中学一年の春。
虎杖悠仁と彼は出会った。

高校一年の秋。
虎杖悠仁と彼は再会する。

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虎杖悠仁はいい奴です。

※昨日は書きかけのやつを投稿してしまい申し訳ないです。


とある少年の出会いと別れ

 Q.1学生の勉強場所として最適な場所は何処か?

 

「ほら、虎杖。オマエお望みのコーラを持ってきてやったぜ」

「……俺の知ってるコーラは、こんなナメック星人の長老様みたいな色してないんだけど」

「ふっ、オレ特製のカクテルさ」

 

 A.ファミレス

 

 ファミレスは学生にとって一番手が出し易い飲食店だ。比較的に安価でメニューも豊富、量もそれなりにあって普通に美味しい。特に安価と言う点は、バイトも出来ないオレたち学生にとっては魅力的だった。

 金がないなら図書館に行け、と思うかもしれないが、学習室特有の張り詰めた空気の中は肌に合わない。こうしてドリンクを飲みながら勉強する方が良い。

 

 虎杖に調合したドリンクを手渡す。その何とも言えない色具合に難色を示したが、渋々と受け取る。

 

「安心しろよ。不味くはない」

「もし不味かったらデザート一品奢りな」

「じゃあ不味くなかったらどうする?」

「あっ、それはずるいぜ!?」

「オマエから挑んで来たんだろうが……まぁ、マジで不味くはないからよ。飲んでみろ」

 

 「南無三!」と濁った緑の液体を喉に流し込んだ。

 

「……普通に美味えじゃん」

「コーラとメロンソーダ混ぜただけだからな。色合いはやばいが不味くなることはない」

「でも、コーラだけの方が上手い」

「そりゃそうだ」

 

 バーテンダーとかなら両方の良いところを相乗したカクテルを作れるんだろうが。

 

「というわけで、賭けはオレの勝ちってことで良いな? デザート一品頂こうか」

「賭けは無しになったんじゃ?」

「ンなこと言ったつもりはないが……すいません、この『ホイップカフェゼリー』を一つお願いします」

「おまっ! あ、俺もそれにひとつお願いします」

 

 通りがかった店員に容赦なく注文し、虎杖も流れに乗って同じものを頼む。

 

「まぁ、千葉にはお世話になってるし、奢るのは全然構わないけどな」

「え?」

 

 元よりそのつもりだったし、と笑う虎杖に、オレは思わず目を点にした。

 

「……さっきのは冗談だったんだが」

「受けた恩はきちんと返せって爺ちゃんに言われてるんだ。千葉のおかげでここまで成績が上がったんだし」

 

 そう言って見せて来たのは、先月受けた模試テストの結果だ。三年の最初期に受けた時より全教科の点数が軒並みに上がっていている。

 その中でもオレの目を引いたのは志望校判定だ。滑り止めの私立はほとんどA判定、そして肝心の第一志望の高校は──Aの文字が記されている。

 

「そうか、Aになったのか」

「へへ、驚いただろ?」

 

 ああ、そりゃあとても。

 オマエなら取れるとは思っていたが、こうして見せてもらうと信じられない。

 胸の内が何かで満たされていく感覚。

 これは喜びと達成感だ。

 

「よかったな、虎杖(親友)

「ああ。ありがとな、千葉(親友)

 

 虎杖との付き合いはもう三年近く経つ。

 楽しい三年間だった。一緒に飯を食って、遊びに行って、パチンコで小遣い稼ぎもしたりして。時にも喧嘩もしたりした。

 ただその中で、今この瞬間が──オレのこの3年間で一番の思い出となっていた。

 

「あ、オマエA判定取ったからって油断すんなよ? 3年間Aだったやつが落ちることだってザラにあるんだからな」

「わ、分かってるって! オマエに口酸っぱくなるくらい言われてるからさ」

 

 ……照れ臭くなって、茶化した。

 

 

 

 

 

 

 

 卒業式の日、屋上で虎杖と二人で校門周辺を見渡していた。

 

「3年間あっという間だったよなー。入学式がつい最近のことみたい」

「確かに。オレの兄貴が言ってたが、これからはもっと早く感じるらしいぜ。一年どころか10年もあっという間だってよ」

「あ、それ爺ちゃんも言ってた。気づいたら70歳になってたって言ってた」

 

 桜の花びらが風に乗ってここまでやってきた。

 天気は快晴。雲ひとつない青空が広がっている。

 絶好の卒業日和。 

 

「高校は別々だな」

「だな。けど、別に学区は近いしいつでも会えるだろうよ」

「部活とかしねぇの?」

「やらね。オレの運動音痴っぷりを忘れたか。文化部もざらっと見たけど興味あるもんはなかったしな」

「はは、ソフトボール投げで記録がマイナスだったのは初めて見たよ」

「……言うな。あれから特訓して前には飛ぶようになったんだからよ」

 

 過去の苦々しい記憶に思わず苦笑いする。

 ちなみに虎杖は測定不能だった。ボールはそのまま場外へ飛んでいったからだ。

 

 虎杖は高校でも何処の部活にも所属するつもりはないらしかった。放課後の時間は、爺さんのお見舞いに使いたいんだとか。

 その類稀なる──いや、もう超人レベルの身体能力があれば、インターハイ優勝どころかオリンピックだって余裕で取れるだろうけど、本人がそれを選ばないのであれば仕方ない。勿体無いとは思うが、それを決めるのは虎杖だ。

 

「俺たちが大人になるのもすぐなんだろうなぁ。何してんだろ、未来の俺たち」

「知らね。オマエは性懲りもなく人助けしてそうなもんだけどな」

「? なんで?」

「何となく」

 

 三年間、虎杖悠二という人間を見て来てから人となりは分かっている。

 こいつは、どうしようもないお人好しだ。困っている人がいれば、迷わず助けにいく。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()。いつか、こいつは誰かを助けるために命を賭けた選択をするんじゃないかって。

 

 きっと、それを選ぶ時オレは側にはいない。

 オレは虎杖の友人にはなれても、肩を並べて歩む相棒にはなれない。

 

 はぁ、とため息を落とす。

 

「千葉は将来の夢とかあんの?」

「オレ?」

 

 虎杖が訊ねる。

 

 将来、将来かぁ。

 

 未来のオレは、一体何をしているだろうか。

 

 夢も何もない。ただなんとなく勉強して、知識を蓄えているだけだ。それの使い所に、オレはいまだに会えていない。

 

「考えたことなかったな。何にも決まってない」

「……そっか」

 

 ならさ、と虎杖が言う。

 

「先生とか、どう?」

「はぁ?」

 

 オレが、教師?

 一体どういう風の吹き回しだ。

 

「……死ぬほど向いてねぇだろ」

「そうかな? 千葉は頭も良いし勉強も出来るし、教えるのも上手い」

「性格が向いてねぇって言ってんだ」

「違う違う。まだまだあるんだって!」

 

「それにさ、千葉は生徒を信じてるから」

 

 目が合う。

 真剣な眼差し。

 紛れもない──虎杖の本音。

 

「俺が何度間違えても諦めずに教えてくれたし、絶対に投げ出そうとしなかったろ?」

 

 ──嬉しかったんだよ

 

 ニカリと笑う。

 

 何だ、そりゃ。

 

 けど、その言葉を聞いて──オレの胸にスッと入ってきた。

 曇っていた未来が、一気に晴れた。

 

「ああ、そうか。教師か──いいかもな」

 

 なるとまでは思わないけれど。

 目指してもいいかもな、とは思えた。

 

「千葉なら絶対に良い先生になると思うけどな」

「目つきで怖がられるぜ。オマエのそのピンク頭と一緒で、この目つきのせいでヤンキー呼ばわりされてたからな」

「どうせすぐに馴染むって! 千葉って割とポンコツだし」

「殺すぞ」

 

 頭にチョップを入れたその瞬間、ジーンとオレの手が痺れた。

 硬すぎる……石かよこいつ。

 

「まぁ、まだなるからわかんねぇけど、もしオレが教師になったら、オマエに焼き肉でも奢ってやるよ」

「え、マジで!?」

「おう。オマエがオレの進路先を見出してくれたわけだからな」

 

 

 ──ありがとう、虎杖

 

 

 

 

 

 

 

「っていうことがあって、オレは教師を目指すことになったわけだ」

「へぇ〜」

 

 十月三十一日、ハロウィンの日の昼下がり。

 せっかくのハロウィンだということで彼女と渋谷へやって来た。

 ぶっちゃけ、オレも彼女も仮装にはまったく興味はないのでパレードを観るような感覚だ。

 普段の渋谷がどんなものなのかは知らないが、今日は人集りが濃い。そんな行列を遠目に、公園のベンチで彼女と適当に駄弁っていた。

 

 彼女に将来の夢とかあるのかと訊かれ、オレは教師と答えた。すると、めちゃくちゃ驚いてその理由を聞いてきた。どうやら、予想外の答えだったらしい。オレもそう思う。

 

「千葉くんが先生になりたいだなんて信じられなかったけど、そんな理由がねぇ」

「まぁ、アイツに言われなきゃ目指そうとも思わなかったからな」

 

 中二以前のオレに聞かせれば大声上げて驚くに違いない。

 

「ま、オレは今でも懐疑的だけどな。ぶっちゃけオレの性格が向いてるとは思えねぇ」

「えー、向いてると思うけどなぁ。私の担任が千葉くんなら惚れちゃうかも」

「……オマエなら教師と生徒とか関係なく迫りそうだもんな」

「当たり前じゃん。好きになるってそういうことだもん」

「それは身にしみてますよ」

 

 オレはこの半年間で彼女に5回も告白されている。そのうち3回断って、4回まで保留にして、5回目で改めて告白されて今こうして彼女と恋人になっている。

 彼女は押しが強かった。最初はよく知らないからと断った。すると彼女は、

 

『じゃあ知ってほしいから友達になろう?』

 

 と言って、オレに付き纏うようになった。

 初めは鬱陶しかったけど、段々と彼女と会話するのが、彼女に会うのが、彼女と過ごすのが楽しくなっていた。 

 そして、最終的にオレは攻略されてしまったわけだ。

 恋する乙女はハリケーンだなんて聞いたことがあるけれど、確かにハリケーンだった。

 

「私、虎杖くんと会ってみたいなぁ」

「オレもゴールデンウィークから会ってねぇな」

「そうなの?」

「ああ。東京の高専に転校したみたいでな。中々忙しいみたいで、会う時間が取れねぇ」

「やりたいことが見つかったのかもね」

「やりたいこと、か」

 

 そういえば、虎杖もやりたいことは決まってないって言ってたな。

 何にせよ、それが出来たのなら友人として嬉しく思う。

 

「あ、虎杖くんも来てるんじゃない? 聞いた感じだと、仮装パーティーとか好きそうだし」

「はぁ? んなわけ──」

 

『見て見て千葉。超高速ゾンビ』

 

 脳裏に過ぎる、ゾンビのコスプレをして全力疾走で運動場を走る虎杖。

 

「──あり得るな」

 

 あいつはこういう催しが大好きな男だった。

 

「でしょ? ついでに紹介してよ虎杖くん」

「まぁ、オマエがいいならいいか。いるかどうかはわかんねぇけど」

「ありがと! あ、私ちょっとお花摘んでくるね。荷物、お願いしててもいい?」

「ああ、了解」

「じゃ、よろしく〜」

 

 手を振ってトイレへと向かう彼女を眺めながら、ケータイを取り出してアプリを開き、虎杖とのメッセージルームを開く。最後にやり取りしたのは一週間前だ。

 

 ──元気にしてるか?

 ──もちのろん。そっちこそ元気?

 ──彼女と仲良くやってるよ。

 ──彼女いたの!?

 ──…………

 

「メールだけでも、やり取りの内容はあん時と変わらねえな」

 

 6月から7月の終わりにかけて、虎杖との連絡が一切途絶えた時期があった。

 何かあったのかと心配して、怖くなって。

 虎杖が電話がかかってきた時──安心した。

 理由は詳しくは話してくれなかったが、とにかくオレは虎杖が無事でいてくれて嬉しかった。

 それからも面と向かって会うことはなかったが、電話やメールでのやりとりは続いた。

 

 ふと、今過去を思い返して、強く思う。

 

「久々に会いてえな」

 

 メッセージを打ち込み、送信ボタンを押そうとした、その時だった。

 

 

「──君、虎杖悠仁の知り合いなんだ?」

 

 

 悪意が、耳元で囁いた。

 

 

 

 

 

 

 ハロウィンの夜。多くの人間がこの渋谷に集まっていて、いつもよりも喧騒に包まれていた──尤も、それは阿鼻叫喚という意味での喧騒だが。

 

 虎杖悠仁が、凄まじい速度で街を駆け抜けている。

 素の状態でさえ車両に追いつけるほどの脚力を誇る悠仁だが、呪いの王、両面宿儺の指を喰らい呪力を宿してからは更にその身体能力を比類なきものとしている。

 一級術師である冥々に、既に一級術師クラスの実力者と評価されるほどだ。

 

「早く五条先生のところに行かねえと……!」

 

 目的は新宿駅のB1F。そこに彼の命の恩人であり師匠でもある男──最強の術師である五条悟がいる。

 

 現在、彼は何者かの手によって封印されている状態だ。正直、彼が封じられている姿なんて想像出来ないが、ミニメカ丸や先ほど交戦した呪詛師の言葉から真実であることは間違いない。

 ただ、封印されたというのに処理が追いついていないという事実には思わず笑いが出たが。

 流石、五条悟。

 何処まで言っても規格外である。

 

 ミニメカ丸からの情報によれば地下街には特級呪霊が確認出来るだけでも4人いるとのことだ。その中には虎杖と因縁深い呪霊──真人もいる。

 

 魂魄を自由自在に操る、人が人を恐れる呪いから生み出された仮想呪霊。

 人の悪意を濃縮したような悪辣さを持つあの呪霊を、友の心を弄んだあの悪霊を、虎杖は絶対に許せなかった。

 

 既に虎杖は真人の術式により生み出された改造人間と多数遭遇している。

 改造人間──その正体は虎杖と同じ、元人間だ、

 魂の形は肉体の形。それを粘土のように捏ねくられた人間は、負荷に耐えられず異形へと姿を変える。

 真人の命令を聞くだけの操り人形、しかし自我を保つあまりにも哀れな存在。

 

 もう迷いはしない。

 助けるなんて、大層なことは言えない。

 けれど、少しでも彼らが安らかに眠れるようにと、虎杖はその拳を振るう。

 

「!」

 

 前方に人を発見。

 性別は女性。

 外傷は殆ど見られない。

 その周りには──4体の改造人間。

 

(最短距離で、最速で倒す!)

 

 地面が弾ける。女性に近づいていた改造人間に肉薄し、呪力を上乗せした拳を振るう。ズズン、と二撃の衝撃が響く。

 ──逕庭拳

 虎杖の瞬発力に呪力が追いつけず、打撃の後に本命の呪力がやって来る、虎杖だけの技。

 東堂には特級呪霊には見かけ騙しにしかならないと酷評されたが、この程度の相手ならば十分に通用する。

 

 そのまま残る3体の動きは、既に見えている。

 1体、2体と倒し、最後の1体へと蹴りを放つ──その時だった。

 

 その1体は、動きを止めてジッと虎杖を見ていた。

 

(なんだ……?)

 

 思わず、身構える。

 真人が何か仕込んでいるのかもしれない。呪力の流れに変化はないが、ただただ不気味だった。

 

 嫌な予感がする。

 ひょんなことから呪いの蔓延る世界に関わることになり、強敵との死闘を繰り広げてきたおかげか、第六感(シックスセンス)とも呼ぶべきそれが虎杖にも備わって来ていた。

 

 けれど、何故か身体が動かない。異形に成り果てた人を見て──正確にはその瞳を見て。

 虎杖は、拳を振るえない。

 

 そして、改造人間がようやく動き出す。

 口元がモゴモゴと動く。

 

(呪言か──!?)

 

 金縛りにかかったように動かなかった身体が復活する。

 呪力を纏った拳撃を放ち──。

 

 

「──いたど、り

 

 

 ゾワリ、と。

 悪寒が走った。

 再び動きが止まる。

 

 かつて、今際の際にその名を呼んだ少年がいた。

 

 吉野順平。

 

 だが。

 いま目の前にいるのは順平ではない。

 

 では、誰なのか?

 

 ()()()()()

 

 虎杖悠仁は目の前の存在を、知っている。

 

 

 瞬間、虎杖の脳内に溢れる──在りし日の青春。

 

 

 中学時代の親友──千葉 翔也

 

 彼が今──目の前にいる。

 変わり果てた姿で、苦しそうにこちらを見つめている。

 

「おまえ、何で……!」

 

 声が震える。

 

 虎杖が知る由もないが、ただ彼は最近出来た彼女とハロウィンを楽しむだけのつもりだった。

 それだけのはずだったのに。

 

 ──悪意に、目をつけられた。

 

 

 ギリッ、と奥歯を噛み締める。

 真人。

 あの呪霊のニヤついた笑みが、脳裏を過った。

 

「……いたどり

「千葉、オマエ……」

 

 潰れた声で、虎杖の名を呼ぶ。

 

 千葉は、意識を取り戻していた。

 強靭な自我によって、肉体の主導権を完全には取り戻せずとも、千葉 翔也は抗っている。

 

(けど……!)

 

 千葉は、もう手遅れだ。

 魂の形を変えられるのは、それに干渉が可能な真人だけ。

 

 つまり。

 千葉 翔也という人間の人生は──どうしようもなく、ここで詰んでいた。

 

 その時だった。

 

 

「虎……杖!!」

「!!」

 

 潰れた声ではない。

 聴き慣れた、あの頃と変わらない声で彼は叫ぶ。

 

「虎杖、今……から、言うことを……聞いてくれ……!  酷な、ことを……頼む

「ッ〜〜〜!!」

 

 分かった。

 分かってしまった。

 

 虎杖悠仁には、彼がこれから何を口にするのか。何を頼むのか──その答えが。

 

 

「頼む──オレを、殺してくれ」

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 苦しい。気持ち悪い。頭が痛い。ボーッとする。苦しい。苦しい。頭が痛い。フラフラする。思考が纏まらない。

 

 だが──虎杖を見て、だいぶマシになった。

 ()()()()()()()()()()

 

 虎杖悠仁。

 悪友。オレの青春時代のピースの7割くらいは、こいつと埋まっている気がする。まぁこいつは、コミュ力お化けだからオレの割合は少ないかも知れないが。

 

 最後に会うが、おまえで良かった。今のオレが彼女と会えば、怖がらせちまうし──何より、何をするか分からない。

 今も自我を維持して、身体を制御下に置くのだけで精一杯だ。そう長くは保たない。

 

 だから、虎杖。

 どうか。

 

 

「──オレを、殺してくれ」

 

 

 無視しても構わねえ。

 オレは別に、恨まねえ。それは、筋違いってもんだから。

 

 我ながら、最低なことを言っている。

 友を殺せと言っているんだ。

 他人を殺すのとじゃ、わけが違う。

 虎杖は優しいやつだから、きっと人一倍責任を感じる。後悔だってする筈だ。

 

 

 悪い。

 

 

「──ああ、わかったっ」

 

 

 涙声で、虎杖が答えた。

 

 そして。

 

 

 

 ──ありがとう

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 悪い。

 ありがとう。

 

 

 彼は最後にそう言って、動かなくなった。

 

 涙を払い、前を向く。

 

 悲しむのはあとだ。

 今は──やるべきことがある。

 

 すべてが終わったら、存分に泣こう。

 

 虎杖悠仁は、渋谷駅へと再び走り始めた。

 




─登場人物紹介─

《オリ主》
名前は千葉 翔也。由来は特にない。中学時代の虎杖の友達。一緒にパチンコに行ったりもした。本人はスロットの方が好きだが。勿論、存在しない記憶ではない(と思う)。東堂とも知り合いではない。
この度、出来たばかりの彼女と渋谷で仮装はせずともハロウィンを楽しむつもりだった。彼女に夢を聞かれ、その話をその辺を歩いていた真人に聞かれてしまい痴漢(無為転変)。
他の改造人間同様、一般人を襲っていたが、虎杖を見つけ一時的に自我を取り戻す。友に気づいてもらい、彼に介錯してもらったのは彼の唯一の救いだったが、同時に自分のわがままで虎杖に重荷を背負わせてしまうことを悔やんでいた。
ちなみに術師としての才能は順平並みにはある。術式は知らん。
彼女は死んだ。

《虎杖悠仁》
オリ主の中学時代の悪友。連絡は取り合っていたけど、途中で死んだりしてたから中々遊べなかった。小沢ちゃんから元気にしてると聞いて、安心してたりもする。
今回、親友に手を掛けた。命に優先順位はないが、親友の命をこの手で奪ったこと、間に合わなかったことを酷く悔いている。
それでも前を向いて、今自分がやるべきことをやるために動ける彼は、やはり主人公。

《真人》
諸悪の根源。街中を歩いていたら、虎杖のことを話していた男がいたので「嫌がらせすっか!」ってノリで無為転変した。虎杖の知り合いじゃなかったらどうすんだテメェ。どうもしなかった。
人から生まれた呪いということで悪意が他の呪霊と比べてえげつないくらい強いが、個人的には好きだったりする。ちゃんと悪役をやっている。

《彼女》
愛が重そうではあるが、束縛は特にしない系彼女。小沢ちゃんのいとこっていう裏設定。ちょっとお花を摘みに行っている間に彼氏くんが誘拐されていた。
その後、渋谷事変が始まり呪霊や改造人間たちから逃げながらオリ主くんを探していたが、途中で呪霊に襲われてお亡くなりになった。最後までオリ主くんのことを心配していた。あの世で会えるといいね。

《東堂葵》
オリ主に「好きな女のタイプは?」と尋ね「ケツとタッパがでかい女」と返って来たので意気投合した気がする。高田ちゃんからフラれた後、一緒にカラオケで失恋ソングを歌った気がする。悠仁と3人でラーメンを食べた気がする。黒閃アミーゴというバンドも結成した気がする。


以下、あとがき

勢いで書いてしまったし、久々に書いたから文章に自信はないですけど、達成感はすごい。

被殺願望杯も折り返し地点。楽しんでくださいな。

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