その日を、人類は決して忘れることはないだろう___
────彼の者は偉大なる母。唯、子らの幸せを願う者。
────彼の者は大いなる天空と大地。不要とされた後も、子らのためにその身を尽くした者。
────彼の者は回帰の獣。本来の意思すら忘れただ歓喜への渇望につき動かされるおぞましき悪。
嗚呼だがしかし、それでも彼女は『母』足らんとした。たとえどれだけ恐れられようと。たとえどれだけ憎まれようと。たとえ、どれだけ『己のあり方に反しようと』。ただ子供達を護らんと、その行動に理由など不要ず、それが母として役目が故に。
異星の神よ、刮目するが良い。其は始まりの母、そのあり方故に虚数の海へ追放された大いなる
___ビーストⅡ『回帰』の獣 ティアマトである。
___
それが彼、もしくは彼女らの
突然の宣告、突然の惨劇、突然の終焉。いつも通りの日常はあっさりと崩壊した。
何故、何故、何故、何故。どれだけ考えても答えは出ない。重要なのは今この時、自分達は死ぬ、それだけの事だった。
___その筈、だったのだ。
突如現れたのは巨大な影、と言うには語弊がある。確かに実態はそこに存在する。唯、ソレの影に入ってしまっているせいで全体が見えていないだけだ。恐らくは四足歩行型の、生物なのだろう。目の前には恐らく、ソレの体の一部(恐らくは脚)がある。目指した限りでも数十mは優に超えているだろう。
___庇って、くれた?
こちらにその手を延ばす無数の白。触れた存在を次々と消し去る恐ろしいモノは目の前の存在が放った光に全てが迎撃されて消え失せた。
反射的にその足に手を伸ばして触れる。それは無意識の動き、意図したものではなかったのだろう。 自然とその言葉がこぼれる。
___母さん……?
聞こえた訳では無い。しかし、それでも彼女は己に縋った子供がいると認識した。
『ッ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!』
まさに、咆哮。子を守る為、溢れ出る歓喜と目の前の侵略者への憤怒を込めて、母は吼えた。その体から泥を溢れさせ、無数の異形を生み出す。
『●●●●●●ッーーー!!』
ティアマトの子ら、本来現行人類を滅ぼすモノ。だが、今の彼らは顔も知らぬ弟妹の為に命をかける
次々と空の
ズキリとティアマトの胸が痛む。己が子を殺された、母としての当たり前の反応。だが、幼き弟妹らを守る為の兄姉の特攻、無駄にする訳には行かなかった。母は泥の中より球体形の異形を生み出し、他の子らに命じて生き残った人々をその中に押し込め始めた。
『ッーーー●●!?』
瞬きの間にティアマトの身体に触腕が突き刺さる。反射的に泥を溢れさせ触腕を押しのけようとするも、時間の問題だろう。
『●●●●●●●●ッーーー!!!』
咆哮と共に放たれる光、無数の軌跡が触腕を撃ち落とす。だが触腕を全て撃ち落とすよりも早く、新たな触腕が彼女の肉体を侵食し始める。
本能的に自分は長く持たないだろうということを察する。
___だから、どうした。
己などどうなって構わない。唯、この身は母としての役割を全うするだけだ。
隙を見て人々に延びる触腕を潰す。結果自分の防御がガラ空きになりそこを狙われる。触腕が刺さる。侵食は止まらない。
___母さんッ!!
誰かが叫んだ。
___お母さんっ!
誰かが呼んだ。
___ママっ!!
誰かが泣いた。
___お袋ォ!!
誰かが手を伸ばした。
___母さん!お母さん!ママ!お袋!母様!母上!
子供達が、泣いていた。
___だい、じょうぶ
___おかあさんが、まもるから…!
『●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ッーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!』
瞬間、ティアマトは全ての子らを収納した球体を
だが、
『ッアァ!?』
その隙を見逃す
___よかった
嗚呼、それでも彼女は後悔などしていないする筈がない。
___こどもたちをまもれて、よかった
彼女が母であるが故に。
これこそは偉大なる人類愛。回帰の理を捨て、『慈愛をもって』誰かを救った
ビーストⅡ『慈愛』の獣。ティアマトである