ガーリー・エアフォース ~三本線の異邦人~   作:南十字星

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前回までのあらすじ
クビンカ空軍基地へと到着したトリガー。基地へと招いたカジンスキー中佐の説明の中で、トリガーの戦闘機動のデータを用い、ザイの殲滅の後に世界の主導権を握ろうとする試みもあることが明らかとなった。当然そのことに良い感情を持つはずもないトリガー。反発の言葉を放とうとした瞬間、思わぬ乱入者がその言葉を遮るのだった。


MISSION 07 First contact ①

 ロシア クビンカ空軍基地

 2017年 5月27日 午前11時27分

 

 時は遡る。 

 トリガーがカジンスキーの部屋に案内されてから約10分後、二機の機体が滑走路へと着陸してきた。一機はクロームオレンジ、もう一機はアクアマリンの輝きを放っており、キャノピーと思わしき部分には、パイロットを保護するかのような装甲が取り付けられている。その二機は一糸乱れぬフォーメーションランディングでタッチダウンし、滑走路を滑るようにタキシングする。

 

≪BA01、BA02の着陸を確認。次の出撃に備え待機せよ≫

 

 BA01、BA02と呼ばれたその二機は整備員の誘導に従い、トーイングカーまでタキシングをする。牽引されハンガーにたどり着くと同時に徐々にエンジン音が弱まり、それと連動して機体からの発光も弱まっていく。機体の発光が収まっても機体のカラーは発光していた時と同じままだ。慌ただしく整備員が行きかう中、コックピットの中では一人の少女が不機嫌も露わに座席にふんぞり返っていた。

 年は15、16程だろうか。勝気な印象を与えるツリ目。卵型の顔に不釣り合いなほど大きな緑色の瞳に、細い鼻梁と小ぶりな唇が載っている。真ん中分けにされたセミロングの髪はサイドに大きく膨らんでおり、乗機と同じように眩いクロームオレンジの光を湛えていた。彼女はフライトスーツこそ着用しているものの、ヘルメットどころか耐Gスーツも着用しているようには見えない。戦闘機に乗るにしてはあまりにも軽装な彼女は、苛立ちを隠そうともせずに毒づいた。

 

 「ったく、スクランブルかと思えばここ最近少数の制空型ザイばっかだ。いつまであのクソ鳥からの雑魚の対処に追われなきゃならねぇんだ。」

 ≪上層部の意向だ。従え、ジュラーヴリク≫

 

 不満を垂れるジュラーヴリクに管制塔が釘をさす。

 

 ≪ただでさえ二週間前の攻勢ミッションで我が軍とカザフスタンの航空戦力は多大なダメージを負っている。戦力の再編成の時間が必要だ≫

 「なら!」

 

 諫めるような管制塔の言葉にジュラーヴリクはコンソールに拳を叩きつけ噛みつく。

 

 「こんな所で小手先こまねいてないで本丸ごと叩き潰しにいきゃあいいだろう!いくら数を揃えようがどうせアイツ相手にまともに戦えるヤツはあたしらしかいないんだ。今からでもアイツをバイテレクの真横に叩き墜としてモニュメントにしてきてやろうか!」

 ≪国境は超えるなと指示してある筈だ≫

 

 管制塔の声が険しくなる。

 

 ≪先日のミッションの失敗で、ロシアとカザフスタンの間には軍事力のパワーバランスを懸念する動きが強まっている。ここで余計な刺激を加えればカザフスタン軍との戦闘になりかねない≫

 「ザイが真上を飛んでようがこっちを攻撃してくる馬鹿共なんて知ったことじゃぁねえよ!まとめて肥溜めにぶち込んでやる」

 ≪はぁ・・・冷静になれジュラーヴリク≫

 

 管制塔の声の主が嘆息し、落ち着かせるように諭す。

 

 ≪上層部は祖国のことを一番に考えて判断されている。戦力を再編成するというのも、お前たちのような最高戦力の損耗を可能な限り抑えるという考えから来るものだ。目の前の敵ばかりに噛みついていればいい訳ではない。自らの行動が祖国の明日を変える存在である自覚を持つことだ≫

 「チッ・・・」

 ≪まぁ、前回こっぴどくやられたからやり返したいという気持ちも分からなくはないがな≫

 「なんだと!?もういっぺん言ってみろ!」

 ≪い、以上だ。次の出撃に備えろ。交信終了≫

 

 慌てたように通信を切られる。ジュラーヴリクはクソが、と吐き捨てると叩きつけるようにキャノピーの開閉操作を行った。大きな機械音と共にキャノピーの装甲版が展開し、隙間から蒸気が噴き出す。隣のアクアマリンの機体も同様に装甲版が展開し、一人の少女が陽光の元へ照らされた。こちらは年はジュラーヴリクより少し年上だろうか。彫りの深い顔立ちで、機体カラーと同じ水色の髪を短く刈り込んでいる。猛禽類の様な目つきをしており、眉毛がないためか更に鋭い印象を受けた。コクピットを完全に開放したジュラーヴリクは整備員が取り付けたタラップを勢いよく降り、足音も荒くハンガーの外へ歩き始める。もう一人の少女もそれに続き、ぴったりと寄り添うようにしてジュラーヴリクの左隣に着いた。

 

 「・・・管制官の野郎、何がこっぴどくやられた、だ。あんなのは少し油断していただけだ。次に戦う時にはアイツを絶対に破片にしてやる」

 

 先ほどの管制塔の言葉が地味に効いていたのか、ぶつぶつと独り言を言うジュラーヴリク。その言葉に呼応するようにもう一人の少女が口を開いた。

 

 「その通りだよジュラ。私たちに二度目の敗北はない。今度こそあのプロペラ野郎を叩き墜としてやろう」

 「ラーストチュカ・・・そうだな、その通りだ。あたしらバーバチカに負けは許されない。祖国に泥を塗ったアイツをカザフスタンの肥やしにしてやる!」

 「その意気だよ、ジュラ」

 

 ラーストチュカ、と呼ばれた少女の言葉でジュラーヴリクの瞳に活気が蘇る。そうだ。我らはロシアの最強戦力にして決戦兵器、バーバチカ。祖国の空の支配者でなくてはならない。ガラス野郎なんぞに後れを取るものか。怒りの感情が沈み、新たに覚悟を新たにする。その時ジュラーヴリクのお腹から「くぅ~」と可愛らしい音が聞こえてきた。そういえば急なスクランブルで朝食もまだだった。そういえばお昼時だ。ピロシキも新しいものが焼きあがっているだろう。ラーストチュカの微笑ましげな目線を他所に腹ごしらえでもしようと食堂へ向かおうとしたその時、ハンガーに一機の機体が目に入った。

 

 「うん?なんだぁあの機体?あたしらが出る時にはいなかったが」

 「Su-30SM・・・補充機?」

 「一機だけか?上層部の奴ら、何を考えてやがんだ?・・・まぁいい、ハンガーの奴に聞いてみようぜ」

 「え?ちょっと、ジュラ?」

 

 ラーストチュカの制止も聞かず、ハンガー内の整備員に近付く。整備員は一瞬怯えるような眼をしたが、直ぐに立ち上がりジュラーヴリクと向き直る。

 

 「よう、少し邪魔するぞ。この機体は何だ?あたしらが出撃した時にはまだいなかったよな?」

 「え、ええ。10分程前に到着しました。カジンスキー中佐の命令で飛んできたらしく」

 「中佐のぉ?一体なんでそんなこと」

 「私は見ていただけですのでなんとも・・・しかし話は聞こえていました。なんでも飛行教導機とかなんとか」

 「飛行教導機・・・だと?」

 

 瞬間、空気が凍り付いた。

 ジュラーヴリクの瞳がナイフのような冷たさを湛える。ひぃっ、と怯えて後ずさる整備員を他所にジュラーヴリクは一時は忘れていた怒りが沸々と湧き上がってくるのを感じた。中佐の差し金なら十中八九あたしら関連だろう。飛行教導機?この時期に?最高戦力であるあたしらに、ザイではなく人間達とのんびり飛んで飛行スキルを上げましょうだと?何を考えている。

 激しい怒気を隠そうとせず整備員に詰め寄る。

 

 「おい、その飛行教導機のパイロットはどこにいった?答えろ」

 「わ、分かりません!ですが兵士達に連れられて行くのは見ました。カジンスキー中佐にお呼ばれしているとかで」

 「・・・ってことは司令室だな。おい、行くぞラーストチュカ」

 

 言うが否や司令室へ向かって早足で歩いていくジュラーヴリクと、整備員には一瞥もせずその後をついて行くラーストチュカ。嵐のような展開の後、その場には腰を抜かした整備員が呆けたような顔で取り残されるだけだった。

 

 

 

 

 クビンカ空軍基地司令室

 5月27日 11時33分

 

 「オイ中佐!どういうことだこれは!」

 

 トリガーが拒否の言葉を紡ごうとした瞬間、背後から荒々しく扉を蹴破るような音が聞こえる。驚いて背後を振り返ると、そこには八重歯を剥き出しにして激しい怒りをまき散らしているクロームオレンジの髪の少女と、その背後で無表情で佇んでいるアクアマリンの髪の少女がいた。名前を呼ばれた当のカジンスキー中佐は別段驚いた様子も見せず、嘆息してその怒れる少女に諭すように呼び掛ける。

 

 「・・・ジュラーヴリク。入る時にはノックしなさいと何度も言っているでしょう。扉の修繕費用を経理担当に伝える私の身にもなってください」

 「勝手に色々決めておいて随分な余裕だな中佐ァ・・・まずはこの状況を説明しやがれ!」

 

 とカジンスキーとクロームオレンジの少女が言い争いを繰り広げる。いや、この状況を説明して欲しいのはこちらの方なのだが。助けを求めるように目線を送ると、カジンスキーはこほん、と咳払いをした。

 

 「本来は後に紹介をするつもりだったのですが、まあよいでしょう。同志トリガー、彼女がジュラーヴリク。後ろの青髪の少女はラーストチュカです。今回、あなたに飛行を教わる二人でもあります」

 「・・・は?」

 

 ちょっと待て、さっきと言っていることが違うぞ。自動操縦機構、無人機のアグレッサーという話ではなかったのか。

 

 「カジンスキー中佐、先ほど自動操縦機構と言いましたよね?自分への命令は無人機のデータ取りという話では」

 「ええ、言いましたよ?同志トリガー、先ほど申した通りドーターというものはザイのHiMATに追随する為に機動力等を限界までチューニングしています。即ち普通の人間には使いこなせないものに仕上がっているのです。そして、その弱点を克服するための手段が、彼女たちなのです」

 

 何かの冗談かと思った。恐る恐るクロームオレンジの少女を盗み見る。かなり小柄な少女だ。身長は多分150㎝前半。筋肉もそれほどついているようには見えない。戦闘機のACM(空中戦闘機動)にはおろか、少し激しいジェットコースターにも耐えられなさそうに見えるが。そんな不安を見抜いたかのようにカジンスキーは笑う。

 

 「何かの冗談か、というような顔をしていますな。無理もない。私も彼女らが配属された時には何かの冗談かと思いましたからな。しかし実力は折り紙付きです。空戦となれば9G以上の機動も余裕でこなします。先ほどアニマについて疑問を呈していましたね?そう。アニマとはこちらの世界のラテン語という言葉で『魂』。対ザイ用特殊戦闘機、ドーターの自動操縦装置、管制ユニットなのです。つまり彼女らが」

 「アニマ・・・自動操縦装置」

 

 一気に訳の分からない説明が流れ込んできて頭が痛くなってきた。無人機のデータ取りに呼び出されたと思えば、その自動操縦装置がいきなり殴りこんできて、しかもその装置の姿が年端もいかない少女の姿だった。一体なんなんだこの世界は。

 

 「・・・百歩譲ってそのアニマという自動操縦装置があるとしましょう。しかし少女の姿なのには何か理由があるんですか?もっとこう・・・軍人らしい姿とかには」

 「さぁ、私はあくまで指揮する立場ですので専門的なことはなんとも。ザイのコアユニットがユニットチューニングの際少女の形以外受け付けなかったとか、反発された際に抑え込みやすいよう非力な少女の姿にしたとか諸説ありますが、どれも定かではありません」

 「・・・随分と分からないことが多いのですね」

 「ふふっ、そうでしょう。ザイのことは未だ未知のことが多すぎます。ザイのコアを利用したとはいえその中身は完璧なブラックボックス。それに頼らざるを得ないほど追い詰められているのですよ。我々人類は」

 「・・・・・・・」

 「それに、少女の姿をしているとはいえ、その体組成は人間のものとは根本的に異なっています。ザイを生体になじませるため、人工子宮を用いてのバイオテクノロジーを用いました。それによって9G、10G以上の機動に耐えうる身体になっているのです。いわば人造人間のようなものですな」

 

 人造人間・・・。なるほど、それなら生身のパイロットが耐えられない領域でもマニューバの続行が出来るという訳か。なんにせよ、物言わぬ無人機相手に黙々と飛ばずに済むということは喜ぶべきことかもしれない。彼女らは自分の意思を持ち、コミュニケーションも取れるということだ。自分たちの世界のような過ちは起きる心配はないかもしれない。そう少し気が楽になった瞬間、背後からゾッとするような低音のハスキーボイスが耳を貫いた。

 

 「・・・話は済んだか?」

 

 ああ、振り向かなくてもわかる。これはまずい奴だ。語気に殺気が含まれている。長らく蚊帳の外に置かれていたせいか怒りの感情が更に大きくなっているようだ。下手に刺激しようものなら怒りの矛先が全てこちらに降りかかってくるだろう。そうトリガーが顔を青ざめさせるのを他所に、まるで手馴れているかのようにカジンスキーがジュラーヴリクに話しかける。

 

 「・・・それで、説明というのは?ジュラーヴリク」

 「とぼけんじゃねえ!このドタバタしてる時期に飛行教導機とか何を考えていやがる!」

 「以前にも言ったでしょう。あなた達の飛行アルゴリズムは最初期の物の為未だ未完成だと。これからもあなた達が我が祖国の空を守るためには、各々の空戦技術を向上させなければなりません」

 「だったらあたしとラーストチュカでシミュレーターをやる程度でいいだろう!散々アグレッサーなんぞを叩き伏せてやったのにまだ分からないのか?人間がやるようなマニューバなんぞあたしらにとっては遊び同然だ!無駄な時間を過ごさせるぐらいならとっととザイと戦わせやがれ!」

 「その慢心がいけないのですよ、ジュラーヴリク。そんなことだから、二週間前のミッションでも恥をかいたのではないですか?」

 「・・・ッ!言わせておけば・・・!」

 

 まずい。言い争いがどんどんヒートアップしている。助けを求めるようにもう一人の少女へ視線を向けるが彼女はただ静観しているだけだ。眉一つ動かさない無表情で何を考えているのか分からない、というか眉自体がない。

 トリガーは判断した。このままでは殴り合いに発展しかねない。そろそろ間に入ってやろうかと思った時、急にジュラーヴリクの矛先がトリガーに向けられる。

 

 「そもそも!飛行教導機が一機とかどういうことだ!人員不足も甚だしいな!どんなことをしたのか知らないが、こんな冴えない顔の野郎に教わることなんざ何一つねえ!」

 

 冴えない顔って。思わぬ言葉の刃で傷つくトリガーを他所に言い争いは続く。

 

 「ジュラーヴリク。今回は本当にあなた達の為になります。何せ彼は通常機体、それも単機でザイを墜とすほどの腕前なのですからね」

 「ザイを単機で・・・?待てよ、その話どこかで」

 「先日のエイスク空軍基地の襲撃があったでしょう?あなたの話にあったSu-30SMに乗っていたパイロット。それが彼なのです」

 「・・・ああ、なるほど。あの時の追われてた奴か」

 

 合点がいったように目を細めるジュラーヴリク。そしてトリガーに向き直ると不敵な笑みを浮かべる。

 

 「うちの中佐が邪魔したな兄さん。あの時は運良く助かったようだが、あたしらの飛行教導なんぞまぐれで生き残った程度じゃあ務まらない。忠告だ。これ以上面倒に巻き込まれたくないならエイスクへ荷物をまとめて帰るんだな。あたしも必要な時以外でせっかくのエース様を墜とすのは気が引ける」

 「なっ、ジュラーヴリク、何を勝手なことを!トリガーの配属は既に戦隊司令部で」

 「口を出すな中佐。これは空のパイロット同士の話だ。で?帰るか?帰らないのか?」

 

 値踏みするような視線がトリガーの身体を貫く。トリガーは少しの間沈黙すると、ゆっくりと口を開いた。

 

 「・・・初めは拒否しようと思っていた。俺自身、無人機と呼ばれるものにあまりいい思い出はないから。ましてや自分の飛行が感情のない無人機にコピーされると思っただけで寒気がする」

 「・・・!」「・・・ほう」

 

 カジンスキーが唖然とし、ジュラーヴリクは口角を僅かに吊り上げる。このまま諦めてくれると思っているのだろうか。しかしトリガーは「けれど」と続ける。

 

 「俺の思い描く無人機と君の印象は全く違った。自分で思考し、相手が間違ってると思ったことに文句をつける。そんな風に考えられる相手なら、俺が拒否する理由はどこにもない」

 「・・・・・・・」

 「自分で言うのもなんだが今の俺は根無し草だ。このロシアで居場所を見つける為には、君たちの飛行教導を受け持つしかない。だから、俺は帰らないよ」

 

 ジュラーヴリクの視線を真っ向から受けながらトリガーは自らの意思を明確にする。ジュラーヴリクはしばし沈黙していたが、やがてハァ、と嘆息しトリガーを見上げた。

 

 「・・・いい度胸だな、兄さん。いいぜ。昔何があったか知らねえが、少しあんたに興味が出てきた。条件次第ではあんたの飛行教導、受けてやってもいい」

 「条件・・・?」

 「簡単だ。あたしと空戦で戦って、それであたしに勝つこと。それが条件だ」

 「空戦って・・・模擬戦をやるっていうのか?それなら」

 

 お安い御用だと言おうとしたトリガーをジュラーヴリクは鼻で笑い飛ばした。

 

 「ハッ、模擬戦だと?ペイント弾でわーきゃーしあった所でお互いの実力なんざ分かるわけねぇだろ、馬鹿馬鹿しい。やりあうなら・・・実戦だ」

 「なっ・・・」

 

 実戦?おかしい、今まで俺は飛行教導の話をしていた筈だ。それがどうしていきなりどちらかがケロシン臭い花火になる前提の話になっているのだろうか。

 

 「お互いが極限の状況。生きるか死ぬかの瀬戸際でこそお互いの本当の実力が分かる。違うか?」

 

 ジュラーヴリクの言葉にトリガーは絶句する。一つ明確なことがある。こいつ根っからの空戦民族だ。ロシアじゃなくてベルカ出身だと言われた方がまだ理解できる。流石にカジンスキーもまずいと思ったのかジュラーヴリクに厳しい言葉をかける。

 

 「いい加減にしなさいジュラーヴリク!これ以上命令に反発するようなら再調整に」

 「その命令とやらでこちとら散々無駄な時間を過ごしてきたんだ。自分の師匠ぐらい自分の目で選ばせろ。さあ、どうする?」

 

 大きな緑色の瞳がこちらを試すように揺らめく。まったく、自分の価値が分かっていないんじゃないのかこの娘。・・・ここまで挑発されてだんまりな性分ではない。いいだろう。中佐には悪いが、ここまで言われて引き下がるようなメンタルでは飛行教導はおろかオーシアのエースなど到底務まらない。乗り掛かった舟だ。とことん付き合ってやる。トリガーは意を決して口を開いた。

 

 「・・・分かった、そっちの思惑に乗ってやる。そうでもしなければ君たちの信用を得られないっていうなら、付き合ってやるさ」

 

 その言葉にジュラーヴリクは一瞬たじろいだが、すぐに口角を吊り上げると少し楽しそうに笑った。

 

 「・・・いいね。あんたみたいな大馬鹿野郎は嫌いじゃない。そうと決まればすぐに始めるぞ。予報じゃ今日のザイの襲撃はもうないみたいだしな」

 「そっちから言い出したことだ。土壇場で逃げ出そうとか考えるなよ」

 「そっちこそ、その威勢がヤケクソでないことを祈るよ、兄さん。イジェクションシートの作動確認だけはしっかりしておくことだな」

 

 その言葉を最後に、ジュラーヴリクは司令室を後にした。ラーストチュカもその後に続く。こちらには目もくれずに。残されたトリガーは、カジンスキーの恨めし気な視線に申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

 「・・・申し訳ない中佐。勝手に約束をしてしまって」

 「正直あなたを呼んだことを後悔していますよ。腕が良いと思って招いてみれば、まさかここまでのтупой(馬鹿)だったとは」

 「・・・返す言葉もない。でも考えはないわけではないです」

 「というと?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 「・・・正気ですか?」

 「ええ、流石にそちらの決戦兵器を破壊する訳にはいきませんので、彼女に腕を示すのであればこういう方法しかないかと。最悪爆散するのはこちらだけで済みます。」

 「彼女相手にそれが到底上手くいくとは思えませんがね」

 「やってみなければわかりません」

 「・・・言っておきますが、あなたが勝手に受け入れたことです。あなたが死んでも私には責任のないことです、お忘れなきよう」

 

 その言葉を最後に、演習とは名ばかりのデスマッチの手配を始めるカジンスキーを横目に、トリガーはこんなことを思うのだった。

 

 

 前言撤回だ。物言わぬ無人機の方がずっとマシだった。




 長らくお待たせいたしました。キャラ崩壊をしないようにするのは難しいのう、ヤス…
次回はトリガーvsジュラーヴリクの対決です。果たしてジュラーヴリク相手にトリガーは生き残ることが出来るのか。そしてトリガーの取った策とは一体何なのか。次回の更新も恐らく遅くなると思いますが、長い目で待って頂ければと思います。
 評価をしてくださった仮面ハベル様、sigure4539様、Siroap様、藤堂伯約様、スマホでござ~る様、雷零様、ケチャップの伝道師様、ありがとうございます!この場を借りて感謝申し上げます!
小説の感想、評価、批判等々、お待ちしております。

 次回「First contact ②」
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