二人の神風紡ぎし不世出の叙事譚   作:エリム

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もし見てくれている方がいたらお久しぶりです。
遅れた言い訳なんかは後書きで。
では、どうぞ!


第七話

 荒木先生の解散の宣言で、クラスメイトはいくつか分散したグループに分かれていった。

 僕、天音、風師さん、香織さんのような少人数の仲良しグループが3つほどと、先ほどの明嵐さんを中心とした10人ぐらいのグループ、その他少なくともこのクラスのグループにまだ属していない、或いは属す気がないグループ。

 大きく分ければこんなところで、まだ完全に決まりというわけでもないけどいつメンと言うものが早くも形成されつつある。

 玲奈さんから「小規模で良いから何処かのグループに属してないと、学生生活って厳しいわよ」って忠告されていたけど、早めにグループを作れて良かった・・・

 

 「校内予選って厳しいんだろうなーては思ってたけど、まさかほぼ全校生徒で総当たり戦だとは思わなかったよ」

 「毎年本戦はどの学校もほぼ三年生、たまに数人二年生がいる程度だったけれども、純粋に実力で決めるならそうなるわよね。まず、新入生が敵う相手じゃないわ」

 

 集まった僕たちの話題は、さっきの交流戦のことについてになっていた。

 

 「けど、専用機を持っているなら使っていいっていうのには驚いたな。荒木先生はああ言ったけど実際不公平だと私は思うな。専用機なんて誰でも持ってる訳じゃないんだし」

 「て言っても荒木先生の言ってることも間違いではないと思うよ?実戦なら限定霊機のみだろうと専用機、またはほぼそれに近づけるレベルでセッティングしないと致命的な差を産み出しかねないけど、学生レベルでそれが起こることなんてほとんどないだろうし。それに本戦にでるような人なら自分のセッティングデータぐらいは持ってるだろうし調整もできるでしょ」

 「なら、ユキは誤差でしかないというの?」

 「多少有利にはなるだろうけどね。けど、結局は経験の差がものをいうと思う。たまにそれを覆す圧倒的な才能を持つ人もいるけど、それは例外だし」

 「まあ結論、新入生はまず本選に出ることは想定されてねえんだし、専用機があろうがなかろうが大番狂わせなんてまず起こらねえって学校は思ってんだろ。んでもって、新入生の中での序列にもそんなに関係はないだろうってな」

 

 その通りだけど、もうちょっとオブラートに包もうよ。天音。

 

 「それじゃあ、昨日の貴方たちの課題は来年以降に持ち越しかしら?」

 

 香織さんの「専用機持ちズルくない?」問題に対する僕と天音なりの見解を聞いていた風師さんが「じゃあ」って感じで聞いてきた。そんなことある訳ないじゃん。

 

 「んなことはねぇぜ。二人には今年から本戦トーナメントベスト8を目指して貰う。最低でも本戦出場だな」

 「え?けどさっき無理って・・・」

 

 困惑した感じの香織さん。

 確かに専用機があってもそんなに差は縮まらないって言ったのに本戦出場を目指すというのは一見矛盾してるかもしれない。

 けど、実のところ簡単な話だったりするんだよね。

 

 「それは普通ならの話だ。新入生に足りてないのは圧倒的に経験値だ。特に香織や風師のような一般出はな。なら、上級生に匹敵する・・・いや、上回る経験を積めばいい。そういうのはユキが得意な領分だ」

 

 そう。上級生と下級生の間に大きく広がっているのは経験値。そこを埋めなければまずスペックの差はどんどん小さくなる。特に技量がものをいうこの世界では。

 なら話は簡単で、その経験の差を埋めてしまえばいい。

 幸いそういうの(実時間的な短期錬成)は仕事の一つだったから、やり方はよくわかってることだし。

 

 「そういうのは得意って、一体何をされるのかしら・・・」

 「それは後のお楽しみだよ。少なくとも直接的には身体に傷は付かないから」

 「直接的でなければ傷つくのね。今から不安だわ・・・」

 「が、頑張ろう?さーちゃん」

 

 そんなに怖がらずとも、新卒の新人に行う研修をマイルドにするだけだから多分堪えられると思うけど。

 あ、そういえば今年から僕たちが居ないから、しばらく昔の研修に戻すって長官が言ってたような。・・・脱落者が出なければいいけど。

 

 「とりあえずその辺りの話は後でいくらでもすることになるから、今はこの後の係り決めの話しない?」

 

 このまま放って置くと長くなりそうだから、一旦話を変えよう。どうせ後で嫌になるほどする話だし。

 

 「俺は係なんて面倒だからやりたくねぇ」

 

 うん。だよね。僕も同意。

 

 「私はあるなら保健委員なんてやってみたいな」

 「香織じゃ保健室で使うもの間違えたりしそうだからダメね」

 「さーちゃんひどい!?じゃあさーちゃんは万年委員長だしまたやるんでしょ?」

 

 香織さんが保険委員・・・元気はもらえそう。

 風師さんはイメージ通りって感じだな。

 

 「今までは成り手が居なくて話が進まないからやってただけよ。見た感じこのクラスは立候補しそうな人が何人かいるし、全員何かしらのものに就かなくてはいけないって訳じゃないならなにもしないわ」

 

 と思ったらそんなわけじゃないみたい。

 けどなんだかんだきちんとやってたそうな気がする。

 

 「えー、さーちゃんが委員長じゃないなんてなんか違和感ある」

 「したくてやってた訳じゃないし、しなくていいならしないわよ。ユキはどうなの?」

 「僕も絶対じゃない限りなにもする気はないよ。絶対なら図書委員とかかなぁ」

 

 または対象が行う係か、だね。

 

 

 

 

 

 

 「それではまず、決めなければならない係の事を説明する」

 

 やはり鐘と同時に教室に入ってきた荒木先生は、全員揃っていることを確認したあと、単刀直入と言わんばかりに話を進めた。

続きという意識と、荒木先生としても多少慣れてきたからだろう。

 

「まず決めなければならないのはクラス長だ。クラス長というのは要は学級委員長のようなものだ。クラスな代表として学年でのイベントなどでの運営補佐、教師目線では分かりづらい生徒としての意見の集約、生徒会や本部長会議への出席等々、様々な事を行う。体のいい便利屋とも言えなくもないが、それはそれとして大事な役職だ。他と比べて明らかに負担が大きいため、評価されるのとは別に個人ポイントに就いている間は毎月300ポイント加算される。他にも細々したことがあるが、それは後で自分で確認するかこの後質問するように。他の係の説明もしなくてはいけないからな」

 

 つまり、クラス長というのは大変な代わりに色々と特典があると。で、その代表的なのが評価と300ポイントということか。

 一月300円というのはタダ働き同然と見るべきか、学校から300円貰えるというのを凄いと言うべきか迷うな。

 

 「次に各委員会だな。基本的には各委員会からの通達事項の通達、委員会本部の補佐が仕事になるがお互いが了承すれば本部員になることもある。その時は各委員会本部で説明をされるだろうが、そうだな、軽く本部員の説明もしよう。委員会はガイダンスでも少し話したが、保健委員会、風紀委員会、図書委員会、環境委員会、監査委員会の計5委員会があり、各本部長5名と生徒会で本部長会議を開き運営されている。少し違うが生徒会が政治家、本部長が官僚とでもイメージすればいい。本部員はその本部長の元で動く役人だな。例えば風紀委員ならクラスの風紀委員は月2の寮の抜き打ち検査の結果などをクラスメイトに伝えるといったことが仕事だが、本部員は校内、寮、教師同伴の元で学園島の巡回、校則違反者への注意または学校側への報告などを行う。このように仕事内容が違うため、クラスの委員と本部員は制度上は兼任できるが基本的に本部員になればクラスの委員は辞任というのが通例となっている」

 

 兼任をすると同じ委員でもやることが違い、更に運営側に近いとなれば特に風紀委員や監査委員は何かあった時に差別を他のクラス委員から疑われかねない。

故にできるだけ兼任はさせず、クラスの委員と本部には明確な線引きを最低限している。ってことでいいのかな?

 

 「少し話が脱線したが、今はこの五つの委員を決めるということぐらいは分かるな?他には体育祭実行役員と文化祭実行役員を各二名ずつ、合計で10名の係を決める。基本的には立候補、それで埋まらなければくじ引きで決めることにする。他薦はされた側がゴネる可能性があるからな。最初からくじ引きの方が諦めも付くだろう。では、何か質問はあるか?」

 「はい」

 「伊樹島」

 「一つの役職に複数名の立候補があった場合は?」

 「他の候補者に引くように説得し。それでも決着が着かなければじゃんけん・・・いや、双方が納得するならという条件をクリアするなら決闘で決めることも許可する」

 

 ━決闘━

 

 その言葉にクラスがざわめく。

 

 「荒木教諭、決闘とはどのようなものなのですか?」

 

 それは伊樹島さんも例外では・・・あったみたい。

 何故なら顔には困惑ではなく、わかりきったことを聞かなければならない不満と呆れを浮かばせているから。

 多分、両親か従姉辺りから聞いていたんだろうね。恐らく他にも・・・主にリスト組は似たような表情を浮かべていると思う。

 まあ、魔導師の間で広がったローカルルールみたいなものだし関係者に魔導師がいる人なら知っていることではあるけど、そんな顔しなくてもいいんじゃないかなぁ。一般の人が知ってるはずないんだし。

 

 「ああ、すまん。私もとっさに思い付いたものでな。新入生の諸君で魔導師の文化など知っているものはあまりいないというのに、すまない。だが、伊樹島?お前はどうやら知っていそうな顔をしているな。どうせだ。お前が説明してみろ」

 

 そういう荒木先生の顔は謝っているときは真剣な顔をしていたけど、今は伊樹島さんと他数名に対して悪そうな笑みを送っている。きっと「お前らのアドバンテージなど意味はない。今回は伊樹島だが、他の者も今後そのような態度を見せれば覚悟しておけ」て感じのメッセージなんだろう。

 もっとも、それをきちんと受け手が理解できているかは別問題なわけで・・・

 

 「わかりました。では、荒木教諭に代わって説明します。決闘とは魔導師の間でいつのころからか始まった揉め事を解決するための手段の一つです。お互いに意見が平行線をたどった場合などに、お互いに条件を決めて戦い勝者の意見を尊重するというものです。基本的には術戦闘技(マギクス・アーツ)ですが、挑まれた方に決闘の可否も含め優先権があるため様々な派生ルールがあります。これでいいでしょうか」

 「あ、ああ。大丈夫だ。少し補足をするなら、お互いに対等だと認めたものを賭けて行うこともある。勿論、お互いが認めたからと言って退学や立場、成績などを賭けることは学校として認めていないのでそのつもりでな。立場については例外もあるが、それは今回のように学校側が認知しているもののみだ。ご苦労だったな。伊樹島」

 「ありがとうございます」

 

 そう言って着席する伊樹島さんだったけど、多分荒木先生の笑みの意味には気づいてないんだろうなぁ。

 じゃなきゃあんな自信に満ちた回答はしないだろうし、それで荒木先生も呆気にとられた感じになってたんどろうし。

 なんか面倒なことになりそうだなあ。

 

 「今の伊樹島の説明の通り、決闘は魔導師の譲歩条件の一つだ。ただの模擬戦より何かが懸かっていた方が成果が出やすいだろう。今の時期ならどんぐりの背比べだしな。ということで、立候補がダブった場合でお互いが了承するなら術戦闘技(マギクス・アーツ)の勝敗で決着をつけても構わん。では早速立候補を募ろう。まずはクラス長からだ。誰かなりたい奴はいるか?」

 

 この言葉とともに、荒木先生の後ろにある黒板━のように見えるディスプレイに『クラス長』『保険委員』『風紀委員』『図書委員』『環境委員』『監査委員』『体育祭実行役員』『文化祭実行役員』の文字が浮かび上がった。

 さて、だれか立候補するなかな?伊樹島さんと明嵐さんは立候補しそうだけど、はたして。

 

 「「はい!」」

 

 結果は伊樹島さんと対象(快人君)

 って対象(快人君)!?明嵐さんじゃなくて!?

 

 「ふむ、天城に伊樹島か。他には?」

 

 『クラス長』の下に「天城 快人』『伊樹島 凛』の文字が浮かび上がり、他の立候補者がいないか荒木先生が確認するが他に声をあげる者はいない。

 ・・・どうでもいいけど、今なんの操作もなく二人の名前が浮かび上がったのって音声操作?それともコンタクトレンズ型の網膜端末?後で聞いてみよう。

 ━閑話休題(それはともかく)

 まさか明嵐さんじゃなくて対象(快人君)が立候補するなんて、一体なんで立候補したのやら。

 正直、何にも係に就かないことがこっちとしては一番助かる。

 そうたいした手間ではないけど、離れられるのは監視の上で厄介だし。

 

 「とりあえず、他のものを先に聞いていく。二人は相手を説得する方法でも考えておけ」

 

 その後はダブりもなく、というかダブるとどちらかが辞退か別の係へ立候補してトントン拍子に決まっていって、結果はこうなった。

 

 クラス長      未定

 保険委員    荻矢 成幸、沢野 由理香

 風紀委員    五月女 悠一郎

 図書委員    明嵐 高洋

 環境委員    南保 美裕

 監査委員    吉倉 愛海

 体育祭実行役員 水流 セリナ、長谷 茂晴

 文化祭実行役員 上林 あゆ、北条 麻理恵

 

 クラス長 未定の所が心なしか輝いている気がしてくるね。

 香織さんはさっき言ってた通り、保険委員に立候補したけどすぐに辞退していた。

 それと、明嵐さん。こっちが勝手に想像しただけなんだけど、それでも図書委員に立候補したときに「なんでだよ!」と思ってしまったことくらいは許してほしい。

 さて、それでは問題のクラス長。

 なんとなく面倒な予感がするけれど・・・

 

 「さて、残るはクラス長だが・・・天城、伊樹島、二人とも辞退はしないということでいいんだな?であれば二人で決着をつける方法を決めてもらうが」

 「辞退するつもりはありません。成れなかったとしても、自分から引き下がりたくはありませんから」

 「私も辞退する気はありません。そしてこの場で議論するつもりも」

 「ほう?」

 「私はクラス長を賭けた決闘を天城君に提案します」

 

 この言葉に対してはクラスが少しざわついた。

 聞こえたいくつかのセリフとしては「勝負になるのか?」や「クラス長になりたいなら受けるメリットがない」といったものがほとんどだった。

 クラスメイトからすれば伊樹島さんと護衛対象(天城 快人)の戦いはネームバリューから伊樹島さん有利といったところになってしまうだろうけど、実際のところ護衛対象(天城 快人)は丙種の専用機を使うだろうし伊樹島さんもパーソナル・カスタム・データは持ってるだろうから結構いい戦いはすると思う。ついでにどちらが勝とうが僕としてはどうでもいい。

 気になるのは固有術式の詳細や自身の霊機が丙種だということについて口を滑らせ、明確な証拠を作らないか。これだけしかない。今後の校内予選もだけど、これが漏れるとせっかく今の所『信憑性の高い噂』でとどめてることが早々に無駄になってしまう。こっちとしては慎重な連中だけでも大人しくしてもらって、まずは過激な連中を相手しながら体制を整えたい感じなのにそれでは慎重派も大きく動き始めかねない。

 そのうちバレることではあっても、せめてウチ(情報庁)の新人教育が終わる7月までは色んなところには裏取りさせて大規模なことはしにくい状態にしておきたい。って長官も言ってたし。

 まあ、そんなこっちの事情は対象も含め何処も知ったことではないから、せめて対象が機密指定の意味を考えて口を滑らせず証拠を作らないことを今は祈ろう。

 

 「だそうだが。天城、お前としてはどうする?別に断っても構わんぞ?私が言い出したこととはいえ、元々こうなった場合はスピーチの上クラスメイトによる投票にするはずだったのだからな」

 「大丈夫です。その決闘、受けて立ちます!」

 

 対象のその宣言で、クラスがオォ!っと盛り上がった。

 もっともさっきのような「伊樹島家の人間相手に・・・」のようなセリフもやっぱり多少あったけど、それはまあ愛嬌ってところかな。 

 

 「ただ、伊樹島さんに一つ質問があるんだけどいいかな?」

 「なにかしら?」

 「個人的なものなんだけど、なんでクラス長に立候補したのか?っていうのがちょっと気になってさ。できれば教えて欲しい」

 「別に深い意味はないわよ。ただ、将来的に経験しといた方が私にとってプラスだと思うから。それだけよ。そういう貴方は?」

 「俺もそう変わらないけど、しいて言うなら抱負も兼ねてる」 

 「抱負?」

 

 伊樹島さんがオウム返ししているけど、確かにクラス長の立候補が抱負っていうのはちょっとかみ合わない。クラス長に決定して今後の抱負とかなら理解できるけど・・・?

 

 「ちょっと自分語りになってしまうんだが、俺は1月終わりぐらいまで実はここじゃない学校を進路目標にしててさ。ぶっちゃけ本格的に魔導師を目指すつもりなんてあの時はなかった。まぁ、その後()()()()()ここに入学している訳だけどそこはまっ、どうでもいいな」

 

 そこで一回言葉を切る対象。

 色々は固有術式の発現だけれど、やっぱり話の筋が見えないなあ。

 

 「で、入学してみたら主席があの伊樹島の人。正直凄いと思った時に伊樹島さん本人じゃなくて、伊樹島という名字に対して感じたところもあったよ。けど、やっぱり俺たちは同じ新入生だし多少の差はあっても埋められないほどじゃないと思うんだ。なのに、さっきも少し聞こえたけどさ。伊樹島の人に敵うわけがないってみんな伊樹島さんを上に見てどこか敬遠している。だから、俺の中でのこの学校での抱負はとりあえず伊樹島さん。君に勝つことにしてたんだ。勝手に目標にされて伊樹島さんにとっては迷惑だろうけど、こうも早く伊樹島さんと競えあえて俺は結構うれしいしクラス長のことなんて二の次になってる。正直、決闘も伊樹島さんが言わなかったら俺が言ってたよ。こんなところだけどどうかな」

 「・・・一つ聞かせてくれる?どうして私を超えることを目標にしたの?最初はあの伊樹島を超えたって自己顕示したいのかと思ったけど、聞く感じ違うみたいだし」

 

 対象に対し聞き返す伊樹島さんだけど、その顔は疑問じゃなくて「まさかね」という自分のいきついた対象が自分を目標ににした理由が信じられないという感じだ。

 伊樹島さんが思った理由が何なのかは知らないけど、対象の性格とセリフの流れを見る限り多分大抵の人は「大きなお世話だ」って言いそうなことなんだよね。これ・・・

 

 「すまん。ちょっと回りくどかった。よく妹からも『もっと簡潔に』って言われるんだけどどうもな・・・。要は伊樹島さんに勝つことで、伊樹島さんも同じ新入生でそんな雲の上の存在じゃないってみんなに知ってもらって伊樹島さんに対して声をかけやすくしたいんだ。昨日、今日と伊樹島さん、誰とも話をしてないみたいだったし」

 

 うん。やっぱり。

 確かに伊樹島さんは誰とも話してなかったし、クラスメイトもどこか遠慮して話しかけに行ってなかったけど。

 でもそれならお前が最初に話しかけろよって話なんだよなぁ。

 ・・・ん?あれ?けど、今の状況って半ば対象の目的達成してなくない?

 

 「まさかとは思ったけれど、やっぱりそうなの・・・。まず、一つ忠告よ。今までの発言貴方に悪気は一切ないのだろうけど、聞きようによっては私に対する侮辱にも聞こえるから注意した方がいいわ。ただ、私としてもこの浮いた感じはあまりいいものじゃなかったし、その気持ちはありがたく受け取っておくわ。だからといって私もプライドがあるからそんな簡単に負けるつもりもないけどね」

 

 あら。まさかのこれが好感触?

 やっぱり顔とカリスマなのか?そうなのか?

 ・・・いや、単純に需要と供給が合っただけだよね。まあ、それでも十分凄いけど。

 

 「こっちだって負けるつもりはないぞ。今言ったことも嘘じゃないけど、俺も男だ。見栄を張れるなら張りたいって気持ちもあるしな!」

 

 んー、これが青春ってやつ?端から見てるとなんか小っ恥ずかしいなあ。

 

 「あー、天城?伊樹島?盛り上がってるところ悪いが、そういうのは決闘の後ででもやってくれ」

 

 と、途中から何やら端末を操作していた荒木先生が、どうやらひと段落着いたらしく操作をやめて二人の会話に割って入った。

 

 「決闘に関しては、ひとまず両者同意ということでいいんだよな?」

 「「はい!」」

 「よし。では、決闘の日時についてだが来週の月曜日の放課後に最初のクラス長の集まりがある。なので、明後日の私の授業。本来は軽いガイダンスにしようと思ったが、そこでいいか?・・・と言ってもこれに関しては異論は認められないが」

 

 なら、普通に断言で良くない?

 

 「大丈夫です」 

 「問題ありません」

 「ではこれで決定とする。一応聞くが、何かこれに関してか他の係について何か異議のある者は?」

 

  当然、当事者でもないのに異論が上がるはずもなく、これで決定という流れとなった。

 

 「これで今日の課業は終了だが、午後の部活動説明会も出ることを勧める。それと、ガイダンスでは流したが霊機の貸し出しやシミュレーター、実技場の利用に関してはこの後生徒証アプリで流すので、それをまずは参照して分からなければ窓口で聞くように。では、号令!」

 

 荒木先生はそう締めくくって号令を促すけど、一体誰が号令をかけるの?みたいな感じでクラスがソワソワしている。

 そんな生徒の様子を見て、荒木先生も「しまった」という顔をした。

 

 「あー、すまん。号令はクラス長がかけるんだがそうだな・・・各授業などの始礼は伊樹島、終礼は天城がとりあえずかけろ。今回は天城だな」

 

 それに対象がうなずいたのを見て「では改めて」と荒木先生は指示をやり直した。

 

 「号令!」

 「起立!礼!」

 

 ありがとうございました!の声が重なり一例をした後、みんな思い思いにばらけていく。

 僕も風師さんと香織さんは部活をするのかなと思いつつ、風師さんの隣に向かって行った。

 

 





投稿の遅れた言い訳です。
前回の投稿後、自分の仕事で現場が入り、その準備と実際の現場、片付けと忙しくなり、あまりパソコンに触れていませんでした。
台風避難で帰港できず倍近く日数伸びるとか思ってもいないっていうのよ。全く・・・
まあ、こんな私事ついでにもう一つ。
友達がVTuber始めたのでよかったら見てあげてください。
自分と同じくネットの底辺なので少しでも助けになれば・・・
その内、自分も不定期出演します。身内のコラボとか誰得とかは気にしない方向でお願いします。

それでは、また次回。今度は早めに投稿します。
お気軽に感想・誤字報告などしてもらえると嬉しいです。

↓友達のVTuberの自己紹介動画のURL↓
https://www.youtube.com/watch?v=TbA-eaqtOOQ

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