Metal Gear Solid/ Ark of ■■■■   作:daaaper

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インターフォンが鳴り、ラナは少し席を外した。

その間にもスネークはゆったりと座りながら紅茶を飲み、頭の中で思考していた。

 

まず考えなければいけないのは……葉巻である。

やはり葉巻がなければ始まらない、葉巻なき人生は人生ではない。嗜好品とあなどるなかれ、葉巻は心に安らぎをもたらし、人生を豊かにしてくれる。戦場においても心を平穏にさせ冷静さをもたらしてくれる兵士にとって重要なツールとなる。

いつか、食事はカプセルで摂取可能になり、兵站の負担は軽減されるだろうという話を聞いたが、とんでもない。食事は兵士にとって命の源であり士気にも直結する。また、戦場においても食事の時間は仲間と話をし、交流を深める絶好の場である。カプセルなどで代替できるほど簡単なものではない。

 

同様に葉巻はたばこで代替できるものではない。もちろん喫煙者は周りに配慮しなければならない、主流煙より副流煙の方が体に害があるからだ、吸うのは自己責任だが他者に危害を加える気は一切ない。ましてや鉱石病で呼吸器系が弱っている人もいるだろう、より一層の注意が必要だ。

 

 

だがそれはそれとして葉巻が欲しい

 

 

そのためには軍資金が必要だ。

ここで働くのも一つの手だろう、元から組織にはあまりこだわりはない。ましてや元の世界に帰る方法も探す必要がある。鉱石病に対して柔軟で積極的な姿勢を示しているここならば、この世界の珍しい情報も収集しやすいだろう。

だが一方で、ここである必要もないとも言える。何よりここだけの立場でしか情報を得ることができていない、せめて街を見てから就職を考えたい。

 

 

それはそれとして早々に葉巻を入手する必要がある

 

 

それも上質な葉巻が良い。この世界に葉巻職人がどのくらいいるかわからないが、せめてプレミアムシガーがあることを強くねがう。最悪ドライシガーでも構わないが、品質が粗悪であれば、タバコの葉を入手しまいた方が良いだろう。時間がないために巻いたことはないが、知識はある。ここならば葉巻を巻く時間もあるだろう。そのためにもタバコを生産している産地を知り、生産者と直接やり取りする必要もでてくるだろう。

 

 

何はともあれ、葉巻が欲しい

 

 

そのためには金と情報だ。そして不足しているのは情報だ。金は……まあ考えるとして、葉巻の入手方法がそもそもわからない。元の世界に帰るのを調べるついでにまずは葉巻に関して調査する必要があるだろう。

 

「あら、前と違って随分と難しい顔をしてるわね、何か考え事?」

 

葉巻について思案していると、後ろから声がかかる。それも聞き覚えがある声だ。

カップをソーサに置き振り返ると、ラナの後ろに茶髪と銀髪の二人組が見えた。どうやら彼女ら2人がここにきたらしい。

 

「まあな、明日から何をしようかと考えていたところだ」

 

「あらそ〜、こっちはあなたのおかげで大変だったのに呑気ねー」

 

「俺が迷惑をかけたか?」

 

首を傾けてフランカの方を見るスネーク、そんな彼に対してリスカムが補足する。

 

「あなたのことについて調べるのに協力されて長かったの」

 

「あー裏づけのための事情聴取か、それは確かに迷惑をかけたな」

 

「そんな大したことは話してない、というか話せないし」

 

「まあね、全くもって疲れたわよぉ?知らないって言っても、『何か言ってませんでしたか?思い出せませんか?』って。出身はともかく、趣味とか性格とか知らないし聞いてないものは聞いてないもの」

 

「それはすまなかったな」

 

そう言っている間にラナは二つ分の椅子とカップを置き、2人を座るよう促す。どうやら2人とも面識はあるらしい。左に座ったフランカの方を見ると、何やら封筒を抱えていた、A4の書類でも入っているのだろう。

 

「はいこれ」

 

「ん?俺にか?」

 

「そ」

 

「後で確認してもいいか?」

 

「もちろんよ」

 

そう言ってBSWと書かれた封筒をスネークに渡してきた。リスカムの方を見ると軽くうなづいていた。何かしらの文句でも羅列されているのだろうか?

 

「一応あなたのことはウチの会社にも報告する必要があったから報告したのよ。個人情報に関する誓約書と原本ね、事後報告になっちゃったけど、急ぎだったから。一応本人に渡す決まりだしね」

 

「わざわざご丁寧にご苦労様だったな、茶でも飲むか?」

 

「あなたが淹れたお茶じゃないでしょうに」

 

そう言ってスネークが持つティーカップを指摘するフランカ・・・だったが

 

「あら?これは彼が淹れたお茶よ?」

 

「・・・嘘でしょ?」

 

「まあ茶葉やハーブはここで育ててるからな、俺は単純に湯を入れているだけだしな」

 

そう言いながら、ソーサーへと静かにカップを置き、慣れた手つきで片手でティーポッドを操作、ラナが新しく出してくれた2つのティーカップに少し少なめに紅茶を注ぐ。

 

「ミルクと砂糖はいるか?」

 

「えっ、え?」

 

「私はミルクで、砂糖はいらない」

 

「そうか、フランカは?」

 

「あ、うん、砂糖とミルクで」

 

「そうか」

 

2人の返事を聞き、ジャグは使わず、リスカムにはミルクを少し多めに加え、フランカにはミルクと砂糖を加えてティースプンでかき混ぜ、2人に差し出す。

 

「本当はスコーンでもサンドイッチでもあればいいんだろうがな、あいにく食材がない、諦めてくれ」

 

「あら、あなたお菓子も作れるの?」

 

「レーションにマカロンを入れようとしたやつがいてな、試しに試作したことがある。その時の名残みたいなもんだ」

 

ラナがなんでもないように尋ねたことに端的に答え、その間に出された紅茶を美味しそうに飲み始めるリスカム。そんな光景をみたフランカはこう思った。

 

(あれ?私女子力低くない?)

 

あえて断言しよう、スネークが少し特殊なだけである。むしろマカロンを作ることができる総司令官など聞いたことが・・・ないこともない気がする。

が、少なからずこの世界では傭兵がマカロンやアフターヌーンティーの作法に熟知していることはそうそう無い。それこそボディーガードでもあればまた変わってくるかもしれないが、断じて傭兵が嗜む代物では無い。

 

「これ美味しい」

 

「それは何よりだ」

 

「あらフランカは飲まないの?」

 

「えぁ、私も飲むわよ?」

 

「どうして疑問形なのさ」

 

「いいでしょ別にッ」

 

相棒が何かじーっとこちらを見てくるが気にせずティーカップを手に取り、紅茶を一気に飲み干す。

 

「・・・美味しい」

 

そんな彼女の周りには

 

「あらいい飲みっぷり」

左に感心するラナ

 

「フランカ……一気飲みはどうかと思うんだけど」

正面に呆れる相棒

 

「もう一杯いるか?」

右に己が(女子力で)敗れた(と思っている)中年男性

 

それぞれが一気飲みした彼女を見ている

 

「…………もう一杯ください」

 

白い机の方だけを見ながら スススー とソーサーごと差し出すフランカ。

 

「素直なことだ」

 

そう言いながらスネークは再び紅茶を注ぎ、濃くなった紅茶をジャグに入ったお湯で薄める。

 

「さすがにまた砂糖とミルクだと飽きるだろうからな、ストレートのも飲んでおけ」

 

「……お気遣いどうも」

 

この時リスカムは、珍しく相棒が遠慮がちになっているなと思った。

普段は紅茶を一気飲みしようが何しようが気にしないのに、三者からその姿を見られて自分を客観視してしまったのかもしれない。これはいいものを見られたと思いながら、ゆっくりとミルクの入った紅茶に口をつける。

 

「で?この書類を俺に渡しに来ただけなのか?」

 

「うん、私たちはあなたの顔を見るのと書類を渡しに来ただけ」

 

「あらそうだったの?てっきり何か話があるものかと思っていたわ」

 

「まあ世間話でもできたらとは思ったけど、まさか紅茶をご馳走になるとはね……」

 

「私が言うのもなんだけど、フランカはもう少しお淑やかに振る舞えないの」

 

「本当にあなたが言うことじゃ無いわね……!」

 

お淑やかさを求められているのかお前たちは。

スネークは心の中で強く思ったが、口に出すと面倒なことになることは間違いない。ラナの援護射撃も期待できない以上、口を挟む危険を冒す必要はないだろう。静かに自分の分の紅茶を飲むことにした。

 

「まぁまぁ、2人とも本当に仲がいいのね〜」

 

「「仲良くないです!」」

 

「いいコンビだな」

 

「本当ね〜」

 

フフフ、とティーカップを片手に微笑むラナ。

この世界では種族によって寿命が違うために、同じ年齢でも発達段階が異なる。それを踏まえても、BSWの2人は完全に年長者2人に弄ばれていた。あそんでいる2人は全くその自覚はないあたりが恐ろしい。

 

「……それで、スネークはこれからどうするの?」

 

「ん、俺か?」

 

「聞いたわよ、明日まではここにいるけどそのあとは決まってないんでしょう?」

 

「まあな、水と食料をもらい次第、龍門に行くつもりではあるが」

 

「龍門?何かアテはあるの?」

 

「ないが、ここに世話になりっぱなしなのは性に合わない。それに働き口を決めるにしては俺は何も知らなすぎるからな、せめて外を見てから決めたい」

 

何よりまずは葉巻を入手するアテをつける方が最優先だ。

 

「なるほどねぇ、まあそれならちょうどいいかもね」

 

「お金は?アテはあるの?」

 

「無いがまあ、街につけばいくらでも生き残る術はあるからな、死ぬ事はない」

 

「あー、まああなたなら生き残れそうな気がするわ」

 

「龍門にはどうやって行くの?」

 

「運び屋の車に同乗させてもらうつもりだ、だからすぐ出発できるかはわからん」

 

この世界では運び屋、また天災の専門家としてフィールドワークを生業としている職もある。飲食業も現地に溶け込む定番ではあるが、運び屋として各地を行き来するのもありだろう。

 

「ま、それならそれでいいと思うわ、ロドスは本人の意思を尊重するからわざわざ引き抜きや強制はしない、また興味を持ったらくればいいわよ」

 

「人生どうなるかわからんからな」

 

実際、いま自分がどこにいるかわからない状況下にあるわけだしな、とスネークは感じた。

 

なぜこの世界にいるのか。世界地図を見る限り、自分の知り得る国家は何一つ存在していなかった。だが同時に、言語は共通している。また、自分のよく知る銃も存在し、武器以外にも文化や植物・動物も未知なものも一部あったが、基本的には自分もよく知るものばかりだった。

目が覚めた直近の記憶が失われているが知識は欠落していないらしい。しかし、この世界は自分がいたであろう世界と異なっているが共通している部分も多い。

 

 

……考えても仕方ない、とりあえず葉巻を入手しよう

 

 

それが今のスネークの思考であった。

いいのかそれで

 

「じゃあ、明日私たちがあなたを迎えに行ってもいいわよ?」

 

「いいのか?」

 

「ええ、私たちはあくまでロドスに駐在しているだけだから、ロドスから離れるときは言っておけばすぐ出れるのよ」

 

「そうなのか」

 

「そうなのよ」

 

「だがお前たちも仕事があるだろう」

 

「今は大きな仕事はない、私たちはロドスにセキュリティーサービスや安全保障のコンサルタントとしている。けど今はそれを求められる事態でもないから」

 

「お前たちの仕事はここのオペレーターの指南役と助言役、ただし実働も兼ねるというわけか」

 

「本当物分かりいいわよねあなた」

 

「同業みたいなものだからな」

 

スネークが組織したMSFは、民間軍事会社だ。その規模は少数ながら国家に帰属しない軍隊としてあらゆるサービスを提供していた。あらゆる組織へ軍事力の提供も行っていたが、教練や教官役の提供・派遣も行っていたし、むしろ得意分野の一つでもあった。スネーク自身も政府軍や反乱軍の指導役として各地を転々としていた時期もある。フランカとリスカムの2人も、ここではそのような役回りを求められているのだろう。

 

「まあ、車を出してくれるなら助かる」

 

「わかったわ、じゃあ適当な時間になったら迎えにくるわね、ここに来ればいいかしら?」

 

「明日はケルシー先生がここに来て経過を伝えるから、そうね。ここに来てくれればいいと思うわよ」

 

「じゃあそれで」

 

そう言って、フランカは紅茶を飲みソーサーにカップを置く。今度は豪快に飲みはしなかった……一気飲みではあったが。そんな相棒に再び呆れ顔を見せながらも、リスカムも同じく席を立つ。

 

「紅茶美味しかった、ありがとう」

 

「感謝ならここの管理人に言っておけ、俺は湯を入れただけだ」

 

「またいつでもどうぞ〜。今度はジェシカちゃんと新人さんも連れてきてね、歓迎するわ〜」

 

「そうするわ、じゃあ明日よろしくね」

「また明日」

 

「ああ、またな」

 

軽く挨拶をすると、ラナが出口へと2人を案内する。

その間にスネークはティーセットを片付け、流しに持っていき、スポンジで水洗いし、水切りかごに置いておく。大した量ではないため、濯ぐだけですんだ。出口の方をチラッと見ると、三人は何か話している。まだすぐ帰ってくる様子はない。

 

ふと、もらった封筒のことを思い出し、書類を確認しておくかと白いテーブルの方へと戻り中身を取り出す。中からは個人情報取り扱いに関する規約と、会社が書類を受け取ったという証明書、同意書、その他諸々が多数入っていた。主だったものを取り出し中身をざっと確認する。

 

「……明日迎えにくる、か。まあ悪くはないな」

 

「あら、さっきもらった書類?」

 

「ああ、会社っていうのは大変だな」

 

「傭兵部隊はそういう書類とは無縁そうだものね」

 

「いや、ペーパーワークは大量にあった。俺は自分の任務の報告書以外はほとんど手をつけてなかったがな」

 

戻ってきたラナにそういうと、一旦書類をしまい、ここ6日間お世話になっている庭園内のベンチに移動する。そのベンチは三人がけだが、うち2人分のスペースには大量の書物が山積みにされていた。

 

「あら、もう読みたいものはあらかた読んだんじゃないの?」

 

「まだ頭の中に入れ込んだとは言えないからな、それに何度読み返してもバチは当たらん」

 

「何か追加で欲しい本はあるかしら?」

 

「いや、おそらく問題ないだろう、何か必要になれば伝える」

 

「わかったわ、じゃあ私は中にいるわね」

 

そう言ってラナはビニールハウスの中で併設された彼女の工房に入っていた。

彼女が中に入っていったことを見届けたスネークはベンチに座り、しまった書類と借りていた分厚い本を広げると、じっくりと読み込み始めた。

 




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