異世界転生のチートって、もう少しなんというかチョイス考えろや 作:madamu
「マジ何なんすか!マジで!」
金を基本に毛先に赤が混じる髪。
そんな髪の青年は怒りに任せブツブツと言うと隣にいた赤毛の青年は声を殺して笑う。
金髪の方は煉獄杏寿郎という名の転生者である。
先日起きた、白狼騎士団とのイザコザ。
白狼と高貴そうな名前だが実態は傭兵混じりの実戦的な戦闘を行う騎士団であり、目下のところ東方武士団の目の敵である。
事は簡単。
黒笠が夜の花街をぶらついていると、正面から白狼騎士団の団員が数名。
黒笠は凶笑一つすると「腕が立つようだな、俺に殺されないか?」とラブコールを送る。
それが喧嘩を売ったことになり、30秒後には刃傷沙汰となった。
腕が2本ほど宙を舞い、人体に空いた穴は3つで済み、死人は無し。
一部の白狼騎士団は名誉と看板に付いた泥に怒り、大半の東方武士団からは「刀抜いといて一人もやれねーとは稽古不足だろ!!しっかりやっとけ!」と怒りの声。
当の黒笠としては「いやいや、イザコザ作れば入れ食いと思って」と反省の弁を述べており、昨日まで東方武士団の剣劇指南である赤石剛次(転生者)に猛稽古をさせられていた。
とばっちりを受けたのは若い転生者やその子息達である。
東方武士団のトラブルメーカーの双璧の片方によるトラブルは結局のところ、「若い奴による正面からのカチコミで黙らせる」というゴリ押しの力業をすることになり、そのカチコミ役は赤様と煉獄の役目となった。
「ちゃんと首跳ねてればこんな面倒にはならなかったのにね~」
隣を歩く煉獄に話を合わせているが赤様は口元に笑みを浮かべている。
赤様としては最近はモンスター狩りばかりで刃傷沙汰は少なくちょっとした刺激でもある。
一方煉獄は年長の年長者としての自重を知らぬ刃物キチ●イのせいで大事な時間を削って刃傷沙汰を積極的に起こしに行くことに面倒くささと怒りを感じていた。
(どうも一世代前のジャンプ系転生者は正々堂々感が欠如している)というのが煉獄の印象だ。
女!酒!血!というのが年長の特にトンデモ格闘漫画系転生者に対しての印象だ。
煉獄杏寿郎の能力と外見を持ち転生し、他の転生者を見渡すと転生時のチート選択で大きくそのスタンスが違う。
黒笠をはじめとした平成一桁台漫画のキャラクター能力保持転生者は圧倒的にバイオレンス、酒、女、血!ついでに名刀と美女と名酒と暴力!を求めていた。
単語を変えただけで、各自の目的の終着点は同じだ。
勿論東方での大戦争や西方に来てからの立場づくりの一大奮闘も承知いているが、あまりにも年長者は嬉々として血を流す。
「もう少し穏便にというか、帝国上層部に仲介を…」
煉獄が眉間にしわを寄せながら話をしていると白狼騎士団の宿舎前の通りに到着した。
通りにはすでに木箱が積み上げられバリケードとなっており、10名以上の鎧姿の騎士や従騎士たちが完全武装で待ち受けていた。
「来やがったな!東方の糞共!」
大柄のひげ面が通る声で煉獄と赤様を罵倒する。
騎士団の宿舎から金属のぶつかる音とと追加の兵士たちがやって来る。
皆怒りに顔を赤くしている。
「この度は当方の鵜堂 刃衛の行い」
「うるせぇ!金赤頭のくそ変態共が!」
煉獄が離れたところからことの説明をしようとしたところ、騎士たちの中から罵声が飛んだ。
「そうだ!街中で刃物を抜く、治安の意味を理解しない東の猿共が!」
「市民たちの怯えもわからん、耳無し共に話し合いは無用!」
「どうせ、お前達など戦が無ければ存在意義を持たぬ暴徒ども!」
「お前らの国ではお前たちのことをボウハチと呼ぶのだろう!」
20m以上離れたところから投げられる罵声に徐々に煉獄の血圧が上がっていく。
横ではニコニコしながら赤様が刀を抜く。
「よし、じゃあ先に切りこ」
「くそてめぇらが!こっちは馬鹿どものしりぬぐいでここまで来てるのによ!なんだてめぇら!文句ばっか言いやがって!なますにしてサイコロステーキにしてやるから待っとけ!」
赤様が先に切り込むことを伝える前に煉獄は一気に抜刀すると走り出しながら罵声に罵声を返す。
これが煉獄杏寿郎の「白狼騎士団との大喧嘩」としてこの年の話題をさらうこととなる。
結局のところ、この1か月後に邪教の教徒によるゾンビ事件の発生で白狼騎士団は半壊、その尻ぬぐいで東方武士団が動いたことで黒笠と煉獄の件は有耶無耶となった。
とってんぱらりんの、ぷぅ