再召喚勇者は平穏を望む! ~前回魔王と相討ちになって死んだので、今回は勇者とか絶対にお断りです!~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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11 宿屋でバッタリ

「えぇ……」

 

 受付嬢さんの実家だという宿屋に着いてみれば、明らかに高級宿だとわかる豪華な宿屋が目に飛び込んできた。

 決して派手な訳じゃないんだけど、なんというか、品がいい。

 宿屋というより、ホテルに近い感じだ。

 こんな所を紹介されるなんて、僕は受付嬢さんに溺愛でもされてるんだろうか?

 

 思わず尻込みしちゃったけど、今さらここで立ち止まる訳にもいかないので、思い切って宿屋の中へ突撃する。

 そうしたら、予想外の人と遭遇した。

 

「あ」

「お? 奇遇だね、少年」

 

 そこにいたのは、冒険者としての鎧姿ではなく、私服に着替えたレイさんだった。

 ああ、私服姿も可愛い……じゃなくて。

 ここ、レイさんみたいな高位の冒険者が泊まるような宿だったのね。

 受付嬢さん。

 身の丈って言葉知ってますか。

 

「君もここに泊まってるのか?」

「ええ。知り合いの人のご厚意というか、ゴリ押しで泊まらせてもらえる事になりまして……。そういうレイさんはお一人で?」

「いや、パーティーメンバーと一緒にだ。ん? というか、私の名前を知っているんだな。私は君に名乗っていない気がするのだが……」

「あ!?」

 

 マズイ!

 これは弁明を間違えるとストーカー認定されるやつだ!

 

「違いますよ!? レイさん有名人みたいだから、ギルドの受付嬢さんとの会話で普通に名前が出てきただけですから!」

「ふふ、別に慌てる必要はないよ。変な意味で言ったんじゃない。そういえば自己紹介もまだだったなと思っただけだ」

 

 そう言って、クスクスと笑うレイさん。

 た、助かった……。

 どうやら、変態認定はされなくて済みそうだ。

 

「では、改めて。私はレイ。A級冒険者のレイだ。よろしく頼む」

「は、はい。僕はミユキと言います。駆け出しのE級冒険者です。よろしくお願いします」

「……ほう。ミユキ、ミユキか……」

 

 何か含みのある感じで僕の名前を小声で呟くレイさん。

 な、なんだろう?

 お気に召さない事でもあったんだろうか?

 

「先代勇者様と同じ名前……。うん、良い名前だよ。本当に」

「え? あ、ありがとうございます……?」

 

 一瞬不安に思ったけど、レイさんの様子に暗い感情は見えない。

 いや、むしろ、その逆。

 どことなく好意的で、好感度が上がったような感覚すら覚える。

 とりあえず、これはラッキーと捉えるべき、かな……?

 ミユキって名前に何か特別な思い入れでもあるのかもしれない。

 

「おや? レイくん。お知り合いですか?」

「あ、リーダー」

 

 と、その時、宿屋の奥から一人の男性が現れた。

 三十代前半くらいの優しそうな人だ。

 レイさんにリーダーと呼ばれてたって事は、多分、この人がS級冒険者パーティー『天勇の使徒』のリーダーなんだろう。

 ただし、その外見年齢は当てにならない。

 何故なら、この人の耳は人族ではない種族の特徴として、長く尖っていたのだから。

 

━━━

 

 エルフ Lv79

 名前 ルドルフ

 

 HP 1500/1500

 MP 7000/7000

 

 攻撃 611

 防御 622

 魔力 7000

 抵抗 601

 速度 777

 

 スキル

 

『棒術:Lv1』

『光魔法:Lv6』

『火魔法:Lv4』

『水魔法:Lv4』

『風魔法:Lv4』

『土魔法:Lv4』

『氷魔法:Lv4』

『空間魔法:Lv5』

『回復魔法:Lv5』

『支援魔法:Lv5』

『感知:Lv2』

『隠密:Lv3』

 

━━━

 

 強い。

 エルフらしく魔法系ステータスに特化した数値で、そこだけならレイさんよりも強い。

 しかも、この充実しまくっていて、なおかつスキルレベルもバカ高い魔法のラインナップ。

 さすが、長命種のエルフと言わざるを得ない。

 長生きしてるという事は、それだけレベルを上げる時間があって、経験値を蓄え続けてるって事だからね。

 エルフの老化速度には個人差があるからこの人の正確な年齢はわからないけど、少なくとも二、三百年は確実に生きてると思う。

 こんな人がポンッと出てくるなんて、ホントに今の時代の人類は恵まれ過ぎだよ。

 

「知り合い……まあ、知り合いだな。知り合ってまだ半日くらいだけど」

「ああ、という事は、彼が例の少年ですか?」

「そうだ」

「ふむ。なるほど……」

 

 僕が人類戦力飽和時代の恐ろしさに戦慄してる内に、レイさんに僕の事を聞いたルドルフさんが、じっと僕を観察してきた。

 レイさんといい、この人といい、なんで僕の事を舐めるように見るんだろう?

 僕の顔に何か付いてるの?

 

「レイくんが気に入る訳ですね。確かに、あなたの好きそうなタイプだ。いつか母上とも会わせてみたい」

「あ、あの……」

「ああ、すみません。自己紹介もまだでしたね。私はルドルフ。レイくんの所属するパーティー『天勇の使徒』の二代目パーティーリーダーをしています。よろしくお願いします」

「あ、はい。僕は駆け出し冒険者のミユキです。よろしくお願いします」

「ほう。名前まで」

「……あの、僕の名前に何かあるんでしょうか?」

「いえいえ、こちらの話ですので気にしないでください」

 

 気になりますよ!?

 

「おおっとぉ! リーダーとレイ先輩じゃないっすか! 何してるんすか!」

「ハナ、うるさい」

「なんだなんだ? お? ありゃ昼間の嬢ちゃん、じゃなかった。えーと……そういや名前聞いてなかったな」

 

 ルドルフさんに問い詰めたいとか思ってたら、宿屋の奥からまたしても人が現れた。

 数は三人。

 茶髪の小柄な女の子と、眠そうな目をした猫耳の少女と、髪の毛のないドワーフっぽいおじさん。

 最後の一人は見覚えがあるというか、ボヴァンさんだった。

 雰囲気からして、全員レイさん達の仲間だろうか?

 というか、全員からそれなり以上の強者のオーラを感じるんですけど。

 

━━━

 

 人族 Lv45

 名前 ハナ

 

 HP 2988/2988

 MP 2111/2111

 

 攻撃 2500

 防御 2270

 魔力 2456

 抵抗 2207

 速度 2601

 

 スキル

 

『剣術:Lv4』

『雷魔法:Lv3』

『感知:Lv1』

『隠密:Lv1』

 

━━━

 

 獣人族 Lv58

 名前 ミーナ

 

 HP 3005/3005

 MP 600/600

 

 攻撃 3889

 防御 2844

 魔力 455

 抵抗 2996

 速度 3333

 

 スキル

 

『弓術:Lv5』

『体術:Lv4』

『感知:Lv6』

『隠密:Lv5』

 

━━━

 

 ドワーフ Lv69

 名前 ボヴァン

 

 HP 4500/4500

 MP 2700/2700

 

 攻撃 3000

 防御 4180

 魔力 2411

 抵抗 3796

 速度 2000

 

 スキル

 

『斧術:Lv3』

『盾術:Lv5』

『土魔法:Lv3』

『隠密:Lv2』

 

━━━

 

 うわー……つよーい……。

 でも、もう驚かない。

 レイさんやルドルフさんに比べたら可愛いもんだよ。

 ボヴァンさんとミーナさんっていう人は、勇者召喚の間で見た魔法使いの人達並みに強いけど。

 ハナさんっていう子だけ少し弱い。とは言っても、年齢を考えれば驚異的だ。

 どう見ても僕より年下にしか見えないのにこれだもの。

 将来有望。

 世紀末時代なら、成長する前に大軍に押し潰されるか、魔王軍幹部にやられて死んじゃうのが普通だったけど、この時代なら大成しそうだ。

 

「おお、これはちょうどいいところに。全員揃った事ですし、せっかくですから、夕食でも食べながら親交を深めませんか? 奢りますよ」

 

 そんなルドルフさんの言葉により、僕は急遽S級冒険者パーティーと夕食を共にする事になってしまったのだった。


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