ヴァンパイアが吸血鬼系Vtuberになってみた!   作:ねこまんま014

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Q:おい!ヴァンピーちゃんのVtuber活動はいつ始まるんだよ!俺はもう我慢できねぇぞ!
A:すみません。次回からやりますので許してください!お願いします!何でもしますから!


第二章
とある一期生の独白


 コメント:

 今日も面白かったよ!

 おつー

 乙

 今日もお歌上手だった!

 素敵!抱いて

 俺も抱いてくれ!

 

『じゃぁね』

 

 忘れないようしっかりと配信終了のボタンを押し、たしかに配信が終了したことを確認してからため息を一つ吐いて椅子に深くもたれかかる。

 

「あー。今日も楽しかった。でも少し歌いすぎたかな」

 

 人差し指と親指で喉をいたわりながらまだ明かりのついたパソコンを見る。

 画面にはもう一人の僕が声も出さずにまっすぐに僕の事を見つめていた。

 ボーイッシュに見せるために赤い髪を短くまとめ、僕より小顔の、胸も身長もない女の子の姿だ。

 女の子といっても、この子は生きている人間ではない。いや、一応生きているのかな。この子はVtuberだ。最近はやり始めた。

 そしてその子に声と動きを与えているのが僕ということになる。

 

 沙織・シェルリオール

 

 これが僕の名前で彼女の名前でもある。勿論僕の本名は違うものだけど現状、沙織・シェルリオールとして生きている時間の方が長いから僕は沙織・シェルリオールと言っても最早過言ではないのかもしれない。自分の呼び方もいつの間にか沙織と同じく私から僕に変わってしまったし。

 

 配信は楽しい。コメントのみんなが僕の事を応援してくれている事が身近に感じられるし、自身の夢に一歩また一歩近づいていく様子が実感できるからだ。

 

 僕の夢は歌手としてデビューすること。幼い頃から歌には自信があった。だから歌手になりたいと思うことはそんなに不思議な事じゃないだろ?

 実際に歌を勉強して、楽器だって勉強した。おかげさまでギターは歌いながらでも弾けるようになったさ。でもそれまでだ。

 

 いくら歌が上手かろうが、楽器が弾けようが注目されなきゃ意味がない。

 

 路上ライブをしたりグループを組んでハウスで歌ったり色々したさ。でも芽が出なかった。才能がないのか、努力が足りないのか、それとも運がなかったのか。全部な気もするけど僕はとにかく売れなかった。売れるどころかメジャーデビューもしてないんだからバイトで食いつなぐ日々さ。もう20歳だというのにアルバイト。夢と現実の差に押しつぶれそうな毎日だったよ。

 

 でも諦めきれない。そんな時にふとVtuber募集という記事をネットで見つけた。

 

 なんだこれは。そう思って読み進めるうちに僕は気づいた。これは僕の歌手活動に役立つのではないだろうかと。

 

 そう思ったら後は急いで履歴書を送って採用されることを待つだけ。

 

 今までの人生が嘘のようにトントン拍子で一次選考、二次選考、面接とクリアしていって、あっという間に採用。その後ライブスターズ所属のVtuber 沙織・シェルリオールとしてデビューした。

 

 始めのうちはとにかく歌さえ歌えれば良かった。歌手になりたくてVtuberになったんだ。誰だってそう思うだろ?

 でも違った、Vtuberというものはそんなに甘いものじゃなかったんだ。歌にゲームに雑談に、何でもできるマルチな才能を求められた。雑談は兎も角ゲームなんて今までろくにしなかったんだ、今思い返すと自分でも笑えるぐらいにひどかった。

 でも楽しかった。コメントのみんなとあれやこれやと話しながら経験のないゲームを手探り状態で遊んでいく。僕にとっては初めての事で、戸惑いだってあったけどみんなが助けてくれる。それはコメント欄のみんなだったり同時にデビューした仲間だったり、とにかく色んな人たちに助けられた。歌手活動さえできれば良いと思っていた僕だったけどみんなのおかげで少しづつVtuberになっていったんだ。

 

 おかげさまで僕はライブスターズの中でも一番の存在になった。あ、実力とかじゃなくてあくまでも登録者数の話ね。

 といってもまだ登録者数は12万と少し。登録者数40万を超えたり、100万を超えたりしている大手のVtuber事務所には全く歯が立たないものでしかないけど。

 僕たちの事務所では大手事務所や実力のある個人勢のように体全体を動かすことが可能な3Dモデリングの技術・フルトラッキングの技術はない。せいぜいライブ2Dと呼ばれる技術を使って顔と体を平行に移動するだけで精一杯さ。

 リスナーの中には3DモデリングじゃないとVtuberとして認めないという人もいるけど僕個人としては僕らの様な存在も認めて欲しいというのが正直な感想かな。

 

 最近ようやくスーパーチャットの審査が通って解禁された。汚い話だけどこれで僕の生活費だって潤うことになったし、ライブスターズにも義理を果たすことができそうでうれしかったさ。

 少しずつ公式の放送に呼ばれたり、案件を受けたりようやくVtuberとして外へ外へ活躍が始まった所だった。

 そんな所にあれが来たんだ。ライブスターズ二期生募集。事務所としては僕という成功事例が出たことでいけると思ったんだろうけど、僕は外に目を向けるより中をもっと固めて欲しかったというのが正直な思いだった。

 

 現状この運営の手は回っていないんじゃないか。と思う様な所が節々にある。例えばマネージャーの存在だ。僕には専属のマネージャーがいるけど、他のメンバーには共通のマネージャーが一人存在するだけ、それでマネージャーとして成り立っているかと言われれば首をかしげるところだ。僕に専属のマネージャーがついたのは公式案件を受ける様になってからだから本当に最近の出来事で、僕が稼ぎ頭だから辞めてもらっちゃ困るという運営の腹がみえみえだ。他のメンバーは実質マネージャーなしで頑張っている。勘違いしないで欲しいのはそのマネージャーが悪いんじゃない。一人で六人のVtuberのマネージメントをしながら会社で自分の仕事もこなしていくなんて正直有り得ない。

 そう、このマネージャーはマネージャー経験なんてないただの社員だった人だ。上司の鶴の一声で自分の業務とまったく経験のなかったマネージメント業務の両方をやらなきゃいけなくなった。過労死していないのが奇跡っていうレベルだ。それを僕らは知っているからマネージャーには必要最低限以外頼らなかったんだ。元々この事務所は僕らライバーの活動に制限をかけない、ほぼ放置されているとも思える方針だったことが幸いしたと言えるのかな。なんとかはなったんだ。ギリギリだったけど。

 マネージャーはすっごくいい人で仕事もできる人だからマネージャー業務に専念できればたとえ六人だとしてもちゃんとマネージメントできたんだろうけど如何せんどんなに優秀な人でもマネージメントと会社の仕事の両方をこなすのは至難だった。今は僕にマネージャーがついたことと、他のメンバーは自分の事は自分でできるようになったから上手くやってるみたいだけど一時期は本当にひどかったんだ。

 

 二期生募集なんてする前にまずライバーにマネージャーを一人づつつけたらどうなんだ。と思うのが僕の正直な思い。僕らがたどった様に二期生だって初めのうちは慣れないことだらけで混乱するに決まってる。そんな時に自分のマネージャがいたらどんなに楽だったか。

 

 今が波に乗りどきだと思って力をつけようと思っているみたいだ。良い人材を発掘できれば長い目で見れば莫大な利益をもたらすからね。

 そしてさらに目を疑った事は一期生から二期生への接触禁止。これはコラボもそうだし連絡を取ることも禁止という知らせだった。

 

 何なんだこの運営は!

 

 そう思ったのは僕だけじゃなかった。他のメンバーもこれはおかしいと直訴したけど結果は変わらず。上の言うことにはまずVtuberの活動というものを実際に自身で感じて学んでいって欲しいからという理由だったけど。そんなもの理由になっていない。

 僕たちのサポートさえあれば僕たちが苦労した部分は幾分か楽になるだろうし、コラボすれば嫌な話、数字だって伸びやすい。僕たちにできるサポートはよりにもよって運営(身内)につぶされた。運営の言うことにはもちろん当人達が実力をつければコラボも連絡も解禁していくって話だったけど。具体的な期間も条件も連絡が来る事はなかった。

 二人のマネージャーさん達の申し訳なさそうな顔が目に浮かぶ。現場の人間はこれでもかというぐらい身を削って活動しているのに上は何も分かっていない、数字だけ見て生の現状というものを知ろうともしない。

 正直辞めようかとも思ったさ。この事務所を、Vtuberを。でもそんな時に思い出すのは他のメンバーとの思い出とコメントのみんなとの思い出。いつ辞めてもいいやとさえ思っていた、歌手活動の踏み台にしか考えていなかったVtuber活動だったけど、僕はもう身も心もVtuberになっていた。もう辞められない、みんなのために。

 

 

 そして話は変わるけど最近気になる噂がある。二期生候補のヴァンピー・ブラッドについてだ。実は二期生募集の前にもう既に二期生のVtuberの立ち絵とライブ2Dはできあがっていたんだ。あとはどのキャラクターに誰を採用してどんな声を当てるか、だけだったんだけど、どうやらヴァンピー・ブラッドだけ特別らしい。特別というのは元から決まっていた立ち絵を使うことを止めて、新しく一から絵を作り直しているというものだ。これは普通の人は知らないだろうけど内部の人間なら誰でも知っている話だ。内部で知らないのは二期生ぐらいじゃないかな。タイミング的に知る時間がないし。

 なぜ彼女だけ。というのが甚だ疑問だ。別に何か思うところがあるわけではないけどただ純粋に気になる。どこからか有名な声優でも雇ったのかな。

 一期生の時と違ってもうすぐ二期生のデビューが始まるという時期になってもキャラクターの絵がシルエットで隠されていて明らかになっていないのはそこのところが原因だろう。要するにまだヴァンピー・ブラッドの絵が完成していないのだ。だから他の二期生も彼女に合わせて公開が遅れている。そこまでして採用されたヴァンピー・ブラッドというのはどんな子だろう。興味がある。

 

 

 

 ただまぁ一つだけ過去の自分に何か言う事があるとしたら、彼女に会えば理由は一目で分かったよ。とだけ言いたい。

 




次回更新は8/16の予定です

今回は感想欄で運営について気になるというものがありましたので書かせてもらいました。

誤字脱字報告いつも助かっております。ありがとうございます<m(__)m>

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