ガーリー・エアフォース ~三本線の異邦人~   作:南十字星

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 前回までのあらすじ
 突如現れた裂け目に吸い込まれてしまったトリガーはロシアという国の空中へと飛ばされてしまい、国籍不明機として捕縛されてしまう。またもや独房へと入れられるトリガー。トリガーの話を信じない尋問官にあわや自白剤を打たれんとした時、トリガーを救ったのは皮肉にもこの世界の敵であるザイだった。混乱の広がる基地。その時基地司令官、ペトロフ司令はある決断を下す・・・


MISSION 03 蝶との出会い ①

 フォートグレイス基地

2020年2月13日 午後6時32分

 

 トリガーが消えてから二時間後、カウントとロングキャスターはあの後も周辺地域を探し回ったが、一度補給のためフォートグレイス基地へと戻ってきていた。テスト機とそのパイロットが一瞬にして消えてしまったという情報は、基地を混乱と喧騒で満たすには充分すぎた。

 

 「トリガーの野郎はまだ見つからねえのか!?」

 「・・・まだ見つかっていない。空中哨戒とオーシアのAWACSを総動員して捜索網を広げてはいる。しかし、いくらあの機体とはいえ、燃料は無限じゃない。あの裂け目も並行して探してもいるが、ここまで見つからないとなると、最悪ーーー」

 「・・・トリガーは墜ちたりなんかしていねえ」

 

 墜落。ロングキャスターがそう紡ごうとした時、カウントは絞り出すようにそう言った。

 

 「ずっと一緒に飛んできた俺だから分かる。あいつは・・・あいつはどんな空でも飛んできた。クソみたいなミッションも、敵のエースも、あの潜水艦や無人機も、あいつはその上を飛び抜けた。だから、あいつが今更墜落で死ぬなんて、空に背を向けることをする訳がねえ」

 「カウント・・・」

 「あいつは見つかるさ。絶対にな」

  

 半ば祈りとも捉えられるその言葉。しかし確信めいたものを纏って出たその言葉を最後に、カウントは補給を済ませかけているF-15の元へ向かっていった。その途中、トリガー専用のハンガーと、トリガーがいつも座っていた椅子が目に入った。F-15の補給にまだ少し時間がある。カウントは、トリガーの椅子へと座り、同じように夕日ももう落ちかけている夜空を見上げた。

 

 (トリガー、なんでお前だけいつも大変な目に遭うんだよ。大統領殺しの汚名を着せられ、味方に暗殺されかけて、挙句に世界の命運まで背負わされた。もう充分なはずなのに、お前はまた面倒に巻き込まれようとしている様な気がする。助けになってやりてぇのに、お前の居場所すら分からねえ。悔しいよ)

 

 自分の無力さに苛まれながらも、今のカウントには相棒の無事を祈ることしか出来なかった。

 

 「くたばってるんじゃねえぞ、トリガー・・・」

 

 

 

 

 エイスク空軍基地

2017年5月26日 午後2時12分

 

 厚い壁の外から怒号が聞こえる。けたたましいアラートと、戦闘機が次々と飛び立つ轟音が聞こえる。元の世界なら一緒に飛び立っているだろう騒がしさ。しかしトリガーはあの頃のエースパイロットではなく、ただ独房の中で座り込むことしか出来ないただの一人の人間だった。

 

 (もどかしい気分だ。自分だけ出撃しないというのは)

 

 敵機来襲、スクランブルに出撃をしない。そのこと自体初めてだったトリガーはかなりの違和感を覚える。一度帰還直後に基地への攻撃を受けたことはあったが、あれは上がる前にサイクロプス隊が墜としてくれた為ノーカウントだろう。戦時中ゆえ仕方なかったとはいえ、まるで仕事中毒者だったな、とトリガーは半ば自虐的な笑みを浮かべた。兎も角、今は俺に出来ることは何もない。上がったパイロット達が頑張ってくれなければ、俺はこのまま爆発に巻き込まれるか、上の天井に押し潰される末路をたどるだろう。まぁ、俺もたくさん人を殺してきたし、お似合いの最後かもしれないな。狭い部屋に閉じ込められると思考が暗くなるのは本当らしく、トリガーが自虐の極みの様なことを考えていると、こちらに走ってくる足音が反響して聴こえてきた。何事かと独房の方角を見ていると、一人の兵士が独房の前で立ち止まり、鉄格子の扉を開けてこう言い放った。

 

 「貴様に仕事がある。ついてこい」

 「・・・仕事?」

 

 

 

 

 兵士に連れられるがままに歩いていくと、トリガーは一つのハンガーへ辿り着いた。その中には、整備士によってフライトチェックを受けている一機の淡いブルー塗装の航空機があった。Su-30。そのSM型。複座コックピットに二次元推力偏向ノズル。ロシア製の最新アビオニクスを搭載した強力な多用途戦闘機だ。

 

 「誰か出撃するのか?」

 「お前が出撃するんだ。こいつに乗ってザイと戦ってもらう」

 

 そう言われながら手錠を外される。突然の出来事に理解が追い付かない。

 

 「こいつに・・・乗る?どういうことだ。俺は貴方達にとってはーーー」

 「分かっている。俺だって疑問に思ったさ。しかし基地司令の命令だ。従うしかあるまい」

 「基地司令の・・・?」 

 「今は猫の手も借りたいってことさ。この状態じゃぁな」

 

 声のする方に目を向けると、一人の整備服の男性がこちらに歩いてくる。青い瞳にチョビ髭、整備で鍛え抜かれたであろう筋骨隆々の身体。その男はトリガーの目の前で立ち止まる。

 

 「この基地の整備班長、ゼレンスキー・アルチョムだ。正直言って、どこの馬の骨かも分からんパイロットに俺たちの機体を任せたくはない。しかし現状、そんなワガママが許される状況じゃないからな。俺たちは少しでも生き延びるためならなんだって使うし、利用する。それが例え犯罪者だろうと、ザイの部品だろうとな」

 

 最後に気になるワードが聞こえたが、その意味を聞く前に「班長、最終チェック、OKです!」という整備兵の呼び声が聞こえる。その言葉に頷くとアルチョム整備班長はトリガーの前に向き直る。

 

 「というわけだ。言っておくが拒否権はないぞ。この機体で戦闘空域に行って、ザイがこの基地に侵攻するのを一分一秒でも食い止めるんだ。・・・頼む、俺たちの機体と、うちのパイロットを援護してやってくれ。動かし方は分かるか?」

 「大丈夫だ、操縦方法はわかる」

 「・・・了解した」

 

 トリガーはその言葉に頷き、ヘルメットを受けると、タラップを上がりコックピットへと身を沈め、ハーネスを締める。操作方法自体は今までの機体とあまり変わらない。ラプターやイーグルとはスロットルの形式が違い、手前に引くことで推力を増すタイプだが、まぁじきに慣れるだろう。

 

 「まさか二度も戦った機体に、今度は自分が乗ることになるとはな」

 

 こんな異国の地で、かつての敵エース機に乗ることになろうとは、とんだ縁もあったものだ。トリガーはまたもや皮肉な笑みを浮かべると整備班達が離れるのを確認し、JFSを起動。二基のリューリカ=サトゥールン AL-31エンジンが轟音を奏でる。それを確認したアルチョム整備班長は、出撃準備完了報告を管制に出した。

 

 

 「基地司令、奴の機体準備が整ったとの報告ですが・・・本当に、飛ばしてよろしいのですね?」

 「全責任は私が負うと言った筈だ。この際一機でも人手は欲しい。最悪、撤退する時間程度は稼がせてもらわなければな・・・」

 「・・・管制、始めます」

 

 ≪Пилот захватчиков воздушного пространства,Следуйте инструкциям здесь. Заказать такси до взлетно-посадочной полосы.Ваш позывной преступник 01.(領空侵犯機のパイロット、こちらの命令に従え。滑走路までタキシングしろ。貴様のコールサインはプレストプニック1だ)

 ≪Роджер(了解)≫

 プレストプニック、犯罪者か。スペア(代替品)とどっちがマシだろうな。そう思いながら言われたとおりに滑走路に機体を走らせる。

 

 ≪Преступник 01, Вы очищены для взлета. (プレストプニック1、離陸を許可する)

 

 トリガーは離陸許可と同時にスロットルを最大。トリガー操るロシアの鶴がエンジンに背中を押され、大空へと飛び立つ。

 

 ≪プレストプニック1、離陸を確認。高度制限を解除する。針路270に転進し戦闘空域に向かえ。言っておくが逃げようとは思うなよ。増援部隊がザイと共にお前を撃ち落としに行くからな。ザイに墜とされるなら別だ。罪を償うチャンスだ≫

 ≪了解した。方位270。戦闘空域に飛行する≫

 ≪・・・少しは反抗しないのか≫

 ≪別にする理由もない。慣れてるしな。それに・・・頼まれたから≫

 ≪何の話だ≫

 ≪何でもない、忘れてくれ≫

 

 トリガーは最大推力のまま戦闘空域へと加速していった。そしてその光点をハンガーから見つめるアルチョム整備班長。一人の整備士が彼に困惑した顔をしながら質問を投げかけた。

 

 「班長。なぜ奴にあんなことを?奴は我らの祖国に無断侵入した重罪人です。そんな奴にうちのパイロットを頼むだなんて」

 「・・・ああ。俺もだいぶ落ちぶれたものだ。領空侵犯者に命運を託すなんてな」

 

 アルチョム整備班長はそう言いながら、昨日の国籍不明機の調査の際、あることに気が付いたことを思い出す。機体に激しく機体を振り回したかのような負荷がかかっていたのだ。エンジンもかなり焦げ臭かった。無理に無理を重ねてエンジンを回したかのような匂い。ここまで負荷がかかるような機動は9Gを優に超える旋回が連続して必要であり、そんなことをしようものならば、並のパイロットなど即座に気絶してしまうだろう。しかしあのパイロットは違った。このような機体に乗っていながら、その翌日、嫌な顔一つせず自分の戦闘機に乗り飛び立っていったのだ。もしかしたら、もしかするならば・・・あいつはザイの機動についていけるかもしれない。そんな淡い希望を、知らないうちにアルチョムは抱いていた。

 

 トリガーはアフターバーナーを焚きながらあの時の連絡員の言葉を思い出していた。

  

 【ザ、ザイの襲撃です!数は五機編隊!】

 

 五機編隊。一機のみでも撃墜するのにあれだけ苦労したというのに、今度は五機。あれが編隊を組んで襲ってくる。その現実に背筋が寒くなる感覚を覚えた。今回はX-02Sも、あのEMLもない。為す術もなく撃墜されるかもしれない。それでもーーー

 

「やるしか・・・ないよな」

 

どうせあのままいても地上にいたまま殺されていたかもしれない。それならば、死力を尽くして、空で散る方が何倍もいい。そうあっさりと散るつもりはないが。パイロットとしての意地の光を目に宿しながらアフターバーナーで移動すること二分。目の前に戦闘空域が見えてきた。この世界では衛星は生きているようだ。IFFが表す数は…9機。既に三機やられている。その中にあの光を反射したようなガラス細工の機影も見える。数は・・・情報通り五機。粘ってはいるが撃墜には至っていないようだ。

 

 ≪くそっ、やられた!増援はまだか!≫

 ≪ジョールトゥイ3!後ろに付かれた!回避しろ!≫

 ≪ブリャーチ!≫

 

 劣勢を表す無線が聞こえる。誰かが後ろに付かれたようだ。今にもあの機銃で一機のフランカーを撃ち抜こうとしている。そうはさせるものか。トリガーはパワーダイブで上からとびかかり、R-77中距離空対空ミサイルを撃ち込む。ミサイルは着弾手前で迷走し、自爆する。あのECMはここでも健在か。トリガーは舌打ちするが向こうの意識をこちらに逸らすことは出来たようだ。後ろに付かれていたフランカーはその場を離脱する。

 

 ≪増援か!?≫

 ≪こちらプレストプニック01。作戦空域に到達≫

 ≪その声・・・あの時の領空侵犯機のパイロットか!なぜその機体に!≫

 ≪理由は生き延びてからまた聞いてくれ、来るぞ!≫

 

 あの時のエスコート機が無線越しに詰め寄ってくるが、それを一蹴し、目の前の敵機に集中する。

 

 ≪プレストプニック01。エンゲージ!≫

 

 よくもやってくれたなと言わんばかりにさっきのザイがこちらに迫ってくる。こちらもアフターバーナーを吹かし、接敵。撃たれるミサイルをチャフ・フレアで躱しながら攻撃ポイントを探る。

 

 (どうせミサイルを撃たれてもあのよくわからないECMで逸らされてしまう。ならばギリギリまで近づいて機銃を叩き込むしかない、増援が来るまで耐えられるかどうか・・・)

 

 トリガーはそう判断し、ガラス細工のように煌めく敵機を追いかける。初めて戦った時と同じように、あの気持ち悪さと視界のぼやけがトリガーを襲うが、それを気にしないが如くザイとの距離を詰める。ザイは尻尾状のノズルを活かし、あの時と同じように回り込んで来ようとしてきたがトリガーはそれをいち早く察知し、エアブレーキ全開、右にロールとハイG旋回で相手の逆方向へと針路を転換する。そのままの慣性で勢いよく二次元推力偏向ノズルを作動、急激に180度機首の向きを変えるハーフクルビット機動で敵機を再び射程内に捉えた。ザイは突然のカウンターマニューバに対応しきれず切り返しをしてこない。もらった。

 

 「インガンレンジ!ファイーーー!?」

 

 機銃の発射トリガーを押したと同時に、突然響くミサイルアラート。トリガーは反射的に機体を左に傾け、再びフレアを散布して躱す。機銃はザイの右翼に数発当たっただけだった。致命傷なし。

 

 (クソ、一機でも墜とせれば楽になるかと思ったが)

 

 前方のザイは仕切り直すために距離を開け、その穴を埋めるように、残り四機のうち二機がこちらの方に向かってきていた。今のマニューバでこちらを警戒したのだろう。

 

 (三対一・・・しかし三機こちらに来てくれる。基地を守るには好都合だ)

 

 そう考えるや否や推力全開、基地とは反対の方角へと遠ざかる。そしてそれを追うザイ。

 

 ≪こちらプレストプニック01。基地より敵機を引き離す≫

 ≪ま、待て!ザイ三機を相手に逃げるつもりか!?≫

 ≪それしか手はない≫

 ≪どうしてそこまでして・・・≫

 ≪頼まれたんだ、基地の人に。上のパイロットを守ってやってくれって≫

 ≪・・・!≫

 ≪大丈夫、考えはある≫

 

 ロシアパイロットの声を他所にトリガーは後ろのザイを引き離しにかかる。奴らの戦いの中で分かったことがある。少なくとも、あのタイプは機動力はとんでもないが、速度自体はそこまで早くはない。そして速度で離される相手はじれったくなり、ミサイルを放ってくる。そのトリガーの読みは的中し、速度では追いつけないと判断したザイ三機は、一斉にトリガーに向かってミサイルを放つ。

 

 (・・・今だ!)

 

 ミサイルアラートが鳴り響くと同時に、トリガーは操縦桿を手前に倒し。急激なノーズダイブをかける。機首が一気に下を向き、高度が自機の速度と共に急速に失われていく。

 

 (まだだ、まだ・・・今!)

 

 雲を突き抜け、海に海面が広がり、そして海面の波が視認できるほど近くなったその瞬間、トリガーは機首を引き起こし、追ってきたミサイルを海面に叩きつけた。後方の爆発音と、機内中にGPWS(地上接近警報)が鳴り響く。しかし危機を脱したわけではない。機首を上げるのが僅かに遅かったのか、今にも機体背面下部のエアインテークが海面にぶつかろうとしていた。墜ちる。そうトリガーが思った時、無意識にミサイルの投棄操作を行っていた。

 左右の主翼パイロンからR-77ミサイルが外され、その反動と地面効果により、Su-30SMが急速に浮き上がる。

 

 「上がれええええええええええ!」

 

 凄まじいほどのGを身体に受けながら、フルスロットルで海面に推力を叩きつけ、再び機体が上昇する。ザイ達もその後を追うが、今からの加速と、ほとんど速度を殺さず、維持していたSu-30SMに追いつける訳がない。上昇を続け、雲の遥か上まで突き抜けたと同時に、トリガーはエアブレーキを作動、ほぼマッハ2に近かった速度が、一秒500㎞以上のペースで失われていく。

 

 「っぐうううううううううッ・・・」

 

 再び凄まじいほどの減速Gを身体に受けるが、ここで決めなければ本当に後がない。そのままの勢いで背面からストールターン、同じく雲を突き抜けてきた三機のザイとヘッドオンの態勢に持ち込む。今あるすべてのチャフを使用し、衝突防止の為ロールをかけながら目の前の三機にありったけの機銃を叩き込んだ。

 

 ガガガガガガガッ!

 

結果、トリガーとほぼ同軸上にいたザイは以前の被弾もあり機銃をまともにくらい爆散。他の二機もとっさに回避機動を取るが、全ては避け切れずに翼に穴を開けられ、その姿勢を崩していった。

 

 「スプラッシュ1!」

 

 

 「ぷ、プレストプニック01、ザイを一機撃破!」

 「なんだと!?」

 

 あまりにも意外な撃墜報告に、管制塔は騒然となる。半ば増援までの時間稼ぎの為に遮二無二に出撃させたパイロット。味方の盾ぐらいになってくれれば御の字だと思っていたあの男が、味方から敵を引き離し、あろうことか単機であのザイを撃墜した。

 

 「し、司令・・・」

 「一体何者なんだ。あの男は・・・」

 

 ペトロフ司令は呆然としながらその場で呟いた。その時、レーダー員がある報告を告げる。

 「BA01及びBA02、作戦空域に到達!」

 「・・・間に合ったか!」

 

 

 「ハァ・・・ハァ・・・やった・・・」

 

 ほぼ博打とはいえ、ザイを撃墜。その事実にトリガーは小さくため息を吐いた。激しい機動の連続でもう身体は悲鳴を上げている。だが、奇妙な充足感に包まれていた。

 

 (一回戦えていたことが功を奏したな。いきなり五機がファーストコンタクトだったら、一体どうなっていたことか)

 

 そう考えると肝が冷える思いだ。しかし、俺は生き延びた。幸運の神様がいるとしたら今回は俺に微笑んだのだろう。こんな所まで飛ばされる前に微笑みかけて欲しかったものだが。そうくだらないことを考えていた時、機内にロックオンアラートが響き渡った。

 

 「しまった!」

 

 撃墜したことで頭がいっぱいだった。フレアはゼロ。機銃ももう一斉射分も残ってはいない。先ほど損傷を与えた二機。致命傷ではなかったのか、煙を吹きながらもこちらに近付き、向こうもミサイルがないのか可動式機関砲を向けてくる。一秒でも引き離そうとアフターバーナーを全開にするが、それでも速度の乗った向こうが上だ。左右に分かれ、こちらを包囲しながら蜂の巣にせんとしてくる。駄目だ、そう思い、自機を貫くであろう機銃への衝撃に備えた時、爆発音が響いた。・・・自分の航空機じゃない? 左右からの爆発音。いったい何が。左右を確認した時、敵機は回避機動に入っていたのか、自機から少し離れた場所で火球が二つ生じていた。後ろからのエンジンの轟音。味方機が助けてくれたのか。そう思って轟音のする方向を見た時。

 クロームオレンジとアクアマリンの輝きが見えた。その二つの輝きはこちらを追い抜かすと、華麗な上昇からのターンを決め、再び基地の方向へと折り返していった。

 

 「・・・何だ?あの機体は・・・」

 ≪プレストプニック01、作戦終了だ。基地へ帰投せよ≫

 「・・・了解」

 

 空軍基地から作戦終了の指示が出た。地上で休める・・・かどうかは不安だが、少なくとも生き延びることは出来たんだな。さっきの戦闘機に感謝しなければ。そう思いながら基地へと針路を向けた。

 

 

 

 

 

 ≪チッ、事前情報を間違えやがったのか?四機しかいないじゃねえか。ザイは分かれてるし、ロシアのパイロット達もあたし達が来るまでの時間にしちゃあえらく生存率が高いし。変な戦場だ≫

 ≪ジュラ・・・≫

 ジュラ、と呼ばれた女性が毒つき、その言葉をたしなめるかのようにもう一人の女性の声が紛れ込んできた。

 ≪金糸雀(カナレイカ)より蝶(バーバチカ)。こちらの事前情報は間違えていない。貴隊が到着する以前に、エイスク空軍基地の機体が一機、撃墜したようだ≫

 ≪ハァ?生身の人間がか?一体どんな奴だよ≫

 ≪不明だ。しかしエイスク空軍基地に記録がある。撃墜した機体はSu-30だ≫

 ≪Su-30っていやぁ、さっき追われてた機体の・・・≫

 

 ジュラが後ろを振り返ると、自分達と同じように基地へと向かう、先ほどまで単機で奮戦していたSu-30SMが、その大きな緑色の瞳に捉えられた。

 

 「へぇ、あいつが・・・ねぇ・・・」

 

 先頭を行くクロームオレンジの機体に興味深げに見つめられていることを、今のトリガーは知る由もなかった。




 一刻も早くアニマを出さなければただの異世界戦記物になりそうだと危うんだ結果、軽い短編並の文字数になってしまいました(吐血)。とても読みにくく、冗長な文章に仕上がってると思いますが、どうぞご容赦を…それでも、大まかなプロットからストーリーを適宜考えて文章に起こすというのは意外と面白いですね。こんな行き当たりばったりな方法で小説を書いていますので、投稿時間にはかなりムラがあると思います。重ねてご容赦を…早くアニマの空戦シーンも書きたいなぁ…!

 小説の評価、換装、批判等々、お待ちしております。

 次回「蝶との出会い ②」
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