四宮との料理対決は勝利を収めた。本当の四宮であれば僕は勝てない。それは彼の近くで料理を作って来た自分が一番分かっているつもりだ。
それでも今回の対決に勝てたのは四宮の中に悩みがあったからだ。
どうやらそれも生徒たちのお陰で解決しそうだ。それに僕も勝ったことで田所くんへの退学も取り消してもらえた。さすがに巻けて退学になっていたら田所さんに謝罪しないといけなかったからね。
最悪、僕がどこかの料理人に斡旋して学ばせてあげてもいいと思っていた。田所くんにはそれだけの才能がある。いつかその才能が開花することが訪れればそれはこの遠月学園でも偉才になることは間違いないと断言しても良い。
そして今は堂島さんや卒業生がいなくなり、残っているのは僕と田所くんと幸平くんの三人だけ。
「田所くんも幸平くんもよく頑張った。四宮相手にあそこまで引かないのはすごいとしか言いようがない」
「俺は田所の退学を止めさせたかっただけっすよ」
「それがすごいんだよ。遠月学園の卒業生という肩書は大きい。それだけで料理人として一流の才能があると言っても良い。そんな肩書の人間に恐れず、友人のために立ち向かった幸平くん、自分の運命を変えるために戦った田所くんは尊敬に値すると思うよ」
これは本当にすごいことだ。自分が二人のような年の時に卒業生に食戟を挑むなんて絶対にできなかったと思う。
「創真くんはすごいよ。わたしなんて…」
「田所くんはもうちょっと自信を持っていい。料理人としてのセンスはあるし、努力を積み重ねてきたのも知っているからさ」
「わ、わたしなんて…」
「キミはすごい料理人だ。自身を持って」
「あ、はい…」
田所くんは自分の皿に対する自信が低すぎる。これはいずれ改善しなくてはならないこと。でも、それを今すぐに直す必要はなくて田所くんが少しずつこの学園で過ごしていく内に自分の料理に自信を持ってくれれば構わない。
自分の料理に自信がないのは致命的だが、食戟や秋の選抜で勝つことで自分の料理のすごさに気付くこともできるだろうしな。
そして今日は遅いこともあって二人に帰るように促すことにした。部屋で友人が待っているだろうし、ただでさえそれぞれの試験を乗り越えたばかりなのに四宮との食戟でかなり体力を消費しているはずだしね。
それに明日かの試練はたくさんある。この食戟の所為で明日の試練に影響が出るような真似は遠月学園の教師がいながら、あってはならない。
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そして二人を見送ってから僕は彼らの元へと向かうことにした。講師陣もそれぞれ部屋が割り当てられている。そして彼らのことだから、どうせ俺の部屋に侵入しているだろうから。
「おかえりなさい、桜先輩」
「ただいま、乾」
予想していた通りで俺の部屋には講師がかなり集まっていた。そこにはさっきまで食戟をしていた四宮もいた。
「どうだった、四宮」
「まだまだ料理人として学ぶことはあるが、センスは悪くねぇと思ったよ」
「そうか。それはよかった。俺もあの子たちには才能があると思っているんだ」
四宮の目から見ても才能があると映ったのならそれは本物だ。いずれはこの遠月を背負って立つ子たちに育つのかもしれないな。
「田所ちゃんとか私のところに欲しいですよ。桜先輩の方から何とか言ってくれたりしませんか?」
「さすがにそれは無理だよ。あくまでリクルートに関しては生徒に任せているんだ。乾が田所くんのことを誘うのは別に構わないけど、それを決める権利は本人にしかないからね」
この宿泊研修に卒業生が来る理由の一つにリクルートができるからという点がある。
優秀な若者を早いうちに囲んでしまおうという考え方だ。そのために卒業生が来ていると言っても過言じゃない。乾が田所くんをスカウトしようとしているように。
そんなことを考えていると水原が口を開いた。
「私は幸平創真もいいと思うし、出来ればリクルートしたい」
「確かに幸平くんの才能は俺の目から見てもすごい。あれは早いうちにリクルートできるならしておいた方がいいと思うような人材だしね」
田所くんを含めてこの世代は目を見張るほどの実力者が多いのも事実。そしてその中で幸平くんの実力と発想力は群を抜いている。誰もが想像しないようなものを作るんだ。
その瞬発力はこの場に居る、僕を含めた卒業生をも上回っていると感じた。
「桜がそう言うんだったらリクルートを切り出してみる」
水原はそれを決心したようだった。
「ああ、成功することを影ながら願ってるよ」
そんな話をしながら俺たちは夜を過ごすのだった。
番外編としてその人の視点の話を一つ書こうと思っているんですがどのキャラが良いと思いますか?
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四宮小次郎
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乾日向子
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水原冬美
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司瑛士
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木久知園果
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茜ヶ久保もも
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小林竜胆
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薙切えりな
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堂島銀
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薙切アリス
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幸平創真