時刻は23時過ぎ。
場所は『身駅』、その改札口。
全員が、老女に視線を向けています。
「……まあ、詳細は省くけど。
私も、デスゲームの首謀者がどういう奴かは、知ってる」
「え、マジで?」
『こども』の老女のカミングアウトに『おとな』の少女は、思わず驚きの声をあげます。
どうやら老女は、ニッケルさんを知っている、というのです。
「……んん?
ああ……、わかった」
メールの問題を見ていた老女は、少女の言葉に応えることなく、呟きます。
「"秋"は漢字と言っているのに。
"畑"は、
「「「「え」」」」
皆が、再度問題文を確認します。
……確かに、漢字で書け、とは言っていません。
「畑の漢字を作るのであれば、マッチ棒5本が正解でしょう。
老女は、とても自然に、『ねずみ』の小児からマッチを取ると。
そこから1本を取り出し、擦って、火をつけました。
「
……
老女は、火の灯るマッチを、改札口の向こうに指で弾き飛ばします。
マッチの火は消えることなく、改札口の向こうの、草木の1本に当たって。
……
「う、うおおおお!?」
炎はあっという間に、美しい景色の奥の奥まで嘗め尽くしてしまいました。
……
笑みを浮かべながら、何かの冗談のように、炎に呑まれていきます。
「……
『かたりべ』の中年が、ぼそりと声をあげました。
「たぶん、身駅って、食虫植物みたいな生態なんでしょう、ね。
人の感動に付け込んで人を誘い込み、
そして。
中年の言葉を、誰もが黙って聞いていました。
作り物の様に炎を上げた村は。
あっという間にその姿を燃やし尽くしたのでした。
残ったのは。
稲穂の畑のあった場所に残る。
大量の、
「改札を抜けたら……食われてたん……だろう、な……」
『ふえふき』の壮年が、そう付け加えます。
「あ、ドア、あったよ!」
空気を読まないような、小児の声が響き渡ります。
出口のドアは、駅のプラットホーム側にあるみたいです。
皆は、よたよたと駅の中へと歩いて行きました。
足取りは、非常に重たいです。
そりゃあ、そうです。
さすがに皆さん、精神的にやられたのでしょう。
「あ、『かたりべ』のおじさん」
『おとな』の少女が、声をかけました。
「さっきは、本当に有難う。
ごめんね!」
「いえいえ。
正直、あんな景色を見せられては仕方ないですよ……」
少女の謝罪の言葉に、中年は笑って手を振ります。
あれほどの風景を見せられたら。
正直周りの静止を振り切って村の方へ進んでも、不思議では無かったからでしょう。
「……なんであんなあからさまな罠に突っ込んでいったのか、理解に苦し……む」
話しかけてもいないのに、壮年が少女を非難しました。
「……は?
あからさま?
少女が謝ったのは、中年に、のみ。
横で聞いていた壮年の、よくわからない台詞に、イラついたような声をあげました。
「……駅の名前……だよ。
あからさま……だろう」
「……は?
駅の、名前?」
『おとな』の少女が頭の上に『?』を浮かべていると。
『ふえふき』の壮年は、あきれたように溜息をつきました。
「……おい、『おとな』の。
驚いたように、『ふえふき』の壮年が、語りかけました。
「え、いや、えーっと。
……『
……
あれ、『しんえき』なのかな?とでも言うように。
少女は自信無さ気に答えます。
「……
『おとな』の少女は、駅の看板へ振り返ります。
そこには。
でも、仕方ないでしょう。
それは、『身』の、『み』ではない。
駅の名は。
……
……