艦これ回想録~波濤の記憶~   作:COOH

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第6話 On the Corner

 

「赤城さん、加賀さん」

鳳翔は見慣れた後ろ姿に思わず声をかけた。振りかえる二人の後ろに他に人がいることに気づく。

「鳳翔さん!お久しぶりです!」

喜びを素直に表す赤城に加賀も控えめに続く。

「瑞鶴、翔鶴、先に行ってなさい」

「ちょっと!まだ話が――」

加賀に食って掛かるツインテールの艦娘を、どうせいつものことでしょ、とぼやきながら手払いで追いやる。

「お取込み中でしたか?」

「いえ、大したことではありません。…しかし、こうしてお会いできるなんて嬉しいかぎりです」

「ええ。お二人ともますます立派になられて」

「そんな、まだまだです」

「加賀さん、固いですよ。ごめんなさい、加賀さんったら緊張してるみたいで」

赤城と笑いを交わすと加賀は少し不機嫌そうになる。といっても普段の表情とほとんど変わらないのだが。

「これから演習があるのですが、終わってからで良ければお話できませんか?この鎮守府にはおいしい甘味処があるんですよ」

甘味と聞いて鳳翔も興味を惹かれる。小さい泊地にはなかったものだ。

「ぜひ。久しぶりにお二人の食べっぷりも拝見させていただきます」

「…間食ですから、そこまで食べません」

恥ずかしそうに小さな声で反論する加賀にまた赤城と二人で笑みを交わす。

新しくなる日常の中で懐かしいものを垣間見た。

 

 

比叡、榛名、霧島の金剛型3姉妹は寮の一室で少し重い空気を共有していた。

「金剛型1番艦、つまり金剛が来るみたいですけど…」

「やっぱり、霧島も不安?」

「榛名もです。今まで3人でやってきたのに…」

同型艦は編成や生活面で近い扱いを受けることが多い。姉妹艦といわれるだけあって性格的に問題なく関係が築ける場合がほとんどらしいが、この鎮守府ではずっと3人でやってきた。ましてや艦籍でも艦娘としても上となれば新たに姉妹艦を迎える懸念は当然ある。

だからといって何かをできるわけではない3人の心境をよそにドアが盛大に開き

「Hey Hey Hey! ユーたちが私のシスターズですネー!!」

――やばいやつが入ってきた。

 

 

「なんだ、もう終わったのか?」

陸奥は廊下の先で壁に背中をあずけている艦娘に目をやった。長身の陸奥よりもさらに背が高い。

「長門がはりきって案内してくれてるわ」

陸奥は嘆息しながら歩を進める。

「気になるのならあなたもくればよかったじゃない。貴重な大和型なんだから、提督に顔を合わせておくべきよ?」

「近いうちにな。私では改まった場に向かんだろう?」

分かってるだろ、と悪びれもせず目で語る武蔵を見て、陸奥は再び息をつき武蔵の隣で壁に背を付ける。

「で、どうだ?新しい提督とやらは」

「まあ、いい人そうね。私の評価なんて当てにならないけど」

「まだ気にしているのか?己の責任外のことは忘れるのも上に立つものの資質だ。少なくとも私はお前に人を見る目があると思っているぞ」

武蔵にしては珍しい、慰めるような声音と言葉に小さく笑って答える。

「そうだといいわね。…長門にはからかい甲斐のある姉でいてほしいもの」

冗談めかして肩をすくめる陸奥に、武蔵も口だけは咎めながらも同じように応じる。

「提督はともかく、一緒に来た艦娘は大したものね」

「お前の評価はあてにならないんだろう?」

「その私でも断言するほどってことよ」

「それはぜひ手合わせ願いたいな」

陸奥の言葉に武蔵は眼鏡の奥の瞳を光らせる。

「あなたの悪いところが出てるわよ。その艦娘が信用してるのだから提督もそれなりなんじゃないかと言いたかったのよ」

言葉を返さずに歩き出した武蔵の背を見ながら陸奥は再び嘆息した。まさか今すぐ演習をやろうというわけではないだろうが。

内も外も心配事だらけだ。新しく来た提督がこの鎮守府にとって吉となってくれるように願いながら、焦点の合わない天井を見つめた。

 

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