【悲報】俺氏、セミファイナルまでで消えることが確定   作:Mamama

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私は対人戦を全然やっていない素人なので描写が甘いのは許して。





「バイウールー、『のしかかり』だ!」

「躱して『どくびし』」

 

ポケモンバトルにおいての強さとは何か。一体何が勝敗を分けるのか。

一口に言ってもそれは多岐に渡る。単純にポケモンが強い、トレーナーの指示出しが上手い。

一つ一つの要素を組み合わせ、総合で上回った方が強い。

しかしそこには運の要素も存在する。極端な話、俺のクチートのハサミギロチンが全部当たれば俺は誰にでも勝てる。いや、実際使えはしないんだけど例えとして。

運の要素。バトルの最中に起こる揺らぎとでもいうのか、俺はそれが嫌いだった。

だってそれは実力を越えた世界だからだ。お前は運が悪かったから負けたんだ、なんてそんなことは言いたくないし、言われたくもない。

しかし運の要素は絶対にある以上は上手く付き合っていかなければならない。

それはガラルで改めて学んだことの一つであり、俺が新たに手持ちに加えたドラピオンはその思想を取り入れた集大成でもある。

 

見た目にそぐわぬ素早い動きでバイウールーののしかかりを躱す。対キバナ戦しか映像はないが、ホップは真正面からの戦いを得意としているのは分かった。であれば、その事実は俺にとって有利に働く。相手の裏をかき、粘り強く戦うこと。それが俺の戦い方であり、それで結果を残してきたという自負がある。

 

「『クロスポイズン』」

「『コットンガード』だ!」

 

 俺の手持ちは四体。まず数の上で俺が不利だ。そしてエースポケモンであるクチートも相手を強引に叩き伏せるほど強力なポケモンではない。クチートの『つるぎのまい』、或いはキレイハナの『ちょうのまい』を積んで果敢に攻めるという選択肢もあるが、それだけというのはいただけない。一度攻略されればこちらの敗色が濃厚になってしまう。

それしか出来ないとそれも出来る、というのは意味合いが大きく変わってくる。

こちら側としては選べる選択肢を多く用意し、相手に多くの判断を迫って惑わせるというのは一つの戦術としても機能する。

 

いずれにせよ大事なことは積み重ねるということ。小さなものを一つずつ積み上げて、此方にとって有利な盤面を作り出す。

俺はそうやって戦ってきた。これまでも、これからも変わらないだろう。

 

「バイウールー!?」

 

 コットンガードで防御したにも関わらず、かなりのダメージを負ったバイウールーの姿。俺のドラピオンの特性は『スナイパー』、そして持ち物は『ピントレンズ』。

これまで徹底的に急所を突く訓練を重ねてきたのだ。運もあるだろう。しかし、それを狙ってやったという実力も確かに備わっている。

 

「逃がすな。『つじぎり』」

「……く、『きしかいせい』!」

 

 ホップはポケモン交代を選択しなかった。ここで少しでもドラピオンを削りたかったのか。

結果として瀕死寸前のきしかいせいは俺のドラピオンに大きなダメージを与えることに成功した。

そして倒れるバイウールー。俺のドラピオンも深手を負ったが、まだ戦闘は可能だ。

……本音を言えばここは余裕を持ってドラピオンを勝たせたかった。

『きしかいせい』を食らってしまったのは俺のミス。下手に追い込んでしまって欲を掻いた結果だ。

いや、反省は後だ。まだ勝負は続いている。

 

「やるな……! だったら、行けカビゴン!」

 

 続いてホップが選出したポケモンはカビゴン。『ねむる』を覚えていれば『どくびし』をカバーできるし、そうでなくても単純に強いポケモンだ。

一瞬俺も交換をするか迷う。技の種類が豊富なドラピオンは多くのポケモンに対して有効打が放てる。体力は少なくなってきているが、決して遅いポケモンではない。先制の一撃を食らわすことが出来れば盤面を有利に出来る。しかし強力なカビゴンを削っておきたい、という考えも浮かんだ。

 

一瞬の気の迷い。それに対してドラピオンは雄々しく吠えた。

まだやれる。まだいける。俺は戦いたいんだ、と主張するかのように。

勝手に俺のカレーを食っていたスコルピの時代は怖がりで、バトルを避ける傾向もあった。しかしそれは次第に失われていった。バトルを繰り返し、ドラピオンに進化し、自信を付けたのか。バトルをし、勝利を重ねるごとにドラピオンは逞しく頼れる存在になった。

 

トレーナーはポケモンに指示を出す。だがポケモンは唯々諾々とトレーナーの言うことを聞くだけの存在ではなく、確固とした己があり意思がある。

戦うポケモンの気持ちを汲み取ること。それもまた、トレーナーに求められることだ。

……チャンピオンロードで心を折られたあの日、クチートは戦いたかったに違いない。

 

ドラピオンが入っていたモンスターボールに手を触れない。戻すという選択はしない。それがどんな結果を招くのか分からない。分からないなら、ポケモンを信じたっていいだろう。

 

「続行だ。……『クロスポイズン』!」

「負けるなカビゴン! 『10まんばりき』だ!」

 

 互いに取っ組み合いをした後に放たれた一撃でドラピオンは沈む。気絶しながらもドラピオンは満足そうな顔だった。

 

「……お疲れ、ドラピオン」

 

 カビゴンは強い。技範囲が広く、防御もある。はっきりいって俺の中ではカビゴンがラスボスだ。

クロスポイズンで多少なりともダメージを与えられたが、『ねむる』が使えると仮定するとダメージはないものと考えた方が良い。

 

「キツイ戦いになるが任せたよ、ペルシアン」

 

 クチートの次に長く旅をしてきたペルシアン。同じノーマルタイプではあるが、正直にいって真正面からカビゴンを打ち倒すだけのポテンシャルはない。

しかしそんなものは今更だ。自分以上に強力なポケモンを相手にするなんてペルシアンにとってはよくある事だった。その証拠にペルシアンはいつもと同じように欠伸をしてボールから出てきた。そして一度ちらりと俺を見る。早く指示を出せ、と言っているように見えた。その様子を見て俺は頼りになるな、と苦笑した。

 

カビゴンが序盤で出てくるパターンはいくつか想定していた。そしてその時、どのような作戦を取るのかも。出来ればもう少し後で出てきて欲しかったのだが、こうなってしまった以上はしょうがない。

勝負は未だ序盤だが、ドラピオンを倒された以上は早くも賭けに出る必要が出てきた。

 

「……なーに思い上がってんだか。俺はチャレンジャーなんだ。そりゃ当然だろうが」

「カビゴン! 『アームハンマー』だ!」

「当たるかよ! 『わるだくみ』!」

 

 カビゴンは鈍足で、対してペルシアンは俺の手持ちの中で最も素早いポケモンだ。生半可な攻撃ではとらえられない。しかしそれは絶対ではない。カビゴンがペルシアンの動きに慣れてくれば何れは当たる。直撃してしまえばペルシアンは一たまりもないだろう。

カビゴンは毒状態であるが、体力が尽きるまでペルシアンが逃げ切れるなんて甘い考えは出来ないし持つべきではない。

 

「速いな! 落ち着いて相手を良く見るんだ、カビゴン!」

「攪乱しつつ『パワージェム』!」

 

 わるだくみでペルシアンの能力は大きく伸び、カビゴンは想定外のダメージを受けて鑪を踏む。

足りないのならば補えば良い。それはバトルにおいて当然のことで、きっとそれ以外にも適応されるものだ。そんなことはとっくに知っていたはずなのに、それを今改めて実感している。

接近を嫌ったカビゴンは両腕を振り回し、ペルシアンを強引に引きはがす。

ちょろちょろと動き回るペルシアンに翻弄され、カビゴンは苛立った様子を見せる。

ドラピオンの『どくびし』と『クロスポイズン』のダメージもある。ペルシアンの攻撃はまだ耐えられるだろうが、ホップとしても呑気にしていられる状況ではないはずだ。しかしカビゴンには起死回生の手段が一つ残されている。だからホップにもまだ余裕が残されているのだ。

 

「もう一度『パワージェム』!」

「くぅ……! だったらカビゴン、『ねむる』だ!」

 

 出来れば覚えてほしくなかったが、まあそうなるだろう。カビゴンの毒状態が解除され、これまで頑張って与えてきたダメージも治癒していく。まるで悪夢だ。大抵のトレーナーはこのカビゴンで止まってしまうだろう。

 

「よーし、カビゴン! 『カゴのみ』で回復だ!」

 

 眠ったままのカビゴンがきのみを取り出し、それを口に運ぼうとした瞬間、俺のペルシアンがそれを奪って代わりに元々持っていた『あついいわ』をカビゴンに持たせる。当然、そんなものは食えたものでなくねぼけたまま一度齧ってカビゴンは再び寝に入る。

 

「なッ……!」

「……『すりかえ』だ」

「っ! カビゴン!」

 

 一度呼びかけたくらいで深い眠りに入ったカビゴンが起きることはない。しかしカビゴンの体力は満タンであり、ペルシアンが『わるだくみ』を一回使った程度ではカビゴンを突破することは出来ない。ペルシアンはそれだけ非力なポケモンだ。

しかし今回のバトルにおける俺のペルシアンの役割は相手を打倒するものではない。

勝利の起点を作り出すこと。それがペルシアンの役目であり、それは単純に相手を倒すよりも余程難易度が高いものだ。

 

「オレは『なんでもなおし』を使うぞ!」

「今のうちに『にほんばれ』!」

「食い止めろ! 『アームハンマー』だ!」

「チィッ! 耐えてくれペルシアン!」

 

 

 目を覚ましたカビゴンは巨体にも関わらず素早く腕をペルシアンに振り下ろす。

『にほんばれ』は使用するのにかなりの集中力を要する。それだけ外部の攻撃には疎かになってしまうということで、カビゴンの攻撃を完全に避けきれることが出来なかった。

やはり、そんな予定調和には行かないようだ。思った以上にホップの判断は早い。道具の使用タイミングも迅速だった。

 

「戻れ、ペルシアン!」

 

 辛うじて間に合う。しかしボールに収まったペルシアンは瀕死にはいかないもののかなりのダメージを負っており、長期戦は厳しいといってもいいだろう。

しかし凡その展開については想定内。後はどれだけ短期決戦に持ち込めるか。

客観的に見れば俺が今のところ状況をコントロールしているように見えるかもしれない。しかしそれはまやかしで、想定内とは言いつつも今のところ追い詰められているのは俺の方だ。

それを今から覆しに行く。本当の意味で、俺が主導権を取りに行くのだ。

 

「……暴れてこい! キレイハナ!」

 

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