ガーリー・エアフォース ~三本線の異邦人~   作:南十字星

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MISSION 01 ~異国との邂逅~

 「う・・・ここは・・・」

 

 あの黒い裂け目に吸い込まれてからどれくらい経っただろう。トリガーはX-02Sのコックピット内で意識を取り戻しつつあった。キャノピー越しにエンジン音が聞こえる。こうして意識を取り戻せたということは、あのまま墜落などはしていないということであり、トリガーは少し安堵した。意識を失った際に操縦桿から手を放していたおかげか、オートパイロット機構で墜落を免れていたのだ。気絶する前に目一杯出力を上げていたスロットルも調節してくれていたのか、巡航速度、速度600km/hまで抑えられている。

 

 (助けてくれたんだな・・・ありがとう)

 

 トリガーは感謝の気持ちを込めて操縦桿を優しくなでた。しかしあの時のことは夢ではないということも、X-02Sのコックピットが物語っていた。燃料もテスト飛行、そしてあの戦いでかなりの量が消費されていた。

 

「ここは・・・どこなんだ?それに・・・陸?」

 

 そう何よりの疑問、飲み込まれた先がどこなのかということ。そして、テスト飛行は海上で開始されたはずなのに、眼下に見える景色が湖すらも見えない内陸であるということだ。X-02SはCFTの採用により、初期生産型のA型より戦闘行動半径が230㎞延長され、戦闘行動半径、1280㎞を誇っている。単純計算で2560㎞を単独飛行することが可能だ。しかし、フォートグレイス島からオーシア内陸部までは、少なくとも3000㎞以上の距離がある。空中給油でもない限り、あれだけの空戦を行った状態で洋上を渡り、大陸まで到達、まして内陸を飛行するなど到底出来る筈もなかった。恐らくあの裂け目とここにあった(のかわからないが)裂け目がポータルの様に繋がっていたのだろう。

 

 「ロングキャスター、こちらストライダー1、聞こえるか。コントロール!・・・クソッ・・・」

 

 こちらを見つけてもらおうと無線で呼びかけてみるが、雑音が返ってくるばかり。衝撃で壊れてしまったか。トリガーは歯噛みする。GPSを使おうにも灯台戦争の終盤、ASAT攻撃(衛星攻撃兵器)により軍事衛星が破壊され、その巻き添えで民間用衛星も巻き添えを食らい、ケスラーシンドロームが発生。GPS航法など、初めから望むべくもなかった。燃料の減りを見るに五分ほど気絶していたようだ。燃料インジケーターの表示がかなり心許なくなってきている。可及的速やかに着陸場所を探さなければ、ワイバーンが空腹のあまり地面に頭を突っ込んでしまうだろう。それだけはごめんだ。

 

 (相棒をおいて先に天使とダンスする気はない。・・・どこでもいい、空軍基地を探そう。空間転移・・・?したのは信じられないが、そこまで遠くに離れてはいないはず。恐らくここはオーシア大陸だろう。こうして飛んでいればどこかの基地がこいつを見つけてくれる筈。もし見つけてくれなかったら廃空港を探すしかない)

 流石に機密の塊であるX-02Sで民間空港に着陸するわけにはいかない。あの憎らしいザップランドの飛行場を少しだけ恋しく思いながらそう判断したトリガーは、空軍基地に見つけて貰いやすいように高度を上げようとしたその時、レーダーが10時の方向からの機体を二機捉えた。

 

 「あれは・・・」

 

 どこかの基地のエスコート機だろうか。機体識別、IFFに返答はない。しかし、ASAT攻撃によって衛星経由のIFFは軒並み使えなくなっている。それでもどこかのレーダーが捉え、スクランブルで来てくれたのだろうか。レーダーを照射されているが、X-02Sの存在は最高機密だ。向こうが関知していないのも致し方ないだろう。もし撃たれてもまだ何発かは躱せる筈だ。無線が壊れてしまった為、更に面倒をかけることを申し訳なく思いながら接近する機体を観察すると、トリガーはその機影に気付いた。

 

 「・・・フランカーか?」

 

 フランカー、Su-35。大型の制空戦闘機だ。オーシアではあまり配備されていない機体が接近してきていた。主にオーシアが使用している機体はF-16・F-18・F-14D・Typhoon・F-15・F-22の筈だ。フランカーを配備しているのはオーシアの特殊飛行隊か、敵国であったエルジア・・・。ではここはユージア大陸?不可抗力とはいえ戦後のゴタゴタの最中に(自分で言うのもなんだが)オーシアの撃墜王がかつての敵国への領空侵犯、それも鹵獲機で行ってしまうなど前代未聞だ。両国の上層部になんといわれるか・・・。これから起こるであろう惨劇に身を強張らせながら横を通り過ぎる機体を見た瞬間、更なる異変に気付く。

 

 (エルジアの国籍マークじゃない?)

 

 それどころかオーシアのマークでもない。赤く彩られた星のマークが、主翼と尾翼に飾られている。そして二機のフランカー、二機のSu-35が右横と自分の背後に付くと、壊れたと考えていた筈の無線から、大声での警告無線が響き渡った。

 

 ≪Предупреждение для самолета неизвестной национальности от красного. Ваш самолет в пределах моей досягаемости. Командуйте немедленной сдачей и землей. Повторить. Командуйте немедленной сдачей и землей. (レッド・リーダーより国籍不明機に告ぐ。貴機は完全にこちらの射程内にある。ただちに投降し、着陸せよ。繰り返す。ただちに投降し、着陸せよ)≫

 

 いきなりの警告に、トリガーは驚きを隠せなかった。無線が壊れていなかったのは幸いだったが、聞こえてきたのはオーシアどころかエルジアでも使われることはないであろう言語だったからだ。この言語は理解できる。フランカーファミリーやミグ系列のシステム言語に使用されているものだ。しかし、この言語を空軍無線にも使用している国は一つしかない。

 

 (ユークトバニア連邦共和国・・・!?)

 

 そう。10年前、ベルカの思惑に操られ、オーシアに宣戦布告を仕掛けた国。ストレンジリアルの主要大陸の一つ、ベル―サ大陸を領土とする世界最大の大国。なんということだ。自分はそんな所まで飛ばされてしまったというのか。しかしあの星のマークは?狼狽するトリガーを他所に、Su-35は警告を続ける。

 

≪Если вы не будете следовать, мы готовы застрелить вас. Следуйте инструкциям здесь, чтобы изменить свой курс. Если вы принимаете предупреждение, опустите посадочную ногу.(こちらの指示に従わない場合、こちらは貴機を撃墜する準備が出来ている。こちらの指示に従い、進路を取れ。警告を受け入れるのならば、ギアダウンしろ。)≫

 

 兎にも角にも従うしかない。トリガーはギアのスイッチを操作し、降着装置を降ろす。それを確認した後ろの一番機らしき機体が二番機に何かを伝えると、右横のパイロットが手招きするようなハンドシグナルを出した。付いてこい、と言っているのだろうか。トリガーが頷くと、ニ番機らしき右横の機体が加速し、X-02Sの前に出る。一番機は後ろに付いたままだ。レーダー照射は続いている。妙な真似をしてみろ、すぐにでもミサイルを叩き込んでやると言わんばかりに、R-73アーチャー短距離空対空ミサイルをこちらに突き付けてくる。無論そんなことをする理由も燃料もありはしない。おとなしく従う以外に選択肢はないのだ。

 

 ≪Красный 02, уведомить Авиабаза «Ейск». Запросите разрешение на переход к вынужденной посадке самолетов неизвестной национальности.(エイスク空軍基地、こちら赤の02。国籍不明機の強制着陸の許可を求める。)

 

 二機の鶴に連行されながらも、トリガーはふと彼らの無線に疑問を覚えた。

 

 (・・・国籍不明機?)

 

 そのトリガーの疑問の解決には、さほど時間を要することはなかった。




 すまねえ、ロシア語はさっぱりなんだ。とにかくグーグル翻訳にかけて、一番日本語訳がしっくりくるような翻訳を採用していますが、これでもロシア語が本格的に分かる人からすれば文法メチャクチャだろうと思います。Прости…!
 説明文や心情描写が多すぎるせいで、文字数のわりに全然話が進んでいません。恐らくこれからもずっとこのような感じかと思われますが、付き合っていただけると幸いです。暫くオリジナル展開が続きますが、必ず本編の軌道には載せますのでしばしお待ちを。アニマは後一、二話で出るかも…?
 次回、「捕縛、そして尋問」
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