ヴァンパイアが吸血鬼系Vtuberになってみた! 作:ねこまんま014
私が初めて見てハマったVtuberの方々です。
ある日の夕方、わたくしが配信の準備をしているとツブヤイターにDMが届いていました。
誰からだろうと思い内容を確認してみるとわたくしが知らないVtuberの方からのDMです。
“初めまして! 私は普段二人組でVtuberとして活動しております。ささくれ狸のたぬ子と申します。この度はライブスターズのヴァンピー・ブラッドさんにコラボ参加のお願いを申し上げたく連絡させていただきました。私のチャンネルで近々24時間配信放送を行おうと考えています。Vtuberでは初めての試みとなっており、私達のような個人Vtuberもヴァンピー・ブラッドさんのような企業に所属しているVtuberも手を取り合い、Vtuberも配信を見ている人たちも垣根を越えてVtuber界隈全体で皆さんが楽しむことのできる。そんな24時間放送にしたいと思っております。ヴァンピー・ブラッドさんにも是非ともこの放送に参加して欲しいと私達は考えています。企画内容につきまして。ヴァンピー・ブラッドさんを始めとして吸血鬼系Vtuberを集めて吸血鬼についてのお話をしてもらうという放送にする予定です。企画詳細につきましてはPDFファイルを添付させてもらいました。現在お誘いしているVtuberの方々のお名前や、企画の配信時間などの詳細情報に関しましては添付ファイルをご確認ください。
良い返事を祈っております。
面白そうだなぁと素直に感じました。Vtuberのお祭りみたいです!
わたくしにとって初めてといえる外部コラボのお誘いに、同じ吸血鬼系Vtuberの皆さんとお話ができるまたとない機会です!
もしかしたらわたくしの様に本当の吸血鬼がいたりして……なんてそんな訳ないですよね。でも本当に楽しみです。
わたくし個人がこの提案を断ることはあり得ませんが問題はわたくしがライブスターズに所属している事ですね。もしかしたら事務所の方から断られる可能性もあります。一期生の方とのコラボはしてはいけないとわたくしがオーディションに受かった際にマネージャーさんから言われていますし、同期の方以外のコラボはしてはいけないのかも。
とにかく事務所に連絡を取らないと!! それにはまずマネージャーさんに連絡を。
電話を使ってお話をしましょう。そう思い、慣れない手つきでスマートフォンを使ってマネージャーさんに連絡をとります。なんと今の通信機器は電話の番号を覚えていなくても予め電話の番号を登録しておくとすぐに電話を掛けることができるんです。何と便利なのでしょう。少なくともポケベルの操作方法を勉強したときよりは格段に楽になりました。
「もしもし。ケリーさんですか。マネージャーの斉藤です。どうされました」
アリア・ケリー。今のわたくしが日常世界で使っている名前です。23歳で国籍はイギリス。パスポートだって持っています。そしてライブスターズ二期生のマネージャーとして活動されているのがこの斉藤さつきさんです。まだ26歳と以前おっしゃっていたような。身長は小柄な方でたれ目で眼鏡をかけている優しそうな第一印象だったのを覚えています。髪の毛は茶色に染めていてすごいクセっ毛だったと記憶しています。
「はい。ケリーです。実はとあるVtuberさんからコラボのお誘いをもらったのですが──」
「ケリーさんがですか? あ、失礼しました。ケリーさんはあまりコラボをする方では無いと思っていましたので……。遅くなりましたが先日の初めてのコラボは二期生のマネージャーとしてうれしく思いました。配信内容も面白かったです。私はあまり皆さんにあれしろこれしろとは言いたくないですが、個人的にはもっとケリーさんに広い視野を持ってVtuver の世界を楽しんでいただきたいと……あ、すみません私ったら長々と。それでコラボというのは誰とのコラボですか。二期生とのコラボに関してでしたらわざわざ私に事前承諾を取らなくても大丈夫ですよ」
「二期生とのコラボではなくて、外部の方とのコラボなんですけど」
わたくしが外部と伝えた瞬間、斉藤さんが驚いた声で話し出した事で最後まで話させてくれませんでした。
「が、外部!? ケリーさんが!? 凜さんや翠子さんじゃなくて!? ホゲェ。ケリーさんが一番有り得ないと思っていたのに……まさか一番乗りだなんて」
最後の一言は他の人には聞えないぐらいの小声ですけどわたくしにはばっちりと聞えてしまいました。しかも女性が出してはいけないような音が電話越しに聞えましたよ。
そうですか。わたくしそんな風に思われていたんですね。ほんの少しだけ傷心したかも。
「すみません。それで外部コラボですね。どなたとですか。私頑張って上の方から許可をぶんどってみせますよ」
「えっと。たぬ子とハンバーグくんというコンビで活動されてるVtuberみたいなんですが」
「たぬ子さんとハンバーグくんさんですか。少し時間を下さい。えーっと……。あ、見つかりました、“ささくれ狸のたぬ子”と“ハンバーグくん”共に別々のチャンネルを持つVtuberですね。共に登録者数は8万人ですか……。どこの企業のVtuberでしょうか」
カタカタと何かを叩くような音が電話越しに聞えます。これは恐らくパソコンのキーボードを叩いている音でしょう。たぬ子さんとハンバーグくんさんの情報を調べているんですね。
「たぬ子さんもハンバーグくんさんも個人でやっているVtuberとDMには書いてありました」
「そうなんですか。ありがとうございます。おかげで調べやすくなりました。って個人で八万人規模のVtuberですか……。すごいですね。まだVtuberという概念はできたばかりで企業所属でも一万人もいっていないVtuberなんてごまんといるのに……」
たしかに個人Vtuberで八万人も登録者数がいるなんてすごい頑張っていらっしゃるんだなとわたくしも思います。ですが、ですが!! 一万人もいっていない企業所属のVtuberとはもしかしてわたくしの事を言っているのでしょうか。
「なるほどこの人達の事はおおよそですが分かりました。この二人、なんで男女のコンビで活動しているのかと思ったら実の兄妹みたいですね。兄のハンバーグくんさんの方は元々違う活動を自身のチャンネルでしていたがこのVtuberブームの流れに乗って妹と共にVtuberデビュー。そして成功していると……動画全体を軽く見た感じですが、再生数に対する高評価率の高さ、それにコメント数も多い……軽く見た感じでも分かるぐらいには才能と実力があふれていますね。うちに欲しいぐらいです」
本音が漏れていますよ。とはわたくしの口からは言えずただ彼女の話を黙って聞くのみです。
色々と独り言をつぶやいていたマネージャーさんは考えがまとまったのか独り言を止めてようやくわたくしに話を振ってくれました。
「それでどのようなコラボ提案がきたんですか」
「実は近日にたくさんのVtuberを巻き込んで24時間生放送を行う予定みたいでその中の一企画に呼ばれました」
「ほぉ! 24時間生放送。面白い……! 面白い試みですよこれは! 個人でやるというのも話題性があります。個人勢だから企業間の面倒くさいあれこれもその二人が中間に立ってもらうことで緩衝材の役割を果たしてくれますし。うちのライブスターズの名前を皆さんに知ってもらう良い機会になりますよ。賃金に関する話はどうなっているのかまだ分かりませんが、例え無料での参加になったとしてもライブスターズ全体で享受できるメリットが賃金を上回りますね。本来ならこちらがお金を払っても良いぐらいかもしれません。と に か く!! この大型コラボ見逃す理由が無いですね」
話を聞いて興奮したように矢継ぎ早に言葉をまくし立てます。途中で椅子から立った音まで聞えましたよ。
「詳しい内容を教えてくれませんか。できれば詳細が書かれた書類か、PDFファイルか何かあればうれしいのですが」
PDFファイル。そういえば先ほどもらったDMにもPDFファイルを添付しておきますと書いてあったような……。
「PDFファイルですよね。えっと、たしかDMに……あった! DMにPDFファイルを添付しておきます。って書いてありましたよ。これをどうしたら良いですか」
PDFファイルがどんなものかわたくしには分からないので何をすれば良いのか判断を仰ぎます。DMにPDFファイル、ツブヤイターと機械の名前は細かくて理解が難しいです。
「あぁ、ケリーさんは機械の操作全般が苦手でしたね。私の言う通りに操作をしてくれますか」
マネージャーさんもわたくしが機械全般の操作が苦手なことは知っているので、マネージャーさんから電話越しに機械の操作の仕方を教えてもらって無事にDMの中身と添付されたPDFファイルをマネージャーさんに提出します。
「ありがとうございました。このPDFファイルの中身とDMの内容をまとめて資料を作って、上からコラボの了解必ず取ってきますからケリーさんは安心して私に任せてください」
ですからコラボで何を話すか、どう立ち回るのかちゃんと考えておいてくださいね。と言葉を付け足して電話が終わる雰囲気になりかけた最後に彼女は意味深な一言をわたくしに告げたのでした。
「そういえば前回の配信の最後。あれは新しいキャラクターを模索しているんですか? Vtuberを始めた頃は自分のキャラクターが見つけられずに悩む方も多くいます。これは内密にして欲しいんですが、今ではうちの稼ぎ頭、一期生の沙織さんだって初めのうちはやりたい事とVtuberとしてこなさなければならない事の板挟みで苦労していたみたいです。ケリーさんは今のままでも十分素敵なVtuberですよ。勿論新しいことに挑戦することは重要で大切なことですけど。あまり焦らないでください」
「……? わかりました」
マネージャーさんが一体何を伝えたいのか。正直な所わたくしには分かりませんでしたがわたくしのために言ってくださっていることは重々理解できましたので心の内にしまっておくことにしました。
「では、話が煮詰まり次第、ケリーさんとささくれ狸のたぬ子さんとハンバーグくんさんにはお知らせしておきますね」
電話が終わり静かになった部屋の中でわたくしは一人考えます。
前回の配信の最後。わたくし何かしましたっけ?
次回更新は9/9の予定です。
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