異世界転生のチートって、もう少しなんというかチョイス考えろや 作:madamu
市街地を囲む巨壁はすでに500年を過ぎ、幼少時にその建築を見た都市エルフたちも年齢的には壮年へと足を踏みいれている。
北方西方東方を結ぶ大都市。800年の大帝国の心臓部。
世界でも3つある大陸でも最大の一つとして知られるその都市「 Κωνσταντινούπολη」は今日も多種族多様な人々が日々の生活を営んでいる。
15年前に発生した西方との8年間に及ぶ大戦も西方の盟主となったリザードマンの国王との和平条約も終わり、今は最前線に残された兵士たちが残党化し地方で山賊、盗賊団化した者たちが暴れ回る。
都市の南部にあるとある島では新たに3,000年前の古代王国の遺跡も新たに発見し、にわかに大陸最大の都市は戦後の復興と迷宮人気により多大なる経済隆盛を迎えていた。
◆
「いいだろ!」
冒険屋、傭兵、ごろつき、チンピラ。
呼び名は多々あれど、暴力屋の側面を持つ人々を暫定には「冒険者」と呼んでいる。
その中でもあまり性質の良くないものが下町の酒場で看板娘に絡んでいる。
種族の混血は時折見え、この都市でも一定数の混血児はいる。
この看板娘に絡む冒険者気取りもオーガの血が混じっているのが、人間種よりも頭一つ半は身体が大きい。
オーガもどきは、ふざけながら酒の酌をするように看板娘を追いかけまわす。
看板娘は人間種で10か11歳ほどの少女。茶色の髪にそばかすのある頬。まだまだ子供だ。
「やめて」
追いかけまわされ酒場のカウンター裏に逃げ込む。
「お客さん、遊ぶなら花街にでも行って下さいよ」
少し太めの亭主。この店を仕切っているが少女とは叔父と姪の関係で一時彼女を預かっている。
亭主は苦笑いをしながら「オーガもどき」にエールの入った杯を出す。
奢るから大人しくしていろ、という意味だが「オーガもどき」はそれを受け取る気はない。
「酒場で酌するのは当然だろ」
ヒヒヒと下品な笑いをすると連れの取り巻き達も同様な下品な笑いをする。
戦争と言うのは人の精神を狂わせる。
酒場の看板娘と言ってもそれなりに歳を食った女の尻を触り叩かれるなどの下品なコミュニケーションは少なくないが
それを色を知らない少女にしようとすることを笑いにするのは精神が疲弊している証拠だ。
このオーガもどきも戦争の被害者であり、戦後は無辜の市民への加害者である。
「お客さん、悪いことは言わない。遊ぶなら花街行きな」
酒場の亭主ははっきりと言う。戦争経験者が多いこの街ではごろつきにいちいち慄いてはいられない。
カウンターの内側には暴漢対策の警棒を備えている。
それに店にいる他の客、常連の中には傭兵経験者も複数おり、「オーガもどき」が暴れても衛兵が来るまでは時間稼ぎができる。
店の入口上部の窓から差し込む夕日が衛兵の巡回時間が間もなくであることを知らせてくれる。
(日差しがもう少し弱まるころには・・・)
「旦那だ!旦那が来るぞ!」
表の通りから誰かの叫び声が聞こえる。
酒場の亭主は少しだけ後悔した。
もっと早くこのゴロツキを制していれば、今日姪を店に出さなければ。
「おい、さっきの娘だせや」
少し涎が垂れるオーガもどきが脅しをかける。
亭主は困った顔をした。
それはオーガもどきに対してではない。
この後来る常連の行動が予測できたからだ。
血の雨が降る。
◆
「チート何が良い?」
「花の慶次の前田慶次、SAKONの島左近、るろ剣の比古清十郎、修羅の刻の陸奥鬼一、海皇紀のトゥバン・サノオかファン・ガンマ・ビゼン。以上のどれかか全部」
「やりおるわ」
老人姿の神は目の前のおぼろげな魂の回答にほんの少し頭が痛くなった。
神側の手違いによる死亡した魂に「冒険者がいるようなRPG世界への転生」と説明した上でチートの希望を聞いたら5秒の沈黙後に上記のリクエストが出た。
威厳のある台詞とは裏腹にここまで具体的なチート希望を述べるこの魂の業の深さ、端的に言えば盆暗加減に苦笑いをするしかない。
「まあ、よかろう。その希望に近しいものを出来る限り調整してやろう。だがチート希望提出後のチート管理は別部署の管轄でわしが出来るのはお前の希望を極力叶えられるよう提出することで、お前の望みの確約保証ではない」
この神はサラリーマンであった。
◆
「邪魔するぞ」
旦那と呼ばれた男が入店を告げる。
東方からの移民は多種にわたる。
竜族やシン国の一団や大和国の人々など転移の門が普及しなければこの都市に来ることが出来ない人も移住団として都市へ来ていた。
15年前の戦乱期には東方から戦場を求めてこの都市にやってきた戦人もいる。
そして名を上げて定住し、傭兵兼冒険者として暮らす者が一定数いる。
東方の刀鍛冶、甲冑師なども移住しており都市の拡張部はまた別の国の香りがする。
件の酒場の常連は、この戦乱時には元服したばかりの少年であったが連日連夜の戦でいっぱしの戦人となった。
それだけではない。家伝の秘剣術を用い、冒険者としてもその名を都市に知らしめている。
やれ迷宮の悪魔を切った、疾風のごとし剣閃、ゴーレムさえも恐れぬ胆力。
冒険者としては都市の支配階級層とも渡り合える儀礼と知恵。
すでに幾人かの支配階級者は彼と誼を結ぶことに利を見出し、またその独特な人柄に興味を持ち友誼を結んでいる。
「おう!今日は貸し切り・・・」
オーガもどきが声の方に振り向き、男の容貌を見る。
その目、白目と黒目が反転し、怪異異貌の印象は爽やかさとはかけ離れる。
吸血鬼さえ逃げ出す肌の白さは不吉を越えて禍々しい。
蛇と猟犬を当時に想起させる美貌は悪意溢れる美しさを覗かせるのが余計にたちが悪い。
侍らしい髷はゆわずに伸びた髪を適当に首の後ろでまとめている。
それは血に濡れて湿気を帯びたように畝っており、余計で不必要で背徳的で無駄でしょうもない色気を醸し出している。
この邪な美貌に股を開いた娼婦や貴婦人は両手の指では足りない。
そして抱かれて殺された女の暗殺者も両手の指では足りない。
遥か東の島国の着物を纏う異美である。
「なんだ。騒ぎのにおいがするな」
鼻を少しならし臭いをかぎ取る。冗談ではなくこの男は酒場の中に剣呑な美臭を感じていた。
つまりは刃物にこびり付く人間の脂の香りである。
東方武士団の一人、通称黒笠。
東方人が使用する笠を黒く染めて使っていることから付いた異名であり、その剣さばきは都市でも屈指。
また魔術とも違う「心の一方」という気合術を使う妖術師でもある。
その心の性質は容貌に出ている。
仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の心得は最小限にとどめ独自の生死感で刃を振るう。
血と刃と女を好むこの都市きっての怪人の一人である。
「そいつらが看板娘にちょっかいを!」
常連の一人が簡潔に、そして囃し立てるように伝える。
周りはこれから起こる惨劇を恐怖しつつも楽しみにしている。
黒笠は余計な血は流さない。だが目当ての相手の血は最後の一滴迄欲する。
「なに~。股ぐらから血も流さぬ小娘狙うキチガイか~」
蛇というよりももっとたちの悪いモノをイメージさせる。
少しだけ舌先を出して唇を舐めると黒笠は腰の一刀を鞘から抜く。
侍たるもの腰の一刀は軽々に抜いてはならぬ、という一般的な話はこの黒笠には通じない。
「おい、お前らも抜けよ。その腰の手斧とナイフ。ちゃっちゃと抜け、おい」
気おされてオーガもどきとその取り巻きは各々刃物を手にする。
黒笠は凶笑。
店の常連たちは壁際に寄り、立ち回りが出来る空間を作る。
それはまるで円形の処刑場を形作るようでもあった。
「お前ら、上半身と下半身の泣き別れと首と胴の泣き別れ、好きな方を選ばしてやるから言ってみろ」
笑みを残したまま黒笠は切っ先をオーガもどきと取り巻き一人一人に向けて質問する。
「同じじゃねぇか!」
取り巻きの一人が勇気を出して答えるが、黒笠はその答えにさらに笑う。
「お前らが首なし騎士なら首と胴がわかれたところで不便もあるめえよ」
殺すのだからどっちでもいいだろう。冗談だ。
言外にそう言っている。
場が静かになる。常連たちは息を飲む。
「!」
一歩踏み出したオーガもどきの取り巻きの首が飛ぶ。
疾風の横薙ぎ。
首が天井近くまで飛んだ。
「なんだ、人かい」
久々の手ごたえに言葉とは裏腹に笑みが残る。
この数か月は都市外苑での魔獣狩り。
自分と同じ手足の数の生き物を斬るのも久しぶりだ。
鵜堂刃衛。それが彼のチートの源泉である。
◆
「じゃあ、このるろうに剣心?に出て来る剣豪キャラなのね(古代ゲルマン語)」
「そうです、クライアントからはこの作品の登場人物が」
「携帯鳴ってますよ(古代ゲルマン語)」
「あ、すいません。お疲れさ…え、メールですか?先日返信しましたよ!?ちょっちょと確認します。ええ15分程度でお戻しできるかと」
「で、チートの設定は(古代ゲルマン語)」
「いや、登場人物で一番強い比古というキャラで。申しわけない、急ぎオフィスに戻りますので」
「わかりました、適宜選択しておきますね(古代ゲルマン語)行っちゃった…にしても日本の漫画の美的感覚はよくわからない。この白眼の人かっこいいわ~(古代ゲルマン神話的な人間が理解しがたい美醜感)」
とってんぱらりんのぷぅ
思いついたので。