アイドルになるためのチート貰ったのに劣等生の世界だった   作:シルバーは吸血鬼の弱点なんやで

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第5話

ニューシングル「タルト・タタン」の販促イベントはこの時期目白押しである。

握手会もそのひとつ。

 

「いつも応援してます!」

「ありがとう。でも、ちょっとでも気を抜くと、血を吸うわよ?」

 

ユリカはファンひとりひとりと丁寧に握手をしていく。

 

今日の握手会は抽選に当選した300名限定で行われている。だからこそ、ひとりひとりにリソースを割くことが出来るのだ。

 

「あら?…ほのかじゃない」

「えへへ、来ちゃいました」

 

可能性としては考えていただろうが、まさかこんなに早く、しかも300人抽選に当選したとは、大した強運の持ち主である。

 

「すごいわね、当選したなんて…知り合いが来るとは思ってなかったわ」

「私もびっくりしましたよ。ユリカ様が私のクラスメイトってだけで運使い切ったと思ってたから」

「確かに、ユリカ様の近くに寄れる権利なんてそうそうないわよ?ありがたく使いなさいな」

「うん、じゃあまた!」

 

 

ほのかが来たのは予想外だったが、もう1人予想外が来ているのに気がつくのは数分後。

 

 

「ええっと、こんにちは」

「……すごいわね、さっきほのかが来たばかりよ?」

 

実はユリカのファンの男女比は4:6であり、明確に女性の方が多い。だが、それにしてもだ、柴田美月も来ているとは思わなかった。かなりの倍率を突破した300人の中に一高の友人が2人も来るなんてどんな確率だろうか。

 

「あなたたち運良すぎね」

「そ、そうですね…あの、実は、昔から好きで、でもイベントに行く勇気はなくて、初めてイベントに応募したんですけど…この確率なら当たらなければそれで諦められるし、当たったら行かないとって思えるかなって」

「…なんて強運よ」

「じゃ、じゃあこれで!」

 

美月はそのまま握手をして待機場所に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

un(あん) 占ってよ 私の恋を

deux(どう?) 彼のことを まだ知らないの

trois..(永遠) 甘い予感 かさねてしまう

いっぱいの林檎 タルト・タタン

 

イジワル 拗ねた横顔 

読みとれない万華鏡

イタズラ 罪なタロット 

教えて 仲よくしたいの

 

ごめんなさいね 信じているの

思わせぶりは 気になってるから

彼は私を 好きになる

 

いつかはきっと

 

 

 

「タルト・タタン」の短縮版を300人のオーディエンスの前で歌いきり、ステージから決めゼリフを放つ。

 

「ニューシングル買わないと、血を吸うわよ!」

 

 

 

 

ユリカがステージから降りて、会場の熱の余韻が出口へ向かう観客たちの顔はみな一様に楽しそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

ユリカはその忙しい合間を縫って四葉邸へ戻り、演習場で使用人たちに協力してもらってユリカ自身の固有魔法の練習を行う。

 

四葉家の家系の魔法的特色について説明する。

二つの系統が並立し混ざり合って「四葉」を形成している。血を分けた肉親同士でも、この二つの性質はランダムだ。

 

精神干渉系魔法を得意とするタイプ(生まれながらに精神干渉系の異能を強化された者)

例 四葉深夜、黒羽貢、津久葉冬歌、津久葉夕歌、黒羽文弥 など

 

極めて強力でユニークな魔法を得意とするタイプ(強力で歪な魔法演算領域を備えて生まれた者)

例 司波達也、四葉真夜、黒羽亜夜子

 

両方に当てはまるタイプ

例 司波深雪

 

四葉深夜は精神構造干渉があるので両方と言っても過言ではない。

 

達也ならば分解と再成、真夜なら流星群(ミーティア・ライン)、黒羽亜夜子なら極散。これらは独特な魔法と言える。この3人に共通するのは分解に近い代物ということ。詳しくはまた今度。

 

深雪は精神干渉系魔法への適性は高い。他にユニークな精神干渉系魔法としてコキュートスを備える。

 

 

ではユリカはどうかと言うと、深雪と同じ両方に当てはまるタイプで、精神干渉系魔法への適性は高く、精神干渉系魔法に類するユニークな魔法を持つ。

 

そのユニークな魔法は達也に対して有効な防御を誇るため、真夜によってその訓練を命じられている。

 

その魔法と格闘の2つしか使えない訓練のため、貰ったチートのうちの身体能力が生きてくる。まぁ本来はダンス用に貰ったのだが、このチートのおかげで最大出力では達也と並ぶかそれを超える力を持っている。あの細い身体にどこにそんな筋力があるのか、四葉家のお抱え医師も首を捻る程だ。

 

「……ふぁ!」

 

気の抜けるような掛け声と共に、ユリカは最後の相手を組み伏せる。

 

「また強くなったわね、水波」

「ありがとうございます」

 

水波は深雪のガーディアン候補の少女…調整体魔法師「桜シリーズ」第2世代だ。その能力は対物障壁に高い適性を持つ。

水波を開放してやると、背中から声をかけられる。

 

「ユリカ様、真夜様がお呼びです」

 

振り向くが、そこに人影はない。音波振動系魔法「封話」だ。特定の相対位置に音声を発振させる魔法だ。これの使い手は多いが、ユリカにこうして音を届けるのは1人だけだ。

 

「琴音ね。水波、あとの片付けはやっておいて」

「え、あ、はい」

 

水波は辺りを見回し、多くの使用人たちが倒れ込む姿を見てこれを片付けるのか…とゲンナリした。

 

藤堂琴音。調整体魔法師「新・楽師シリーズ」の第一世代で、音に関する魔法に高い適正を持っている。ユリカをミストレスとするガーディアンで、防御に秀でるユリカと殺さずに攻撃することに秀でる琴音は制圧戦で優秀なペアである。戸籍上はユリカの姉という扱いである。

 

真夜のもとに向かうユリカの前に琴音が現れる。

小柄な体格で童顔な彼女はよく小学生に間違われるが、実年齢は17歳だ。戸籍などはもちろんあるが、生まれてから教育機関には通ったことはなく、全て四葉の村で学んできているため、学歴は小卒にすら負ける。だが、その魔法師としての実力はナンバーズを軽く超え、十師族並である。遺伝子が安定せず寿命の問題があること以外に欠点らしい欠点のない調整体魔法師であり、とあるプロジェクトの叩き台でもある。

そんなハイスペックな彼女がユリカのガーディアンなのは、もちろん例のあの人がユリカに怪我ひとつさせたくないからだ。

 

「ユリカ様、真夜様が「ユリカたんわっしょい!ユリカたんわっしょい!」と言いながらユリカ様の下着をお顔に付けられてあの洋館に入っていきましたので、注意を呼びかけようと思ったのですが、私よりもユリカ様から言った方が良いかと思いまして」

「あー…うん、分かったわ」

 

3人の秘密とは言っているが、琴音は音のスペシャリストで、遮音結界がない限り四葉の村で起きていることは全て感知できる。

あのババアは何をやってるのやら…はぁ…とため息をついて、洋館へ足を向ける。

 

なお、葉山によると、ご当主様の恐れる存在が1人だけいる、らしい。

 

 

 

 

 

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