「先輩っ、いま帰りですか?」
から始まるアカくて黒いジョークの世界です。見る人によっては不快に思われるかもしれないのでご了承ください。SS形式となっております。
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンに投稿しております。

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部活の後輩が共産主義者でポルポトを尊敬している件

 セミの鳴き声が耳に痛い。俺は本を読みながら、駅へ向かう通学路を歩いている。

 

「先輩っ、いま帰りですか?」

 

 背後からご機嫌な声がした。赤野(あかの)星華(せいか)。政治研究会唯一の一年生にして……生粋の共産主義者である。

 

「そうだけど」

 

「一緒に帰りませんか?」

 

「やだ」

 

「ちょっ、同じ部活なんですから!」

 

 部活といっても、名前の通り同好会である。三年、二年、一年に一人ずつ。計三名の小さな部活だ。

 

「だったら部長に声をかければいいだろうに」

 

「私、マルクスの資本論を読んだことがない人間は死ねばいいと思っています」

 

「人類絶滅するね、子供がみんないなくなるから」

 

 そして政治研究会の長のくせに資本論読んでないのかよ、部長。

 

「それは言葉の綾です。でも確かに、子供にこそ資本論を読ませるべきですよ。まだお金に目が眩んでいない純粋無垢な内に、人類平等の精神を教え込むんです。良い案だと思いません?」

 

「子供を共産主義者に洗脳するのか。まるでポル=ポトだな」

 

 ポルポト。一昔前の、カンボジアの独裁者だ。

 

「ありがとうございます!」

 

「史上最悪の虐殺者に例えられて嬉しがる人を初めて見た」

 

「失敬な! 別にポルポト同志は人殺しがしたかったんじゃないんですよ?」

 

「二百万人を殺したのは事実だろう。しかも自国民を」

 

ちなみに当時のカンボジアの人口は八百万人である。

 

「あれは必要経費です」

 

「自国民の四分の一を賭けて(ベッドして)地雷まみれの国土を手に入れる必要性は?」

 

「賭けに失敗したからそうなったんです。成功していたら分かりませんよ? ポルポト同志は真に人類平等を望んでいたんです。

 さて先輩、人類が歴史上一番平等だった時代っていつだと思いますか?」

 

「死後の世界」

 

「そういうのはつまんないです」

 

 向けられる視線が冷たかった。ここはテキトーに答えよう。

 

「ぐっ……明治時代かな」

 

「ノンノンノン、お金がある時代じゃあ不平等です。しかも日本だけじゃないですかその時代区分。

 正解は農耕社会、みんな平等に農具を握っていた時代です。だからみんながその時代に戻れば良い——そう考えたのがポルポト同志なのです」

 

「原始共産主義ってやつか。で、それがどうして人類史上最も濃密な大量殺戮に繋がるんだ?」

 

「いやだって、農業以外が出来る人間は消さないと」

 

「は?」

 

「あのですね先輩。原始共産制を実現するためには、農業以外が出来る人間はいらないんです」

 

「確かにいらないかもしれないが、殺すことはないだろう」

 

「殺しちゃダメなんですか?」

 

「君に倫理観を期待した俺がバカだった」

 

「ほ、本気で引かないでくださいよ! 冗談ですって、流石に私もこのやり方はどうかと思いましたもん」

 

「当たり前だ。眼鏡をかけていたら殺し、字が書けたら殺し、容姿が良かったら殺し、とにかく悲惨だったと聞くからな」

 

「医者も殺してしまったので、病院もひどかったみたいですよ。子供たちによる外科手術まがいの処刑が日常だったみたいですし」

 

「それを言うなら処刑まがいの手術だろ、って大して変わらないか。ポルポト時代のカンボジアでは、病気になったら病院に行かないことが肝要だな」

 

「全くです。さらに言えば軍隊も弱体化したので、ポルポトのカンボジア軍はベトナム軍にボコされてます」

 

「兵士が教育を受けていない子供だけだったから当たり前だろうね」

 

「ポルポト同志のやり方は失敗ですね。私だったらもっと上手くやりますよ」

 

「例えば?」

 

「まずリア充を全員ぶち殺します」

 

「お前にマトモな理論を期待した俺がバカだったよ」

 

「良かったですね、バカは粛清対象外です」

 

「あっ、粛清は確定事項ですか」

 

「そりゃそうで——あっ、そうだ。先輩さっき、人類が一番平等な時代は死後の世界だって言ったじゃないですか!」

 

「もうなんか予想出来たんだが」

 

「みんなまとめて爆薬で吹き飛ばしましょう!」

 

「ポルポトよりひでぇや」

 


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