雪が降るある日の事――相楽闘真はバディファイトのショップ大会に向かうべく、その地を歩いていたが、迷子になってしまう。

 街中を彷徨っていた闘真達の前に、同じくショップ大会に参加する為に近辺を通っていた新代結が現れ、二人はショップに辿り着く。

 そして、大会で向かい合わせになった二人は、互いに不敵な笑みを浮かべる……宝石の名を冠する魔法少女と血気盛んな武装騎竜達が、今、激突――!

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フューチャーカードバディファイト ~大決戦!魔法少女VS武装騎竜!!~

 しんしんと降り積もる雪の中、ジャケットにマフラー姿の少年と赤く小さい竜が立ち尽くしていた。

 

「ここ、どこだよ?」

「俺もここの道は知らないぞ」

 

 少年は竜の返答に期待しておらず、スマートフォンの画面に表示されている地図を睨みつける。現在位置が表示されているが、目的の場所まで遠いのか近いのか……そもそも目的の場所すら分からないという始末。

 

「これ、今日の大会に間に合うのか?」

 

 眉根を寄せて少年は疑問を口にする。すかさず、相方が「親切な誰かが道案内をしてくれればな……」と諦観とも取れる語調で呟く。

 

 スマートフォンに表示されている時刻を見ると、大会のエントリーが始まるまで時間に余裕はある。しかし、現在迷子中の自分達が果たして無事に開始前に辿り着けるかどうか……。

 

「何か困っているんですか?」

 

 声がした方に振り向くと少し癖の青いショートヘアの小柄な少女が立っていた。動きやすさを重視してか、ジャケットとショートパンツにタイツ、ブーツで服装を固めている。傍らには可愛らしい小柄な竜が宙に浮いていた。

 

「てめえ、誰だ?」

 

 口悪く訊ねる少年。隣にいる竜は「そんな聞き方ないだろ」と掣肘し、「道に迷ったんだ」と素直に披歴する。

 

 少年はそんな相方を睥睨(へいげい)し、そこまで言う必要はないだろうと念を込めて視線を送った。道に迷っていた事は確かだが、これまでも何とか自力で辿り着けた事があるから問題ないだろうと。反面、何度も迷子になって棒に振った事も多々あったが。

 

「どこに行く予定なんですか?」

「近くのカードショップに行こうと思っているんだ」

 

 ザンバソードの返答に少女は紫瞳を輝かせ、弾んだような語調でさらに質問を投げかける。

 

「もしかして、お兄さん達、大会に参加するの?」

「もしかしなくても参加するんだよ。ってか、お前もファイターだよな?」

 

 闘真の問いかけに少女は「うん」と頷き、咳払いを一つすると、先程より落ち着いた声音で言葉を紡ぐ。

 

「初めまして、私は新代(にいしろ)結(ゆい)。この子はバディのハル」

「やあ、初めまして。ボクは〈MD(マスコットドラゴン) オリハルコン〉だよ。よろしくね」

 

 小柄な竜――オリハルコンは穏やかな語勢で自己紹介すると、折り目正しく一礼。朗らかな笑顔を浮かべる結と対照的に落ち着いた相好を保っていた。

 

 ただ闘真としては、そんな事はどうでも良い。相手がファイターだと判明したなら、言うべき言葉は決まっている。

 

 不敵に口の端を吊り上げ、「俺は相楽(さがら)闘真(とうま)!」と名乗った直後、「今すぐにファイトしようぜ!」決まり文句を述べて水色の双眸(そうぼう)を炯々(けいけい)と輝かせていた。

 

 相変わらずの相方にザンバソードはため息をつき、「待て、闘真」と掣肘(せいちゅう)して「今ここで」と先を述べようとしたら、結の言葉が割って入っていく。

 

「そうだよ! 私も今ここでファイトしたいけど、大会があるならそこでファイトしようよ!」

「おお、それ良いな!」

 

 波長が合ったのか、闘真もすぐに同意。せっかく二人とも大会に参加するというのだから、そこで大暴れした方が良い。

 

 意気投合する闘真達を傍目(はため)にザンバソードは嘆息を吐き、平静とした語勢でオリハルコンに話しかける。

 

「俺は〈超武装騎竜 ザンバソード・ドラゴン〉だ。騒がしい相棒で悪いな」

「結も似たようなものだから大丈夫だよ」

 

 オリハルコンも苦笑いを浮かべ、彼らをやや呆れたような目で眺めていた。

 

 

 

 

 それから闘真達はカードショップへと足を進めていた。雪は静かに降っていき、街を白く染め上げていく。

 

 誰もが吐く息は白く、頬には薄っすらと朱色が差し込む。それは闘真も結も例外ではなく、二人も白い息を吐き出していた。

 

「闘真さんって、体鍛えている?」

「んだよ、藪から棒に。別に鍛えてねえよ」

「そんなんだ……ちょっと意外」

「あ?」

 

 唐突の疑問に闘真は口悪く返答し、眉を顰(ひそ)めて目尻を鋭くさせるばかり。急に体の事を訊かれる理由が分からない。

 

 目の前の少女は品定めをするように見つめ、闘真の一手一足を観察したかと思えば、おもむろに口を開く。

 

「筋肉量は普通だけど瞬発力がある感じがするから、そういう鍛え方をしているのかと」

「それは多分、日頃の喧嘩の成果だな」

 

 苦笑いをしながらザンバソードが答える。話に付いていけない闘真は訝(いぶか)しげな表情のまま相方を睨めつけ、どういう意味だと念を込めた。

 

 それに喧嘩に関しても好きでやっている訳ではない。向こうが売ってきたから買っただけの話なのだが。喧嘩に発展する理由が闘真自身にもあるという事は当分彼が知るはずもないと言うべきか。

 

 結はザンバソードから話を聞いて納得したように「なるほど~」と呟き、「闘真さんはそこで……」言葉尻がか細く消えていった。しかし、双眸(そうぼう)は満足そうに細められ、口元には緩やかな笑みが浮かんでいる。

 

「ちょっと待て、何かこいつ変だぞ」

「結はそういうところがあるから気にしないで」

「そういうもんなのか?」

 

 結局闘真は理解できないまま眉根を寄せて、首を傾げるだけだった。

 

 

 

 

 カードショップに辿り着いた一行。無事に大会のエントリーも間に合い、開始時間には席に着いて互いの対戦相手と顔を合わせる。

 

 大会の方式はダブルエリミネーション、さらにコアガジェットを使ったファイトができる特設ステージも使用して大会を進行していく。

 

 そして大会が終盤に差し掛かり、全勝者が二人に絞られ、候補者達は特設ステージで対面。先程見知った顔ばかりに、両者は不敵な笑みを零(こぼ)した。

 

「やっぱり闘真さんが決勝戦に勝ち上がると思ったよ!」

「へへっ、俺もお前が相手だと信じていたぜ!」

 

 結と闘真は楽しそうに喉を鳴らし、双眸(そうぼう)を細める。店員の掛け声が聞こえた時、彼らは口上句を述べていく。

 

 

 

 

「俺の全力を以って、お前の心の声を聞く! ルミナイズ、『ファイト・オブ・デュオローグ』!!」

「煌めくは、乙女達の希望の光! ルミナイズ、『輝石魔法少女団』!」

 

 二人は力強く「オープン・ザ・フラッグ!」と叫び、各々のフラッグを公開する。

 

「ドラゴンワールド!」

 闘真の手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:超武装騎竜 ザンバソード・ドラゴン

 

「ヒーローワールド!」

 結の手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:輝ける宝石竜 オリハルコン

 

「行くぜ、チャージ&ドロー!」

 闘真の手札:6→5→6/ゲージ:2→3

 

「キャスト、〈D・Rシステム〉を設置! さらに〈ブーメラン・ドラゴン〉をライトにコール!」

 

 名前を体現した通り、ブーメランに似た黒い竜が闘真の右手側に姿を現し、好戦的に唸りを上げる。双眸(そうぼう)は炯々(けいけい)と輝き、今すぐに飛び出さんとばかりに体を震わせていた。

 

 闘真の手札:6→4/ライト:ブーメラン・ドラゴン/設置:D・Rシステム

 ライト:ブーメラン・ドラゴン/サイズ0/攻2000/防2000/打撃1

 

「続けて、〈ブレイドウイング・ドラゴン〉をレフトにコールするぜ!」

 

左側に赤い翼竜が出現。翼を力強く羽ばたかせ、砂塵を巻き上げるように風を起こす。二人の髪や衣服がはためき、観戦者にも強勢な風が届く。

 

 闘真の手札:4→3/レフト:ブレイドウイング・ドラゴン/ライト:ブーメラン・ドラゴン/設置:D・Rシステム

 レフト:ブレイドウイング・ドラゴン/サイズ1/攻2000/防2000/打撃2/[移動]

 

「んでもって、〈竜王剣 ドラゴエンペラー〉をゲージ1とライフ1を払って装備!」

 

 闘真の眼前に青と銀色が映える片刃の大剣が姿を現す。闘真は右手で柄を握り、剣を豪快振るって肩に担ぐ。竜王の魂が宿っている大剣の一閃は闘志に呼応して煌めき、剛健な風を覿面(てきめん)の少女へと走らせていた。

 

 不敵に笑う闘真の双眸(そうぼう)は、闘志に満ち溢れ、奥底から燦然(さんぜん)と輝く。これから目の前の少女がどんな動きをするのか、楽しみで仕方がない。

 

 闘真の手札:3→2/ゲージ:3→2/ライフ:10→9/ドロップ(武装騎竜の種類):0→1/闘真:竜王剣 ドラゴエンペラー/レフト:ブレイドウイング/ライト:ブーメラン・ドラゴン/設置:D・Rシステム

 闘真:竜王剣 ドラゴエンペラー/攻6000/打撃2

 

「このままアタックフェイズ! ブーメラン・ドラゴンでファイターにアタック!」

 

 ブーメラン・ドラゴンの尾を掴み、力いっぱい投擲(とうてき)。高速回転をし、風を切りながらブーメラン・ドラゴンは嘯(うそぶ)く。嘯き声は響き渡り、戦意を音の中で混ぜていた。

 

 闘真の行動に周囲が騒めき出す。打撃力があるブレイドウイングやドラゴエンペラーではなく、あえてブーメラン・ドラゴンを選択した事に。けれど、意図を分かっているのか、結に動揺した様子は見られない。

 

「受けるよ!」

 結のライフ:10→9

 

 小柄な結に対して容赦なくブーメラン・ドラゴンは迫り立て、即身を切り裂く。それでも結は引き下がる事なく、正面を見据えて、楽しげに紫瞳を細めて口の端を吊り上げる。彼女も闘真と負けず劣らずの不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ブーメラン・ドラゴンの効果でバトル終了時にこのカードを手札に戻すぜ!」

 

 威勢よくブーメラン・ドラゴンは闘真の手札に戻り、「さらに俺のモンスターが手札に戻ったから、ゲージ+1!」彼の言葉が言い終わる頃に、デッキの上から1枚がゲージに置かれる。

 

 闘真の手札:2→3/ゲージ:2→3/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブレイドウイング/ライト:ブーメラン・ドラゴン→なし/設置:D・Rシステム

 

「ターンエンドだ!」

 闘真の手札:3/ゲージ:3/ライフ:9/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブレイドウイング/設置:D・Rシステム

 

「私のターンだね。ドロー、チャージ&ドロー!」

 結の手札:6→7/ゲージ:2→3

 

「まずはキャスト、〈ハイパーエナジー〉! 私のゲージを+4するよ!」

 結の手札:7→6/ゲージ:3→7

 

「おお、最初から飛ばしていくな!」

 

 嬉々して闘真は結を見つめる。ゲージを大量に増やすという事は、それだけ大掛かりな事をするに違いない。そんな料簡(りょうけん)を立てながら、獰猛な笑みを浮かべて彼女の動きに注視していく。

 

「しかし、ノーコストでゲージ4枚も増えるというのは、少しズルくないか?」

 

 隣にいるザンバソードはやや苦い顔をして、口を開く。すると、すぐに「仕方ないじゃん!」と反論の声が上がり、「こういうカードなんだもん!」少しふくれっ面の結がちょっとだけ不満げな口調で言い返す。

 

「へへっ、そうだぜ。んな事を気にしたら、面白くねえだろ?」

 

 闘真も愉快げに喉を鳴らして、言い添える。「そういうカードは1ターン1回しか使えねえしな」平時からは考えられような穏やかで冷静な声音で言葉を継いだ。

 

 彼の説明を受けて、「なるほどな」とザンバソードは納得して頷き、「すまなかった」素直に謝罪する。

 

 結も頬のふくらみを萎(しぼ)ませ、「ううん、大丈夫だよ」と快活な調子で言い、「そう思うのもおかしくないからね」苦笑いをしながら次の句を継ぐ。

 

「ここから本番だよ! ゲージ2払って、〈宝石魔女 クリスタ〉に[変身]! これが私の本当の姿!」

 結の手札:6→4/ゲージ:7→5/結:宝石魔女 クリスタ

 

 

宝石魔女 クリスタ

ヒーローワールド

種類:モンスター 属性:ヒロイン/魔法少女

サイズ2/攻5000/防5000/打撃2

■[コールコスト]ゲージ2を払う。

■このカードが登場した時か君がこのカードに[変身]した時、君のデッキから《魔法少女》の魔法か必殺技1枚までを手札に加え、デッキをシャッフルする。

■君のターン終了時、このカードを手札に戻してもよい。

[ソウルガード]/[変身](ゲージ2を払う)

 

 

 白を基調とし、空色をアクセントカラーして取り入れ、スカートには透明なフリルがあしわれた衣装に身を包む。

 

 ドレスにしては少し活動的な格好だが、如何にも魔法少女然とした結の姿がそこにあった。

 

 髪色は空色に変化し、少しだけウェーブがかかったセミロングに伸びて、どこか大人びた雰囲気を醸し出している。

 

 彼女の姿を見て、闘真はふと違和感を覚え、少しだけ眉根を寄せていく。[変身]しているのだから、恰好がそのモンスターのものになるのは当たり前だが、妙に似合い過ぎている。まるで元から彼女のもののような感じが……。

 

 いや、流石に考えすぎだろうと頭を緩く横に振って、否定。改めて正面を見据え、楽しげに笑みを浮かべた。

 

「クリスタの能力でデッキから〈輝きをこの手に!〉を手札に加えるよ!」

 結の手札:4→5

 

「続けて、〈宝石魔女 サファイア〉をライトにゲージ1払ってコール!」

 

 ロリータドレスを身に纏った青い髪の少女が杖を胸に抱き、眉を八の字して自信なさげに出現し、「さらにゲージ1払って〈宝石魔女 エメラルダ〉をレフトにコールするよ!」結の左手側に自分の名前を冠する鮮やかな緑色の頭髪と瞳が印象的な少女が落ち着いた様子で佇んでいた。

 

 結の手札:5→3/ゲージ:5→3/結:クリスタ/レフト:宝石魔女 エメラルダ/ライト:宝石魔女 サファイア

 

 

宝石魔女 サファイア

ヒーローワールド/マジックワールド

種類:モンスター 属性:魔法少女/ヒロイン

サイズ1/攻3000/防2000/打撃1

■[コールコスト]ゲージ1を払う。

■“カーム・サポート”君が[魔法少女]の魔法を使った時、カード1枚を引く。「カーム・サポート」は1ターンに1回だけ発動する。

■君のターン終了時、このカードを手札に戻しても良い。

 

 

宝石魔女 エメラルダ

ヒーローワールド/マジックワールド

種類:モンスター 属性:魔法少女/ヒロイン

サイズ2/攻5000/防5000/打撃2

■“魔力充填!”君が[魔法少女]の魔法を使ったとき、デッキの上から1枚をゲージに置く。「魔力充填!」は1ターンに1回だけ発動する。

 

 

 顔がよく似た魔法少女が二人並び立つ。緑と青という落ち着いた色合いに、それぞれ対になる色がアクセントカラーとして映えたドレス姿。

 

 二人とも杖を持ち、エメラルダのは樹木が絡みついた先にエメラルドの宝石が、サファイアのは木の幹に模した青い宝石の先に大きなサファイアが取り付けられている。

 

「キャスト、〈輝きをこの手に!〉。ゲージ1払って、2ドロー!」

 

 エメラルドグリーンとサファイアブルーの光が混ざり合っていき、「サファイアの能力でもう1枚引いて、エメラルダの能力でゲージ+1だよ!」結の手札とゲージを増やしていく。

 

 結の手札:3→2→4→5/ゲージ:3→2→3

 

 

輝きをこの手に!

ヒーローワールド

種類:魔法 属性:魔法少女/ドロー

■君の場に《魔法少女》2枚以上があるなら使える。

■[使用コスト]ゲージ1を払う。

■カード2枚を引く。「輝きをこの手に!」は1ターンに1回だけ使える。

 

 

「出番だよ、ハル! 〈輝ける宝石竜 オリハルコン〉をセンターにバディコール!」

 

 結の隣にいた小柄な竜は彼女の前へ躍り出て、「バディギフトで私のライフを1点回復!」空色の体毛を靡(なび)かせ、相棒に癒しの光を与えた。

 

 結の手札:5→4/ライフ:9→10/結:クリスタ/レフト:エメラルダ/センター:輝ける宝石竜 オリハルコン/ライト:サファイア

 

 

輝ける宝石竜 オリハルコン

ヒーローワールド

サイズ0/攻3000/防1000/打撃1

種類:モンスター 属性:マスコット/ドラゴン

■君が《魔法少女》に[変身]しているならコールできる。

■【対抗】[起動]場のこのカードを君の場の《魔法少女》のアイテムのソウルに入れる。

■このカードが君の《魔法少女》のアイテムのソウルにあるなら、君が《魔法少女》の必殺技か必殺モンスターを手札から使う場合、[使用コスト]か[必殺変身]コストに書かれている払うゲージの数値を1減らす。

 

 

 盤面が揃ったところで結が不敵に笑みを浮かべて、「このままアタックフェイズに入るよ!」心から楽しんでいる事が分かるぐらい弾んだ語勢で宣言。

 

 対する闘真も彼女に負けず劣らずの獰猛に口の端を吊り上げ、「ブレイドウイングをセンターに[移動]だ!」赤い翼竜を覿面(てきめん)へと移動させる。

 

 ブレイドウイング/レフト→センター

 

「まずはハルでセンターにアタック!」

 

 宝石のように輝く空色の毛を風に撫でさせ、オリハルコンは疾駆(しっく)。空色の粒子を体全身に纏(まと)い、流星のよう駆け抜け、ブレイドウイングへと一直線に迫り立てていく。

 

「【対抗】はねえ! このまま破壊されるぜ」

 

 赤い翼竜は幾度か突進を躱(かわ)すが、空色の粒子に翼が触れた事により、弾かれたようにバランスを崩す。その空隙(くうげき)を縫うようにオリハルコンが口から空色の光線を放ち、ブレイドウイングはその場から消失した。

 

 闘真のドロップ(武装騎竜の種類):1→2/センター:ブレイドウイング 撃破!

 

「【対抗】でハルの能力を発動、ハルをクリスタのソウルにソウルイン!」

 

 オリハルコンが「力を貸すよ、クリスタ」と穏やかな語勢で告げた後、空色の光となって結が持っている杖に吸い込まれていく。「これでセンターが空くよ!」彼女の正面にオリハルコンがいなくなった事で、闘真へと通じる一本道ができあがる。両者の間に阻む壁はもうない。

 

 結:クリスタ(ソウル:0→1)/センター:オリハルコン→なし

 

「次はサファイアでファイターにアタックするよ!」

 

 サファイアは自身の杖に魔力を集中させる。普段気弱な表情を浮かべる魔法少女は、ここぞとばかりに眉尻を上げ、真剣な眼差しで詠唱。「サファイア・バレット!」平時の表情からは想像もつかないような力強い言葉と共に、蒼弾を放つ。

 

 彼女の杖から放たれた蒼き弾丸は一切の躊躇もなく闘真の元へと駆け抜けていく。

 

「受けるぜ!」

 

 ドラゴエンペラーの刃を盾にし、蒼の魔弾を受け止める。獰猛な笑みは消え失せる事はなく、水色の双眸(そうぼう)は炯々(けいけい)と輝く。

 

 腕に走る衝撃は大したものではないが、少しばかりの重みを感じていた。それを振り払うかのように、剣を大きく振るい、肩に担ぐ。「もっと来いよ」低くも楽しげに弾んだ声音で言葉を吐いて、さらに口の端を吊り上げる。

 

 闘真のライフ:9→8

 

「まだ止まらないよ、次はエメラルダでアタック!」

 

 エメラルダの杖からは翠(みどり)色の光が燦然(さんぜん)と輝き出す。そして彼女が詠唱を終えると、翠色の光は高速で走り、光弾と化した。先程の蒼い弾丸よりも強勢で輝きもそれ以上。彼女の方が腕が上だと見てとれる。

 

「これも受ける!」

 

 もう一度ドラゴエンペラーを盾として構え、翠の光弾をその刃で受け止めた。先程よりも衝撃は重く、腕に感じる痺れは少しだけ強くなる。

 

 けれど、闘真は不敵な笑みを崩さない。ただ単純に楽しいから。まだ何かあると期待をして、覿面(てきめん)の少女の行動を見守る。

 

 闘真のライフ:8→6

 

「最後はクリスタでアタック!」

 

 言い終わるか言い終わらないかの内に、結は自身が持っているステッキに魔力を集中させ、空色の輝きを生み出す。そして力強く詠唱を唱え、そのまま空色の魔弾は闘真目掛けて疾走する。

 

「キャスト、〈ドラゴンシールド 火竜の盾〉!」

 

 闘真を守るかのように燃え盛る火竜の盾が出現し、鈍い音を立てる。それだけ空色の弾丸の威力が強いという証拠。「デッキの上から3枚をドロップゾーンに置いて、次に受けるダメージを0に減らす!」熱波に乗せられて、デッキの上から3枚がドロップへ。その中にはモンスターのイラストが描かれたものもあった。

 

 闘真の手札:3→2/ドロップ(武装騎竜の種類):2→3

 

「まだ止まらねえよな?」

 

 闘真は口の端を吊り上げ、強気な笑みを保ったまま問いかける。ここからまだ何かある気がする。そう思うと胸の高鳴りは収まらない。

 

 結も彼と負けず劣らずの不敵な笑みで「もちろん!」と返し、次の句を継ぐ。

 

「ファイナルフェイズに入るよ! 〈クリスタ“クリスタル・バンカーバスター!”〉に[必殺変身]!」

 

 白と空色のドレスはそのままに、淡い空色の輝きを纏(まと)い、ステッキが剣状に変化する。「クリスタのソウルにあるハルの効果を使うよ」ステッキの中に眠るオリハルコンの意思が反応し、ステッキから空色の光を放ち、「[必殺変身]で払うゲージの枚数1枚減らして、ゲージ2払うよ」本来払うコストを減らして彼女の手助けをしていく。

 

 結の手札:4→3/ゲージ:3→1/結:クリスタ→クリスタ“クリスタル・バンカーバスター!”(ソウル:1→2)/レフト:エメラルダ/ライト:サファイア

 

 

クリスタ“クリスタル・バンカーバスター!”

ヒーローワールド

種類:必殺モンスター 属性:ヒロイン/魔法少女

サイズ3/攻6000/防6000/打撃3

■[コールコスト]ゲージ3を払う。

■このカードが登場した時か君に[必殺変身]した時、このターン中、君の場の《魔法少女》全ては[貫通]を得て、君のファイナルフェイズ中にも攻撃できる!

■このカードが1枚か《魔法少女》との連携攻撃で攻撃しているなら、このカードの攻撃は無効化されない。

[ソウルガード]/[必殺変身](君の場の《魔法少女》のアイテム1枚の上に重ね、ゲージ3を払う。)

 

 

「バンカーバスターでアタックだよ!」

 

 宣言した後、エメラルダとサファイアに呼びかけ、強烈な輝きを放っているステッキを一緒に支えてもらいながら杖を縦一文字に振るう。「ちなみにこのクリスタは、1枚で攻撃している時は攻撃を無効化されない!」空色の輝剣が容赦なく奔(はし)り、辺り一面を包み込む。温かく優しい風が流れ込むが、それ故に止める事はできない

 

 その中で闘真は「へへっ」といつものように楽しげに笑い、「受けるぜ!」片刃の大剣で両手に持って受け止めた。

 

 今まで受けた攻撃の中で一番重い。しかし、それ以上に心躍っている。だから、その重みなど気にしなかった。

 

 闘真のライフ:6→3

 

「ムーブエンド! さらにサファイアの効果を使って、サファイアを手札に戻すよ」

 結の手札:3→4/ゲージ:1/ライフ:10/結:クリスタ(バンカーバスター/ソウル:2)/レフト:エメラルダ/ライト:サファイア→なし

 

「へへっ、面白くなってきた! ドロー、チャージ&ドロー!」

 闘真の手札:2→3/ゲージ:3→4

 

「まずはブーメラン・ドラゴンをレフトにコール!」

 

 再び姿を現したブーメラン状の黒い竜。相変わらず唸り声を立て、闘志を滾らせている事を示していた。

 

 闘真の手札:3→2/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメラン・ドラゴン/設置:D・Rシステム

 

 闘真はブーメラン・ドラゴンの様子を見た後、隣にいる赤い竜の方へ目を走らせ、にやりと笑いかける。相棒も意を理解して、不敵な笑みを浮かべると地面に突き刺した己の得物を肩に担いだ。

 

「出番だぜ、相棒! 〈超武装騎竜 ザンバソード・ドラゴン〉をライトにゲージ3払ってバディコール!」

 

 ザンバソードは「待ちくたびれたぜ」と低い声音で言い、闘真の右手側に躍り出る。人の背など優に超えている巨躯に身の丈と同じぐらいの大剣がより一層存在感を高め、迫力を生み出していた。

 

「バディギフトで俺のライフを1点回復!」

 闘真の手札:2→1/ゲージ:4→1/ライフ:3→4/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメラン・ドラゴン/ライト:超武装騎竜 ザンバソード・ドラゴン

 

 

超武装騎竜 ザンバソード・ドラゴン

ドラゴンワールド

種類:モンスター 属性:武装騎竜/赤竜

サイズ3/攻10000/防6000/打撃3

■君のドロップゾーンに《武装騎竜》が3種類以上あるなら、コールできる。

■[コールコスト]ゲージ3を払う。

■このカードはセンターにコールすることができない。

■このカードが1枚で相手の場のモンスターに攻撃した時、このカードとバトルしている相手のモンスターの能力全てを無効化する。

[貫通]

 

 

「今回もかなりピンチだな、大丈夫か?」

 

 登場していきなり少し不安げな声音で訊ねるザンバソード。対して闘真は変わらず楽しげな笑みを浮かべて、「大丈夫だって、任せろよ」胸を張って言い切ると、弁舌をさらに動かした。

 

「キャスト、〈ドラゴニック・グリモ〉! 手札を全て捨てて、カードを3枚ドロー!」

 闘真の手札:1→0→3

 

「センターに〈Wピコピコハンマー・ドラゴン〉をコールするぜ!」

 

 覿面(てきめん)にピコピコハンマーを両手に持った小柄な竜が威勢よく出現し、早速両腕を振り回しては今でも飛び出さんばかりの勢いで飛び跳ねる。

 

 あまりの元気のよさに闘真も少し苦笑い。これからだっていうのに、もう暴れていると。

 

 闘真の手札:3→2/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメラン・ドラゴン/センター:Wピコピコハンマー・ドラゴン/ライト:ザンバソード/設置:D・Rシステム

 センター:Wピコピコハンマー・ドラゴン/サイズ0/攻2000/防2000/打撃1

 

「このままアタックフェイズ! まずはサンバソードとWピコピコハンマーでファイターにアタック!」

 

 先行してWピコピコハンマーが両手のピコピコハンマーを元気よく振り回しながら突進。

 

 続いて、ザンバソードが地面を力強く蹴り出して、剽悍(ひょうかん)な動きで迫り立てる。「おらぁぁぁぁ!!」気合と共にザンバソードは押し潰すかのように得物を振り下ろし、大剣を一筋閃かせていく。

 

 威勢のいい二振りのハンマーと質量のある大剣の一閃を前に、「そう簡単にもらわないよ!」結は高らかに声を上げて、手札から1枚を突き出して魔力を込める。

 

「キャスト、〈マジカル・シールド〉! ゲージ1払い、攻撃を無効化にしてライフ+1!」

 

 魔法陣の盾が目の前に展開され、迫りくる攻撃から彼女の身を守る。「さらにクリスタに[変身]しているから、1枚ドロー!」さらに自身が持っているステッキが輝き出し、「続けてエメラルダの効果でゲージ+1するよ!」エメラルダの杖の光も合わさって、手札やゲージを増やしていく。

 

 結の手札:4→3→4/ライフ:10→11/ゲージ:1→0→1

 

 

マジカル・シールド

ヒーローワールド/マジックワールド

種類:魔法 属性:魔法少女/防御

■君が《魔法少女》のアイテムを装備しているなら使える。

■[使用コスト]ゲージ1を払う。

■相手ターンの攻撃中に使える。

■【対抗】その攻撃を無効化し、君のライフを+1する。さらに君が[変身]しているなら、カード1枚を引く。

 

 

「【対抗】でWピコピコハンマーの効果を使うぜ」

 

 攻撃を弾かれたWピコピコハンマーは少しだけ落ち込んだ素振りを見せるが、それは一瞬だけ。すぐに切り換え、闘真に快活な笑みを浮かべてサムズアップして消えていく。「Wピコピコハンマーをドロップゾーンに置いて、俺のゲージ+1!」闘真もそれに応えるように、不敵に笑いかけ、サムズアップして見届けた。

 

 闘真のゲージ:1→2/ドロップ(武装騎竜の種類):3→4/センター:Wピコピコハンマー→なし

 

「次はドラゴエンペラーとブーメラン・ドラゴンでファイターにアタック!」

 

 言葉を言い終わらない内に、闘真は地面を強く蹴り出して駛走(しそう)する。彼の背後からはザンバソードに投擲(とうてき)されて、高速で回転するブーメラン・ドラゴンの姿が。闘真の背を追い越し、結へと飛来。

 

 それに続いて、闘真も片刃の大剣を荒々しく振るい、まるで猛獣のように銀弧(ぎんこ)を薙(な)いで攻め立てていく。

 

「これは受けるよ!」

 

 結はステッキでブーメラン・ドラゴンの一撃を弾き、闘真の剣撃を受け止める。僅かに眉を顰(しか)めるが、すぐに笑顔になるのは彼女も楽しんでいるだからだろうか。

 

 相手の笑顔に闘真もつられて口の端を吊り上げる。彼女となら、もっと楽しめるはずだと確信を得て。

 

 結のライフ:11→8

 

「ブーメラン・ドラゴンの効果で、ブーメラン・ドラゴンを手札に戻すぜ」

 

 ファイターエリアまで飛び退き、猛烈な勢いで戻っていくブーメラン・ドラゴンを受け止める。「さらに俺の場のモンスターが手札に戻ったから、D・Rシステムの効果で俺のゲージ+1だ!」思った以上に勢いのあったが故に、右手前にいる相棒をちょっとだけ睨みつける。お前、気合入れ過ぎだと。

 

 闘真の手札:2→3/ゲージ:2→3/レフト:ブーメラン・ドラゴン→なし

 

「俺のターンはこれで終わりだ!」

 闘真の手札:3/ゲージ:3/ライフ:4/闘真:ドラゴエンペラー/ライト:ザンバソード/設置:D・Rシステム

 

「ターンもらうよ! ドロー、チャージ&ドロー!」

 結の手札:4→5/ゲージ:1→2

 

「まずはサファイアをライトにゲージ1払って、もう一度コール!」

 

 蒼い光と共に、サファイアはもう一度姿を現す。先程と変わらず眉尻を下げて、自信なさげな表情をしているまま。

 

 けれど、隣にエメラルドがいるおかげか、ほんの少しだけ相好は崩れて落ち着きを払っている。

 

 結の手札:5→4/ゲージ:2→1/結:クリスタ(バンカーバスター/ソウル:2)/レフト:エメラルダ/ライト:サファイア

 

「キャスト、〈輝石の共鳴〉!」

 

 カード名の如く結が持っているステッキが輝き出し、「エメラルダの効果でゲージを+1!」エメラルダの杖の先からは翠(みどり)色の光が、「サファイアの効果でカードを1枚引くよ」サファイアの杖からは蒼色の光が共鳴していき一つの宝石のような輝きを生み出していく。

 

 結の手札:4→3→5/ゲージ:1→2→3/ライフ:8→9

 

 

輝石の共鳴

魔法

クラン:ヒーローW 属性:魔法少女/チャージ/回復/ドロー

君の場に《魔法少女》があるなら使える。

君のデッキの上から1枚をゲージに置く。さらに、君の場の《魔法少女》2種類以上があるなら君のライフ+1し、君の場の《魔法少女》3種類以上があるならカード1枚を引く。「輝石の共鳴」は1ターンに1回だけ使える。

 

 

「このままアタックフェイズに入るよ! まずはバンカーバスターとサファイアで連携アタック!」

 

 空色の輝きをステッキに込めて振るい、サファイアも合わせて自分の杖に魔力を集中させて蒼の光弾を放つ。「バンカーバスターは《魔法少女》と連携攻撃した時でも攻撃を無効化されないよ!」魔法少女達が放った眩い光は、確実に闘真の視界を奪い、目にも止まらない速さで迫っていく。

 

「無効化できねえなら減らすまで! キャスト、火竜の盾!」

 

 目視で確認できないまま燃え盛る竜の盾を覿面(てきめん)に出す。火竜の盾は蒼の輝弾と空色の輝剣を受け止め、烈火の如く燃え立てる。「デッキの上から3枚をドロップして、ダメージを0に減らす!」盾で強烈な光を遮られた事により、辛うじて目を開けて視界を確保。それでも眩い光に囲まれて、まともに前を見る事ができない。

 

 闘真の手札:3→2

 

「次はエメラルダでアタックだよ!」

 

 立て続けに翠(みどり)色の魔弾が奔る。ようやく周りを視認できるようになったと言えど、闘真の目では追えない。

 

 しかし、彼は特に悲観する事なく、戦意を水色の瞳に宿したまま「これは受けるぜ!」とドラゴエンペラーで受け止める。楽しげに口元を吊り上げ、双眸(そうぼう)も細めていく。これは中々手強いぞと心躍らせながら。

 

 闘真のライフ:4→2

 

「ファイナルフェイズ! 〈クリスタ “マジカルパワー・フルチャージ!”〉に[必殺変身]!」

 

 また再び姿が変わる。今度は先程よりも大人びた雰囲気になり、空色の輝きも濃くなっていた。「ソウルのあるハルの能力で[必殺変身]に払うゲージを1枚減らすよ」声音も幾分か落ち着いており、「さらにブリリアント・チャージでゲージを2枚チャージ!」双眸(そうぼう)は優しげに、けれど楽しげに細められつつ力強い光を放っていく。

 

 結の手札:5→4/ゲージ:3→5/結:クリスタ(バンカーバスター→マジカルパワー・フルチャージ/ソウル:2→3)/レフト:エメラルダ/ライト:サファイア

 

 

クリスタ “マジカルパワー・フルチャージ!”

ヒーローワールド

種類:必殺モンスター 属性:ヒロイン/魔法少女/チャージ

サイズ3/攻5000/防5000/打撃1

■[コールコスト]君が《魔法少女》に[変身]しているなら、ゲージ1を払う。

■“ブリリアント・チャージ!”このカードが登場した時、または君に変身した時、デッキの上から2枚をゲージに置く。さらに、このターン中、このカード以外の君のカードの能力でゲージが増えていないなら、君のデッキの上から2枚をゲージに置く! “ブリリアント・チャージ!”は1ターンに1度だけ使える。

[ソウルガード]/[必殺変身](ゲージ1を払い、君の《魔法少女》のアイテムの上に重ねる)

 

 

「まだまだ終わらないよ! キャスト、〈大魔法 ブリリアント・ブリンガー!〉」

 

 ステッキを振りかざし、巨大な魔法陣を出現させ、そこに魔力を注ぎ込む。空色の輝きが一つの巨大な剣となり、彼女の全力を込めた一撃として闘真へと真っ直ぐに奔っていく。まさしく乙女の輝きを全て集約させたと言っても過言ではない。

 

 結の手札:4→3/ゲージ:5→2

 

 

大魔法 ブリリアント・ブリンガー!

ヒーローワールド

種類:必殺技 属性:魔法少女/火力

■お互いのセンターにモンスターがなく、君が《魔法少女》のアイテムを装備しているなら使える。

■[使用コスト]ゲージ4を払う。

■相手にダメージ4!

 

 

「それも受けて、ドラゴエンペラーの効果でダメージを1点減らしつつ、D・Rシステムの効果を使う!」

 

 巨大な輝剣が迫り立ててきても闘真は不敵な笑みを崩さず、声高らかに告げる。

 

「D・Rシステムをドロップゾーンに置いて、デッキの上を1枚ドロップ!」

 

 楽しげに笑ったままデッキの上からカードを引く。青い竜の盾が描かれたイラストが見えると、さらに楽しげに喉を鳴らす。「魔法だったから、俺のライフが2になる!」いつになく双眸(そうぼう)を楽しそうに細める。いよいよ後がない。だからこそ、闘志がさらに燃え上がっていく。

 

 闘真のライフ:2→0→2/設置:D・Rシステム→なし

 

「なら、必殺クリスタでファイターにアタック!」

 

 畳み掛けるように、結がはステッキを振るい、今までより濃い空色の光弾を放つ。スピードも段違いに速いが、どこか力強さはなく、軽そうだと印象を覚えさせる。

 

 まだ先程のダメージの残滓を残しつつも、素早くドラゴエンペラーを扱い、「受けるぜ!」の一言と共に空色の魔弾を受け止める。あまり重さは感じられないが、それでも確実に闘真のライフを削っていた。

 

 闘真のライフ:2→1

 

「ムーブエンド! サファイアの効果は使わないよ」

 結の手札:3/ゲージ:2/ライフ:9/結:クリスタ(マジカルパワー/ソウル:3)/レフト:エメラルダ/ライト:サファイア

 

「へへっ、こりゃ大ピンチだな。ドロー、チャージ&ドロー!」

 闘真の手札:2→3/ゲージ:3→4

 

「お前、今回ばかりはもう悪運尽きたんじゃないか?」

「おいおい、まだ分かんねえだろ。楽しみはこれからだって!」

 

 相棒の軽はずみな言葉に闘真は愉快げに喉を鳴らして、「燃えてきたぜ」と力強く言葉を吐く。残りライフが少ない中、まだ闘志を燃やし続けている。むしろ苦境を楽しんでこそだと。

 

「まずはレフトにブーメラン・ドラゴンをコール!」

 

 三度ブーメラン・ドラゴンが姿を現す。まだまだ余力があると言った様子で嘯(うそぶ)き、喉を震わせる。「さらにセンターにWピコピコハンマーをコールするぜ!」先程のリベンジだと言わんばかりに威勢よく得物を振り回し、Wピコピコハンマーは戦意を示していく。

 

 闘真の手札:3→1/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメラン・ドラゴン/センター:Wピコピコハンマー/ライト:ザンバソード

 

「キャスト、ドラゴニック・グリモ! 手札を全て捨てて、カードを3枚ドロー!」

 闘真の手札:1→0→3

 

「このままアタックフェイズだ! ザンバソードとWピコピコハンマーでファイターにアタック!」

「今度こそ、叩き潰すぜ!」

 

 戦意高々にザンバソードは疾駆(しっく)し、大剣を軽々と持ち上げ、そのまま振り下ろす。重量がかなりあるはずなのに軽快に振り回せるのは、並外れた膂力(りょりょく)があってこそだろう。そこから生み出される一撃は軽くはない。

 

 さらに奥からは威勢よく飛び出したWピコピコハンマーが、交互にピコピコハンマーを振るっていく。こちらは大して威力がなさそうだが、これでも立派なモンスターの攻撃である。

 

「キャスト、〈マジカル・スフィア〉! ダメージを0に減らして、ゲージ+1!」

 

 透明の魔法壁が彼らの攻撃を吸収し、魔法少女達へのエネルギーに変換していく。「さらにエメラルダの能力でゲージ+1して、サファイアの能力でもう1枚ドロー!」翠(みどり)と蒼の輝きがさらに結の周りを包み込み、力を蓄える。

 

 結の手札:3→2→3/ゲージ:2→3→4

 

 

マジカル・スフィア

ヒーローワールド/マジックワールド

種類:魔法 属性:魔法少女/防御

■君が攻撃によってダメージを受ける時、君の場に《魔法少女》があるなら使える。

■【対抗】その攻撃のダメージを0に減らし、君のデッキの上から1枚をゲージに置く。

 

 

「なら、Wピコピコハンマーの効果を使うぜ!」

 

 攻撃が通じなくて、再びしょげるWピコピコハンマー。しかし、闘真の楽しげな声音を聞いたからなのか、すぐさま元気を取り戻す。「Wピコピコハンマーをドロップゾーンに置いて、俺のゲージ+1!」元気よくサムズアップしたWピコピコハンマーの姿を見届けて、闘真はゲージを増やしていく。

 

 闘真のゲージ:4→5/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメラン・ドラゴン/センター:Wピコピコハンマー→なし/ライト:ザンバソード

 

「今度はブーメラン・ドラゴンとドラゴエンペラーでファイターにアタックだ!」

「おらぁ、行ってこい!」

 

 自身の剣撃が通用しなかった事へのフラストレーションを爆発させるかのように、ザンバソードはブーメラン・ドラゴンの尾を掴み、勢いよく投げ飛ばす。先程よりもさらに勢いの増したブーメラン・ドラゴンの回転は、もはや並大抵のものでは受け止めきれないだろう。

 

 強勢を保ったまま高速回転し続けるブーメラン・ドラゴンを追いかけるように、闘真も力強く疾走。獰猛な笑みを浮かべながら、猛々しく銀色を閃かせていく。

 

「受けるよ!」

 

 ステッキでブーメラン・ドラゴンの一撃を防がれるが、軋むような音が耳朶(じだ)を打つ。弾き返した先に闘真が荒々しい剣撃を振るい、容赦なく攻め立てる。

 

 ドラゴエンペラーの刃は確実に結の肩口を捉え、小さな体を躊躇なく切り裂いていく。赤いエフェクトが一筋走り、彼女の血を表しているかのよう。

 

 けれど、結の顔は苦悶に満ちた表情ではなく、心の底からファイトを楽しんでいるかのような笑みを零(こぼ)していた。

 

 結のライフ:9→6

 

「ブーメラン・ドラゴンの効果で、ブーメラン・ドラゴンを手札に戻すぜ!」

 

 ファイターエリアまで後退すると、片刃の大剣を地面に突き刺し、戻ってくるブーメラン・ドラゴンを両手でキャッチする。体全身を使わないといけない程の勢いで、今まで受けた衝撃の中で最も強いのではないかと思ってしまう。

 

「D・Rシステムはないからゲージは増えないけどな」

 

 相棒の不満も感じつつ、弾んだ声音で言葉を吐く。変わらず笑顔を浮かべたまま。

 

 闘真の手札:3→4/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメラン・ドラゴン→なし/ライト:ザンバソード

 

「ファイナルフェイズ! キャスト、〈竜撃奥義 デュアル・ムービングフォース〉!」

 

 オレンジ色のオーラを纏い、もう一度突進する。「ゲージ2払って、お前にダメージ2与えて、俺のライフを+2!」猛火のような激しい太刀筋ではなく、流水の如く静かに途切れる事なく洗礼された一閃が奔る。

 

 闘真の手札:4→3/ゲージ:5→3/ライフ:1→3

 

「ここで回復かぁ~……地味に辛い」

 

 嘆言を呟いているが、結の相好(そうごう)は崩れており、語調も楽しげに弾んでいた。双眸(そうぼう)も炯々(けいけい)と輝かせており、細められてもその光の強さが分かる程。

 

 結のライフ:6→4

 

「ターンエンドだぜ!」

 

 闘真も彼女に負けず劣らずの不敵な笑みを浮かべ、瞳の奥からは強く真っ直ぐな戦意の光を秘めていた。言葉を交わさなくとも些細な表情や仕草から相手も楽しんでいる事が分かれば、こちらもさらに楽しくなってくるところ。

 

 闘真の手札:3/ゲージ:3/ライフ:3/闘真:ドラゴエンペラー/ライト:ザンバソード

 

「私のターンだね。ドロー、チャージ&ドロー!」

 結の手札:3→4/ゲージ:4→5

 

 手札の内容が悪いのか、結の表情が一瞬曇る。ゲージも手札も闘真より豊潤はずだから、彼女の方が優位に見えるだろう。しかし、逡巡(しゅんじゅん)しているところを見るに、欲しいカードが来ていない様子。

 

 それでも手札から目を離し、闘真と顔を合わせると天真爛漫そのままな笑顔を浮かべて、言葉を紡ぐ。

 

「このままアタックフェイズに入るよ!」

「へへっ、来やがれ!」

「まずはサファイアでファイターにアタック!」

 

 青い瞳に強い決意の光を宿らせて、サファイアは今持てる魔力を全て注ぎ込むように杖へと意識を集中させる。そして力強く「サファイア・バレット!」と叫び、今までよりも強勢な蒼弾を生み出して放つ。

 

「受けるぜ!」

 

 片刃の大剣を振るい、蒼弾を受け止める。気弱な少女が撃ったとは思えない程の強烈な一発。今度こそ、このターンで決め切るという想いが伝わってくる。

 

 闘真はにやりと笑って、正面を見据えて、そう簡単には終わらせないとばかりに双眸を細めていく。まだ終わってたまるかという意地が、彼の闘志をさらに燃え上がらせていた。

 

 闘真のライフ:3→2

 

「次はエメラルダでアタックするよ!」

 

 エメラルダも温厚な相好を険しくさせ、自身の魔力をエメラルドに集約させていく。そして力強い発声と共に翠(みどり)色の魔弾を撃つ。穏やかそうな彼女が撃ち放ったものとは想像できないぐらいに剽悍(ひょうかん)で迫り立てる翠弾。輝きも一際強い。

 

「キャスト、〈ドラゴンシールド 青竜の盾〉! その攻撃を無効化にして、ゲージ+1!」

 

 青い竜の頭を模(かたど)った盾が闘真への道筋を断ち切るように立ちはだかり、その身でしっかりと魔弾を受け止めた。

 

 金属同士がぶつかる甲高い音の代わりに、衝撃が強いものがぶつかってきた事を知らせる鈍い音が耳朶(じだ)を打つ。

 

 翠(みどり)色の光弾は闘真の元に届く事なく、盾に衝突して弾け飛んでしまった。散り散りになった魔力もやがて消失する。

 

 闘真の手札:3→2/ゲージ:3→4

 

「ラストはマジカルパワーでアタックだよ!」

 

 魔法陣を出現させ、向こう側から魔力を補給し、体全身に空色のオーラを纏(まと)う。その全てを杖に集中させて、さらなる輝きを生み出し、銃で発砲したかのような轟音と共に空色の弾丸が奔(はし)る。撃ち放った少女は、不敵に、そして楽しそうに笑って弾丸の行方を見守った。

 

「キャスト、〈ドラゴ根性!〉! 俺に1ダメージ与えて、ライフを+3するぜ!」

 

 闘真の闘志に呼応してドラゴエンペラーの刀身は熱を帯び、オレンジ色の輝きを放つ。竜王の魂が宿っていると呼ばれる大剣を振るって、空色の光弾と激突。腕に衝撃は走るものの、そこまで重いではない。

 

 水色の双眸(そうぼう)は炯々(けいけい)と輝いては、さらに光を強くしていく。まだ終わらせないと熱情を込めて。

 

 闘真の手札:2→1/ライフ:2→1→4→3

 

「悔しいけど……ここでムーブエンド! 今回もサファイアの能力は使わないよ」

 

 手札を一瞥(いちべつ)して、結は少しだけ悔しさを声に滲ませる。このタイミングで事故だろうかと不審がる観客の声。

 

 闘真も少しだけ疑問に思い、「良いのか?」と穏やかな語調で訊ねる。盤面だけ見れば、確実に彼女の方が有利なのだが。

 

「いいの。そういう時だけだってあるの、分かるでしょ?」

 

 若干不服そうにしながらも苦笑いで返す結。紫の瞳は、先程まで好戦的な光を宿していたのに、穏やかな輝きを放ち細められていた。

 

 結の手札:4/ゲージ:5/ライフ:6/結:クリスタ(マジカルパワー/ソウル:3)/レフト:エメラルダ/ライト:サファイア

 

 彼女の言う事には闘真も納得し、「そんな時もあるわな」と笑いかけると、次の句を継ぐ。

 

「へへっ、ならもらうぜ! ドロー、チャージ&ドロー!」

 闘真の手札:1→2/ゲージ:4→5

 

「ここいらで決めないと、もう勝てないぞ」

 

 相好を固くし、ザンバソードは重々しく口を開く。圧倒的に不利なのは火を見るよりも明らか……だからこそ、「分かっているって」闘真は楽しげに笑い、喉を鳴らす。逆境という逆境こそが楽しい。

 

「へへっ、レフトにブーメラン・ドラゴンをコール!」

 闘真の手札:2→1/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメラン・ドラゴン/ライト:ザンバソード

 

 何度も姿を現しても、ブーメラン・ドラゴンは変わらず、唸り声を立てて戦意を剥き出しにしている。疲労という疲労は感じられず、士気は高いまま。まさしく闘争心の塊と言って相応しいだろう。

 

「行くぜ、アタックフェイズ! ザンバソードでファイターにアタック!」

「三度目の正直ってヤツだ! 今度こそ、ぶっ潰すぜ!」

 

 そう言って、ザンバソードは赤い弾丸となって結の元へ一直線に疾走する。巨躯に見合わない剽悍(ひょうかん)な足取り、自分の背丈と同じくらい大きい大剣を軽々と振るう剣捌き。重々しさなど一切感じさせない。

 

「三度目も防ぐよ! キャスト、マジカル・シールド!」

 

 何度も攻撃を阻んできた魔法の盾が今回も出現し、ザンバソードの剣撃をいとも簡単に弾いていく。「ゲージ1払い、攻撃を無効化にしてライフ+1!」彼女の周りには淡い光が灯り、今までのダメージを癒すかのように、結の満身を優しく包み込む。

 

「さらにクリスタに[変身]しているから、カードを1枚引くよ」

 カード1枚引くが、結の表情はどこか苦々しい。手札が思った以上に良くないのだろう。

 

「魔法を使ったからエメラルダの効果でゲージ+1、サファイアの能力でもう1枚ドロー!」

 

 さらに二人の魔法少女の力を借りるが、結果は芳しくなかったのか、あまり明るい相好をしていなかった。

 

 結の手札:4→3→4→5/ゲージ:5→4→5/ライフ:6→7

 

「まだまだドラゴエンペラーとブーメラン・ドラゴンでファイターにアタックだ!」

 

 彼女の事情など露知らず、闘真は一切の躊躇(ためら)いもなく疾駆(しっく)。ザンバソードによって投擲(とうてき)されたブーメラン・ドラゴンを追いかけるように走っていく。

 

 手札を見て、防御札がないのか、はたまた手札を温存する為か――結は「これは受けるよ!」と言い、ブーメラン・ドラゴンの重々しい一撃をステッキで弾き返し、闘真の荒々しい剣撃を受け止める。

 

「へへっ、いいのかよ。受け止めて」

「全然問題ないよ。これが私の選択だから」

 

 結の言葉に闘真は「なるほどな」と満足そうに笑い、剣を引いて彼女から遠ざかる。豊潤に見える彼女の手札がどうであれ、やれる事なんて限られている。だから、これ以上は問わなかった。

 

 結のライフ:7→4

 

「ブーメラン・ドラゴンの効果で、ブーメラン・ドラゴンを戻すぜ」

 

 猛烈な勢いで戻ってくるブーメラン・ドラゴンを体全身を使って受け止める。あまりの強勢に歯を食いしばり、腰を深く落として両足に力を込めていく。冗談抜きで今日一番の重い攻撃だと思ってしまう程、衝撃は半端ではなかった。

 

 闘真の手札:1→2/闘真:ドラゴエンペラー/レフト:ブーメランドラゴン→なし/ライト:ザンバソード

 

 何とかブーメラン・ドラゴンを受け止めきって手札に戻した後、残り僅かな自分の手札を見て、闘真は「まだまだ止まらねえぜ」低く唸るような声音で告げる。水色の双眸(そうぼう)はこれで決めると言わんばかりに燦然(さんぜん)と輝き、正面を見据えていた。

 

「ファイナルフェイズ! キャスト、〈轟斬!ガルガンチュアパニッシャー!!〉!」

 

 背後に火山が出現し、筋骨逞しい巨人の腕が天から現れて、火口に躊躇なく突っ込んでいく。「ゲージ5払って、無効化も軽減もできない5ダメージを与えるぜ!」火口から姿を現したのは、ザンバソードや闘真の得物よりも大きな片刃の大剣とそれを握る巨人の腕。刀身は触れるだけでも大火傷しそうだと感じさせるぐらい熱を帯びている。

 

 闘真の手札:2→1/ゲージ:5→0

 

 そしてを得物を振り上げ、何の躊躇いもなく振り下ろされた。刀身に帯びている熱が炎と変化し、刃全体に纏って、炎の竜へと変貌を遂げていく。

 

「うう……この手札だと何もできないや……」

 

 流石に防ぎきれないと判断したのか、紫瞳には諦観(ていかん)の念が宿る。けれども、結はとても清々しく楽しそうな笑みを浮かべて、炎の竜が織りなす一撃をその身で受け止めた。

 

 結のライフ:4→0

 

WINNER:相楽闘真

 

 

 

 

 ファイトを終え、二人は固い握手を交わす。始めこそは、結も穏やかそうな相好を保っていたが、幾度か言葉を重ねていくと悔しげに呻(うな)り立てていく。曰く、「前半に回しすぎて事故った」と。

 

 ただただ闘真は苦笑いするしない。そういう時もあるにはある。だが、こればかりは彼女の問題だから何も言えない。

 

 

 

 

 それから景品渡しも終わったところで、ショップ大会は幕を閉じた。参加者達は散り散りになり、闘真達もショップの外へと退出していった。

 

 まだ雪は降っており、白色の地面は数々の足跡を残しては消していくかのように積もっていく。

 

「じゃ、ここでお別れだね」

 

 ショップから出て駅の近くまで一緒に付いてきた結は、目的地が目の前に見えると足を止める。流石の闘真もここまで来れば、迷いはしない。それどころか「ここまで付いてくる必要なかっただろ」と言って、少し怪訝そうな顔つきをする。

 

「だって、最初に会った時、道に迷っていたじゃん」

「うるせぇ、そんでもどうにかなるもんはなるんだよ」

「お前、流石にそれは言い過ぎだろ……」

 

 あまりの物言いにザンバソードが呆れたように口を挟み、「すまん、ここまで送ってくれてありがとう」礼の一つも言わない相棒の代わりに謝礼の句を述べていく。相変わらずファイト以外だと横暴になる闘真の態度を見て、辟易(へきえき)とした表情を浮かべていた。

 

「別に大丈夫だよ。私の幼馴染も闘真さんと似たような子だし」

「それは……大変だな」

「全然そんな事ないよ! むしろ、楽しいぐらい!」

 

 明るい語調で返されるとは思っていなかったのか、ザンバソードは目を大きく見開いた後、「そ、そうか」と戸惑いを隠せないまま言葉を口にした。

 

 対して闘真は、自分と同じようにファイトが好きな人間が他にもいる事を聞いて、心を躍らせる。本来なら今すぐにその人物の元へ向かって、ファイトを申し込みたいところだが、この後用事があるのが悔しいところ。

 

「そいつ、強いのか?」

「強いよ。私、結構負けているもん」

「面白れぇな、今度そいつに会わせろよ。ファイトしてえ」

 

 飢えた肉食獣のように瞳の奥をギラつかせ、低く唸るような声で闘真は頼み事を言う。もう既に闘争心は掻き立てられ、浮かべている笑みは獰猛な捕食者そのもの。絶対ファイトをしたら楽しいだろうなとファイターとしての直感が告げる。

 

「それはいいけど……でも、その前に私とファイトしてね! リベンジしたいから!」

 

 弾んだ口調に満面な笑みで結は返す。紫の双眸(そうぼう)は、闘志の炎を静かに燃え上がらせて、強い光を放っていた。

 

 話が一旦落ち着いたところで、闘真はある事を思い出す。ファイト中に覚えた違和感、それを解決したいが為に首を傾げながら質問を投げかけた。

 

「んでよぉ、お前って何者なんだ?」

 

 水色の双眸(そうぼう)は覿面(てきめん)で不思議そうに見つめ返してくる少女の顔を映す。どうにも普通の人間という感じがしない。しかし、眼前の少女は至ってどこにでもいそうな普通の子……違和感の正体が掴めないままでいる。

 

「どうしたの? 急に変な事言って」

「いや、お前の変身した姿、妙に似合い過ぎていた気がしたんだよ」

 

 改めてファイト中の事を振り返っていく。クリスタに変身した時、妙に姿が馴染んでいたような気がする。「何つうか、お前自身そのものみたいな感じがした」口に出して、ようやく思考がハッキリした。彼女の本来の姿なのではないかと――そんな予感が胸の中に騒めく。例え、そうだったとしても気にする訳ではないが。

 

「……それはどうだろね? 仮に私が本物の魔法少女だったとしても、簡単に正体明かすと思う?」

 

 少し間を空けて、結はいたずらっぽく笑いながら言葉を継ぐ。「だって、魔法少女――ひいてはヒーローは、いつだって正体を隠すものでしょ?」楽しげに笑いかけながらも線を引いていき、それ以上は踏み込ませないように距離を取る。

 

 闘真も闘真とて、それ以上踏み込む程の興味はなく、「まぁ、それもそうだな。訊いて悪かったわ」と簡単に諦めて謝罪する。別に重要な事ではないのは確かだし、何かしら重そうな事情だった場合は……流石にこれ以上の面倒を抱えたくない。

 

「ううん、全然気にしていないよ」

 

 結は首を横に振って明るく返答して、「じゃ、闘真さん、またね!」踵を返して来た道へと戻っていく。「次ファイトする時は絶対に勝つからねー!」一度足を止めて振り返り、再戦への意欲を伝えると前を向いて歩を進めていった。

 

 その背を見送った後、闘真も足を駅構内へと向け、歩き出す。あの少女に対する土産話ができたなと思い起こしながら。




 初めましての方は初めまして、どこかでお会いしている方はどうも、雑多に駄文を生み出す事に定評がある巻波です。

 今作はTwitterで募集したとある企画にて、雪咲さんから「新代結」をお預かりして書いたコラボ作品です。
 時系列的には本編終了後の感じですかね。じゃないと、お話合わないところがあるので。

 このような未熟者に大事なオリキャラを預けてくださった雪咲さん、ありがとうございました!
 また至らぬ点がありましたら、大変申し訳ございません。

 今回登場した「新代結」ちゃんが主人公を務めている作品は以下の通りです。

作品名:『バディファイト! ~フューチャーヒーローズ~』
作品ページ:https://syosetu.org/novel/139127/

 もしご興味を持っていただけましたら、一読してみてはいかがでしょうか?


 では、今回はこの辺りで筆を休めます。感想の方、お待ちしています。
 改めまして、雪咲さん、本当にありがとうございました!

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