ハーメルンの音楽祭   作:NiOさん

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 やあ、久しぶりだね。
 みんな、覚えているかなあ?

 覚えてなくても、どうでも良いけどね。

 それじゃあ、なぞなぞ、いくよ。

 鼠は大人に勝ちます。
 大人は笛に勝ちます。
 笛は鼠に勝ちます。

 じゃあ、子供は笛に、勝てるでしょうか、負けるでしょうか?



 ……くそぉ、正解だよ。

 これはあれだね。
『ハーメルンの奇妙な笛吹き』のなぞなぞだよ。

 ハーメルンっていうのは、ドイツにある実際の地名なんだけど。
 どうも『ハーメルンの奇妙な笛吹き』は、ある程度実話に基づいたお話だったみたい。
 その地域では忌まわしき記憶を引きずっていて。
 未だに音楽が禁止された通りとかがあるんだって。

 ところで、さ。
 ブレーメンから命からがら逃げ延びた音楽隊たちが。
 そんな、音楽を忌み嫌うハーメルンに逃げ込んだら。
 一体、どうなるんだろう。


 ……まあ、そんなの、言わずもがな、かな。

 きっと(・・・)

 死ぬほど(・・・・)

 ……ひどいことに(・・・・・・)なるんだろう(・・・・・・)()


プロローグ
はじめに


 8月某日、某寺院にて。

 

 今年の夏も、老婆は墓参りにやってきました。

 よぼよぼに曲がった腰で、よたよたと頼りなさ気な足取りで。

 それでも彼女は、友人や伴侶の墓の周りに生えた雑草を手際よく抜いていき、持っていた桶から柄杓で水をかけたりしています。

 手馴れた動作。

 まるで、もう何年も、同じことを繰り返しているかのように。

 それでも、いつも通りに、寂しさを感じさせる、その動きに。

 

 私は(・・)思わず(・・・)声を掛けるのでした(・・・・・・・・・)

 

 

「友達も旦那さんも、みんないなくなって、流石に寂しいですか?」

 

 私がいることに気づいていなかった彼女は、少しだけ驚いたように此方を振り向き。

 そして、またお墓の掃除に戻りました。

 

「……まあ、寂しくないっていったら、嘘になるけどねぇ。

 こればっかりは、どうしようも無いでしょ。

 時間は誰にでも、平等。

 子供や孫が大勢いるし、私は恵まれている方だ」

 

 私の問いに、老婆は小さな声で、しかしはっきりと、そう答えます。

 なんだか、自分自身を納得させようとして発しているような言葉ですね。

 此方からは見えませんが、苦笑いしているであろう彼女の顔が手に取るように分かりました。

 老婆がお墓へ向かってゆっくり手を合わせるのを、私は黙って見ていました。

 線香の煙がゆらりと揺れて、静かに時間が過ぎていきます。

 

「……よし、じゃあいろいろと準備しよう。

 

 貴女は、グレープフルーツの缶チューハイで、良かったよね。

 

 そしてこっちは、砂糖たっぷりの、コーヒー、作ってきたよ。

 

 あ、アンタはいっつも甘いものばっかり飲んでいたから、お供え物はお菓子抜きだからね」

 

 お墓の伴侶に向かって小言をクドクドと続けながらも、準備していたであろうお弁当や花束などを、てきぱきと備えていく老婆。

 一通り準備ができたのか、彼女は石段に腰掛けると、水筒からコップにお茶を注ぎ始めました。

 ……お墓の真中でお昼を食べるつもり、なのでしょう。

 

「さてと……あなたも食べる?」

 

「いいえ、大丈夫です。

 有難う御座います」

 

 あ、そう。と老婆は静かに頷くと、お弁当からお握りを1つ取り出して、もぐもぐと頬張ります。

 海苔が巻かれていないのは、入れ歯対策でしょうか。

 

「……それで、あなたは何の用?

 お墓参りにでも来たの?」

 

「いえ。

 ちょっとした、お知らせを持ってきたんですよ」

 

「お知らせ?」

 

「ええ」

 

私はもったいぶった様に頷くと、彼女へ答えるのでした。

 

「残念ながら良い知らせで。

 嬉しい事に悪い知らせです」

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