ハーメルンの音楽祭   作:NiOさん

8 / 45
7つの子

 時刻は(・・・)19時の(・・・)

 

 浦野ハイツ(・・・・・)101号室(・・・・)

 

 

 

 そこに広がっているの(・・・・・・・・・・)()

 

 

 線路(・・)でした(・・・)

 

 

「え、え、え?」

 

 

 どこまでも続く線路を見て、驚く面々。

 部屋の中と思ったそこは。

 

 どう考えても、屋外、でした。

 

 

 

「ちょ、ちょ?

 わ、私がいる、ついさっきまでは、ふ、普通の部屋だったんですよ?」

 

 【101】号室の中年が、驚きと言い訳の声をあげました。

 

 まあ、でも、誰も責めないでしょう。

 如何に彼が悪意を持っていたとしても。

 部屋の中に線路を(・・・・・・・・)敷くことなんて(・・・・・・・)流石にできないの(・・・・・・・・)ですから(・・・・)!!

 

 ふりかえると、先ほど通ってきた扉は無くなっていました。

 そして横を見ると。

 ……踏切があります。

 

 あります、が。

 

 なぜか、閉まったままになっています。

 

 電車はまだ来ないけど、閉じ込められている。

 そういう、シチュエーションなんでしょう。

 

 

 そして、ふと、顔をあげると。

 

 

 

 電線に止まる(・・・・・・)夥しい量の(・・・・・)

 

 

 紅色の(・・・)カラスたち(・・・・・)!!

 

 まるで、夕焼けに染まって真っ赤な彼らは。

 

 実は、動物達の血液で(・・・・・・・)まっかっかに(・・・・・・)染まっているのです(・・・・・・・・・)

 

 

()……紅鴉(・・)……」

 

 

 猫の少女が、辛うじて、声を上げました。

 

 7不思議の中だけの存在。

 実際にはいないはずの、動物を上手に殺して食べる、カラス。

 

 それが、まさに、びっしりと。

 ……視界いっぱい(・・・・・・)どこまでもいるのです(・・・・・・・・・・)

 

「う、う、うわああああああああん!」

 

 【103】号室の小児が、恐怖のあまり泣き始めました。

 仕方ありません、あまりにも、あまりにも異様、なのですから。

 

 それだけの量がいながら。

 

 奴等は、鳴き声も(・・・・)羽音すら立てずに(・・・・・・・・)

 

 人間たちを(・・・・・)じっと見ているのです(・・・・・・・・・・)

 まるで、何か、順番を待っているかの(・・・・・・・・・・)ように(・・・)!!

 

 何の順番を待っているのか。

 

 そんなの、決まっています。

 

 お食事の(・・・・)順番です(・・・・)

 

 

「な、な、なんなんだ、これは……」

 

 

 【101】号室の中年が小さく声をあげた次の瞬間。

 

 

 ♪ぴろり~ん♪

 

 

 唐突に、メールが、届きます。

 

 それがつまり、今回の……。

 ハーメルンの音楽祭の、最初の音楽(なぞなぞ)に、なりました。

 

 

 

 

 

 

『各々が番(つが)いではないカラスが、7羽いました。

 

 それぞれに、7つの子がいました。

 

 カラスは全部で、何匹でしょう?』

 

 

 

 

 

 

「え、な、なんだこれ?」

 

「7つの子⁉

 し、7×7=49(しちしちしじゅうく)で、親がそれぞれ2人ずつで……」

 

「えーと、えーと……」

 

 あ、やばい。

 浦野ハイツの面々の慌てふためきようを見て。

 猫の少女は思いました。

 浦野ハイツの皆さんは、ニッケルさんになぞなぞを出される経験なんて、多分無いでしょう(・・・・・・・・)

 全員が、パニックになっている。

 これは、自分がなんとかしなければならない。

 猫の少女は、そう思ったのです。

 

 

「それにしても、7×7=49(しちしちしじゅうく)の中ボス感って、すごいよね!」

 

 そして。

 猫の少女の、頑張りに頑張った、周りを気遣う発言。

 これが、限界でした。

 

「……えーっと……。

 ……あ、ああ、わかります、わかります!

 あと、9の段の、今まで倒した強敵達が、最後の戦いを前に出てくる感も異常ですよね!」

 

 何故か、【101】号室の中年と話が合いました。

 いえ、多分話が合ったのではなく。

 話を合わせたのでしょ(・・・・・・・・・・)()

 

 【101】号室の中年さんも、このイヤな空気を払拭したかったのかもしれません。

 流石に、1問目で終わるのはイヤですからね。

 

「でしょでしょ?

 逆に1の段の、物語が始まる前のチュートリアル感も半端じゃないよね!」

 

 何故か九九で盛り上がる2名。

 完全に空気が読めていません。

 しかし。

 それを見てほかの面子は落ち着きを取り戻したみたいです。

 

(なんだろう、この敬語。

 なんだか、ちょっとアレだよね。

 懐かしいというか……心揺さぶられるというか……)

 

 大人の対応をする【101】号室の中年さんと、彼のその敬語。

 猫の少女が、彼の評価を改めていると。

 

 

 カーン、カーン、カーン!

 

 

 踏切が、電車の到来を知らせました。

 

「うわ、やばい、全然考えてなかった」

 

 どうしようもない空気をどうにかすることに精いっぱいで。

 猫の少女は、なぞなぞの答えを全く考えていなかったのです!

 

 ……しかし(・・・)

 

 

「……成程、ね。

 答え、分かりましたよ」

 

 

 そう言ったのは。

 ……例の、【101】号室の中年さん、でした。

 

「考えてみれば簡単です。

 要は、カラスの数え方、ですね」

 

 カラスの数え方。

 中年さんは、続けます。

 

「カラスの数え方にはいくつかあります。

 

 一番一般的な、羽。

 一応認められている、匹。

 詩的な表現でいえば、翼。

 獲物としてみれば、隻、なんてのもあるでしょう」

 

 つらつらと並べられる単位。

 ……そして、そこに、アレはありませんでした。

 

「……そう。

 カラスの数え方に、『ひとつ、ふたつ』はありません。

 

 

 ……つまり、この『7つ』というのは。

 

 

 年齢(・・)ですね(・・・)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。