サメハダー(?) を つりあげた!   作:青蛙

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銀髪のイケメンと錆びたココドラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………よそうない」

 

 マグマ団らしき女は、戦闘不能になったバクーダをモンスターボールに戻しながらそう呟いた。そしてちらりと僕の方を一瞥して一言。

 

「あなたも………よそうない」

 

 よくわからないが、僕のようなトレーナーがここに来てバクーダを倒すことは彼女の予想の内だったらしい。なんとなくその言葉が癪に障ったが、既にメタングとの戦いで消耗していたバクーダに対して、ほぼ相討ちになったような結果。『予想内』と言われても納得の行くその結果に、僕はサメまるの入ったモンスターボールを握り締めたまま何も言い返せなかった。

 

「メタング、『サイコキネシス』でつかまえろ!」

「メッタ!」

 

 ヒョコヒョコと小走りに逃げ出そうとした彼女を、銀髪のイケメンのメタングが『サイコキネシス』でつかまえる。マグマ団らしき格好の彼女は何もない所で両手を上げて、四肢を拘束されたような状態でピタリと止まった。

 

「…………えっち」

 

「何が『えっち』だ。生憎ボクは君のような少女に欲情するような趣味は持ち合わせていなくてね」

「ダイゴ……そもそも君は石にしか興奮しないだろう」

 

「こどもじゃ……………ない……」

 

 ダイゴというトレーナーに『少女』扱いされた彼女は、拘束された状態のまま、不服そうに呟いて頬を膨らませる。身長と見た目から僕とだいたい同い年くらいじゃないかと思っていたが、もっと歳上らしい。

 

「さて、後はお前だけだぞマッチョメン!」

「オウホウ! こいツが、ピンチっテやつカ!」

 

 トウキの言葉にアクア団らしきマッチョの男はカタコトの言葉でそう返すが、言葉とは裏腹に全く焦っている様子がない。彼はベルトについているモンスターボールをもう一つ手に取ると、その中のポケモンを繰り出した。

 

「シャァァァッ!」

「何っ、サメハダーだと!?」

 

 モンスターボールから飛び出したサメハダーは、本来ならば水中で使う筈のジェットのような推進器官を利用して凄まじいスピードで空中を飛び回り、メタングへと襲い掛かった。

 

「不味い、避けろメタング!」

「メタッ!?」

 

「…………おっ」

 

 サイコキネシスでマグマ団の女を拘束していたメタングだったが、サメハダーの『つじぎり』を受けるわけにはいかず、サイコキネシスを解いて間一髪でその攻撃を回避した。サイコキネシスを解除した事で女は自由になり、走って洞窟の外へと逃げ出す。

 

「な、ま、待てっ!」

「オウッホウッ! トウキのあンチゃん、オレッチとのポケモンしょうぶ、ムシできナい!オレッチとポケモンで、たっプりアイシてヤるぜェェ!」

「うっ! 何なんだコイツは!?」

 

 ポケモンバトルでテンションが上がったのか、もう一匹のポケモンであるグラエナと共にトウキへと迫るマッチョの男。戦いで興奮し、全身から湯気を立ち上らせながらトウキへと突進するその姿は、もうそういう事に見えなくもない。

 流石のトウキもこれには思わずマクノシタに『ふきとばし』を命じ、距離をとった。

 

 二人を相手に同時に戦い始めたマッチョの男。その強さは尋常では無く、戦えるポケモンを現在持っていない僕は、バトルの邪魔にならないように岩陰から見守ることしか出来ない。

 

「か、カナタ君っ」

「ハンサムさん? 何ですか」

 

 激しく繰り広げられる戦いを見ていると、同じく横で戦いを見守っていたハンサムさんに肩を叩かれた。小声で話し掛けてくる彼は、何処か心配そうに僕の手の中のボールを見る。

 

「大丈夫、なのかい? サメまる君は……」

「大丈夫です、多分………サメまるが望んだ事なので」

「そうかい………いや、私はあまりポケモンバトルには触れてないからね。まさかドラゴンタイプがあそこまで激しい戦いをするポケモンだとは思っていなくて」

「激しさだけならドラゴンタイプだけじゃないです。あの三人のポケモン、とんでもない強さです」

 

 態勢を立て直したダイゴとメタングによって、形勢は段々とダイゴとトウキの二人へと傾いているのがわかったが、ウシオも負けず劣らず。気合いとテンションだけで、まるでポケモンとシンクロしたかのように、完璧なタイミングで的確な命令を出している。サメまるが復活したとしても、もう僕の出る幕は無いだろう。

 

「なあカナタ君」

「何ですか?」

「さっきみたいな危険な事、もうしないでくれよ。君は前途ある少年なんだから」

「善処します……」

 

 さっきみたいな事とは、僕がサメまるの『げきりん』を受け止めようとした事だろうか。大人の先輩としては、まだ子供とも言える僕のあの行動はやはり良くないと思ったのだろう。進化してギャラドスやバンギラスといったポケモンになった自身の手持ちに殺されるといった事件は少ないがある事にはあるので、僕もそうして死んだトレーナーと同じ道を辿りかねないと考えたのではないか。

 結果として今回は何事もなく終わったが、僕とサメまるは運が良かっただけで、褒められた行動では無いという事はわかっている。全ては僕のトレーナーとしての未熟さが起こした事であり、僕はこうした事を起こさない為にも優秀なトレーナー達から学んでいかなければならない。

 

「ウシオ様! 助けに来ました!」

「リーダーアオギリから撤退のご命令です! ここは引きましょう!」

 

「ああァ? アオギリのアニィの命令ッテことナら仕方ナイなぁ。ポケモンしょうぶの決着は、マた今度にするゼ!」

 

 増援だろうか。青と白のボーダーのシャツを来た男女が数人やってきて、ポケモンを繰り出してバトルを妨害する。『えんまく』や『うずしお』を受けてダイゴのメタングとトウキのマクノシタが動けなくなる中、ウシオと呼ばれたマッチョの男はポケモンをモンスターボールへと戻すと手下と思しき男女と共に逃げていった。

 

「くっ、逃げられたか……!」

「でも、あれだけ激しく戦ったのに壁画は無傷だ。どんな理由でトレーナー達を襲ったり、この洞窟に来たのかは知らないけど、この壁画が関係してる事は間違いなさそうだね」

 

 『うずしお』に飲み込まれていたダイゴとメタングだったが、メタングの『サイコキネシス』で『うずしお』を破壊して中から脱出。トウキもマクノシタの『ねこだまし』によって風を起こし、『えんまく』を振り払って中から現れた。

 

「二人とも、無事なのかい!?」

 

「あぁ、ハンサムさん。大丈夫、この通りオレもマクノシタもピンピンしてますよ!」

「マックホォッ!」

 

「メッツァ! タァ!」

「おつかれメタング。全く、スーツがビショビショだ」

 

 ハンサムさんが彼らに駆け寄ると、どうやら彼は二人と知り合いだったようで自然と三人で話し始めた。内容はやはり今回の謎のトレーナー集団だろうか。

 戦える手持ちもいないのでその場で彼らの話を待っていると、ダイゴと呼ばれていた銀髪のイケメンが歩み寄ってきた。テレビで見たことの無いトレーナーだが、ジムリーダーやポケモンリーグの四天王にも匹敵する強さ。それに使っているポケモンも、見たことのないポケモンだった。

 きっと偉大なトレーナーの一人なのだろうと、彼を目の前にして緊張する。

 

「先程は助かったよ。バクーダを倒す前にあのサメハダーを出されていたら少しきつかったかもしれない」

「い、いえいえ。結局相討ちになってしまいましたし、あと洞窟の入り口近くではとても強いココドラに助けられました。あのココドラも、多分貴方の手持ちですよね。見たところ鋼ポケモンを得意としているようですし」

「ココドラ……?」

 

 あの錆びだらけのココドラ。追い掛けてここまで来たものの、姿を完全に見失ってしまった。

 ここから先はどうやら無いようだし、僕がココドラの姿を見落としていないとすれば、誰かの手持ちでボールに戻されたと言うのが自然と予想できた。錆びが出来ていたのは恐らく病気か何かだろう。気を付けていても自然と起きてしまう、ココドラやハガネールなどにはよくある病気だと聞いたことがある。

 しかし、

 

「ココドラは、知らないな」

「えっ?」

「ボスゴドラなら連れているけどね」

 

 そう言うと彼はボールを一つ取り出して、ポケモンを外に出した。彼の言った通り出てきたのはココドラの最終進化形であるボスゴドラで、ステンレスのように輝くその外殻は、よく手入れがされていることが一目でわかる。

 

「あ、あれ?」

「僕のボスゴドラも錆びだらけになる病気にはかかった事はあるけどね、昔はココドラだった彼も今ではこんなに立派に成長したよ。しかし、その錆びだらけのココドラというのも気になるね。野生で治すのは難しいから、一旦保護してポケモンセンターに連れていきたい所だが」

「じゃあ、あのココドラはいったい……?」

 

 予想が外れ困惑する僕と不思議そうな表情を向けてくるダイゴさんの元に、話がついたのかハンサムさんとトウキさんが歩いてくる。

 あのマグマ団やアクア団とか言う奴らが、完全にこのムロから居なくなったとは限らない。一先ずポケモンセンターに戻って作戦会議をと言うことになった。

 洞窟を戻る帰り道ではあんなに倒れていたトレーナーやポケモンの姿は一切見当たらず、あの戦闘の間に全員逃げ出していたらしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っててて……何なんですかあのトレーナー達は」

「無駄口叩いてないで働け馬鹿」

「馬鹿じゃないですよぉ先輩~」

 

 ダイゴやカナタ達が洞窟を出ていっていた頃、『いしのどうくつ』の別のルートを行った先でマグマ団のしたっぱ達が集まっていた。

 手に持っていたのは頑丈な荒縄で、それを使ってバトルで弱らせたポケモンを片っ端から縛り付けている。

 

「これに何の意味があるんですか?」

「あー、お前新入りだから聞いてないか」

 

 捕まえられているのは、『ココドラ』『クチート』『ヤミラミ』の三種類のポケモン。この洞窟には他にもマクノシタやズバット、ノズパスといったポケモンなどが生息しているが、それらには見向きもせずに三種類のポケモンばかりを狙って捕獲している事に、女のマグマ団員は疑問を浮かべた。

 

「こいつらはどれも『メガシンカ』が確認されてるポケモンだって、知ってるだろ?」

「えっ、クチートとヤミラミってメガシンカするんですか!?」

「お前なぁ……トレーナーやってたんならそれぐらい知っとけよ」

「あ……私はあんまり才能無くて、この組織に入った口なので」

「あー、悪い。まあ、兎に角こいつらは『メガシンカ』をするポケモンで、もしかしたらメガシンカに使われる『メガストーン』を野生で所持してる可能性があるって、リーダーは考えた訳だ」

 

 そう言って男は弱ったココドラを見下ろす。金属の外殻にはヒビが入り、ぐったりとして動かない。

 

「この『いしのどうくつ』は、少ないけど一部のポケモンの進化に必要な石が発掘されてる事で知られてるんだ。正直クチートはあんまり可能性は無いだろうけど、金属を食べるココドラや宝石を食べるヤミラミならメガストーンを持ってる可能性はあるって考えたんだろうな」

「へぇー、そうなんですか」

「だから、お前もさっさと動いてくれよ。俺だって好きでポケモンを傷付けてるんじゃないんだよ。せめて捕まえたポケモンが動ける元気が残ってる内に逃がしたい」

 

 その時だった、遠くから仲間のマグマ団の叫び声が聞こえた。続いて岩が砕けたような凄まじい破壊音と揺れ。

 辺りにいたマグマ団員達は音を聞いた途端、その音がした方へとボールを構えて駆けていく。

 

「不味いな、ボスゴドラでも出たかな?」

「えぇ!? 私のポチエナ、ボスゴドラどころかコドラにだって勝てないのに……」

 

 揺れは段々と大きくなり、マグマ団達が捕まえたポケモン達が纏められているその場所へと、着実に近付いていた。

 

 

 




・この作品でのメガストーンについて

 メガシンカに使用するメガストーン。トレーナーが使うメガシンカは原作通りカロス地方が発祥です。
 本作品ではホウエン地方でも採掘によってメガストーンは手に入り、人工で作る事は現状出来ないとされています。メガシンカ自体は知れ渡っているのですがメガストーン及びメガリング、メガバングルの数が非常に少ないのでメガシンカを行うトレーナーはごく少数です。
 アクア団とマグマ団は、とある伝説のポケモンを復活させる為に『あいいろのたま』と『べにいろのたま』を求めており、それらのたまに成り得るアイテムであるメガストーンや隕石を探して集めています。


・ダイゴのメタング

 ダンバルはホウエン地方には生息していないポケモンで、主人公は見たことがありません。ホウエンでもダンバルを知っているトレーナーは少ないです。ダンバルは他の地方への出張から帰ってきた彼の父からお土産として貰ったポケモンで、その姿に一目惚れしたダイゴによって大切に育てられています。ちなみに色は金と銀です。

ヒロインって要る?

  • カガリ
  • ヒガナ
  • ルチア
  • ダ イ ゴ さ ん
  • (いら)ないです
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