ポケモンに襲われてから「自分はポケモンを持ってない」なんて言い出すなんて、人を騙すようなやり方は警察としてどうなのだろうか。胡散臭い人だとは思っていたが、変なところでちゃっかりしている。

 

「やー、本当に助かったよ! ムロについたらキズぐすり奢るから許してくれ!」

「ムロタウンにはフレンドリィショップは出店してないですよ。あそこ本当に田舎なんですから」

「えっ? 無い? 嘘だろう……」

 

 ボートの運転をしていたハンサムさんは、ムロにフレンドリィショップが無いという話を聞いて顔を引きつらせた。

 このご時世、フレンドリィショップが無い町なんてほとんど存在しない。例えフレンドリィショップが無かったとしても、大抵そういった町にはフレンドリィショップに代わる店が存在しているが、ムロにはそんな店さえも存在しないのだ。

 

「ま、まぁ気を取り直して? もうすぐムロに着くから、カナタ君達もゆっくりと休んでいてくれたまえ」

 

 彼のその言葉を聞いて、僕とサメまるはホッと一息ついてボートの後部座席に腰を下ろす。サメまるも格上との連戦に次ぐ連戦に疲れたのか、僕の膝の上に乗っかって身体を丸めると、すぐに寝息を立て始めた。

 

 

 

 

 

 それから約40分後。野生のポケモンとの遭遇も無く、ハンサムさんのボートはムロへと到着した。

 サメまるも眠っていたおかげで元通りの元気になり、ボートから桟橋に飛び乗るとすぐ、テンションが上がったのか桟橋の柵をガジガジとかじり始めた。

 

「駄目だよサメまる! 公共の物を壊すのは犯罪だよ」

「フカ? フカ………」

「新しい町に着いて嬉しくなるのは良いんだけどね、あんまり羽目を外しすぎちゃ駄目だって事だよ」

「フカ」

 

 慌ててサメまるを柵から放し柵をかじってはいけない事を教えると、サメまるは少し落ち込んだ後、素直に頷いた。サメまるは悪い子ではないのだ。ちゃんと悪い事は悪いと教えてあげれば、ちゃんと理解してくれる。

 

「よいしょ、っと………さて、早速ムロで違法トレーナーについて聞き込みを、ってアレ?」

 

 ボートを桟橋に繋いだハンサムさんがムロの町を見渡して、素っ頓狂な声を上げた。何かと思い、僕もムロの町を見渡すとおかしな事に気付く。

 

「人が、全然居ませんね……」

「おかしいなぁ。いくら田舎だと言っても、町の中にこんなにも人が居ないなんて事あるか?」

 

 ムロの町は異様な空気に包まれていた。

 外を出歩いている人影は全くと言って良いほど見当たらず、静まり返っている。

 

「とりあえずポケモンセンターに行ってみましょう」

「そうだな。何があったのか、そこで聞き込む事にしよう」

 

 サメまるをモンスターボールの中に戻し、ハンサムさんと共にポケモンセンターに向かった。

 自動ドアを潜り抜けてポケモンセンターの中に入ると、中に居た人々の視線が僕達に集中した。流石にポケモンセンターの中には沢山の人が居たのだが、誰もが疲れたような表情で、僕達の姿を数秒間眺めた後、ほっとしたように視線を外していく。

 

「ええと、これは何かな……?」

 

 流石のハンサムさんもこれには困惑気味で、思わず苦笑いしていた。

 この町で何があったのか聞くために、近くに居た僕と同い年ぐらいの少年のトレーナーに話し掛ける。

 

「すみません、あの、この町で何かあったんですか?」

「何かあったって、君たちは何も無かったのか?」

「えっ? 特に何も無かったですけど……」

 

 僕が気付いていないだけで何かあったのかとハンサムさんの方に顔を向けると、彼もそういった事には心当たりが無いらしく頭を横に振る。

 トレーナーに再び向き直ると、彼は酷く疲れたように深くため息をついて項垂れた。

 

「見てくれよ、ここに居るトレーナー、みんな『アイツら』にやられたんだ」

「『アイツら』?」

「マグマ団とか言うのとアクア団とか言う奴らさ。『うんたらストーン』?とかいう物を探しに来たみたいで、俺たちに襲い掛かってきたんだ」

 

 ポケモンセンターのロビーを見渡すと、彼が言った事を裏付けるように沢山のトレーナー達が疲れた表情で待機していた。本来ジョーイさんがいる筈の受付には誰も立っておらず、奥の治療スペースでジョーイさんとラッキー達が慌ただしく動いているのが見える。沢山のトレーナーがポケモンの治療を求めに来たのに対して、ポケモンセンターの機能が間に合っていないのだ。

 

「アイツら、とんでもない強さだった。いや、一人一人はそうでもなかったのかもしれないけど、兎に角数が多いんだ。アイツらが探してる物についても誰も知らなくて、訳もわからないままにいつの間にかやられてた」

「今は何処に居るんですか? 外には誰も居なかった」

「ジムリーダーのトウキさんと、ダイゴとか言う恐ろしく強いトレーナーが奴らを町から追い払ってくれたよ。今は町の北西にある洞窟に逃げてったらしくて、二人ともそれを追いかけて行ったよ」

「成る程……教えて下さりありがとうございます。助かりました」

「ああ、君たちも気を付けて。俺は……故郷に帰ることにするよ」

 

 そう言うと彼はテーブルにぐったりと倒れこみ、動かなくなった。今まで気付いていなかったが、彼の腕には血の滲んだ包帯が巻かれており、所々に絆創膏が貼られている。ハンサムさんと顔を合わせると、彼は険しい表情で頷き、ポケナビを取り出して国際警察へと応援要請を出す。

 更に情報収集をするべく二人でポケモンセンターの二階へと向かおうとした時、背後から唸るような嗚咽が聞こえた。あのトレーナーだ。

 悔しかったのだろう。理由もわからない内に突然襲われ、寄ってたかって攻撃を受けて負けてしまった。きっと僕と同様に故郷を出発したばかりで、これからの旅路に期待を膨らませていた事だろう。だから、なんとなくだが気持ちはわかる。僕もそんな不本意な形でバトルに負けていたら、心が折れてしまっていたかもしれない。

 

「ハンサムさん、仇を取りましょう」

「ああ、私もポケモンバトルは出来ないが、先に向かったという二人だけには任せておけないな」

 

 マグマ団もアクア団も聞いたことの無い集団だが、同じトレーナーの仲間達を理不尽に傷付けるなんて許せない。

 彼を振り返る事は無く、ただぎゅっと拳を握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、得られた情報は変わらず、か」

「兎に角、件の洞窟に行ってみましょう」

「そうだな。実際に見てみないとわからない」

 

 その後もポケモンセンターやムロの民家を回って話を聞いたが、新しい情報は得られなかった。

 ハンサムさんの他の国際警察のメンバーはキナギタウンに居るために到着が遅れるらしく、町を出た僕達は砂浜を歩いて洞窟を目指す事にした。

 

「外は随分と静かですね」

「全く、不気味なくらいだ。本当にここにマグマ団とアクア団とかいう奴らは逃げ込んだのか?」

 

 町から洞窟まではそう距離は無く、洞窟にはすぐに到着した。しかし周囲に確かに争いの痕はあるものの、洞窟の奥からは争いが起きているような音は聞こえてこない。

 

「出てきてサメまる、いつでも戦えるように」

「フッカァ!」

 

 モンスターボールからサメまるを出して、恐る恐る洞窟の中へと侵入する。洞窟の中は海の近くだからか湿っぽく、暑い外と比べてずっとひんやりとした空気が漂っていた。

 

「………誰も、居ない?」

 

 死角から何者かが襲っては来ないか。洞窟の壁や岩に隠れながら少しずつ進んでいたが、何も出てこない。

 戦いが終わったのならばジムリーダーの『トウキ』も、もう一人のトレーナー『ダイゴ』も町に帰ってくる筈だが、帰ってきていないと言う事は、まだ戦いは終わっていないと言うこと。

 

「少し先の様子を見てこよう」

「大丈夫なんですかハンサムさん。ポケモンを連れていないのに」

「なあに大丈夫さ。万が一の時の切り札があるからね。大人を信じなさい」

 

 ハンサムさんは心配した僕の制止も聞かずに、洞窟の奥へと一人で駆けていってしまった。

 何かあった時、助けてくれるポケモンが居ないというのはとても心細い事だ。僕も長い間ポケモンを持たずに過ごして来たから、その事についてはよく理解している。彼がどういった理由からポケモンを所持していないのかは知らないが、生身でポケモンを持った相手と戦おうなんて無茶にも程がある。でも、

 

「正義感の強い人、なんだな」

 

「……ガキが一人になったみたいだぜ」

「今年デビューした新米だろ。邪魔だから潰すぞ」

 

「っ、誰だ!」

 

 ハンサムさんが駆けていった先を眺めながらそう呟いた直後、背後から二人の男の声が聞こえ、即座に振り返る。

 見れば青と白のボーダーのシャツを着たガラの悪そうな男が二人並んで立っており、モンスターボールを握り締めている。僕が一人になるタイミングを見計らって、それまで隠れていたと言うことか。

 

「奴らが……サメまる、『すなじごく』!」

 

「フン、効かねぇよ。行けズバット! 『ちょうおんぱ』!」

「キューッ!」

「ポチエナ、『かみつく』だ!」

「ガルルッ!」

 

「サメまる、続けて『りゅうのいぶき』!」

 

 奴らに行動を起こさせる前にと放った『すなじごく』。しかし二人には避けられ、ポケモンを繰り出されてしまう。『ひこうタイプ』を持つズバットには洞窟の高い所を飛んで避けられ、唯一ポチエナにのみ技は命中し、サメまるに噛みつこうとしたポチエナはすなじごくに囚われて技に失敗した。

 ズバットから放たれた『ちょうおんぱ』をサメまるは間一髪で回避し、ズバットへと『りゅうのいぶき』を放つ。

 

「ズバット、避けて『つばさでうつ』!」

「ちィッ、ポチエナ『とおぼえ』! 続けて『たいあたり』ですなじごくを突破しろ!」

 

 ポチエナの雄々しい『とおぼえ』が洞窟の中に響き渡る。『とおぼえ』は自身を奮い立たせて攻撃力を上げる技。あれで『たいあたり』の威力を上げ、サメまるの『すなじごく』を強引に抜け出そうという魂胆だろう。

 一方のズバットだったが、此方はサメまるの『りゅうのいぶき』を避けきれずに、身体を痙攣させながら落下してくる。

 

「サメまる、ズバットに『アイアンヘッド』だ!」

「フカッ!」

 

 地面を力強く蹴り、ロケットの如く飛び出したサメまるの『アイアンヘッド』がズバットの胴体に突き刺さる。「ゴキゴキ」と言う鈍い音がズバットの身体から聞こえ、ズバットは野球ボールのように吹っ飛んで洞窟の壁に激突して気絶する。

 

「ガウッ!」

「フカ!?」

 

 しかし、その直後のポチエナの『たいあたり』を、サメまるは避けきれなかった。ズバットを倒してから着地した場所が悪かったのだ。『すなじごく』を突破したポチエナが猛然とサメまるに襲い掛かる。

 

「サメまるっ!」

 

 無防備な状態で攻撃を受けかねない。

 思わず叫び声を上げた、その瞬間だった。

 

「コココッ!」

 

 突如として洞窟の影から茶色の何かが飛び出し、横からポチエナを吹っ飛ばした。

 男達の前まで吹っ飛ばされたポチエナは、まだ辛うじて体力が残っていたのか、ふらつきながらも立ち上がる。

 

「フ、フカ?」

「一体、何が」

 

 サメまるの前に背を向けて立ち、僕達を守るかのように男たちを睨み付ける一匹のポケモン。

 おそらくは『ココドラ』だと思われるそのポケモンは、何故か全身が酷く錆び付いていた。

 

 

 

 

 






・マグマ団とアクア団について

 本作品はORAS時空をベースにしていますが、エメラルドのようにマグマ団とアクア団の両方が元気に活動しています。おかげで目的の内容がアレな為に、作戦に赴いた先ではよく鉢合わせます。更に厄介度で言えばどちらも原作よりも上です。

ヒロインって要る?

  • カガリ
  • ヒガナ
  • ルチア
  • ダ イ ゴ さ ん
  • (いら)ないです
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