【悲報】俺氏、セミファイナルまでで消えることが確定   作:Mamama

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 率直に言えば、ダイマックスというバトルの要素は俺にとって不要なものだ。

それ自体を否定するわけではないが、俺にとっては扱いどころが難しいというのが本音。

何せこれまでダイマックスというものは縁の無いものだった。ダイマックスをすることによって能力値は上がり、大きな恩恵は得られる。しかし時間制限があり、使いどころを見極めなければならない。

いつ使うのか。それとも使わないのか。ホウエン出身の俺はそういった見極めからやっていく必要があるのだが、そもそもその工程が煩雑だ。

 

それにダイマックスを使いバトルの主軸に置くということはこれまでの戦法を捨てなければいけないということだ。つまり俺のこれまでの経験をある意味否定するということに繋がる。

……まあ、それでバトルに勝てるというのなら俺もそんな安い矜持は捨てられるだろう。

しかしポケモンバトルとはデカくなって力が強くなれば勝てるほど、簡単なものではない。

 

初心者同士の戦いであればまだ力押しの要素が大きいから有効かもしれないが、俺ほどの玄人になれば戦術レベルでの競い合いになる。俺の扱うポケモン―――クチート、ペルシアン、キレイハナと言った面子は高い能力値で纏まったポケモンではない。補助技を駆使して戦うのが俺の基本的な戦術であり、大雑把な指示しか出せないダイマックスとはそもそも根本から噛み合わないのだ。

 

もっと言えば、そもそもダイマックスを使いこなしたとして、それは俺の利益にならないどころか、将来的には手痛いしっぺがえしを食らう事になる。

ダイマックスはガラル特有のもので、ガラル以外では使えない。要するにダイマックスというのはローカルルールでしかない。俺がガラルの地に骨を埋める覚悟でもしていればまた話は違ってくるが、現状としてそんなことは考えていない。

 

俺がダイマックスをものにすれば、その分ホウエンでの経験は失われていく。ガラルを離れた時にその結果は重くのしかかってくるだろう。

俺がダイマックスを使うことはこれまで無かった。今も、これからもないだろう。

しかしそうなるとやはり手持ちが三体というのがキツイ。俺のポケモン達は一騎当千の猛者揃いではあるが、それでも数の利は馬鹿にならない。実家にいるオオスバメとサクラビスのことを考えると、あと一匹しか増やせないが、それでももう一体は手持ちを増やすべきだろう。

しかしそう思い立ったのはいいが、俺はここで新しい問題にぶつかった。

 

「……俺、野生のポケモン捕まえた経験って殆どないんだよな」

「クチー?」

「ああ、悪い。なんでもない」

 

 俺の膝でオレンの実に齧り付くクチートが俺の声を聴いて反応を示すが、俺は頭を撫でてそう言う。俺のクチートはお袋のクチートの子供で、俺がタマゴから育てたヤツだ。少し離れた場所で日向ぼっこをしているペルシアンはニャース時代に悪戯しているところをお袋に捕まって俺が庇ったヤツだし、器用にカレーを掻き交ぜているキレイハナに至っては実家の庭に生えていた雑草を引き抜こうと思ったらナゾノクサだった。

オオスバメもサクラビスも似たようなものだ。

 

世間には珍しいポケモンを草の根を掻き分けて探して捕まえる連中もいるが、なんというか俺には性が合わなかった。だって俺と長きに渡って苦楽を共にする相方だし、やっぱりなんか運命的な出会いをしたい。俺の手持ち達と運命的な出会いをしたのか、という疑問はさて置き。

 

キレイハナが綺麗な鳴き声で俺を呼ぶ。カレーが出来たようだ。元々家事が壊滅的だった俺はキレイハナによって救われてきたと言っても良い。キレイハナは洗濯も掃除も出来るしカレーも作れる。

最近は何故かマリィに突っかかる事が増えてきたような気がするが、俺も平等愛を説ける程成熟した人間ではないので放置している。相性というものは例え人間とポケモンにだってあるものだ。そこを覆して友情が芽生えることもあるかもしれないが、基本的に俺は無理強いをさせたくない。

やっぱり、会った時のフィーリングとかそういうのって大事だ。

しかし現状の戦力を考えるとそうも言ってられないというのもあり。

 

「あー、どうするかな……。ああ、悪い。今行くよ」

 

 思考に耽る俺をキレイハナが催促する。俺はクチートを抱き上げてテーブルに着いた。ペルシアンも匂いを嗅ぎつけたのかのっそり起き上がって近づいてくる。

なにはともあれ腹ごしらえだ。腹を満たせば何か建設的な意見でも出てくるかもしれない。

俺が皿にカレーをよそっていき―――そして、一つの疑問が出てきた。

 

「あれ? 皿足りないな……」

 俺とポケモン含めて計4枚の皿が必要になるはずなのだが、何故か俺の分の皿がない。

ポケモン達には全てよそって目の前に置いたのだが。

クチートの前には皿がある。ペルシアンの前にも皿がある。キレイハナの前にも皿がある。

スコルピの前にも皿がある。

 

「……なんでお前、我が物顔でカレー食ってんの?」

「スピッ!?」

「え? 驚くの? なんか俺おかしなこと言って……ないよな?」

 

 俺の合図も待たずにスコルピが美味そうにカレーを食っていた。いつの間に現れたのか、余りにも堂々としていたせいで、俺はそのスコルピを異物として認識出来ていなかった。

スコルピは俺に見つかった途端逃げようとしたがカレーに未練があるらしく、少し距離を取ったかと思えばカレーの方を凝視している。

 

「お前、腹空いてるのか?」

「スピッ!」

 

 元気に返事をするスコルピ。その間も視線はカレーの方を向いており、口から少し涎が垂れている。俺はため息を吐いた。空腹のポケモンを見過ごすのも目覚めが悪い。俺は今日の昼食を諦めることにした。

 

「……しょうがないな。食っていいぞ。そのカレーはお前のもんだ」

 

 俺の言葉を聞くやスコルピは猛烈なダッシュでカレーまで近寄り、機嫌良くカレーをむさぼり始めるのだった。

 

「なぁスコルピ。食いながらでいいから聞いてくれないか?」

 

 むしゃむしゃとカレーを食べるスコルピに俺は声を掛けていた。なんとなく、そういう選択肢もいいのかな。こんな出会いでもいいのかなと思ったのだ。

 

「お前が良かったらでいいんだけどさ―――」

 

 多分、これだって運命だと思うんだ。そこに強弱はあれど、立派な一つの縁だと思う。

沢山の出会いやら別れやらがあって、それら一つ一つが運命なんだ。俺がエンジンシティでマリィに声を掛けられたのも―――まあ、あれはあれで運命的な出会いだったといえばそうかもしれない。

運命ってものは目には見えない。だからそういうのは感じることしか出来ないんだけど、偶に結果として残る。例えばこうやって俺の手持ちが増えたように。

 

 

 

 

 

 

 手持ちを増やせたのはありがたいことだ。スコルピはドラピオンに進化し、試運転も兼ねたマクワ戦でもおおいに活躍してくれた。タイプ的にも俺の手持ちとのバランスは良く、ドラピオンに関しては何も言うことがない。

しかしここからが最大の問題だ。

俺の目の前にはシャッターが開かれたスパイクタウンがある。今からここに挑むのだと思うと冷や汗が止まらない。

 

「やべぇよやべぇよ……。どうする? ほとぼりが冷めた頃の方が良いか? いやでも、マリィがいれば俺もネズに殺される事態を避けられるかもしれないし」

 

 或いはマリィがまた変なことを口走って事態が余計に悪化してしまうかもしれないが。

 

「いや、でも……ここで逃げたら俺多分、ジムに来れなくなるような気もするし」

 

 何せ今日此処にくるだけでも相当な精神力を費やした。尻尾を巻いて逃げれば多分俺は此処に戻ってこれないような気がする。そんな風に入口付近で右往左往していると、ひょっこり出てきたエール団らしき女性と目が遭った。

 

「アンタは……チャレンジャー? なんでここで立ち往生してるんだい? シャッターは開いただろう?」

「あ、どうも。ええ、まあ。ちょっと……ハハハ」

「いや待てよ。此奴の特徴……痩せた身体に幽霊みたいな肌。それにジグザグマみたいな白黒の服。ネズさんからの報告にあったチャレンジャーだな?」

 

 エール団の女はネズにも当てはまるような外見上の特徴を呟いた。

 

「えッ!? い、いや違いますよ。ぼくは偶々立ち寄った観光客で……」

「住んでるアタシが言うのもなんだけど、スパイクタウンに観光に来るもの好きなんて早々いないよ。丁度いい、ネズさんも手が空いた頃だろうし付いてきな」

 

 エール団の女は俺の手を掴んだかと思うと、スパイクタウンの内部に俺を引っ張っていく。

 

「ちょっと! めっちゃ素通りしてますけどジムチャレンジは!?」

「アンタには無いよ。ネズさんからのお達しでね、アンタが来たら無条件で奥まで連れてくるように言われてね」

「なんで!?」

 

 俺は身の危険を感じた。それってつまり『直接俺が殺す』という意思の表れではないだろうか。

「さぁ? アタシは下っ端だから詳しいことは聞いてないけど、大事な話をしたいとか」

「だ、大事な話?」

 

 大事な話と聞いて真っ先にマリィの顔が浮かぶ。俺の明晰な頭脳はこれから行われるのが単なる話し合いではないことを見抜いている。多分その話は言葉での詰問以外にも武力行使が含まれているはずだ。俺はきっと、これからネズのマイクスタンドでぶん殴られてしまうのだ。いや、もしかするとそれよりも酷い目にあってしまうかもしれない。

 

「ちょっと待って! 話せば分かりますよ! 話せば!」

「いやだから、その話し合いをネズさんとしてもらうんだよ」

 

 にべにもない。俺の必死の抵抗も空しく、俺はネズの前まで引きずりだされてしまった。

バトルフィールドの隅、窓網の近くにはマリィもいるが、そんなものは今更気休めにもならない。

 

「ようこそ、おれのジムへ。マリィが世話になっていると聞いてね。あんたには前々から会いたいと思って―――……ああいや、その前に筋を通すことが必要か」

 

 ネズのその言葉を聞いた瞬間、俺の精神は臨界点を突破した。筋を通すなんてヤクザ者が使う常套句じゃないか。マイクスタンドで殴られるなんて生ぬるい。俺はこれからケジメとして小指を切断されてしまうのだ。

俺はビビって恐怖のあまり涙を流した。直ぐに涙で視界が歪んでいくが、その前にネズの戸惑ったような顔が一瞬だけ見えた。

 

 

 

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