罅割れた夢   作:島ハブ

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第6話

 

 

 

 

 一番最初にしたことは、発掘の目処をつけることだった。

 フミツキにはよくわからなかったが、タマムシ大学の発掘跡からある程度の絞り込みができるらしい。いくつを、どれくらいの時間で。それだけははっきりさせなければならない。時間制限のない防衛は必ず気持ちの糸が切れるからだ。

 発掘担当の団員が提示してきた時間を、フミツキは半分に切り捨てた。どれだけ言い募られようとも、時間に関して妥協する気はなかった。同士から逮捕者を出す訳にはいかない、というフミツキの言葉で相手もしぶしぶ意見を引っ込めた。

 発掘場の周辺は、タマムシ大学が拡張を行ったために広場のようになっている。フミツキは八方に斥候を送った。傍にはクリードが控えていて、斥候に異常事態があれば、石を打ち鳴らすことでクリードのズバットに連絡が取れるようになっている。中が空洞の石で、一度で敵の発見、二度で交戦、三度で撤退の知らせだ。

 

「ま、交戦は無理だろうな。自警団が来るとしたら一団となってだろう」

 

 クリードが頬を掻きながら言った。身元を隠す為に、全員に仮面を付けさせている。それがうっとうしいのだろう。

 

「その場合は、ここで一度止めます。発掘部隊の撤退を待たなければなりませんから」

 

「二人でか?」

 

 その問いには答えなかった。策はある。ただ、実際にどういう行動を取るかはその場で判断しなければならないだろう。その時、事前に話した策と別の動きをする可能性は充分にあるのだ。認識を共有できる利点よりも、混乱を招きかねない欠点の方が大きい、とフミツキは判断した。

 本当は、あまり口にしたくないだけだとも、思っている。自分なりに考えているつもりだが、なにか間違いがあるのではないかという不安が常にあった。口に出して説明などすると、その不安が抑えきれない気がしたのだ。

 否定して欲しい。その思いを、抑え続けた。否定されて、なにか代案を出されたら、良し悪しも考えずに自分は飛び付くだろう。それが一番、楽なことだからだ。

 クリードがまた頬を掻いた。どこかヤドンを思わせるような緩慢な仕草で、不安や緊張とは無縁に見えた。最初は頼もしいような気もしたが、段々と腹立たしい気分になってきた。それも、抑えた。

 

「今頃、ニビの自警団に連絡が入っている頃かね」

 

「まだ早いと思いますね。精々、横暴なトレーナーがいた、というぐらいでしょう」

 

「お前、お国はニビなんだって?」

 

「郊外の方ですよ。自警団の集会所はニビ中央の方で、私が見る機会はあまり」

 

「全く知らないって訳じゃないんだな」

 

「話し合いのための少人数が最初に来ると思います。いきなり武力行使というのは自警団のやることではありませんから」

 

「俺達がロケット団だとわかれば?」

 

「一旦引き返して、まとまってくるでしょう」

 

「なるほどな。その辺のトレーナー共を厳しく追い散らさない理由は、わかった」

 

 そんなことをすれば、最初から自警団の主力が出てくる。今必要なのは戦闘での勝利ではなく、時間だ。

 名目上の作戦も、本命の任務も、共に時間を稼ぐことが重要になる。偶然ではないだろう。支配人か、あるいはボスが、そういう作戦を立案したということだ。作戦を実行しているだけで、任務の方も達成することができる。それも、違和感なくだ。

 この作戦を立案した人間はどういう人間か、ふと考えた。新地層での発掘作業にある程度目処を付けられる人間でなければ、この作戦は出てこない。作業時間を想定できないからだ。それはつまり、ボス、あるいはボスに近しい人間がタマムシ大学の研究チームにいる、ということになるのだろうか。

 弾かれたように、顔を上げた。石の音。一度。しばらく待ったが、次の音はしなかった。

 

「さて、俺らの正体は割れたようだな。次は本隊か」

 

「斥候の半数を、音のした位置に回します」

 

「全員合流させちまえばいいだろう」

 

「一人が一気に八人になるより、四人になり八人になる、という方が効果的でしょう。もし上手くできそうならば挟み込んでもいい」

 

「お前、本当にトレーナーが本職だったのか?どっかで野盗でもやってたんじゃないだろうな」

 

「トレーナーですよ。本職などといえる腕ではないですが」

 

 クリードのズバットに指示を持たせて斥候へ飛ばした。発掘部隊から、延長の懇願が来た。フミツキは取り合わなかった。

 

「カブトやオムナイトの一部なんですよ。それも、ただの化石じゃない。過去に見つかった化石よりも、明らかに後の年代の物です。恐らくですが、ポケモンの力によって出来た地層ですよこれは。この化石なら、下手したら、明確な遺伝子情報も残されているかもしれません。隊長さん、大発見なんですよこれは」

 

 発掘部隊を任せている団員が、熱に浮かされたように喋り続けているのも、無視した。

 こういう団員がいるのは、ロケット団の変わった所だった。タマムシアジトには研究者のような人間もいて、最近ではシルフ生産のスコープを改造したりしていた。戦闘員であるフミツキにはどういう意図の作業なのかはわからなかったが、金儲けのためでないことぐらいはわかる。それどころか、ゲームコーナーの売上が研究費として回ってきている気配もあった。

 無為なヤクザ集団などではない。熱量を取り戻したフミツキにとっては、それはいくらか救いだった。

 ただ、今は作戦行動中である。この化石に、学会をひっくり返すような価値があったとしても、フミツキの考えは変わらない。

 それが相手にも伝わったのだろう。激しく捲し立ててから、フミツキを一睨みして持ち場へと戻っていった。

 

「誤射ってのも、珍しくはないらしいぜ。特に、後ろからの誤射はな」

 

「いざという時はお願いしていいですか?クリードさん」

 

「なんだ、いざという時ってのは」

 

「撤退する時です。逮捕者は出さない、と決めているんですよ」

 

「ふん。発掘部隊の中に、顔見知りが何人かいる。さっきの奴がごねても、無理矢理連れていくよう伝えといてやるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 クリードを副官のような形に据えたのは、単純にフミツキの次にスタミナがあるというだけの理由だったが、共に行動するうちに、悪くない抜擢だったことがわかってきた。

 とにかく顔が広い。それに見合う程度には人望もあるようだ。フミツキが作戦を考えている間、他の団員に声をかけて回っていたのもクリードだった。それで集中が切れるのを防げた、というところがある。

 口調や態度は品行方正とは言えないが、互いの不利益になるようなレベルの言動はしない。今のフミツキにとっては、生真面目に付き従われるよりもずっとやり易かった。

 

「ところで、本当にその格好で行くのかよ?女物にしろとは言わねえが、動き辛いだろそりゃ」

 

 そして、意外とフミツキのことを気にかけてくる。最初は下心でもあるのかと思ったが、どうやら生来の質らしかった。

 

「目立つんですよ、ロケット団に女性がいると」

 

「そりゃそうだろうが」

 

「それに私は、ゲームコーナーで『老いぼれ犬』に顔を見られているので」

 

 男物のジャケットを羽織った上に、団服を着込んでいた。下はダブついた作業ズボンをベルトできつく留めている。あまり近くで見られるとどうしようもないが、遠目には小柄な男性に見える筈だ。

 

「腕っこきの刑事(でか)らしいな。しかし、タマムシだろう?」

 

「念を入れて困ることもないでしょう。幸い、今日のオツキミ山は涼しい」

 

「まあ、干からびてミイラにでもなってなけりゃいいのさ。お前には、ジムトレーナーへの当て馬になってもらわにゃならないんだからな」

 

 そう言って、クリードは口を閉じた。フミツキは一度だけ時計を見て、前を向いた。

 オツキミ山は立地的にも、生息するポケモンの強さとしても、交通に使うには悪くない道だった。というより、ニビとハナダの間に横たわる山は険しく、この洞窟以外に道と呼べるものはないのである。オツキミ山、という名は山全体の名称だが、専ら洞窟を呼ぶ時に使われるのは、この洞窟以外に住民が親しむような場がオツキミ山にはないからだ。

 当然整備が進んでいて、昼夜を問わず方々に明かりが灯されている。その多くは間接照明のような形を取っていて、環境をできる限り荒らさないように配慮されていた。

 照明を破壊するという手もないわけではなかった。ただ、それをすると復旧作業員が常駐しかねない。それはフミツキにとって、というより上層部にとっては目障りだろう。再度の囮作戦が必要になる可能性があるのだ。

 なんとなく、壁に目をやった。照明の関係か、一人の影が四方に伸びている。それが壁にかかると、表面の凹凸が影を引き伸ばしたり縮めたりするので、全く予測できない動きをしている。影ではなく人を見れば、ただ歩いているだけである。

 どの道、もうなにかを始めるほどの時間は残っていない。そのことは、フミツキにもよくわかっているのだ。サンドパンを手招きして、頭を撫でた。影ではなく、人を見る。サンドパンと触れあっていると、不思議とそう心を定めることに苦労はしなかった。

 石の音。一度だけだ。待った。呼吸を数える。クリードが姿勢を低くしながら、耳を澄ましている。

 三度。撤退を始める合図だった。呼吸にして五つほどの間があった。

 

「どうやら、それなりの人数で来たようですね」

 

「どうする?」

 

「斥候は合流させてください。一度ぶつかって押し返します。その後は、殿を務めながらハナダまで駆け通すことになりますね」

 

「へっ、お前に散々走らされたのがようやく活きるって訳だ」

 

「発掘部隊に撤退の指示を。私はクリードさんと前線に行きます」

 

 近くの団員へ手短に指示した。クリードもなにがしかを言い含めている。恐らくは、先程頼んだ件だろう。

 

「さーて、行くか」

 

 クリードが頬を掻いた。ヤドンのような感じは、どこにも残っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 斥候の姿が見えたところで、フミツキは足を止めた。向こうもこちらに気付いたようだ。一人が駆け寄ってくる。

 

「合流しねえのかよ?」

 

「撤退中なら即合流するつもりでしたが」

 

 駆け寄って来た斥候は、汗こそ掻いているが、追い込まれてるようではなかった。

 

「膠着しています。相手は二十人」

 

「そりゃ変だろ。膠着する要素はない」

 

「最初、押してこようとしていたんですよ。こちらは四人でしたから。でも、二人合流してきて、しばらくしてまた二人来て。どうも、向こうも人数を測りかねているようです」

 

 フミツキ達の位置からは、自警団の姿は見えなかった。斥候の場所までは平坦な道だが、その先は下り坂なのである。

 

「坂を登り切ったら囲まれていました、ってのは相手も嫌だろうな」

 

「とは言え、向こうは採掘場の奪還に動いているのですから、このまま膠着を続けはしないでしょう」

 

「どうする?」

 

「待ちましょうか。動き始めたら、私とクリードさんが出る、ということで」

 

「みんなにそう伝えます」

 

「ひとつだけ。ニビジムのジムトレーナーらしき人がいたら、特徴を教えてもらえますか?動き始める時がわかりやすいと思います」

 

「指示を出している人ってことですね。わかりました」

 

 団員が、斥候達のところへ戻っていく。クリードが訝し気な顔をした。

 

「二十人いて、率いているのはニビジムで鍛えられたトレーナーか。どうする気だよ、おい」

 

「手信号、覚えていますか?」

 

「あん?」

 

「進む、退く、集合、散開。タマムシでやったと思いますが」

 

「覚えてるよ。クソみたいに走らされた後に、目の前で延々とやられりゃあな。思い出したくもないが」

 

 不意に、斥候の半数がこちらを向いた。フミツキは迷わず撤退の指示を出した。

 

「行きますよ」

 

 道の半ばで合流した。自警団からは、まだ見えていないだろう。声は発さず、手信号だけで合図をした。散開。八人は、きちんと反応した。フミツキとクリードだけは前に進む。離れ際、団員の一人がフミツキに耳打ちした。ボーイスカウト。フミツキは小さく頷いた。

 視界が開けた。自警団が坂を駆け登ってくる姿が見える。二十人とその手持ちが一斉に向かってくる光景には、流石に圧力があった。フミツキは集団を見回した。先頭。ゴローンを連れたボーイスカウトが、勢いよく駆けて、集団を先導していた。

 

「おい、結局どうすんだよ。押し切られるぞ」

 

 返事は、手信号で送った。声だけは、女であることを隠しきれない。クリードが躰を密着させてきた。

 

「さっきの道に誘い込んで、挟み撃ちにします」

 

 囁くように言った。

 

「先頭のゴローンに突っ切られたら終わりだ。止められるんだな?」

 

「必ず。クリードさんは、ズバットを集団の中に突っ込ませてください。攻撃はしなくて構いません。ただ、連中の間を飛び回ってくれれば」

 

 下がった。ボーイスカウトは、坂を登り切ると、全員の到着を待って進みだした。目が合う。フミツキは速度を落として、クリードを先に行かせた。ボーイスカウトが猛然と駆けだした。後続との間に、僅かだが距離が生まれた。

 手を挙げた。集合の合図。フミツキはボーイスカウトへ向き直ると、サンドパンを繰り出した。『ころがる』。ゴローンも、同じ技で向かってくる。中央で、激突した。小石や塵が二匹の周囲で巻き上げられ、視界を遮った。

 待った。クリードのズバットが、砂煙を切って飛び込んでいった。見えた。サンドパンとゴローン。互いに睨み合っている。勢いは、止まっていた。

 その後方では、ロケット団が包囲を敷いていた。人数差が倍以上あるので、まとまれば容易く突破できる包囲だったが、二、三人がまとまろうとしているところへ必ずズバットが飛び込んで乱している。

 ボーイスカウトが反転すれば、瞬く間に包囲は崩壊するだろう。一瞬たりとも目を逸らさなかった。反転した瞬間後ろを突く、という意思をはっきりと表に出した。

 

「ロケット団みたいなチンピラが、僕と一対一でやり合う気か。ジムトレーナーを相手取ろうなんて、一万光年速いんだよ」

 

 ゴローンが跳びあがる。『のしかかり』。サンドパンの対応は速かった。跳び退き際に、『きりさく』まで見舞っている。フミツキは立ち位置を変えた。サンドパンの視界に入る位置にだ。目さえ合えば意思が伝わる自信があった。

 幾度か、ゴローンとサンドパンが交錯した。攻撃を受けてはいない。ただ、サンドパンの攻撃も大したダメージにはなっていないだろう。それでも、積み重ねればやがて勝敗を左右するものになる。

 

「足を止めろ、『がんせきふうじ』」

 

 ボーイスカウトの対応も速かった。素早さが両者を分けていることを、見抜いたようだ。

 ゴローンが地を叩く。浮き上がった小石がくっつきあい、いくつかの岩石となってサンドパンに降り注いだ。フミツキはじっとサンドパンを見つめた。サンドパンが躰を丸めていく。『まるくなる』。それで、ダメージは最小限に抑えられる。フミツキの考えは、伝わったはずだ。

 大小様々な岩石の山に、サンドパンが埋まった。『まるくなる』を使った以上、致命的なダメージはない。ただ、素早さは落ちる。

 

「悠長な選択だ。所詮素人だな。ゴローン、『ロックカット』」

 

 ゴローンがその場で回転するようにして、自分の躰を地面に擦り付け始めた。素早さ関係は、これで逆転することになる。サンドパンにとっては、アドバンテージが一つ消えることになるだろう。むしろ、不利な要素の一つになった。勝負が続けば続くほど、それは重くのしかかってくる。

 そんな悠長な戦いをする気は、フミツキにはなかった。

 ゴローンが不意に動きを止めた。

 

「なにをやってる。まだ」

 

 言い掛けたボーイスカウトが目を見開いた。ゴローンは、瀕死時の特徴である躰の収縮を始めていた。その後ろからサンドパンが姿を現した。足元には、穴が開いている。

 

「馬鹿な。『あなをほる』だって」

 

「お前ら、今だ。ジムトレーナーは敗北したぞ」

 

 クリードが声を張り上げた。自警団に動揺が走るのが、見ていてはっきりとわかった。フミツキは、サンドパンを突撃させた。誰かが、悲鳴とともに逃げ出した。一人が逃げてしまえばそれで終わりだった。サンドパンが向かうだけで、自警団は散り散りになった。ボーイスカウトがなんとかまとめようとしていたが、下り坂に入った辺りで諦めたようだ。

 

「退きます」

 

 心情的には、追い打ちをしたくなる場面だった。追撃に走りそうなら、何としてでも止めなければならない。そう思っていたが、意外に団員はみな素直にフミツキに従った。

 化石の採掘場まで下がった。一人だけ、団員が待っていた。状況把握のために、足の速い人間を数人選んであったのだ。

 

「化石は?」

 

「いくつかは。ただ、掘り出せていない方がずっと多いです。特にあのカブトとオムナイトの化石らしいものは、皆惜しがっていましたが。自警団は?」

 

「一度追い返しました。といっても、戦闘不能にしたのは精々数人です。クリードさん?」

 

「四人だ。ジムトレーナー合わせて五人だな。こっちは二人やられてる。俺のズバットも正直、あまり余力はないな」

 

「ということです。残りの化石は置いていきます」

 

「なんとかなりませんか。ウチの人間は、血相を変えてましてね。特に、化石に心血を注いでるのが一人いるんですよ」

 

 誰のことかは、なんとなくわかった。ただ、これ以上の時間はない。

 

「撤退します。先行してる部隊に追いついて、指示を伝えてください。それと、運搬部隊が衣料品をもっている筈です。前もって指示した場所に置いておくように、と」

 

「そんな話が?」

 

「オツキミ山を出る時には、一般人になりきれるようにしておこうと決めてましたから」

 

「どうも、隊長さん以上に考えている人間はいないようですね。わかりました」

 

「俺達は?」

 

「念のため、もうしばらくここで待機します」

 

 不満が出るかもしれない、と思った。しかしこれも、特に反対されることなく受け入れられた。

 思い思いに、岩や壁に腰かけた。

 フミツキは、なんとなく埋まっている化石に触れた。カブトの姿は昔、本で見たことがある。記憶のそれと触れている化石とがあまり結び付かず、見るともなく見続けて、躰の一部分しかない、ということに気付いた。恐らく、甲羅だ。中身に当たる部分がどうなったのかは、フミツキには想像もつかない。

 

「まあなんだ、上出来だろう、隊長さんよ」

 

 始め、誰に言っているのかわからなかった。自分に言っているらしいと思ったのは、クリードが正面に立っていたからだ。

 

「そりゃ、その化石は随分貴重なもんなのかもしれねえけどな。ジムトレーナーを追っ払ったってのも、貴重な評判だと思うぜ」

 

 化石を撫でているフミツキを見て、惜しんでいると思ったようだ。化石など、大した興味はなかった。手慰みに触っていただけである。

 

「また、機会はあるでしょう。その時にでも持っていきますよ」

 

「おう。ま、その時は手を貸してやる」

 

「手を貸すって。私の指揮と決まった訳じゃありませんよ」

 

「隊長はお前さ。俺達は、そう思ってるよ」

 

 それだけ言って、クリードは離れていった。クリードに隊長と呼ばれるのが初めてであることに、フミツキは気付いた。

 サンドパンが寄ってくる。フミツキはバッグから木の実を取り出すと、半分に分けてサンドパンに差し出した。仮面を外して、もう半分は自分で食べる。水は小型のキュービテナーに入れていて、フミツキがコックを回すと、サンドパンが口元を寄せて飲む。フミツキも、いつでも走りだせる程度に口を湿らせた。

 見回すと、全員がフミツキに倣っていた。不意にこそばゆくなって、フミツキはサンドパンを抱き上げた。

 

 

 

 

 





オリキャラだけの回というのに若干の拒否感があるので一万光年の彼に出てもらいました。初代のモブでは警備員さんの次に好きです
次はレッドさんかサカキ様出すつもりです。あと老いぼれ犬

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