Metal Gear Solid/ Ark of ■■■■ 作:daaaper
なかなか感謝の言葉を伝えることは難しいですが、大変助かっております。
相変わらずの不定期投稿ですが、なが〜く付き合っていただければ幸いです。
では本編をどうぞ
2月9日 ロドスアイランド製薬会社 療養庭園 PM03:00
スネークはここで1週間の経過観察を言い渡されたが、それも今日で6日目である。突然上に連れて行かれたかと思えば、汚染されていないのはおかしいと指摘され、しかし無理やり検体とされることは回避されたらしく、大人しくここで過ごしていれば解放されるようだった。
連れてこられた療養庭園の管理人のラナは、この製薬会社の医療部門に属しており、その中でも調香師としてこの療養庭園を運営していた。が、彼女がいうにはここ最近大規模な戦闘があったらしく、戦闘終了後もここはとても忙しくしていたらしい。今は療養庭園に勤める人員に休養が言い渡されているそうだが、彼女はここの管理人としてゆっくり過ごすつもりだったそうだ。
『それは休暇を邪魔してしまったな』
とスネークが言うとラナは
『良いのよ〜、植物たちを育てるのも楽しいけれど、お話するのも楽しいもの』
と言った。
そんなわけで、あと1日で経過観察を終えるがこれまで彼は療養庭園でどのように過ごしていたかと言えば。
「……対症療法としてのアロマセラピーか」
「そ、気分が良くなる香りで心を落ち着けさせて、リラックスしてもらうの」
「嗅覚は脳の記憶を司る部分を直接刺激する、感情のコントロールにはとても有効だからな。気付け薬にもなる」
この療養庭園の管理人はとても協力的だった。暇があれば会話ができ、スネークが欲しいのは情報だったが、管理人が融通を利かせてくれ、本をいくらでも読むことができた。今もこうして庭園に設けられた白い椅子とテーブルに座り、ラナが用意したアフターヌーンティーのセットを広げ、優雅に会話を楽しんでいる。
スネークが欲しがったのはまずこの世界の歴史、次に地図、さらにはオリパシーについての症状や治療法、その他アーツの操作法、あらゆる武装や戦術・戦略指南書、天候、料理、おとぎ話、などなど。専門書から新聞、雑誌に絵本に至るまでひたすら読み尽くした。
実際、彼女との会話はスネークにとって様々な好奇心を掻き立てた。
彼女の得意分野である香りについてはもちろん、この世界は天災による荒廃が目立つものの、植生や特徴的な生態系が存在すること。また、タバコも(生産量は少ないが)もちろんあり、入手することも不可能ではないことがわかった。
「まあ、ここではあまり刺激が強いものは育てていないけれどね」
「とても残念だ」
そして療養庭園でタバコは栽培されていなかった。
やれやれと手を挙げながらも、解放され次第、早速入手しようと心に決めた……が、この世界の貨幣を持ち合わせていないことが問題だ。稼ぎをどうしたものか。ここでは、鉱石病感染者の治療に関する活動を積極的に行っている。公表されている活動歴を見ると、製薬会社の面もあるが、感染者と非感染者の対立を解決するため、交渉と武力介入も行っているようだ。
そのことについて管理人に尋ねると
『そうねぇ、私たちがただ手を差し伸べるだけじゃとても届かないわ。もちろん争いがないのが一番だけれど……感染者の全ての問題を解決することが私たちの目的だから』と言う返事が返ってきた。
要するに、
「しかし、
「異世界からきたあなたから見れば奇病よね?」
そして積極的に感染者を受け入れ、彼ら彼女らを雇用し力としている。この療養庭園の管理人である彼女も鉱石病の感染者の1人だと知った。同時にセラピストとして調香することで人を救うのがここでの彼女の役割だという。
「いや、知らない土地に赴けば知らない感染症や未知の何かには何かしら遭遇する。確かに鉱石病は不思議ではあるが、嫌忌の類とは違うな」
「あら、恐ろしくないの?」
「目の前にいる調香師が随分と美人だしな」
そう返されラナは目を丸くした後、くすくすと笑う。どうやら返しとしては上々だったらしい。
「あなたはやっぱり面白い人ね」
「事実を言ったまでだ」
「それでそれで?あなたにとっては何がどう違うのかしら?」
ラナはこの6日間で様々な話をスネークとした。
鉱石病についてはもちろん、調香師としてのここでの働き方や一般的な感染者のイメージや待遇についても話したし、スネークからは彼のいたという世界について話を聞いた。彼の話だと、彼の世界には源石や鉱石病といったものは無く、彼自身は海の上に建設されたプラットフォームに自分の傭兵部隊の基地を作り、そこから世界中で活動していたらしい。ラナにとってそれは未知の世界のお話であり、彼女の好奇心を刺激した。
そんなラナとしては、スネークが鉱石病について、感染者について、どう考えているのかとても気になっていた。鉱石病がない世界、そんなところからやってきたという彼の話はとても興味深かったが、何よりそんな世界からきた人間がこの世界をどう思うのか。
指示書の通りでもあるが、それ以上にラナは1人のセラピストとして気になっていた。
「確かに、わからないことによる
「それは……忌々しいとか、気持ち悪いと何が違うのかしら?」
「鉱石病について俺も、論文やお前さんから教えてもらった限り不治の病だ。どうすれば完治するのか見当もつかん。何より鉱石病の症状は名前の通り身体が鉱石化して行くものだ、理屈も立てられていない」
「そうね」
「だが、言ってしまえばそれだけだ」
「・・・え?」
「治しようがない不治の病、それだけだ。発症した人間が悪いわけでも、ましてや発症したから何か悪事を働くわけでもない」
「でも——」
「ああ、人は発症した人間を理解することができなくなる、訳が分からないからな。それも自然ななり行きだろう」
表皮には鉱石が表出し、見た目のみならず内臓をも侵される。それにより消化器系や循環器系の機能低下や、脳神経系・内分泌系にも影響が出る。さらに、感染者に対する周りの目や扱いから精神も犯される。発症すればおかしくなる、という見通しがこの世界では当たり前なのだろう。
「……感染者はどうしようもないってこと?」
「なぜそう言う?」
「発症して、それだけで周りからは疎まれて、傷ついて、行き場もなくなる、それが自然ななり行き?」
ラナは感染者であり、同時にセラピストでもある。
感染者の気持ちはわかるし、普通の人からは怖がられ差別や疎まれることも理解できる。
それでもロドスで働いているのは、自分がしたいことと出来ることがここにはあるから。感染者や非感染者と関係なく、必要な人に香りで癒しを与えることが彼女の原動力でもある。
「それは変えられない流れだろう」
だが発症すれば治療法もなく、見た目は歪になり、最後には破裂し周りを感染させる。
そんな存在が隣にくれば自然と避けるかどこかに行くよう働きかける。そして大抵、避けるにしても働きかけるにしても、それがポジティブなものであることは少ない。むしろアグレッシブな方法が最も簡単だろう。スネークはそれを
「じゃあ……感染者はあなたからすればどんな存在?」
だが彼女にとって、感染者に興味すら持たれないのはとても悲しいことだった。
鉱石病がない世界からやってきた彼が感染者に対してどんな印象を抱いているのか、彼女はただ1人の人として気になっていた。
「ん?おかしなことを言うな?」
「どうなの?」
真剣に、そしてわずかな不安を抱きながら彼に尋ねる
「……どう、と聞かれると難しいが、まあ人だな」
「…………」
「生憎俺はこの世界の普通を知らない、あらかた書物を読んだがここがだいぶ特殊な環境なんだろう。そのおかげか鉱石病に対して極度な恐怖は無いな。まあ、源石の取り扱いについてはもう少し学びたいが」
「じゃあ……あなたにとっては感染者も普通の人?」
「目に見えて鉱石病の症状があるなら別だがな。例え腕がなくとも目が見えなくとも人は人だ。相手がどんな存在か知るのに病や障害があるかは手掛かりにはなるが、有ることや無いことが人の存在そのものではないからな」
スネークから見れば、むしろケモミミや尻尾がある方がよっぽど驚きだったが、それもこの世界が自分の知る世界ではないことをスネークに視覚的に伝え、やがて慣れた。
そもそも、調べた限り鉱石病は人から人にはよっぽどのことがない限り感染しない。接触や飛沫により感染するものでもないため、こちらが注意することはあまりない。もっとも、鉱石病は脳神経系にも影響を与える場合がある、視覚障害や聴覚障害があればコミュニケーション等に注意する必要はあるだろう。
何よりスネーク自身も片目を失い、また被曝による影響も受けている。だがそれで自分が異形の存在になったわけではない。
それでも、自分のように失った自分の身体を見てバケモノと捉える人間もいるだろうし、失った本人もそう捉える場合があることも知っている。それは自然な流れであり、変えられるものではないと彼は思っているが。
「……じゃあ、もし、だけれど」
「ああ」
「自分が感染者になったら?」
「鉱石病にか?」
「ええ」
「まあ、その時はその時だな、ここに世話にならないよう気を付けよう」
そう言ってニヤリと笑いながら、テーブル上にセッティングされたティーポットを片手で取り、カップに自分とラナの分の紅茶を注ぐ。ケーキスタンドはないが、ティーポットやカップ、ソーサーを見る限りアフターヌーンティーの習慣とほとんど同じようだ。この世界にも紅茶文化が栄えている国があるのだろう。
「何が起きようが自分は自分でしかない。何かが自分自身に起きようが、他人に起きようが、理解する努力が必要になるだけだ。そんな努力より否定する方が楽だろうがな」
少し長話をしていたが、色を見る限り、どうやらそれほど濃くはなっていないようだ。いい香りもする、飲むのに最適なタイミングだろう。カップを持ち上げ、口に運ぶ。
「……ところで、思ったのだけれど」
「ん、なんだ?」
「あなたって本当に傭兵?」
「ああ、そうだが?」
「それにしてはこう、なんと言うか……飲み慣れてるわよね?」
「……まあ、紅茶好きがいたんでな、コーヒーが良かったが半ば無理やり飲まされていた」
「そうなの」
それにしては随分と優雅に飲むのよね、とラナは思った。
何せこの髭を生やした隻眼の傭兵は、ティースプーンはカップの奥へ置き、一杯目はストレートで、2杯目はミルクたっぷりで紅茶を楽しんでいるのだ。完璧なアフターヌーンティーの作法である。加えてハーブティーにも精通しており、この庭園で採れるハーブに合わせて、美味しいハーブティーを淹れてくれたりもした。とても一介の傭兵が身につけているような作法ではない、と思う。
この6日間、スネークと話していてわかったのは、彼の知識の豊富さと思考の柔軟さだ。コミュニケーションは何も問題なかったが、龍門やウルサスの言葉すらも読めていた。恐らく他の言語も読むことができるだろうし、もしかしたら話すこともできるのかもしれない。
いずれにせよ、戦闘を生業とするだけの人物とはとても思えなかった。
もっとも、ロドスが採用するほどの人物かと言われるとわからない。何せ傭兵としての姿を一切見ていないからだ。当然と言えば当然だろう。だが、戦闘職以外でも情報部門でとても活躍できそうだなぁ、とラナは思ったし、彼との会話は飽きがないことから、できたら長ーく付き合いができたら良いな、程度には好感を持っていた。
トゥルルルッ トゥルルルッ トゥルルルッ
「あら、ちょっと失礼」
そんな優雅なティータイムを過ごしていると突如電話が鳴り響く。何か呼び出しらしい。
療養庭園も明日までは休園だが、来園自体はできないこともない。外のインターフォンを鳴らしてラナが許可を出せば入れるのだ。
それでも、休園であることを配慮されたのか、インターフォンを鳴らされることはほとんどなかったのだが、そのインターフォンがなった。ミルラに図書室の本を運んでもらうよう頼んだこともあったが、今日は頼んでいない。ケルシー先生が来るには早すぎる。
いったい誰だろうか、そう思いながら入り口へとラナは足を運ぶ。
そこには……ちょっと意外な人物が立っていた。
「はぁーい、休日にごめんなさいね」
「こんにちはラナさん」
「あら、お久しぶりねお二人さん、そう言えば今週帰ってくるって話だったわね」
療養庭園の入り口には・・・BSWから1ヶ月以上ぶりにロドスに帰ってきたフランカとリスカムが立っていた。
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m(_ _)m。