Metal Gear Solid/ Ark of ■■■■ 作:daaaper
あれは嘘になった
と言うわけで、戻ってきました。
また気長にお付き合いくださると幸いです
3月6日 PM 08:00 ロドス艦内 居住区 スネークの居室にて
スネークがこの世界に来て1ヶ月ほど経ち、そして縁がつながりBSWのインストラクターとして教導が始まって約2週間が過ぎた。
スネークが指導する相手、BSWのハンドガンシューターであるジェシカは、周りや本人も適切な評価をしていない様だが、元から備わっている危機管理能力と確実に磨き上げられてきた技術は、兵士として貴重な存在になりえると、スネークは評価した。
もっとも、彼女本人が気付いていないこれらの強みや技術力は、BSWの人事部や彼女の先輩にあたるフランカはきちんと見抜いていたらしい……が、見抜けてはいても、その価値を引き出す手段を持ちえていなかったようだ。
「……じゃあ、室内においてはハンドガンの方が必ず有利なんですか?」
机の上で簡易的なメンテナンス道具を広げ、支給されたグロックをメンテナンスするスネークの後ろに、彼に鍛えられているジェシカが立ちながら質問を投げかけている。この二週間でジェシカはスネークと様々な会話をし、スネーク自身はどこからきたかよくわからず、この世界に関する情報をあまり知らないこと、彷徨っているところをフランカたちに拾われたことも知った(事実はもう少し複雑だが、彼女はそこまでは知らない)。
「しつこく言うようだが、武器によって有効な距離感は異なる。どんなに威力があろうと、ライフルのような長物を狭い室内で扱うより、ハンドガンの方が有利になる。だが目と鼻の先にいる敵にはナイフの方が有利だ」
この世界に来て、いまだわからないことは多いが、銃に関する知識はあまり普及していないことは確かであることをスネークは把握した。銃の構造や弾道学といった工学的・物理学的理論、タクティカルな経験の堆積、そのどちらもがスネークがいた世界と比べて、明らかに不足していた。
だが、銃の進化・発展に関しては差異がない。これに関しては、魔法、この世界ではアーツという様だが、それがある以上、わざわざ火器を使う意味やアドバンテージが少ないのは自然だろう。いちいちメンテナンスや、補給を気にせずとも、念じれば文字通り火力を身体から直接放てるのだ、その方が簡単だし早い。
もっとも、寿命を縮め、鉱石病という病を悪化させるリスクがあるのはとても無視できないが……銃を扱うか否か、という点だけで見れば、アーツを選ぶだろう。スネークも同じ環境下に置かれればそうする。
銃に関する知識も経験も全くゼロな世界ではないようだが、銃に関する知識や経験が不足しているからこそ、身元不明にも関わらず『銃の専門家』というだけで、備品や衣食住の完全補償という高待遇で自称傭兵の人間を雇う価値があるのだろう。
スネークに鍛えられ始めた彼女は、この世界では貴重な知識を吸収しようと毎晩スネークの部屋を尋ね、もとい入り浸っていた。これだけ銃に関する知識も経験も足りない世界で、自腹で銃を購入するほどの変人、というかオタクのジェシカだが、知りたい以上に強くなりたいという気持ちが強かった。
だからこそ、スネークもできる限りの技術と知識を与えようとジェシカが遠慮なく部屋に入ることを許可した。
「ナイフ、ですか」
「……ジェシカ、近接戦闘の経験は?」
「接近戦はBSWで基本的なことは習いますが、実戦経験は……ないですね」
「まあ、
弓兵が護身用に鉈や剣を持つことはあっても、それは護身の範疇を超えない。というか、それを抜くほどまでに接近されている時点でほぼ負けなのだ。中にはそれだけの至近距離でも弓を使う者もいるが、それはメジャーではない。
だがスネークからすれば、銃を使いながら、常に距離をとる立ち回りをすればそれで良い……とは、考えていない。
「なら明日からは近接戦闘の訓練にも入る、むしろそっちがメインになる」
「・・・え!?か、格闘戦をやるんですか!?」
「なんだ、そんなに驚くことか?」
「え、えーと……私は誰と組むんでしょう……?」
「そりゃ俺がインストラクターだからな、俺とだが」
「ええ!?」
「……そんなに驚くことか?」
そりゃ驚く。
だって、ジェシカの身長は147cmで、フェリーン族の中でも小柄な部類に入る。対してスネークは188cm、しかも年齢は40歳に近く、それでいて傭兵としてたくましい身体の持ち主である。いきなり格闘戦の訓練をするにしても、ジェシカからすれば難易度MAXなんて次元ではない。
「だ、だって私スネークさんのこと殴れる自信ありませんよ!というか顔に届きません!!」
「問題ない、慣れれば俺を投げ飛ばすくらいできるようになる」
スネークの言ったことは事実である。
彼とその師が生み出したCQCという技術は、『いかに敵地から将校やVIPを無傷で拉致してくるか』というスナッチミッションの遂行が根幹にある。そして、この技術はさらに分枝することで発展していくが、この技術の核はいかに敵を素早く無力化することに重きを置いている。
若い頃は、力にものを言わせて敵を捌いていたスネークだが、歳を増すごとに技術により敵を捌くことを覚えた。そしてあらゆる人間がトレーニングを経ることで、扱うことができる技術へと昇華した。
何よりMSFの研究班や糧食班ですら、CQCの基本を身につけることで現役バリバリの戦闘班連中をぶん殴ったりぶん投げたりできるのだ。ジェシカのトレーニング相手がスネークであろうと問題にならない。
「そ、そんな自分の姿想像できないです……」
もっとも、MSFのことやCQCはもちろん、体術についてまるで知らない彼女からすれば、体重差や身長差を覆す技術などとても想像できないだろう。
「なに、1ヶ月もあれば俺をぶん投げるくらい造作もないさ。もっとも、俺に勝てるかはまた別だがな」
「お、お手柔らかにお願いします……」
「任せろ、それが俺の仕事だからな。この2週間でお前に教えがいがあることはよくわかったからな」
「うぅ……もっと厳しい訓練が追加されるんですねぇ……」
「俺としては褒めたつもりなんだがな」
この2週間でスネークがジェシカに施したのは、室内戦におけるタクティカルトレーニングのドリルだった。ジェシカの射撃技術はすでに中堅の域にあり、スネークが口を出す箇所はない。
だが、中堅で止まっている。その理由は彼女の極めて臆病な性格が影響している……ところもあるが、彼女は自分が持ち合わせている技術を『自分なりのモノ』に変化・昇華させていないと、スネークは評価した。
早い話、誰が見ても参考になる見本の様な射撃技術は完璧に持ち合わせている、だが彼女には『オリジナルな部分』はほとんど無いのだ。
「お前の訓練に対する姿勢と、技術の獲得の早さは大したもんだ。お前は学んだことを素直に試して学んだ通りにやる、やってわからなければ質問する、また試す。何人も教えてはきたが、ここまで教えがいがある相手は久しぶりだ」
「そう……なんですか?」
「ああ、何かしら文句を言うからな。だがお前はとにかくまずは言われたことを試している、俺としても教えやすい」
「あはは……ドーベルマン教官からは『学んだことをまるで活かせていない!』ってよく言われたのですが」
「それはお前が、自分に自信が無いだけだな」
「……え?」
「自信が無い、自分が何かしら間違えている、そう考えてるからこそお前は人の言葉をよく聞いてる。まあ、自分の考えに自信がないからこそ、訓練でも動きが鈍い時もあるがな」
「は、はい……」
「まあそれに関しては明日からの訓練で変えていけばいい」
そう言ってスネークはメンテナンスを終え、椅子から立ち上がるとグロックをホルスターへ仕舞い、ジェシカの方をみる。彼が立ち上がることで改めて身長差が明らかになる。ジェシカからすれば、目の前にいる男をぶっ飛ばす自分など、まるで想像できない。
「でだ……今日注文したものが来るんだよな?」
「は、はい。スネークさんに頼まれた物は今日の夜に届けるとペンギン急便の方から連絡があったので、そろそろ来るかと」
「ならお前の部屋に行ったほうが良いんじゃないのか?」
「あ、それは大丈夫です。届け先はスネークさんのお部屋にしましたし、まずロドスの搬入部門の方が受け取ってから、届くと思いますよ」
「……そうか」
この時、スネークの思考は瞬時に加速した
なにせこの世界に来てからはや1ヶ月
この間完全な禁煙である
ここまでよく我慢できたと自分を褒めても良いだろう。だがすでに彼の葉巻に対する欲求はすでに限界を迎えており、いますぐにでも吸いたいのだ。ましてや彼は忘れない。2週間前、タバコはともかく葉巻なら取り寄せるのに2週間はかかると言われたことを。
あの時だけは、葉巻ではなくタバコで妥協しようとした自分も心の中にいた。だが、すぐに彼は2週間のサバイバルを心に決めた。タバコは葉巻ではないのだ、同じタバコの葉で作られた産物ではあるものの、全く別の存在であり雲泥の差がある。であれば、なぜ2週間我慢もせず妥協する理由があるだろうか。一瞬でも心が揺らいだ自分が恥ずかしいともスネークは思う。だがその恥もこの日のためと思えば素直に受け入れる。
とにかく葉巻を今すぐ入手、
いや、
葉巻を手に持ち
己の指の間に挟み
口で楽しみたいのだ
「……ロドスの搬入部ってのは、車両が乗りつけるあのデカいハンガーにあるのか?」
「そうですね、あそこでロドスの物資のほとんどはやり取りされてますから」
「なら直接行って取りに行ったほうが早いな?」
「え?ま、まぁ窓口もあるので届いていればオペレーターの方でも受け取ることができるとは思います」
「なら届いてるか確認しに行ってくる」
「えーと、明日の朝には確実に届くと思いますよ?」
「いや、悪いが待ちきれん、俺にとって命の次に大事なものだ。待つ時間が惜しい」
「な、なるほど……!」
この時、スネークとジェシカの間には認識の差があった。
今のスネークにとって大事なものとは葉巻のことだが、ジェシカは彼が言っている大事なものとは、スネークが"買えるからついでに"注文を依頼した物のことだった。
ちなみに、スネークのことを知らないものから見ても、葉巻より明らかにスネークがついでに買ったものの方が重要だと普通に考える……というか、正規に購入できることの方が驚かれる代物だ。
「なら、私も一緒についていっても良いですか?」
「ああ、構わんが……そんな面白い物でもないぞ?」
「いえ、スネークさんが大事と言わせるほどのものですから、私もこの目で見てみたいです。実物を間近でみることはほとんどなかったですし」
「なら行くか」
スネークは思った。『もしかして……葉巻に興味があるのか?』と。
全くもって勘違いであるが、そんなことに気付くことはなく、2人はロドスのハンガーへと向かった。
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