(『偽奏録』とは関係ないです!)
突然だが私こと博麗霊夢は非常に困惑している。
これほど困惑したのはあると思った夕ご飯がなかった時以来かしら?(その時は犯人を殴り倒したけれど)
とりあえず事の端末を話しましょう。
今日私は自宅である博麗神社の母屋の縁側に座ってぼーっとしていたの。
いつもなら
「やっほー!邪魔するぜー!」
とか言って箒に乗って飛来する霧雨魔理沙が来ないので少し暇していたのよ。あっ、決して寂しいわけじゃないからね?
ともかく、私は縁側に座ってたの。
「あっついわねぇ・・・どうにかならないのかしら?参拝客も今日もゼロ。全く暇ねぇ・・・」
とか言いながらそれでも誰か来ないか見てたんだけど、不意に私の足がツンツンと突かれたの。一瞬針妙丸かと思ったけどあの子はこんなことする子とは思えないし第一今日は正邪のところへ行くだらなんだらで朝から外出している。
私が足元を覗くと黒い円形の何かがいたの。私がみているのに気がつくと、それはこちらをみたの。円形のものの下は黄色いモフモフした鳥、
あり大抵に言うとひよこだったわ。さらによく見ると、その円形のものは帽子であり、背中には小さな箒を背負っていたの。そう、私の足を突いてたのは魔理沙の格好をしたヒヨコだったのよ!!
事の端末はここまでよ。困惑するでしょう?
「・・・」
「・・・ぴぃ?」
魔理沙の格好をしたヒヨコ・・・便宜上魔理沙と呼ぶことにしましょう、魔理沙は絶句してる私をキョトンとしてクリクリした目を私に向けたわ。正直言うわ。可愛かったわ!!
「・・・あんた魔理沙?それとも魔理沙の悪戯?どっち?」
「ぴぃぴぃ!」
「・・・返答は不明・・・ね。」
私が手を魔理沙の前に手を置くと、まりぴよはちょっと不思議そうに首を傾げたけど、ぴょこんと私の手に乗ったわ。手を上げて魔理沙を見たけどどこからどう見ても魔理沙の帽子をかぶって箒を背負ったひよこだったわ。(箒は紐もないのにヒヨコに邪魔にならない角度でついてたわ。)
「むむむぅ・・・どうしよう。魔理沙がなにかの間違いでこの姿になってるって言うなら助けを求めてここまで来たんだろうけど私にはヒヨコの言葉なんてわからないし・・・華扇に頼めばなんとかなりそうでもあるけれど・・・小言が多いからちょっと苦手なのよね・・・魔理沙のことだし魔法の失敗でこうなっちゃった可能性が高いわ。なら・・・パチュリーかしら・・・」
縁側から部屋に戻り、机の上を魔理沙がうろうろするのを見ながら対応について私は考えたわ。
「よし!パチュリーにしましょう!悪戯だとしても毎日のように紅魔館襲撃してるからバレるわ!ほら魔理沙!行くわよ!」
しばらくして決心した私はたまたまあった古びたバスケットに柔らかいタオルを敷いてさっきから興奮してバタバタと暴れる魔理沙をなんとか捕まえてバスケットの中に入れて鍵をかけてから、縁側から飛んで紅魔館に向かったわ。
*
案の定美鈴は寝ていたから勝手に入らせてもらったわ。咲夜と会ってパチュリーのいる大図書館に案内してもらったんだけど、私が美鈴のことを話したら咲夜が
「美鈴・・・あとでお仕置きしなきゃ。ありがとう霊夢。」
って笑顔で言ってたよ。美鈴・・・ご愁傷様。
動かない大図書館ことパチュリー・ノーレッジはやっぱり大図書館の机で本を読んでいたわ。
「こんにちはパチュリー。相変わらず引きこもってるのね。いつかカビが生えるわよ?」
「うるさいよ霊夢。はぁ・・・今日はやかましい泥棒が来てないからゆっくり読書と研究に勤しもうと思ってたのに・・・」
私が声をかけるとパチュリーはめちゃくちゃめんどくさそうに本を閉じたの。
「え?魔理沙今日来てないの?」
「えぇ。んんー・・・はぁ、泥棒が湧かないっていうのは気持ちがいいものね。今日は快眠できそうだわ。」
「あんたいつも眠そうじゃない。むむぅ・・・なら私の感が当たったのかしら?」
いつも通りだるそうなパチュリーの前に私はバスケットを置いたわ。
「・・・なにこれ?あの食い意地の張ったあなたが私に差し入れなんてあり得ないと思うけど。」
「ぶん殴るわよ。それより中身見てみなさいよ。」
訝しそうな顔をして私の顔を見たパチュリーはバスケットの中を覗いたの。バスケットから顔を上げたパチュリーの眉間にはシワが寄っていたわ。
「・・・ほんとなに?この子?」
「わからないわよ。魔理沙の悪戯かと思ってたのだけれど・・・もしかしたら魔理沙がなにかの魔法の失敗でこんなことになってるのかなって思ってね。そういう知識ならあんたの方が詳しいでしょ?」
「ふむ・・・そうね・・・」
パチュリーは魔理沙を手に乗せて指でもふもふしながらじろじろと見ていたわ。魔理沙はくすぐったそうにぴぃぴぃと鳴いていたよ。
「一応魔理沙の魔力というか、そういうのは感じるわ。でもなんか違うのよね・・・なんなんだろう・・・」
と、呟きながらパチュリーは黙りこくって考え始めたの。手は魔理沙をもふもふし続けたんだけど、魔理沙はだんだんうざったくなったのかぴょんっとパチュリーの手から飛び出して本の裏に隠れたの。帽子が飛び出していたけれどね。
「・・・可愛いわね。ずっとこのままでいいんじゃない?泥棒もできないし。」
「ダメよ!!可愛いのはわかるけどそのままは・・・!!」
私はなんでかわからないけど叫んでしまったわ。
「・・・ふーん?そう?大丈夫、冗談よ。それじゃ私の方でも調べておくからあなたは帰りなさい。この子に本が突かれて穴が空いたら困るわ。」
「・・・わかったわ。魔理沙。いらっしゃい。」
私が呼びかけると魔理沙はぴょこぴょこ出てきて私の手に乗ったわ。
「よく懐いてるわね。魔理沙のようね。」
「どういうことよ。いいわ。ありがとう。よろしくね。パチュリー。」
「まかせなさい。ベストは尽くすわ。」
パチュリーは少し頼もしそうに微笑んでいたわ。
*
私はそのまま魔理沙を連れて帰るつもりだったんだけどレミリアがお茶しないかと言っていると咲夜に言われて案内してもらったわ。お菓子をタダで食べれるならありがたい限りだわ。
おそらく部屋の中で一番大きい部屋(主賓室っていうんだったかしら?)に案内されて中に入ったら中で子供が待っていたわ。
この館の主にして吸血鬼のレミリア・スカーレット。
「いらっしゃい霊夢。そこに座りなさい。」
「こんにちはレミリア。ありがとうね。」
私はレミリアに礼を言って彼女の真向かいに座る。
「今日パチュリーに用があったようね。なんだったの?」
「魔理沙がヒヨコになっちゃったかもしれなくて・・・」
「どういう状況よそれ・・・」
私はバスケットの中身を見せたわ。するとレミリアの目がキラキラ輝いて
「かーわいー!なにこの子!!可愛い!!ほら魔理沙、おいで!」
と言いながら手を中に突っ込んだ。しかし魔理沙はお気に召さなかったようで手を思いっきり突かれたらしい。
「いったぁぁい!!」
と叫びながら手を引っ込めたわ。
「大丈夫ですか!?お嬢様!!」
叫び声に反応して咲夜が飛んできたの。
「だっ・・・大丈夫よ咲夜・・・私は大丈夫・・・」
レミリアは顔は平静を装っていたがめちゃくちゃ声が震えていたわ。
魔理沙は苦しむレミリアなど興味がなさそうにピョンとカゴから飛び出して机の上のお菓子を突こうとしたわ。それをやんわりやめさせていると(ひよこに悪そうだからね。)、扉がバンっと開かれたの。
「おねーさま!あーそぼー!あっ霊夢!いらっしゃい!!・・・ってひよこ?おねーさまひよこ飼うの?」
金髪の吸血鬼、フランドール・スカーレットが飛び入って来たわ。
「あっ妹様・・・」
「こんにちはフラン。」
「違うわよフラン。この子は魔理沙かもしれないのよ。」
「え?魔理沙?かーわいー!ほらおいで!まーりさー!」
フランが魔理沙に手を伸ばすと、魔理沙は
「ぴぃぃ!!!」
と叫び声のような鳴き声を出してビクゥッ!と体を震わせると、いきなり机から飛び降り、そのままフランが開けた扉から逃げてしまったの。
「あぁ!!こら魔理沙!!」
「あー!魔理沙ー!逃げたー!まてまてー!」
フランはそれを追いかけていったわ。
「まずい!咲夜!魔理沙を探して保護しなさい!!フランに捕まっておもちゃにされて壊される前に!!」
「かしこまりました!」
「私も探すわ!!」
この日、紅魔館内で逃げ一人(一匹)、鬼3人の鬼ごっこが始まった。
*
「はぁ・・・疲れた。全くパチュリーに聞きに行くだけだったのになんで走り回らないといけないのよ・・・。お菓子食べて帰ろうと思ったのが間違いだったわ。」
すっかりくたびれた私が博麗神社に帰ってきたのは太陽がいそいそと山の後ろへ隠れ始めた時だったかしら。
魔理沙は紅魔館中を小さな体で走り回って疲れ切ったせいかバスケットの中でぐっすり眠っているわ。
私は魔理沙を起こさないようにそっとバスケットを机に置いて、その前に座る。
「はぁ・・・でもって収穫なし・・・ね。協力は取り付けられたけどほとんど骨折り損じゃない・・・。」
私はため息をつき、眠っているまりぴよを撫でていたわ。魔理沙はすやすやと気持ち良さそうに寝ていたの。
「・・・ねぇ。魔理沙。」
そんな魔理沙を眺めながら私は呟いていたわ。
「その姿も可愛いけど私は戻って欲しいわ。私は魔理沙と人間の言葉で話したいわ。そんな姿じゃぴよぴよとしか言えないでしょう?私は魔理沙と一緒にご飯が食べたいわ。ヒヨコじゃ同じもの食べれないでしょう?私は魔理沙と弾幕ごっこがしたいわ。そんな体じゃ逃げることしかできないじゃない。私は・・・」
この時私はどんな顔をしていたのかしら。泣いていたってことはないと思うのだけれど、よく覚えていないわ。
「・・・ともかく、魔理沙。早く元に戻りなさいよ。あんたがいないとここが静かじゃない。全く・・・戻りなさいよ・・・魔理沙。」
「なんだい?私がどうかしたか?」
「へ?」
一瞬ひよこの魔理沙が喋ったかと思ったわ。でも魔理沙はすやすや寝ているし、そもそも声は縁側の先から聞こえたの。
私が縁側の方へ向くと、夕日をバックに長い金髪の魔法使いが被っているとんがり帽子のつばを持ってドヤ顔しながらいたわ。
「よっ!霊夢。望み通り人間の魔理沙さんが来てやったぜ!」
私の中では色々な感情が湧き出てきたけど、とりあえず言うことがある。
「魔理沙ぁ!!盗み聞きしてんじゃないよ!!あと色々説明しろバカ魔理沙ぁ!!!」
*
「おうおうそんないきり立つなよ霊夢。ほらお土産。」
魔理沙・・・とりあえず人の方を魔理沙と呼ぼう・・・ともかく魔理沙はお菓子を手に部屋に入ってきたわ。
「ん?あー、霊夢のとこにいたか・・・まりぴよちゃん」
「まりぴよ?そうよ!この子の説明をしなさい!」
「へいへい。説明するからそんな殴りかかりそうな顔すんなって。」
ひよこの魔理沙(?)をまりぴよと呼ぼうと心の中で再定義した私が聞いたことを魔理沙は説明し始める。
「そいつは私の分身だ。いや、私の分身『になる予定だった』もの・・・だぜ。」
「予定だった・・・?」
「うん。予定だった。研究するのに人手があった方が便利だろ?だから魔法陣書いて分身召喚してみたんだけどね・・・」
「だけど・・・?」
「近くにあった魔法書の中の魔法まで発動しちまってな。分身が10匹くらいのひよこになっちったぜ!」
「なんだそりゃ・・・それで?」
「そのあと飛び散ってな。5匹は家の中で捕まえられたけど後の5匹は幻想郷のどこかに飛んでいってなぁ・・・今飛んでったひよこを2匹回収したとこなんだがね・・・霊夢のところに行った時にはお前いなかったんだがどうしたんだ?」
「この子が来て魔理沙がなんかに巻き込まれてこんな姿になったのかって思って紅魔館に行ってたの!!ふん!心配して損したわ!」
「にしし、悪かったって。紅魔館に行ってたのか・・・なら今紅魔館にはまりぴよちゃんはいない・・・か。というか、そんなことよりぃ・・・」
と言うと、魔理沙はニッと笑ったわ。
「そんなに私を心配してくれていたのかぁ!そうかそうか!霊夢も可愛いとこあるんだなぁ!」
「やめなさい!いい加減殴るよ!」
顔が熱い。私はプゥッとほおを膨らませたわ。
「へへへぇー!可愛いぜ?」
「うるさいよ!黙りなさい!!てかこの子どうするの?」
私は今起きて魔理沙の前をうろうろし始めたまりぴよを指差したの。
「んー、持って帰ってもいいけど・・・霊夢飼うか?よく懐いているし。」
「・・・持って行きなさいよ。私のとこの経済状況見ればペット飼う余裕ないのわかるでしょう?可愛いけど仕方ないわ。」
「ふぅん・・・じゃあもらって行こう。」
と言うと、魔理沙はまりぴよを捕まえて、帽子から取り出したカゴに入れたの。
「・・・」
「そんな寂しそうな顔するなよ。どのみち分身だから消えちゃうけどな。」
「うるさいわね。あんた、今日は飲みに付き合いなさい。心配させた罰よ!」
「そんな無茶苦茶なぁ・・・でもいいぜ。霊夢に寂しい思いをさせたお詫びだよ。」
「寂しいなんて思ってない!!」
私はまた顔が熱くなるのを感じたわ。魔理沙がなんともなくてほっとなんかしてない。してないからね?