再召喚勇者は平穏を望む! ~前回魔王と相討ちになって死んだので、今回は勇者とか絶対にお断りです!~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「ミユキちゃん……くれぐれも気をつけてくださいね!」
「はい。もちろんです」
街全体に響く放送の魔道具によって、ギルドから全冒険者に緊急の召集がかかり、課長さんことギルドマスターの説明によって、遂にスタンピードが数時間後に迫っていると伝えられた直後。
冒険者達が事前に取り決められていた持ち場に向かう中、心配して声をかけてくれた受付嬢さんに、できるだけ安心させるような笑顔で笑いかけた。
勇者時代にも、不安がる人達に向けてやってた事だ。
勇者は人々の希望だから、気弱な姿なんて見せられないからね。
まあ、今の僕は勇者じゃないんだけど、それでも親しい人を心配させたくはない。
受付嬢さんの激励に答えた後は、僕も持ち場に向かう。
D級以下の冒険者の持ち場は、比較的危険度の低い街の門前。
つまり、街の防衛が仕事となる。
もちろん、低級の冒険者だけで守りきれるとは思われてないので、街の兵士さん達とかも一緒だ。
ただし、冒険者も兵士も騎士も、強い人は十二天魔がこっちに来た時に精鋭達が戻ってくるまで足止めする役の人達以外、全員がダンジョンの方に行ってる。
ダンジョンから一匹も逃がさずに殲滅するのが理想だからね。
当然、レイさん達や後輩くん達もそっちだ。
十二天魔に対抗する為に余力を残さなきゃいけないから、全力では戦えないそうだけど。
「やあ! また会ったな!」
「今日こそ、あの時の借りを返させてもらおう!」
「この一ヶ月、ダンジョンで鍛え続けた俺達の力を見せてやろう!」
「あ、お久し振りです」
低級の冒険者がここに集められるという事で、ボヴァンさんとゴリラの時に知り合った駆け出し三人組とも再会した。
試しに鑑定してみると、確かに三人とも強くなってる。
気合いも充分だし、中々に頼もしい。
A級ダンジョンのスタンピード相手だと焼け石に水だけど。
「遂に来たのだ……決戦の時がな」
「俺達の伝説がここから始まる……」
「フッ、封じられた右腕が疼くぜ……!」
後に黒歴史になりそうなカッコいい感じの台詞を連発し、彼らなりに緊張をほぐそうと頑張ってる中、僕は早速、用意した手札の一枚を切る。
三人組が注目を集め、その三人組自身も自分に酔って僕に意識が向いてないのをいい事に、僕は隠密と幻惑魔法で姿を隠す。
そして、アイテムボックスからとある物を取り出した。
僕と似たような背格好をした土人形を。
テレレッテレー『身代わりゴーレム』~。
久しぶりの便利グッズシリーズ第二弾だ。
まあ、正確にはこのゴーレムは僕の土魔法で作っただけの物で、便利グッズシリーズはこのゴーレムが装備してるアイテムなんだけど。
テレレッテレー『身代わりマント』~。
これを付けると、事前にマントに登録した人の姿を幻影として纏う事ができる。
つまり、これを使えばゴーレムが僕の姿に見える訳だ。
幻惑魔法に近いけど、あっちが人の認識を惑わせているのに対して、こっちは実際に幻影を纏った上で、違和感をなくす為に幻惑魔法の効果が追加されてる。
つまり、こと変装に限って言えば、本気幻惑魔法より遥かに強いのだ。
ゴリラの時みたいに、徐々に効果が薄くなっていくとかもないし。
このゴーレムを遠距離から操作し、更に冒険者カードを持たせて魔物討伐の記録を取らせておけば、アリバイ工作はバッチリだ。
ここに僕がいなくても問題なくなる。
これで僕は、身代わりマントと似たような変装用の便利グッズで正体を隠し、いざという時には大っぴらに動ける訳だ。
この身代わりゴーレムは、事前に僕がほぼ全てのMPを使って作っておいた平均ステータス五千超えの傑作なので、十中八九破壊されて正体バレの恐れもない。
勇者時代に仲間の代わりが欲しくて、ゴーレムの為だけに土魔法のレベルを上げておいてよかった。
まあ、レベル99の全MPを消費して五千ぽっちのステータスにしかならないなんて、コスパが悪すぎるからお蔵入りしてたんだけど。
おまけに、ステータス五千なんて四天王以上には完全に無力だったし……。
それはともかく。
この身代わりゴーレムで唯一心配なのは、感知のスキルの範囲外にまで離れちゃうと、まともな操作ができなくなる事だ。
それは空間魔法で身代わりゴーレムと僕の近くの空間を繋げる事で対処するつもりだけど、空間魔法は難易度が高いから、そう長くは歪んだ空間を維持できない。
そして、A級ダンジョンはここからだと感知の範囲外。
両方の戦場を感知の範囲内に収めて見守るには、A級ダンジョンと街の間に陣取る必要がある。
つまり、どっちかの戦場に近づけば、もう一方の戦場の様子は一時的にわからなくなる訳で。
そこだけは気をつけないと。
「クックック、我らは最強に至る運命を持つ者」
「いつの日か、魔王をも切り裂く為に生を受けし者」
「故に、こんな場所で死ぬ筈がない。死ぬ筈が……」
台詞とは裏腹に、若干青い顔で自己暗示を続けてる三人組を身代わりゴーレムに任せ、僕は姿を隠したまま所定の位置に向かう。
そうして、A級ダンジョンが感知の範囲内に入った時、ダンジョンから溢れ出す異形の生物達の気配を感じた。
それにレイさん達を含む精鋭部隊が挑みかかっていく。
さあ、開戦だ。