サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

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前回から引き続きムロでのお話です。時系列では原作主人公がカナズミのジムを攻略しているあたりです。
マグマ団とアクア団については、ムロのいしのどうくつに来ていた話をムロタウンジム攻略前に居る遺跡マニアから聞けるのですが、その話からこのエピソードを思い付きました。
ココドラの話まで書ききれなかった……




サメまるとマグマ団幹部

 

 

 

 

 

 

 

 

「ココココ……」

 

 未進化のポケモンとは思えない程の威圧感を放つココドラに、男達は気圧されたのか一歩、また一歩と後退る。

 

「クソ、何だこのココドラ……!」

「下の方でマグマ団の連中が手こずらされてた奴だ。二対一じゃ分が悪い、ずらかるぞ」

 

「あっ、待てっ!」

 

 二人はポケモンをモンスターボールへと戻し、洞窟の外へと逃げ出した。咄嗟に捕まえようとしたが、彼等を追い掛けて洞窟の外へと出た時には既に彼等の姿は見えなくなってしまっていた。

 

「逃げ足の速い奴らめ……」

「フカァ」

「ココッ!」

 

 ふと、洞窟の外まで来たと言うのに足元からサメまる以外の鳴き声が聞こえた。見下ろすと、サメまると並んで錆びだらけのココドラが目を細めて辺りを見渡していた。

 

「ココドラ……?」

「コッ?」

「あ、さっきはありがとう。お陰で助かったよ」

「フカフカ!」

「コ、コッ!」

 

 サメまるのピンチを救ってくれた事もあり、彼に礼を言う。しかし彼は礼などどうでも良いと言わんばかりにそっぽを向き、「ガキは帰れ」とでも言うかのように少しだけ此方を振り返ってアゴをクイクイと洞窟の方へやる。そして錆びだらけの身体をギシギシと軋ませながら、洞窟の奥へと走り去ってしまった。

 

「フカ!」

「そうだな、追い掛けよう!」

 

 奥にまだ奴らの仲間が残っているのなら、あのココドラだけに任せてはおけない。ハンサムさんも奥へと向かったっきり戻ってきていないし心配だ。

 僕とサメまるは顔を見合わせると、再び洞窟の中へと侵入した。

 

 

 

 洞窟の更に奥へと進むと、そこはまさに地獄絵図だった。

 

 洞窟の壁に叩きつけられ、四肢がおかしな方向にねじ曲がったポチエナ。全身を焼かれ、皮膚がただれて動けなくなっているゴルバット。背中のコブに大きな凹みを作り、ぐったりとして動かないドンメル。頭部の発光体がひび割れ、内部の液体を漏らしながらビクビクと痙攣し続けるメノクラゲ。

 

「なんだ、これ……」

「フ、カ……」

 

 周りにはポケモン達と同様に、マグマ団とアクア団だと思われるトレーナー達が気絶して倒れていた。

 洞窟の更に奥の方からは激しい戦闘の音が聞こえてきており、誰かが戦っているらしい。そして、その方向へと駆けていく錆びたココドラの姿を見た。

 

「ココドラ!」

「フカ!」

 

 ココドラの後を追うようにして、洞窟の奥を進んでいく。たどり着いた場所はこの洞窟の最深部のようで、広い空間になっているそこの壁には、見たことの無い巨大なポケモンが二体、争っているような壁画が描かれていた。

 そして、その空間で激しい戦いを繰り広げる二人と二人。

 

「メタング、『しねんのずつき』!」

「マクノシタ、『つっぱり』!」

 

「………バクーダ、『だいちのちから』」

「グラエナっ! 『かみくだく』!」

 

 メタングの『しねんのずつき』をその身で受け止めたバクーダがメタングの身を前足で地面に押さえつけ、『だいちのちから』を超至近距離から命中させる。しかし、メタングは『こうかばつぐん』の技を受けていながらも怯むことすらなく至近距離から『しねんのずつき』を発動し、バクーダの巨体を吹っ飛ばした。

 

 一方で、グラエナの『かみくだく』を片手の『つっぱり』で受け止めたマクノシタは、もう一方の『つっぱり』でグラエナを何度も攻撃する。しかしグラエナも負けてはおらず、『かみくだく』力を気合いで上昇させてマクノシタの手の骨を砕き、互いに再び距離を取って両者痛み分けという結果に。

 

 どちらも一進一退の壮絶な戦い。

 駆けつけたは良かったものの、自身が割り込めるような生易しい戦いでは無かった。間違いなくホウエントップクラスの戦いを前にして足がすくむ。

 

「カナタ君!」

「ぁ……は、ハンサムさん!」

 

 その時、岩影に隠れていたハンサムさんが僕の姿を見付けて叫び声をあげた。「はやくこっちに来て隠れるんだ」と言うように、彼は岩影でジェスチャーをとっていたのだが、大きな声をあげたのが不味かった。

 

「オウッ? 新シいトれーナーじゃネェか! 威勢ガいイなァ!」

「……………じゃま」

 

「何っ、逃げるんだそこのキミ!」

 

 アクア団らしき筋肉質な大柄の男は僕の姿を一瞥したのみで、それ以上関わってこようとはしなかった。しかし、マグマ団らしき小柄で眠たげな瞳をした女は、僕の存在が気に食わなかったらしい。

 彼女が腕を一振りすると、バクーダは標的をメタングから僕へと変えて襲い掛かってきた。銀髪の青年の指示でメタングが妨害をしようと『とっしん』を仕掛けるが、バクーダは『えんまく』を吐き出して華麗に躱す。

 

「サメまる……っ」

 

 咄嗟にサメまるに指示を出そうとして、その瞬間頭が真っ白になった。

 

 一目見ただけでわかる。あのバクーダはサメまるではまず敵わない程の強さを持っている。おそらくは、テッセンさんのライボルトにも匹敵する程の強さだろう。

 勝つことは出来ないにしても、サメまるの力のみで対抗するとなればどの技を使うべきなのかは自ずと理解していた。

 

 目の前でサメまるは()()()が指示される事を期待して、身構えている。その事はわかっているのに、口の中がカラカラに乾いて声が出ない。

 

 サメまるがあの時と同じように、技の使用に耐えることが出来なかったら? 暴走したサメまるを止めてくれるテッセンさんは今、ここには居ないのに。

 

「バオゥッ!」

 

 噴煙を撒き散らしながらバクーダが迫る。

 一流のトレーナーならば、ここでどんな判断を取る? 比較的威力の低い技で相手をいなし続けられるような技量はサメまるには無い。完全にはコントロール出来ない技をポケモンに無理にでも使わせるのか。それともポケモンには戦わせずに、無理にでも受け止めるべきなのか。

 

「カナタ君っ! しっかりしろ!」

「……!」

 

 僕の意識を現実へと引っ張り戻したのは、ハンサムさんの声だった。岩影で隠れていた筈の彼は隠れるのを止めて飛び出し、僕とサメまるを助けようと走りながら手を伸ばしている。

 

 

 ポケモンを持たない彼がこんなにも勇気ある行動をしていると言うのに、自分は何をしているのだろうか。

 例え短い間であっても、サメまると共にキンセツジムで鍛え続けた日々を自分は信じられていないのか。努力の結果を自分の中で無かった事にして、良いわけがある筈が無い。

 

 サメまるの小さな背中を見る。

 丸く、ざらざらとして、一見すると出会った最初の頃から大して変化していないように見えるが、よく見れば皮膚の下の筋肉は最初とは比べ物にならない程に増加し、しなやかさを増している。

 

 今ならば、僅かの間だけでも。

 

「サメまるっ……『げきりん』!」

「フカ! フゥゥゥ………ガァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

 サメまるの全身の筋肉が大きく隆起し、その小さな身体からは想像もつかない程の膨大な『ドラゴンタイプ』のエネルギーが溢れ出す。

 空気が震え、周囲で戦いの行く末を見守っていた野生のポケモン達が一斉に逃げていく。

 

「バクーダを、倒せッ!」

「グルァァァ"ァ"ァ"ァ"ァァァ!」

 

「ボァッ!?」

「………………!」

 

 地を砕き、弾丸のように飛び出したサメまるの拳がバクーダの頭頂部をとらえる。「ゴッ!」という何かが砕ける音と共にバクーダの頭が地面にめり込み、動けなくなったバクーダの腹の下へとサメまるは潜り込んだ。

 

「ギャシャアッ!」

「バクグゥ!?」

 

 次の瞬間バクーダの巨体は宙に浮かび、バクーダの口からは血が吐き出される。

 最早僕の命令を受け付ける理性もなく、理性を失う前に受けた「バクーダを倒せ」という命令を為すべくバクーダを殴り続けるサメまる。ハンサムさんは様子がまるで変わってしまったサメまるの姿を見て絶句していたが、これでいい。

 カイリュー、ボーマンダと言ったポケモンがメディアで「危険なポケモン」としてよく取り上げられるように、これこそが『ドラゴンタイプ』のあるべき姿だとようやく理解した。

 

「バウ………グ……」

「バクーダ、『ふんえん』……!」

「バ、クァッ!」

 

 気絶寸前だったが、女の命令を受けて地面に落下したバクーダは己の足で立ち上がる。

 しかし暴走したサメまるの戦闘力はカナタの想像を超え、バクーダと互角どころか『ふんえん』を撃たせる前にバクーダに肉薄し再びその肉体を殴打。吹っ飛んだバクーダは身体で岩を砕きながら転がり、尚も追撃の手を緩めないサメまるの攻撃を受けて凄まじい破壊音と共に砂煙の向こう側に消えていく。

 

「サメまる!」

 

 砂煙が晴れ、向こう側に見えたのはクレーターの中心に横たわるバクーダと、命令を完了し完全な暴走状態に陥ったサメまるの姿だった。

 同格の相手までならば完全に暴走する事はなかっただろうが、相手は格上で結果的にこうなってしまっては仕方がない。

 

 場合によっては死ぬかもしれない。しかしサメまるを信じて、僕は両手を広げて叫んだ。

 

「サメまる、来いッッ!」

「フガ……シャアァァァァッ!」

 

「は!?」

「何馬鹿な事を、マクノシタっ!」

 

 銀髪の青年がその澄ました顔からは想像もつかないような素っ頓狂な声を上げ、ジムリーダーのトウキは慌ててマクノシタを此方へと向かわせる。だがこうなったサメまるのスピードにマクノシタのような鈍足なポケモンがついてこれる訳が無く、サメまるは一瞬で僕の目の前まで距離を詰めた。

 

 飛び上がったサメまるの拳が振り上げられる。

 

「………!」

 

 歯を食い縛り、衝撃が来るのに備えた。

 目を見開き、迫るサメまるの拳すらも無視して、理性を失ったサメまるの目だけをじっと見詰める。

 

 

 

 

 

 

 

 衝撃は、来なかった。

 

「………サメまる」

「ァァ………フゥゥーッ……フゥゥーッ……」

 

 寸前で拳は止まり、サメまるは着地した。

 暴走が収まった訳では無い。未だにサメまるは理性を失ったままの目で、暴れようとする身体を本能から必死に止めようと震えている。

 

「ありがとう、サメまる。また無理させちゃったね」

 

 しゃがみこんでモンスターボールのボタンをサメまるに当てると、彼は震える身体で僅かに頷いてボールの中へと戻っていった。

 緊張の糸が切れた僕は全身の力が抜けてその場でへたりこんでしまった。

 

「危惧していた力とは、この事だったのか」

 

 静まりかえってしまった洞窟で、ハンサムさんのそんな呟きが響き渡った。

 

 

 




ドラゴンタイプの扱い方について段々と学んできた主人公です。ポケモンが襲ってきた時の対処については、アニポケでアデクがギガイアスを投げたりしていたので人間の身でもそれなりには……といった所です。マサラ人じゃないので死ぬ時は死にますが……

ヒロインって要る?

  • カガリ
  • ヒガナ
  • ルチア
  • ダ イ ゴ さ ん
  • (いら)ないです
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