ガーリー・エアフォース ~三本線の異邦人~   作:南十字星

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MISSION 00-1 ~プロローグ~

 2020年2月。エルジアとオーシアの戦争、通称「灯台戦争」が終結してから二ヶ月。フォートグレイス基地のハンガー前の椅子に座り、空を見上げている男性がいた。黒髪に青空のような瞳。無表情で感情は読み取れないが、彼の眼光は狼の様に鋭い。彼の名前は…

 

 「ようトリガー。相変わらず辛気臭い顔してやがるぜ」

 

 トリガーと呼ばれた男性が声のする方向に目を向けると、癖毛のある薄い金髪を靡かせ、同じフライトスーツに身を包んだ男が、ホットコーヒーの缶二つを手にこちらに歩いてきていた。

 

 「・・・カウントか」

 「リアクションそれだけかよ」

 

 カウントと呼ばれた男性は苦笑しながらほらよ、とコーヒーを差し出す。トリガーはそれを受け取り、蓋を開けながらまた空を見上げる。

 カウント。トリガーとは懲罰部隊で出会って以降、共に灯台戦争を飛び抜け、今では唯一無二の僚機となった。ロングレンジ部隊が解散して以降も、同じストライダー隊であるフーシェンとは個人的な付き合いがあるのだとか。

 

 「今日も今日とて空にご執心だな。この寒空の下ご苦労なこった」

 「ああ、冬の空は雲も少なくて青空が綺麗に見えるし、空気も澄んでいる。それにーー」

 

 「わかったわかった、この空バカが」

 

 急に口数が多くなるトリガーを手で制し、トリガーの隣の椅子に腰かける。

 

 「で、今日だったか?エルジアから鹵獲したあの機体のテストってのは」

 「ああ、今日の1500からだ」

 「・・・X-02Sか。あいつが乗っていた機体にお前が乗ることになるとはな」

 「・・・」

 

 トリガーはあの時の戦闘を思い出す。X-02S、ストライクワイバーン。可変翼とステルス性を両立させたエルジアの技術の結晶、X-02の改良型。ステルス性を維持しつつも機体剛性をアップ・CFT(コンフォーマルタンク)による戦闘行動半径の増加。何より専用の展開式大型電磁投射砲、「アークライト」による圧倒的な攻撃力はトリガーも目にしている。シラージ城上空でのあの圧倒的な攻撃力と機動力。一瞬でも気を抜いた瞬間に自分の機体に風穴が空くかもしれないという恐怖。自分の攻撃を地形、環境全てを使って回避し、再び攻撃に転ずる、数多の戦場を駆け抜けたエースにしか出来ない芸当。エルジアの老齢の撃墜王、ミハイ・ア・シラージ。彼に勝てたのはほぼ奇跡といって良かったと言えるだろう。

 

 「まぁ今回は大まかなテスト飛行だけで、その後はまたオーシアの解析班に任されるそうだ。気楽にやろうぜ、英雄様」

 「・・・ああ、ありがとう。だが英雄様はやめろ」

 「ははははっ」

 

 トリガーの顔に影が差したのを察知したのか、カウントは茶化すように気を抜くように諭す。それを聞いてトリガーも少し笑みを浮かべるのだった。

 

 

 ーーー

 「そろそろ時間だ。行こうぜトリガー」

 「・・・そうだな」

 

 コーヒーを飲みながら談笑をしていたらテストの時間が迫ってきていた。先に支度してるぜ、といいハンガーに向かっていったカウントの背中を見送りながら、トリガーは自分のハンガー内に駐機してある愛機を見上げた。

 

「じゃあ少し行ってくる、相棒」

 

 相棒、と呼ばれた機体はF-22ラプター。先進戦術戦闘機計画によって生み出された最高峰のステルス戦闘機である。機体自体かなりのチューンが施されているが、何より目を引くのは主翼に吊り下げられたステルスウェポンボックス、尾翼に描かれた狼のパーソナルマークと三本の爪痕である。この爪痕こそトリガーに残された爪痕、そして飛んできた軌跡の証明そのものであり、敵国であったエルジアに畏怖を与え、また灯台戦争の最終決戦でも、このマークが人々を導く灯火となった。

 ラプターは物言わず、静かにその翼を休めているだけだったが、トリガーは僅かに笑みを向けると、背を向けてテスト用のハンガーに向かった。

 

  

 

              ーテスト用ハンガーにてー

 「・・・こいつは驚いた」

 「・・・」

 

 カウントとトリガーはその光景に驚きを隠せなかった。機体がX-02Sであることは事前に知らされていたため驚く要素はなかったが、問題はその状態だ。機体はあの時見たオレンジと黒のツートンカラーではなく、F-15C、イーグルと同じ制空迷彩、そして見慣れた三本線の爪痕と機体番号、そして何よりーーー

 

 「スクラップクイーン!?なんでお前がーーー」

 「いちゃ悪いかい?伯爵殿」

 

 そう。スクラップ機を完璧にレストアさせる腕前を持ち、懲罰部隊、そして最終決戦での機体整備、難民の国の立役者であるスクラップクイーン、エイブリル・ミードの姿がそこにはあった。

 

 「何、そこの大馬鹿野郎の機体に合わせたセッティングなんて、私と元ロングレンジ部隊の整備士の奴らしか出来ないからな。ここの司令官に頼まれて、ほぼ貫徹して飛行セッティングをしてたんだ。感謝しなよ」

 「ははっ。ああ、あんたの整備した機体なら安心だぜ。なぁトリガー?」

 「・・・ああ、そうだな」

 

 彼女の整備は安心できる。それは無理難題なあの懲罰部隊のミッションを、彼女の機体で飛び抜けたからこそ言えるセリフだった。

 

 「まぁ無駄話はここまでにするさ。可変翼機構も、レールガンもかなり複雑だったがこいつは最高の状態に仕上げてある。行ってこい、トリガー」

 「いきなり新しいオモチャを壊すなよトリガー!空の上でな!」

 

 スクラップクイーンとカウントの言葉にトリガーは頷き、専用のHMDヘルメットを整備員から受け取り、勢いよくタラップを駆け上り、コックピットに座る。複座機であるX-02Sの後席はぽっかりと空いており、前席にはHUD用の液晶パネルはなく、F-35と同じEO-DAS形式だ。起動手順もF-35と似ている。トリガーはキャノピーを閉め、チェックリストに目を通し、こなしていく。整備員たちが離れたのを確認するとJFSを起動させ、X-02Sに命を吹き込んだ。X-02Sのエンジン、GIG/ERG-2000に火が入り、ラプターと同等か、それ以上の咆哮が響き渡る。HMDを起動させる。酸素供給、HUD投影を確認、異常なし。フラップ、ラダー、エルロン、エアブレーキの作動確認・・・異常なし。マスターアームOFFを確認し、機関砲スピンアップ・・・異常なし。ウェポンベイ、正常に展開。ミサイルシステムトラッキング、作動確認、異常なし。兵装アビオニクス、カウンターメジャー・・・異常なし。各計器正常。全システムオールグリーン。エイブリル、整備士にOKのサインを出し、管制に出撃許可を求める。

≪Control, X-02S Strider1, aircraft preparations complete.≫ 

≪Strider1, This is Fort Grays Control. You're good to taxi to runway 36. Position and hold.≫

≪Fort Grays Control, Strider1. Moving on taxiway.≫

 離陸許可を得て、トリガーはスロットルをわずかに開け、誘導路へ機体を進める。左後ろから聞きなれたF100-PW-220の爆音が聞こえる。カウントのF-15Cのものだろう。トリガーは36番滑走路に到着し、離陸許可を求める。

≪Fort Grays Control, Strider1 at runway 36. Ready.≫

≪Strider1, You're cleared for take off. quick climb 15,000 feet. Wind is one seven zero at five. After take off vector three one zero. Link to Long Caster.≫

≪Strider1, Cleared for take off. Quick climb to 15,000 feet.≫

 

 管制の指示を受けトリガーはスロットルをアフターバーナーの位置まで一気に押し込む。凄まじい咆哮と共に加速Gが身体を襲う。旅客機の離陸Gなど比べ物にならないほどの加速。しかしトリガーはこの瞬間に歓喜を覚えることを禁じ得ない。今までいたハンガーが横に流れ、ギアを納め、大空に舞い上がる瞬間を待ちわびる瞬間。これはパイロットに与えられた特権だ。そしてX-02Sと後続のF-15Cは大空へと舞い上がる。

≪Control, Strider1 is clear.≫

≪Strider1, Roger. Rader services terminated. Good luck, Three strikes.≫

 トリガーとカウントは足を収納すると同時に15000フィートまでズーム上昇を開始。X-02Sは時速800km/hに到達すると同時に主翼と尾翼を折りたたみ、格闘重視の前進翼形態からステルス・高速形態へと移行する。

 

 「ぐっ・・・!」

 

 空気抵抗の減少で一気に加速度が増し、今まで以上の加速を味わう。その加速はトリガーだけではなく、カウントも上昇力で離されるという形で思い知らされた。

 

 「おいおい、ウソだろ?」

 (この加速・・・相棒と同等、いやそれ以上か!?)

 

 可変翼機構にアークライト。それだけのウェイトを背負い、なお推力トップクラスのF-15を突き放し、F-22の上昇に食らいつく性能に、トリガーは内心舌を巻く。そして目標の15000フィートに到達したと同時に無線が入った。

 

 「こちらAWACS、ロングキャスター。君達はこちらの管制下に入った。トリガー、機体の調子はいいか?」

 「ああ、機体の調子は良好。可変翼も正常だ。」

 「むしろ良すぎるくらいだ。これ程の化け物だとは思わなかったぜ。」

 「惚れ込んでいるところ悪いが、早速テスト飛行を開始する。トリガー、色々なマニューバを試してみてくれ」

 「ウィルコ」

 

 言うが早いか、トリガーはスロットルを全開にし、テスト空域を縦横無尽に飛び回り始めた。

 

 「おいおい、具体的なテスト内容とかないのか?」

 「この後の兵器テストは別だがな。トリガーの場合、下手に内容を組むより、彼の思うように飛ばせた方が機体の限界性能を知ることが出来るという解析班の意向だ」

 「そういうもんかねぇ。で?今日も何か持ち込んでるんだろう?何を食ってるんだ?」

 「今日はピロシキだ。フィンガーフードの都合上、油で揚げて作ると機内が汚れてしまうからな。オーブンでヘルシーに作ってある」

 「ほう。ハンバーガーとか高カロリーなものばっかり食ってると思ったぜ」

 「もちろん少し物足りないからな。大量に作ってきてあるぞ」

 「そんなことだろうと思ったぜ」

 

 ロングキャスターの食い意地に苦笑するカウントをよそに、トリガーは可変翼の飛竜を思う存分に振り回していた。ハイGを織り交ぜたスプリットS、インメルマンターン。急激なズーム上昇からのテールスライド。更にハンマーヘッド。水平トップスピードからの急減速。そこから失速間際で急激に機首を上げるコブラ。更に後ろに倒れ元のコースに戻るクルビットなど、無理難題な曲芸飛行をいとも容易く行いつつ、旋回率や加速力に改めて舌を巻く。

 

 (凄いな・・・かなりの重量のはずなのに全く重さを感じない。それに可変翼でありながら俺の機動にビクともしていない。俺は・・・こんな機体に勝てたのか)

 

 ワイバーンの性能に驚嘆しているとロングキャスターから通信が入る。

 

 「ストライダー1、テスト飛行を終了する。まるでアクロバティックショーを見ていた気分だ。次は兵器テストに移る。レールガンを展開してくれ」

 「ラジャー」

 

 トリガーはタッチパネルで兵装を切り替える。ウェポンベイが開き、大型電磁投射砲アークライト。通称EML(Electro magnetic Launcher)が物々しい音を立てて展開される。HMDに弾着予測スコープが表示された時、トリガーはあの時の轟音を思い出す。思えばレールガンにはいい思い出がない。敵機から眩い光が現れ、そして轟音と共に即死級の弾丸が発射される。それはこの機体だけではなく、あの潜水艦からも・・・知らない間に操縦桿を握る手が震えていることに気付き、その回想を頭から振り払った。

 

 「・・・やれるさ」

 

 自分に言い聞かせるように呟き、操縦桿を握りなおす。

 

「トリガー、目標は8㎞先の無人機だ。アシストなしの長距離狙撃になるが、お前なら出来ると信じている。発射体制に移ってくれ」

 「・・・ウィルコ」

 

 元々ミハイ機の後席には無人コパイロットが搭載されており、それの演算能力でレールガンの補正アルゴリズムを成し得ていた。しかし、相手が極限にまで腕を上げたエースなら機械の予測など意味はなく、エース同士の感覚頼りになることは、あの戦闘が物語っていた。それを思い、トリガーはあえて後席のアシストを拒否したのだった。発射トリガーと同時にレールガンに電力が満ち、青白く発光する。

 

 「チャージ50%、75%、90「全機コーション!ボギー出現!」

 「・・・っ!?」 

 




 初めての小説から失踪して五年だ…もう休暇は充分だろう…?
 失踪した身ながらまた筆を取る気になりました。処女作の艦これを楽しみにしてくれていた方は本当に申し訳ございません。エースコンバット7×ガーリーエアフォースの小説を書いてみたい!という衝動で始めた今作ですが、もうエースコンバット7のプレイヤー、戦闘機オタクしか分からない用語マシマシでとてつもなく不親切な文章となっております。初見さんにも優しい文章を書きたい…!
 初期原稿があまりにも唐突過ぎるということで、急遽プロローグを二話編成にしました。とんでもない大幅改稿、申し訳ありません。しかし筋道は変えないのでご安心ください。
 次回、「アンノウン」
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