アイドルになるためのチート貰ったのに劣等生の世界だった   作:シルバーは吸血鬼の弱点なんやで

2 / 18
入学編
第1話


藤堂ユリカ、と言えば今や人気のアイドルまたは歌手だ。

歌をリリースすれば50万枚以上のヒットは当たり前(今はCDではなくネットでのデータ販売数の事だが慣例的にCDと同じように枚と数える)で、代表曲たる硝子ドールはミリオンセラーである。

彼女がイメージモデルを務めるブランドのLoli GoThiC(ロリゴシック)の売れ行きは快調。

物販も他のアイドルの追随を許さぬ独走…という程ではないがトップをキープ。

バラエティ番組に出れば視聴率は5%はアップするとさえ言われる程に人気のアイドルだった。

 

彼女の姿を知らぬ者はそうはいまい。

 

さて、そんな彼女だが、先日とある週刊誌に魔法科高校への入学がスクープされた。それについての説明のため、入学式の当日、その姿は都内のとあるホテルにあった。

 

「なぜ今まで魔法師であることを隠していたのでしょうか?」

「聞かれなかっただけよ。このユリカ様は600年の時を生きる吸血鬼(ヴァンパイア)の末裔…魔法のひとつやふたつ、できて当然じゃなくて?」

 

記者会見で、彼女は淡々とキャラを貫きつつ記者たちの質問に答えていく。

 

「魔法科高校への入学後の芸能活動について、どのような方針なのでしょうか?」

「そうね、学業に差し障りのない…卒業出来るレベルで続けていくつもりよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー!雫、雫!ユリカ様一高に入学する上に芸能活動も続けるって!」

「ほのかは本当に藤堂ユリカが好きだね」

「うん!すっごいかわいいもん!」

 

第一高校に向かう2人。その道中、ほのかがユリカの代表曲「硝子ドール」を歌い始める。

 

永い物語よ

自分だけに見える鎖に繋がれたまま 夢を彷徨ってる

待ちくたびれた顔の 硝子の瞳がふたつ

もうやめにしたいのに 終わりが怖くて またくりかえすの

 

「…ちょっと怖いかな」

「まぁ吸血鬼キャラだからね、それくらいがちょうどいいんだよ」

「……キャラって言っちゃっていいんだ…」

 

今度はアイドル活動!を口ずさみながら一高の門をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

会見の最中、入学式の終わったであろう時間帯。スタッフの黒服の1人が司会者にコソコソと話をして、黒服が離れると司会者は直ぐに一時的に会見を止める。

 

「えー、皆様、大変急で申し訳ありませんが、重大発表をこの場で行います。打ち合わせのため、しばらくお待ちください」

 

司会者が打ち切ると同時に、壇上からしか見えない位置に真夜の執事である葉山がユリカに対して頭を下げていた。

 

 

ユリカは急ぎ足で葉山の所まで行くと、葉山は口を開いた。

 

「真夜様がお出でです。控え室でお待ちです」

 

 

控え室に戻ると、ユリカの前には控え室の備品である安っぽいパイプ椅子がとてつもなく似合わない威厳たっぷりな四葉真夜がいた。

 

「遅くなりすみません、真夜様」

「構わないわ。それよりも…」

 

 

真夜は優雅に立ち上がり、ユリカの前に立つ。次の瞬間……

 

 

 

「会いたかったわ!」

 

 

ガシッィッ!と音がしそうにユリカに抱きつく真夜。威厳など、とうに喪失している。この素の姿を見せるのはユリカと葉山しかいない。娘がかわいくてかわいくて仕方ない子煩悩なのだ。

ゴロゴロと喉を鳴らしそうなほど幸せそうな顔になる真夜に、後ろに控えていた葉山も孫を見るジジイの顔をしている。

 

「会見の途中です、真夜様」

「ぶー!」

「……お母様」

「はーい!」

 

どっちが年上か分からない絵面だが、これでも世界で恐れられる四葉家の当主であり、世界最強の魔法師の1人とされる人だ。大事なことなので繰り返しだが、四葉家の当主が()()である。

 

「それで、用件はなんですか?わざわざ会見を止めてまで」

「うーんとね、いつまでもユリカが他人の子なんて嫌なのよ!だからね、四葉真夜の娘だって発表しちゃおー、ドンドンパフパフー!」

「は?」

 

葉山は相変わらずジジイの顔。

 

「というわけで、れっつごーっ☆」

「え、本当のこと話すの!?」

「もちろん!ユリカとの間のことで隠し事したくないもん!この子が私の娘なんだよっ!って!」

 

ドヤ顔する真夜とジジイ顔の葉山だが、全く計算がない訳では…ないはずだ。

 

「それは…達也くんと深雪ちゃんの…?」

「………ハッ!そ、そうよ!」

 

全く計算がない訳ではない…はずだ。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「では、これより会見を再開します」

 

会見に出てきた大物…四葉真夜に会見に来ていた記者は度肝を抜かれた。

 

「重大発表について、こちらの四葉真夜様も関係するため急遽出席されました。それでは四葉様、よろしくお願いします」

 

四葉家の息の掛かった司会者の紹介によって真夜が立ち上がる。

 

「まずはこんなに急な話でごめんなさいね。発表することを先程決定したものですから…」

 

記者たちはざわついていたが、直ぐに息を飲む緊迫感と発表がなんなのかという疑問符が並んでいた。

魔法師の関わることであるため中継を見ていた十師族の当主たちは目が飛び出そうなほどの驚きと警戒の視線を画面に送る。

 

「藤堂ユリカは遺伝上、私、四葉真夜の娘であることを今日発表します」

 

日本の報道関係と魔法の関係者が全国で震え上がるほどの衝撃が突き上げた。

 

「ご存じの方もおられるとは思いますが、私の生殖能力はかつてのとある事件で失われていますわ。ですが、我が四葉家では事件前に採取してあった私の卵子が保存されていることが16年前に見つかり、代理母の方によって私の卵子を用いた子供が出産されました。それが彼女…藤堂ユリカ…四葉ユリカですわ。ちなみに藤堂は代理母の方の姓よ」

 

ユリカのキャラ付け――吸血鬼と人の間に生まれた――を尊重したのか精子についての話がなかったが、精子は司波龍郎の物を四葉家の魔法技術や生体技術によって、大幅に遺伝情報が書き換えられたものを使用している。

同じ精子である達也とは母親同士が一卵性双生児なのを加味しても兄妹という検査結果になるはずが異父兄妹と判定されるほどには書き換えられているが。

 

ちなみに深雪とは姉妹の判定が出る。

 

「なぜ今のタイミングで発表なのでしょうか!?」

「魔法科高校に入学する話でこういった場になったのだから、同時に発表した方が簡単でいいでしょう?」

「四葉さんの娘さんということはユリカ様も魔法力は高いのですか!?」

 

記者の四葉さんとユリカ様には少しユリカのツボにハマり笑いをこらえるのが大変だった。

 

「今年の第一高校で首席入学を果たしているわよ。この会見で総代は次席の子になったみたいだけど」

 

多分それでイライラしたのも今回の発表の理由の1つだろう。

 

「公式には藤堂と四葉、どちらを名乗る予定ですか?」

「当面は各方面への影響を懸念して藤堂を予定しています」

「四葉家当主である四葉真夜さんの娘さんということは次期当主ということでしょうか?」

「それは分かりかねますわ。まだまだ若いですから、いろんなことを経験して欲しいと思っていますわ」

 

 

 

 

 

 

真夜はかつてユリカと葉山の3人しかいないサンルームでこう話したことがあった「私は普通の家で普通の女の子として生きて、普通のお母さんになりたかった」…と。

 

 

 

 

 

 

 




感想求む
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。