ガーリー・エアフォース ~三本線の異邦人~   作:南十字星

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~前回までのあらすじ~
 アーセナルバードらしきものの存在という謎を残しつつもエンゲリス飛行場の援護へと向かうトリガー。独断行動そのものの行動だが、援護を買って出たのは先ほどまでの相手、アニマであるジュラーヴリクだった。襲われている味方を助けるため、今までの自分へのケジメの為、一組の鶴は戦闘空域へと飛行する。


MISSION 10 Mayhem

ロシア ヴォルガ川上空 高度25000フィート

 5月27日 13時18分

 

 ≪で?あたしがいなきゃどうするつもりだったんだ?兄さん≫

 

 トリガーの右隣を飛びながら不意に質問を投げかけるジュラーヴリク。

 

 ≪どうするって…≫

 ≪たった一人で援護に向かうとかのたまったんだ。勿論考えの一つや二つあるんだろう?≫

 

 ジュラーヴリクの瞳がまっすぐに横を飛んでいるブルーのSu-30を見つめる。アニマである自分と互角に戦えるパイロットだ。一体どんな戦術を使うのか興味がある。その質問を受けたトリガーは少し考えるように沈黙し、答える。

 

 ≪・・・そうだな。とにかくザイの編隊に不意打ちで中距離ミサイルを撃ちこむ。それで混乱の隙をついて機銃で一機ずつ仕留めて・・・≫

 ≪・・・ハァ?≫

 

 ジュラーヴリクはその返答にをポカンと大口を開け、間抜けな声を上げてしまう。あいつら相手に何をするつもりだよこいつは。

 

 ≪お前EPCMを知らないとか言うなよ?その戦法が通じるならあたしらアニマなんてお役御免さ。普通のミサイルを打ち込んだところで混乱するどころか身じろぎ一つしやしねえよ。交戦前に全弾捨てて軽量化した方が何倍もマシだぜ。むしろ今ここでそのお荷物捨てちまいな≫

 

 トリガーの機体の主翼に付けられているR-77中距離ミサイルを見ながら投棄するように忠告するジュラーヴリク。しかしトリガーは首を横に振る。

 

 ≪確かにミサイルが通じたことはなかったが、注意を引くことぐらいには使える。それに、打てる手はあればあるほどいいだろ?≫

 ≪・・・そうかい、つまりノープランかよ。いや、突っ込んでからまず考えるってのはあたしらも一概には否定できないけどよ。流石に無謀と臨機応変は違うぜ?≫

 

 分かってるよな?と嘆息しながら言うジュラーヴリクに、トリガーは若干ばつの悪そうな顔を浮かべる。

 

 ≪・・・すまない≫

 ≪別に謝られても困るぜ。だが、さっきも言った通りザイは考えなしに突っ込んでなんとかなるほど甘くはねぇ。何か作戦がなきゃ何も出来ねえぞ≫

 ≪作戦か・・・≫

 確かにそうだ。同じ戦闘機相手ならばほぼ敵なしのトリガーだが、どれだけのエースパイロットだったとしても攻撃が通用しなければ意味がない。アーセナルバードのAPSのように。何とかして機関砲を当てる必要がある。何か作戦は・・・

 トリガーは少し考え込み、その時、ある死闘の記憶が脳裏に浮かび上がった。そうか、あの戦法ならあるいは。トリガーはおもむろに無線でジュラーヴリクに話しかけた。

 ≪ジュラーヴリク。そっちのミサイルはザイに通用するのか?≫

 ≪当然だ。EPCMを抜けるのはあたしらアニマしかいねえ。何を当たり前なこと言って≫

 ≪作戦だ。二機で連携してザイを各個撃破する。俺がザイを引き付けて、ジュラーヴリクが後方からミサイルで撃破する。そっちがミサイルを撃ち尽くしたら交代。残りを俺が機銃で撃ち落とす≫

 

 トリガーが提案した作戦は囮戦法だった。かつてアリコーンを巡る戦いの最中、トリガーを狙ってきたPMCのエース部隊、ミミック隊。ジャミングと持ち前の腕前、Su-47の機動性も合わさり、その戦法の厄介さはトリガー自身が身に染みるほど知っている。トリガーはそれをジュラーヴリクと連携して行おうとしていた。

 

 ≪・・・なるほどな、巻き狩り戦法か。即興の作戦にしちゃあ悪くねぇ≫

 ≪・・・いけるか?≫

 ≪ほかに作戦もねえんだろ?乗ってやるよ。本来はあたしが全部射手をやる方が確実なんだが、生憎誰かさんが避けたせいで機銃が空っぽでな≫

 ≪・・・まるでこっちが悪いかのような口ぶりだな≫

 

 決死の回避行動を揶揄するような発言に流石に気分を害したのか、軽く睨み付け反論するトリガー。そんなトリガーもどこ吹く風、ジュラーヴリクが無線越しに意地の悪い笑い声をあげる。

 

 ≪あんたの回避能力を買ってるって話さ。お互い信頼はしきっていないが腕前だけは信じてる。いや、信じるしかない。違うか?どっちかがミスれば両方ともお陀仏だ。頼りにしているぜ、教官殿≫

 

 茶化したような教官呼びに溜め息を吐き、≪・・・了解≫と返答を返しつつ多機能ディスプレイのレーダーに目を落とす。そろそろザイが見えてきてもいい頃だが。そう思い始めた時、トリガーははるか遠くの方で爆発の光を視認した。

 上空で爆発?まさかーー

 

 ≪エンゲリスの迎撃部隊だな。どうやら先陣を切るには少し遅かったようだ≫

 

 答えを出したのはジュラーヴリクだった。持ち前のハスキーボイスは一段と低くなり、戦闘態勢に入っていることが伺える。思ったより迎撃部隊の動きが速かったのか。更に近付くとレーダーにIFFが反応。味方機、そしてザイが映し出された。しかし、やはりミサイルがほとんど機能しないのが大きいのか、所々で味方の光点が消えていく。IFFが表す敵機は・・・9機。カナレイカの情報通りなら一機しか撃墜できていない。ジュラーヴリクも同じようにレーダーを見ていたようで、苦々しげに口を開く。

 

 ≪・・・駄目だな。エンゲリスには防空に二個飛行隊が編成されてるって話だが、全機スクランブルしたとしたら、航跡を見る限り既に40%が落とされてる。残りは粘ってはいるがザイはほとんど損害なし。補給して向かってたらあと二、三機くらいだったろうな≫

 ≪・・・・・・≫

 

 戦力40%損耗。ほぼ壊滅状態か。トリガーは知らず知らずのうちに唇を噛み締める。トリガーはあの灯台戦争を飛び抜けた。誰よりも先に先陣を切り、共に飛ぶ味方の脅威を排除してきた。だからこそ、こうして後手に回され、自らの手が届かない場所で味方機が墜とされていくという状況に慣れていない。エースであるがゆえに、何かを守れない状況下で人一倍無力感を感じてしまう。そのことがトリガーの数少ない欠点だった。タイラー島のあの時だって。自責の念に駆られ始めたトリガーを呼び覚ましたのはジュラーヴリクの一喝だった。

 

 ≪ボサッとしてんじゃねえ、あいつらを助ける為にわざわざかっ飛ばして来たんだろうが!あいつらの散り際なんて見てても面白くねぇぞ!≫

 ≪・・・!いや、大丈夫だ≫

 

 ネガティヴな思考を取り払う。彼女の言う通り、まだ味方は存在している。後悔をするのは残りの味方を助けてからでもいい。今は眼前の状況をなんとかするだけだ。トリガーは操縦桿を握る手に力を入れなおし、一呼吸置くと戦闘空域を見据える。

 

 ≪さァ、ちゃんと着いて来いよ?≫

 ≪ああ、行こう≫

 

 ジュラーヴリクの確認に頷き、二機はほぼ同時に速度を上げ、パワーダイブで真下の戦闘空域へと飛び込んでいった。

 

 ≪じゃあ・・・花火の中に突っ込むとするかァ!≫

 

 

 

 

 

ロシア サラトフ州 エルショフ郊外上空

 5月27日 13時23分

 

 ≪スプートニク2!後ろだ!急旋回!≫

 ≪クソッ、数が多すぎる!手に負えん!≫

 ≪増援はまだか!≫

 ≪泣き言をいうな!ロシアの・・・いや、ファイターパイロットの意地を見せろ!≫

 

 突然のザイの空襲。その迎撃へとスクランブルをかけたエンゲリスの航空部隊は、奮闘こそしているものの性能差に押され、次第にその数を減らしてしまっていた。

 各所から悲鳴のような無線が響き渡る。戦力差は圧倒的だった。このまま全滅を待つしかないのか。パイロットの一人がそう思ったその瞬間、僚機に喰らいついていたザイが突如回避行動を取ろうとし、そのザイにミサイルが突き刺さり爆散した。一体何が。パイロットが突然のことに情報を整理しようとするその前に、上空から2機の機影が飛び込んでくるのを捉えた。その内の一機は眩く光るクロームオレンジの機体。ロシアのパイロットなら見間違える筈もない、あの機体はーーー

 

 ≪見ろ!アニマだ!運が向いてきたぞ!≫

 ≪オレンジ色の機体・・・ジュラーヴリクか!≫

 ≪増援は二機だけか!?それにあの青い機体・・・ラーストチュカじゃないぞ!?≫

 ≪今のうちにフォーメーションを組みなおすぞ!相手は彼女らに任せよう≫

 

 ジュラーヴリクの救援に歓喜する声、共に現れた青いSu-30に困惑する声を他所に、トリガーとジュラーヴリクは次の敵機に目標を合わせる。

 

 ≪BA-01、敵機撃墜≫

 (凄いな・・・)

 

 ジュラーヴリクは急降下中に手近なザイに向けてミサイルを一発。何の障害も受けないが如くザイを撃ち落とした。なるほど、カジンスキー中佐が唯一の対抗手段と豪語するわけだ。自分が苦労して機銃を当ててきたザイにいとも容易くミサイルを叩き込む。その光景を見たトリガーは改めてその能力に舌を巻き、同時に少し羨ましさを覚える。しかし見とれている場合ではない。

 ザイ達は突然の乱入者に混乱したように見える。トリガーはその隙を突きザイの一機の背後へと回り込む。ザイもそれに気づいたのか、射線に入る直前にVTOL機動で敵機の背後を取り返そうとし、それを見越したトリガーは速度を上げ、機関砲の射程から逃れる。そしてトリガーの思惑通り、ザイはトリガーを撃ち落とそうと同じように速度を上げ追随してきた。ロックオン警報と視界が混濁する不快感がトリガーを襲うが、それに構わず機体をバレルロールさせて射線を躱し、彼女の救援を待つ。間もなくオレンジ色の機影がザイの後ろに付き、隙だらけの背後に向かってミサイルをリリースした。目の前の敵機を狙い背中がお留守だったザイは避けることも出来ずに爆散。爆炎と共に砕けた翼の破片が宙を舞う。

 

 ≪よーし、中々いい作戦じゃねえか。次は・・・っておい!≫

 

 援護してやった青いフランカーは既に眼前になく、躊躇なく別のザイから注意を引こうとしているのをジュラーヴリクは慌てて追いかける。同じようにトリガーの背後に着こうとしたザイをミサイルで撃ち抜き、無線にがなり立てる。

 

 ≪馬鹿野郎、連携しようって言ったのはそっちだろうが!こっちのカバーが間に合わなかったらどうするつもりだよ!≫

 

 連携はおろか、何かスイッチが入ったかのように口数が少なくなっている。まるでスタンドプレーが板についたかのような飛び方にジュラーヴリクは苦言を呈さずにはいられなかった。アニマの自分でさえ振り回される程の無茶苦茶な動き。前の部隊でもこんな飛び方をしていたのだとしたら、僚機は援護にさぞ苦労したことだろう。

 

 ≪すまない、他人に攻撃を任せることに慣れていないんだ・・・。だがそっちの腕なら合わせられる。そう思ったんだ≫

 ≪なんだよ、それ≫

 

 当の本人はあっけらかんと言ってのけた。妙に恥ずかしい台詞に一瞬たじろぐが、突然のロックオン警報に一気に現実に引き戻される。

 

 ≪ジュラーヴリク、後方に敵機!≫

 ≪チッ・・・!こんのぉ!≫

 

 ザイもトリガー機が攻撃をしてこない違和感に気付いたようだ。攻撃してくる機体さえ墜とせば後はどうとでもなると踏んだのだろう。ジュラーヴリクに狙いを定め、三機が後ろに喰らいついてきた。ドーターのHiMAT機動をふんだんに使い振り切ろうとするが、三機ものザイにマークされ、中々振り切ることが出来ない。ロックオン警報も鳴り止まず機銃が主翼を掠める。このままでは速度エネルギーを失ってしまいそうだ。そう思い始めた時、ザイからノーマークなトリガーから無線が飛んでくる。

 

 ≪交代だジュラーヴリク!こっちに向かって飛んでくれ!≫

 ≪ああ!?なんだよそれ!?≫

 

 ザイに追われながらも機外状況をスキャン。レーダーでトリガー機の位置を発見する。

 

 ≪いいから、俺を信じろ!≫

 ≪・・・クソッ!≫

 

 何をする気かは知らないが、信じるしかこの状況を打破することは出来なさそうだ。推力を全開にし、トリガーの元へと向かう。当然ザイも速度を上げ追いすがる。ミサイルをフレアで防ぎながらもトリガーとの距離を一気に縮める。

 

 ≪何をする気だよ兄さん!?≫

 ≪いいから、そのままだ!≫

 

 ジュラーヴリクが近づくのを確認すると、並走するように方角と高度を合わせる。そしてトリガーは飛んでくるジュラーヴリクの方向に向かって水平旋回の姿勢に移ったかと思うと、その場で機体を一気に90度ピッチアップさせた。コブラのようだがその姿勢は縦方向ではなく横方向。フック機動だ。その姿勢のまま機関砲の引き金に手をかける。傍から見ればジュラーヴリクを狙ったように見える機動だが、トリガーの狙いはジュラーヴリクの背後。敵機を追い直線機動になってしまっている追手のザイだった。

 

 (いくらEPCMが強かろうと、機動が単調ならば・・・!)

 

 いくらEPCMで視界をぼやかそうと、ザイ自体が動いているわけではない。ザイとのたった数コンタクトで、トリガーはEPCMへの対処を独自に編み出していた。

 ジュラーヴリクの背後に機関砲を偏差射撃で叩き込む。寸分違わぬ狙いで放たれた30㎜の火箭が、その内一機の翼を噛み砕いた。寸前で回避機動を取った二機も、障害がなくなったジュラーヴリクが切り返し、アニマ誘導のミサイルでその身をバラバラに砕かれる。敵機の動きを逆手に取った咄嗟の連携。それを成功させたトリガーをジュラーヴリクは驚愕の目で見つめていた。

 

 (あたしを追ってくることを利用してザイの機動を限定させたのか。あれが・・・人間の戦い方)

 

 マニューバのみで叩き伏せるのではなくその場の状況全てを使い、ミスを誘って撃ち落とす。演算能力を操縦と気流計算にほぼ全て割いている戦闘特化のジュラーヴリクでは考えも及ばなかった作戦。

 

 (まさか、中佐が言っていたのはこのことなのか・・・?)

 ≪大丈夫か?どこか被弾したのか?≫

 

 考えに耽るジュラーヴリクをトリガーが引き戻す。思考で機動が鈍っていたようだ。心配そうに隣へと付くトリガーに向かって声を張り上げる。

 

 ≪な、なんでもねえよ!ともかく、あたしは今ので弾切れ、交代だ。そっちから言い出したんだ。ポカしやがったら承知しねえからな!・・・あと、さっきは助かった≫

 

 その言葉に翼を振ることで返すと、青いフランカーはジュラーヴリクの後ろへと付いた。タイミングは任せると言っているかのように。

 ・・・全く、アニマが人間に背中を任せるなんて想像もしていなかった。でもなんだろう。こいつとなら上手くやれそうな気がする。

 ジュラーヴリクはそんなことを思いつつ、残る敵機の方角を睨み付けた。

  

 敵機、残り四機。

 

 




 本当に、本当に長らくお待たせ致しました・・・!失踪したかと思った方も多いでしょうが、なんとか投稿が出来そうです。長らくお待たせした割にはボリュームが少ないかもですが次話はなるべく早く投稿しますので暫しお待ちください・・・!
 ところで今日エースコンバット7に新機体が配信されましたね。震電Ⅱ・XFA-27・CFA-44。皆様もう手に入れられましたでしょうか。
 早速私も乗ってみましたが、震電Ⅱの可変翼が一番のびっくりポイントでした。まさか速度域ごとに形態が用意されているとは、流石の日本製だァ・・・CFA-44も二連装EMLにADMM、IEWSによる電子戦と中々殺意が高いです。流石にEMLの威力は半減しているとの情報ですが・・・。ADMMは対地対空に両方使える8AAMのような感覚で殲滅プレイが捗りますね。
 何よりXFA-27がPS4のグラフィックでリメイクされて、当時のスカーフェイス達は狂喜乱舞していることと思います。4連ミサイルベイも特殊兵装で再現済み、実質標準ミサイルも併せて6連ミサイルベイと、HCAA並に凶悪になりそうな予感です。これからのマルチがもっと賑やかになりそうですね!
 
 評価をくださったサイル様、オヴニル グラーバク飛行隊様、こうぴち様、しえの様、に五一様、wind様、mothi様、まーりゃん000様、黒兎之天神様、創作家ZERO零様、@@@И様、本当にありがとうございます!この場を借りて感謝申し上げます!
 
 小説の評価、感想、批判等々、お待ちしております。
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